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『はやぶさ』人気でますます熱い! 最先端の天文学に触れる連続講座「まるのうち宇宙塾」に潜入取材

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丸の内でも熱い!宇宙ブーム

小惑星探査機「はやぶさ」の帰還に端を発した"宇宙ブーム"。現在公開中の映画『はやぶさ 遥かなる帰還』も話題になっていますよね。丸の内でも、「はやぶさ」が回収したカプセルの展示が行われたり(2010年8月)、「宇宙利用シンポジウム2011」が開催されたり(2011年2月)と、宇宙関連のイベントが人気を集めてきました。

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そんな中、昨年4月より継続して開催されているのが「まるのうち宇宙塾」。東京大学特任助教の高梨直紘氏をファシリテーターに迎え、最先端の天文学の話題に触れることのできる講義が、隔週で行われています。会場の「自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館」は、仕事帰りの熱心な宇宙ファンのみなさんで、毎回満員御礼。スタートから1年を迎えようとしている今でも、キャンセル待ちが出るほどの変わらぬ人気を集めています。

今回はその人気の秘密を探るべく、講義に潜入取材。熱気あふれる会場の様子を、レポートでお届けします。

第19回「まるのうち宇宙塾」
テーマは「次世代観測装置開発の裏側」

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2月15日(水)、会場の「自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館」には、20代のOLさんから重役級(?)のビジネスマンの方まで、様々な丸の内ピープルが詰めかけ、開始前から満席に。人気のほどがうかがえます。

この日のテーマは「広く深く宇宙を見よう 次世代観測装置開発の裏側」。国立天文台が、今まさに開発中の観測装置について、その最新情報をお話しいただきます。講師は、国立天文台 ハワイ観測所プロジェクト研究支援員の山野井瞳氏です。

ハワイで観測中!「すばる望遠鏡」を知ろう

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まず話題は、ハワイ島にある日本の国立天文台の望遠鏡「すばる望遠鏡」について。標高約4,200メートルにあるこの観測所は、高さ22メートル(ガンダム級!)、天体からの光を集める鏡は直径8.2メートルもある巨大なもの。複数の「撮像観測装置」(天体の明るさや形を調べるもの)と「分光観測装置」(天体の温度や組成を調べるもの)で構成されていて、目的に応じて装置を入れ替えながら、様々な観測を同時に行うことができます。

そのため、観測可能な天体の種類も、実に様々。太陽系内の天体から、銀河系、アンドロメダ銀河、さらに遠くの銀河・銀河団まで、遠近問わず幅広く観測を行っています。

最新鋭のハイパー シュプリームカムで宇宙の謎が明らかに!?

そして、現在開発中の観測装置が「ハイパー シュプリームカム」。すばる望遠鏡に搭載予定の新しい撮像観測用カメラです。高さ約3メートル、重さ3トンにもなる大きなカメラを、望遠鏡の一番上の「主焦点」と呼ばれる場所に取り付ける計画が進められています。

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この「ハイパー シュプリームカム」の特徴は、観測視野が広いこと。現役で稼働中の「シュプリームカム」に比べて、約10倍の視野を持ちます。このカメラを開発する大きな目的のひとつは、「ダークマター(暗黒物質)」の観測。宇宙の構成を研究した結果、目に見えるものはたったの4%ほどで、残りの73%はダークエネルギー(宇宙を加速膨張させている謎のエネルギー)、23%はダークマターであることが分かってきました。ダークマターは、宇宙の構造物を成り立たせるためには必要なのに、目には見えないもの。視野が広く、高解像度の「ハイパー シュプリームカム」の導入により、この観測効率が一気に向上し、5年間で2000平方度以上もの広域に渡る観測を行うことが可能になるのです。

ダークマターを観測することは、宇宙の研究においてとても大きな意味を持ちます。山野井氏の所属する開発チームは、現在観測開始に向けてラストスパート中。2012年5月には「すばる望遠鏡」に取り付け、試験観測を開始する予定とのことです。来年には、センセーショナルな観測結果が次々に発表されるかもしれません。完成が楽しみですね。

熱心なファンに脱帽!活発な質疑応答

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これからの宇宙観測を予感させるような約1時間半の講義。このレポートでは省略しましたが、実際の講義では、ハイパーシュプリームカムでダークマターを観測するための方法論や、観測した画像の処理方法、「すばる望遠鏡」における観測員の生活についても、詳しく丁寧に解説されました。

何より驚いたのは、参加者のみなさんの熱意。講義の途中でも、「その重さに耐えられるの?」「カメラの画素数は?」「観測所の晴天率は?」と、活発な質問が次々に飛び交っていました。高梨氏と山野井氏がその一つひとつに回答し、インタラクティブに情報が行き交う、とても賑やかな雰囲気の講義。宇宙ファンのみなさんの熱さ、そして宇宙へ想いを馳せることの魅力を実感することができました。

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次回「まるのうち宇宙塾」は、3月13日

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次回「まるのうち宇宙塾」は、3月13日(火)。自然科学研究機構の武田隆顕氏を講師に迎え、「ディスプレイの中の宇宙」をテーマに開催されます。

いつもの仕事帰り、宇宙に想いを馳せるひととき。みなさんも体感してみてはいかがですか?

まるのうち宇宙塾(第21回)「ディスプレイの中の宇宙」

◆講師:武田 隆顕 (自然科学研究機構)
◆ファシリテーター :高梨 直紘 (東京大学EMP 特任助教)
◆申込制 :先着40名  申込みフォームで、残席チェックを!
◆参加費:1000円 
◆申込フォーム :天文学普及プロジェクト「天プラ」
◆主催:天文学普及プロジェクト「天プラ」
◆場所 :自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館
◆TEL:03-3283-3536

《今後の予定》
3月27日(火)、4月24日(火)、5月22日(火)、6月26日(火)