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【大丸有】レジリエンスの未来を考える

共創フォーラム「“しなやかな企業”をまちづくりから学ぶ」

"ニューノーマル"の中で

7月24日、「レジリエンスの未来」共創フォーラム「"しなやかな企業"をまちづくりから学ぶ」が開催されました(主催:大成建設、協力:エコッツェリア協会、企業間フィーチャーセンター)。震災以降、未来を語るうえで主要なキーワードとなった「レジリエンス」を主テーマに据え、「まちづくり」「企業」のあるべき姿を共に考えるセッション型のフォーラムです。講師にはスイス近自然研究所代表を務める山脇正俊氏らが招かれ、間にワークショップを交えて4時間あまりの充実したセッションが行われました。

冒頭、主宰する大成建設の小野眞司氏(ライフサイクルケア推進部 耐震推進室 営業部長)は、フューチャーセッション「レジリエンスの未来」が2013年から"危機からの復旧""地球の未来を考える"と切り口を変えて続けられてきたことを説明。その中で、「天災が災害になるように、何かが"危機となる"のは、外部の問題ではなく、むしろ我々人間の側の問題ではないか、という気付きが得られた」とし、「環境や社会が大きく変化し、ニューノーマルと呼ばれる新しい日常が常態化する中で、レジリエンスとは危機を考えることではなく、我々自身の日常を見直すことだと考えることができる。その日常の象徴としての"まち"を題材に取り上げて、皆さんと一緒にレジリエンスを考えたい」と呼びかけました。

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サステイナブルとは「持続的な成功」

サステイナブルとは「持続的な成功」

講演第一部は山脇正俊氏による講演「近自然学アプローチに学ぶ『まちのパラダイムシフト』」が行われました。山脇氏は1980年代からスイス、ドイツで広まった「近自然土木」を日本に紹介した近自然学の先駆的存在。スイス近自然学研究所所長を務め、北海道工業大学客員教授として籍を置きながら、ロタ島エコアイランド建設プロジェクト、SADO専門学校のプロジェクトなどへ参画するなど世界的な活動も続けています。

今回の講演は、近自然学的都市工学の話題ではなく、そこへ至る思考の道筋やパラダイムシフトの必要性などが集中的に語られました。柔和な笑顔と口調とは裏腹に、豊富な実証データに支えられた言説は極めて論理的で鋭いものでした。

まず山脇氏は、近年よく叫ばれる「サステイナブル=持続可能性」を定義します。「持続している、持続性がある、というが、それは『持続的に成功していること』」と指摘。我々はとかく"サステイナブル"といえば自然に優しい、環境に優しい、というイメージを思いがちですが、そうではありません。そのうえで、持続的な成功を妨げる現代の誤謬を挙げていきます。例えば「効率を考えない(誤解している)」「手段が目的化している」「『気持ち良さ』の大事さを理解しない」などなど。当たり前のように見えるかもしれませんが、持続性を「成功が続くこと」と定義すると、こうした現代社会の蹉跌が新たな意味を持って立ち上がってきます。

そして、現代という時代をこう読み解きます。

「現在は世界中すべてで『どうもうまく行かない』と感じている時代だ。政治も経済も立ち行かない。日本人は現在を平和な時代だと思っている節があるが、こんなに戦争が多い時代は人類の歴史上初めてのことだ。どうやら何かが起こっている。それは"時代が変わった"ということなのだ」

「時代が変わる」とは「新しい価値観が生まれようとしている、必要とされている」ということと山脇氏。量から質へ、集中から分散へ、所有から利用へ。ニーズもライフスタイルも、マーケットもすべてが変わろうとしています。それが「システム」の変化です。あらゆるシステムにパラダイムシフトが必要であり、近自然学はそのニューパラダイムのひとつなのです。

「近自然とは"人間のもの"。人間が豊かに健康に、幸せに生き延びるために近自然があり、そのように生き延びることこそが、持続的成功と言えるのではないだろうか」

豊かに健康に、幸せに「生き延びる」

後段では、「生き延びる」ために必要なリスクマネジメントの例として「温暖化」を取り上げました。

5億年、5000万年、16万年、6000年、130年という異なるタイムスケールで相対気温変化、海水面、CO2量の変化を追っていく講演は実にスリリング。そうした膨大なデータから見えてくるのは、温暖化は、おそらく存在していますが、地球規模全体で見ると寒冷化の傾向にあり、自然現象を超えるものではないということ。CO2の増加と温暖化傾向は大問題かといえばそうではないし、そもそもCO2の増加と温暖化に相関性はあるが、因果関係があるわけでもありません。つまり「犠牲を払ってでもCO2削減すべきか」といえば答えなNoなのです。

