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【大丸有】オフィスに缶詰はよく似合う
(かもしれない)

「時短」「防災」だけじゃない。 本当の味と価値を知る「缶詰でつくる簡単つまみ講座」レポ

今も生々しい記憶が残る東日本大震災から、すでに3年が経ちました。あの直後、途切れることのなく続く余震に不安を抱き、スーパーや量販店を駆け回って非常食や缶詰、水などを買い貯めた人も多かったのではないでしょうか。

そう、あれから3年です。しかし、缶詰の賞味期限が3年であることをご存知の方はどれくらいいるでしょうか。普段は賞味期限に神経質な人でも、こと缶詰に関しては大丈夫だろうと高を括る人が多いのは不思議です。震災の記憶を新たにし、災害に備える気持ちを引き締めるためにも、震災から3年目のこの機会に缶詰の入れ替えを行いたいものです。

先日、そんな入れ替えタイミングに合わせてリガーレ(大丸有エリアマネジメント協会)主宰のセミナー「缶詰でつくる簡単つまみ講座」が開催されました。講師はフードスタイリストで"缶づめ料理研究家"の黒瀬佐紀子先生。『缶詰食堂』『かんたん晩酌缶詰レシピ50 ほろ酔い♪女子つまみ』の著作でも知られる缶詰料理の専門家です。当日は先生の講演とともに、缶詰を使ったおつまみのレシピを実習で学び、ワインと味わって楽しんだのでした。

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缶詰の魅力とは

缶詰を知る。それが缶詰愛の第一歩

冒頭の講習とデモの様子。手前右が黒瀬先生

本講座の参加者は20名。うち男性が4名もいたので驚きです。4名ごとのグループに分かれての調理実習となりますが、まずは黒瀬先生のお話から。3つ作る料理の作り方解説とデモをしながら、缶詰の話、缶詰と防災、缶詰料理と日常性などテーマは広がっていきます。

黒瀬佐紀子先生「どうも私、"缶詰の人"と思われているみたいですけど、それ以外にもやっていますから(笑)」という軽いジャブで笑いを取った後、「缶詰というと、あまりおいしくない部位を缶詰にしているとか、缶で密閉してあるから長持ちするとか、少し誤解されているところもあると思うんです。いい部位を使って作るおいしい缶詰ももちろんあります。そして、一番皆さんご存知ないのが、中身と調味料を入れてふたで密閉した後に加熱殺菌されていること。中の雑菌がすべて死滅して長持ちするわけで、缶詰の長持ち・安心・安全はここから来ています。魚を骨まで食べられるのもこの製造法だから。一種の圧力鍋のようなもので、やわらかくなるし、味もよくしみこむのですね」。

受講生の中からも「なるほど」と声があがります。確かにそう聞くと、防災用品であんまりおいしいものではないと思っていた缶詰が、なんだかスペシャルな、グルメなものに見えてくるから不思議です。

また、東日本大震災のときに避難所での食事が取りざたされたことがありましたが、災害などの非常時には、食事は人の「心」にとっても重要な要素です。

「私もストレスフルな海外生活の中で、和食を自炊することを通して日常性を得て、ストレスが軽減したことがありました。このため、逆に缶詰料理を日常の中に入れておくと、いざというときに『日常性』を取り戻しやすい素地も作れるのではないでしょうか」

被災したときに、缶詰料理を食べて「これは母さんがあのとき作ってくれた○○だ」と思えれば心の慰めにもなるということでしょう。また、甘いものは心身の健康にとても役に立つことから、今回の実習レシピでも甘いものが取り入れられていました。

気負わず簡単に「組み合わせる」

実習中の受講生のみなさん。みな楽しそうな表情が印象的

さて、今回受講生がチャレンジしたのは「サーディンとにんじん、セロリのごま酢和え」「焼き餅ハニーマスタードコーン」「焼きとりたれ味のとろろがけ」の3品です。

どれも「料理だなんてそんなたいそうなものなじゃなくてただの"組み合わせ"なんですよ」、「これをやるだけでおしまい、の簡単なものなんです」と、先生が要所要所で照れ隠しに笑いをとるくらい、非常に簡単なレシピ。「非常時を想定して煮たり焼いたりもありません」という超時短・簡単レシピなのです。

「サーディンとにんじん、セロリのごま酢和え」は、千切り・スライスした野菜を袋の中で軽く塩もみして水を出し、黒酢とごまベースの和えごろもと合わせるだけ。
「焼き餅ハニーマスタードコーン」は、ハチミツと粒マスタードを合わせておいて、中の水を切ったコーンの缶詰に混ぜるだけ。これを餅の上に載せていただきます(※当日は餅の代わりにカットしたバケット、サラダ味のおせんべいを使用)。
「焼きとりたれ味のとろろがけ」は、山芋のとろろに焼き鳥缶を混ぜて、お好みで青のりを振ってからしを添えるだけ。とろろは「エマージェンシーですから、下し金、すり鉢なんてありません。だからこうします」と袋に入れて、タオルで覆って上から中身の入った缶詰でガンガンと叩き、とろろ状にするのです。

