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日本の田舎は宝の山! えがおつなげて農村資源活用−企画展「田舎に帰ろう!~田舎暮らしの秘訣、教えます~」丸の内さえずり館で開催中

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ウィンドウディスプレイには、農家のおばあちゃんの等身大パネルを始め、除草機や小型管理機といった農機具類がずらり。9月4日(火)に丸の内さえずり館でスタートした企画展「田舎に帰ろう!~田舎暮らしの秘訣、教えます~」(協力:NPO法人えがおつなげて)では、都心に住んでいるとなかなかお目にかかれない"田舎"アイテムと、なかなか知ることができない"田舎"の実像が俯瞰できる情報パネルが展示されています。
このオープニングセミナーとして、9月5日「日本の田舎は宝の山!」が開催されました。講師はNPO法人えがおつなげて代表理事の曽根原久司氏。40名を募集するも、すぐに定員オーバーしてしまったという今回のセミナー、どうしても生の曽根原さんに会いたい、そんな声も多かったそうです。"田舎"暮らしのパイオニアからどんなお話が聞けるのか、期待の高まる満員の会場に、皆さんお待ちかね、曽根原氏が登場しました。

"田舎"暮らしへのきっかけは、経済バブルと健康バブルの崩壊

egaotsunaghete_2.jpg日経平均が4万円に近づこうというバブル全盛期に、銀行の経営コンサルタントとして忙しい日々を送っていた曽根原氏でしたが、1990年代に入ると株価も先行きが怪しくなってきました。

「注目したのは低い食料自給率と枯渇していく化石資源。化石資源については、いろいろな指標があるが、油田発見のピークは1960年代、以降あまり見つかっていないというデータが重要だと思った。エネルギー需要予測は上昇の一方なのに、日本の自給率は4%でしかない。これには、危機感を感じるでしょう」

間もなくクライアントの倒産があり、それまで朝4時まで飲み歩くこともざらな生活を送ってきたつけもあって、経済面、健康面の両面から生活を見直すことに。

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山梨へ

そこで、食料自給率の低さ、化石資源の枯渇などへの問題意識から、これからは"田舎"だと農村地域に着目。山梨県に決めたのは、全国で耕作放棄率第2位、森林率第5位、ミネラルウォーターシェア第1位、そして日照時間第1位(山梨県北杜市)という事実でした。なかでも当時から太陽光発電の可能性に着目していた曽根原氏にとって、日照時間が最終的な決定打となったとのこと。こんなに資源があって田舎としてのポテンシャルが高い山梨県で自分自身で事業をやってみようと、今から17年前の1995年、移住しました。

自給のためにと早速耕作放棄地の開墾を始めたところ、すっかり開墾にはまってしまい、農地は2ヘクタールまで拡大。食べきれなくなった農作物は販売することになりました。自宅の薪ストーブ用にと始めた林業も、年間数百トンを生産するまでになり、八ヶ岳エリアの別荘に販売を開始したところ、11月~2月の4か月間で750万円程度も売り上げることに。移住5年目で事業収入は1000万円を越えました。

「意外にもあっけなく、一家が暮らせるくらいの経済が成り立ってしまった。備蓄も、今だって米3年、味噌10年、醤油2年、薪3年くらいはあります。正直なところ、悪くないなという感想だった」

えがおつなげての立ち上げ

一家が暮らせるくらいの経済は成り立つことは実証できたものの、ひとりでやっていても耕作放棄地は一向に減らないという現実に、次はやりたい人にやってもらう仕組みをつくろうと決意。2001年にNPO法人えがおつなげてを設立しました。

まず若者をよぶ仕組み、開墾ボランティア制度を整備。これまでに延べ1,000名以上、東京、神奈川、千葉と首都圏を中心に、アメリカ、ドイツ、オーストラリアなど海外からも参加、3ヘクタールの農地が復活しました。今では世界の4大穀物、米、大豆、麦、とうもろこしを育てるまでになりました。

「一見順調に見えるこの間、一切お金にならず、持ち出す一方。実は内心ひやひやだった」

企業との連携

egaotsunaghete_4.JPG 持続可能な活動のためにと、企業との連携を模索し始めました。2004年に、県内の菓子製造企業と大豆を作り始め、9年を経た今でも持続的に農地を活用してもらうという取り組みが続いています。開発した新商品はヒット商品にもなりました。これをモデルケースにさまざまな企業と連携。

「2008年には、限界集落を実際に見てもらおう、体験してもらおうと企画した限界集落ツアーで出会ったのが三菱地所。酒米のプロジェクトで地元の酒蔵と一緒につくった純米酒丸の内は、今年は3800本が1ヶ月で完売。農地活用だけではなく、三菱地所ホームとは、輸入に頼っているはりの部材を国産材でつくろうと森林資源製品を開発した。近々第二弾の発表もありますよ」

他にも、博報堂とは連携農場で収穫したお米を社員食堂へ提供、信玄餅で有名な金精軒とは、新しい山梨のお土産を地の作物から開発といった、複数のプロジェクトが進行しているとのこと。

「最近すごいなと思ったのは、漫画『もやしもん』とコラボ。読者サービスとして酒米の田植えツアーで40名を募集したところ、1,000名を越える応募が殺到。10月に稲刈りツアーもやるのですが、またまた1000名以上の応募があったと聞いている。もやしもん、スゴイ」

気合いを入れて100ページのパワーポイントを作ってきたという曽根原氏でしたが、このあたりで時間いっぱいに。

最後は、
「農村の資源のいろいろなカタチでの活用を実践するなかで、宝の山をいっぱいみてきた。再生可能エネルギー固定価格買取り制度がスタートしたが、山梨県で試算するとこれだけでも200億円程度見込める。都市農村交流、農商工連携の農村資源活用によって10兆円産業、そして100万人雇用を創出できると本気で思っていますよ」
と力強い言葉で、セミナーを締めくくりました。

セミナー後は、特別企画、純米酒丸の内2011年と2012年の飲み比べ。1年ねかせた2011年の方がコクがあって好みという方が多かったようです。おつまみは、山梨から持ってきたという朝穫れトマトのボニータ。みずみずしくて甘くて、これがまた美味しい!しかし、カップで飲む日本酒はまわります。あっという間に皆さんよい気分になって、ますます"田舎"話に花が咲いていました。

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チェーン除草機の体験会も。優れものと大評判で、この界隈("田舎"暮らし、農業関係)の雑誌でもよく取り上げられているのだそう。結構重かったです!

セミナー内で、内閣府の調べでは、都市住民の約3割が"田舎"暮らし志向しているとの調査結果も紹介されましたが、「一過性のブームでは?という指摘もあるが、そうは思っていない。マズローの5段階欲求説があるが、都会の人は生理的な欲求や安全への欲求という足元の欲求がふらついてしまった。この問題が解消されない限りは続くのではないか」と語っていた曽根原氏に、最後に"田舎"を志す方へアドバイスをいただきました。<

「大上段に構えずにまずはやってみる!今は体験できるツアーなどもいろいろあるので、17年前とは違いますよ。家族の説得は、私の場合、実は会社の保養所を山梨に作ろうと思うんだけどと、カマをかけました。そしたら妻がズルイ!と。これで脈ありだなと話をすすめました(笑)」

企画展「田舎に帰ろう!~田舎暮らしの秘訣、教えます~」は10月30日(水)まで。10月10日(水)、10月30日(火)にはセミナー「農村起業のススメ」が予定されています。この秋"田舎"を体験するのであれば、まず丸の内さえずり館に足を運んでみてはいかがでしょうか?