「どちらかといえば、人類は寒冷化に備えるべきで、労力の70%を寒冷化対策として衣食住確保に努める。温暖化対策、CO2削減にも"脱石油"という意味があり、30%を振り向けて取り組むべきだろう」

また、最後に「豊か、健康、幸せ」に必要な要素として「活力」を挙げ、そのために必要な4要素「気持ち良い環境」「収入がある」「活動(雇用)がある」「学び(教育)」を解説しました。

"気持ち良い環境"は、ドイツ語で言う"ランドシャフト"のこと。日本語では『景観』と訳されますが、「視聴覚味、触覚の感覚プラス心が重要で、良いランドシャフトは気持ちが良い。それは"生き延びやすい"生物学的な理由があるからだ」と山脇氏。例えば、急にひそひそ声で話されると、人間の聴覚は30倍に増幅される。それは「ソーッと近づく獣の気配を感じ取ろうとするから」で、そうした不快なノイズを減らすことは生存環境を良化させることでもあるのだと言います。

「収入」と「雇用」の解説も興味深く感じられます。山脇氏によると「収入=雇用ではない」。「働くことでお金を得るというが、本当だろうか。生まれて生きるだけで人間には価値があり、生きるためのお金を支給するベーシックインカムは意味があるのでは」と指摘。ベーシックインカムとは、無条件最低所得保障システムとも呼ばれ、生活保障、障害補償、失業保障、年金などを撤廃する代わりに、毎月必要最低限の生活費を国が支給するというものです。例えばスイスでは成人1人あたり25万円/月、子ども6~8万円/人・月というベーシックインカムを施行する国民投票が来年行われるそうです。

"まちづくり"実践例

エコッツェリア協会の「サステナブルビジョン」より抜粋

各テーブルで感想、意見、質問のシェアを行ったあと、講演の第二部ではエコッツェリア協会の近江哲也氏、田口真司氏が順次登壇し、あるべきまちづくりの実例のひとつとして、大丸有における実践例を解説しました。

近江氏近江氏は大丸有地区まちづくり協議会、大丸有エリアマネジメント協会、エコッツェリア協会の3者が推進してきた、2000年代からのまちづくりの流れを解説。エコッツェリア協会が設立当初の目的であった「環境」と街づくりを実現する素地として「大丸有の4200社、23万人のオフィスワーカーの間に顔の見える関係を作る」ために、打ち水などの夏祭りを行ったことを皮切りに、防災・減災・BCD(Business Continuty District)の体制作り、生グリーン電力調達とそれに代わるスキームの構築、皇居の濠水浄化の取り組みなどを紹介しました。そして、現在は環境問題に限らず、より広範なサステイナブルな街づくりへとスタンスを広げ、「環境」「経済」「社会」の3つのギアが噛みあって回る「3Gear」「CSV(Creating Shared Value)」の実現を目指し、周辺との連携を深め、議論する場を作っていくと話し、バトンを田口氏へ。

田口氏田口氏は、近江氏のプレゼンを受けて、その議論の場として「3×3Labo(さんさんラボ)」に期待される役割と、これまでの実績をレポートしました。氏は設立時から3×3Labo運営に携わってきています。2014年1月~8月末の第一期3×3Labo(富士ビル)から、2014年10月末開設の第二期に当たる現在の3×3Labo(日本ビル)の実績を、「プラットフォームを構築することができた」と評価。今後は、「プロジェクト化」「ビジネス化」という3段階を経て、CSV、オープンイノベーションの実現を目指していくとしています。また、第二期3×3Laboの特徴として、中小企業基盤整備機構(中小機構)が同フロア内に設置したオープンスペース「TIP*S」(ティップス)と連携し、全国385万社の中小企業を通じて地方のコンテンツを活用した取り組みを展開したいと語りました。

濃密な議論が次世代を築く

講演の後、主宰の小野氏をモデレーターに、山脇氏、近江氏、田口氏3氏によるパネルディスカッションも行われました。講演の後に各テーブルでシェアされた質問や意見への回答を中心に、ここでも濃密な議論が交わされています。山脇氏の講演にあった相対気温による判断の適正度や"超大型台風"判断の指標についてなど鋭い質問が多く、高い意識や豊富な知識を持った参加者が多いことを感じさせました。

レジリエンスをキーワードに、まちづくりを通して"しなやかな"企業のあり方を模索した本フォーラム。多彩な話題を通して、現状の企業や組織のあり方に疑義を提示することができたのではないでしょうか。本フォーラムの続編は、10月に開催予定。興味のある方はぜひご参加を。


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