簡単です。「料理するぜ!」という気負いもいりません。あるもので簡単にやっちゃえばいいのです。

グループごとに各テーブルに分かれた受講生たちは、「エマージェンシーですから」を合言葉に、非常に良い意味で『適当に』レシピに取り組みます。あるグループなどは野菜をもみ込む塩を砂糖と間違えてしまいましたが、「エマージェンシーですから」とそのまま続行。和えごろもの黒酢や砂糖の量を調整して、見事においしく仕上げました。受講生は「塩揉みするよりおいしいんじゃない?」と自慢げでしたが、ご相伴に預かった記者の見るところ、この自慢もむべなるかなと感嘆することしばしなのでした。

ビジネスマンよ、缶詰を「再発見」せよ!

手前が「焼きとりたれ味のとろろがけ」、右奥が「サーディンとにんじん、セロリのごま酢和え」、左奥が「焼き餅ハニーマスタードコーン」。味のバランスがとてもよく、缶詰とは思えないおいしさ

全員がすべて作るのに30分もかからなかったのではないでしょうか。後半はワインを開け、試食しながら黒瀬先生とゆかりのある、石巻の缶詰工場「木の屋石巻水産」の被災と復興状況を伝えるスライド&トークショーも行いました。参加者の中には、木の屋でボランティアをした方もいて、図らずも震災後の緊迫した状況からたどった復興の道程をリアルに聞く場面もありました。

葛飾区の企業で働いているという参加女性は、「仕事を終えて帰宅して、おなかをすかせている子どものためにも早く晩御飯を作らなきゃいけないので"時短"は必須。今回は缶詰レシピの時短に惹かれて来ましたが、ちょっとした工夫でとても簡単においしい一品が作れることを知ることができたのが収穫でした」という感想。「先生がおっしゃるように、いろいろ工夫を付け加えることができるし、応用も利きそうです。今まで缶詰はあまり買うことがなかったのですが、たまに安売りしていることもあるし、これからは取り入れていきたい」。

丸の内のオフィスで働く20代の男性は「料理はぜんぜんできませんが、缶詰をよく食べているんです。でも味は濃いし毎日食べると飽きてしまうし、ひと手間かけようと思っても料理センスがないので2、3つでもパターンを覚えて帰れれば」と参加したそう。終わってみると「レシピを覚えるというよりも、"合わせ方"や"考え方"を教えてもらった感じ。先生が教えてくれたポイントを覚えて帰ります」と満足げでした。

黒瀬先生は「大丸有のオフィスで働く若い女性が来るのかなと思っていたら、男性もいるし女性の年齢層の幅も広いし、バラエティ豊かな受講生にびっくりしました」という感想です。「ビジネスにかかわる人は男女問わず忙しいと思います。効率よく生きたいという人には、缶詰料理にも興味を持ってもらいやすいのかも」。 また、「最近は忙しい時代ということもあって、料理に対するハードルがあがっているようにも感じます。私がお教えしているのはレシピじゃなくて"組み合わせ"。たとえば『みょうがをいただいたから、缶詰と合わせてみよう』というような、きっかけは軽いものでいいと思うんです。缶詰を使うことで、料理に対する親密度を少しでも上げてもらえればと思います」と、缶詰料理のまた異なる側面の意味も教えてくれました。

多くの人にとって、「缶詰」なんてただの防災用品にすぎないかもしれません。でもちょっと待ってください。『高級缶詰』なんてのもあるわけですし、時短・高効率を目指すビジネスマンや家事育児に忙しい主婦にとって、これほどベストマッチする食材もないのではないでしょうか。そんなわけで、最後に黒瀬先生の缶詰レシピの秘訣をこっそり記すので、ぜひ一度防災用品の入れ替えを兼ねて、試してみてください。

~黒瀬佐紀子先生の缶詰料理の秘伝~

■味付け缶詰は味がしっかり。なので淡白な味の野菜などと組み合わせることで味のバランスが取れておいしくなる
アクセントを加えること! にんにく、しょうが、こしょう、カレー粉などの香味野菜や香辛料で味のアクセントを。ナッツなどを加えて歯ごたえのアクセントをつけるのも◎!
缶詰料理は「組み合わせ」。缶詰の味がベースになるので失敗はまずしない。失敗を恐れず、いろいろ組み合わせて工夫を広げて
※レシピの詳細は黒瀬先生の『缶詰食堂』でぜひご確認ください。


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