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【レポート】業務の中でイノベーション"人財"を育てるには会員限定

CSV経営サロン第4回セミナー 1月22日開催

イノベーション人材を議論する

1月22日、CSV経営サロンの第5回セミナーが開催されました。CSV経営サロンは、環境経営サロンとCSRイノベーションワーキングを発展的に統合し、環境にとどまらず広くさまざまな社会貢献を視野に入れてCSV(Creating Shared Value)、ソーシャルビジネスを創発することを目的としています。

冒頭、エコッツェリア協会の平本真樹氏が挨拶に立ち、「多様な価値を生み出す『コ・ベネフィット』、参加者がともに成長していく『コ・エヴォリューション』、多数の関係者を巻き込んでいく『コ・デザイン』がCSVの成功のポイント」であり、「その実現に必要な、展開するテーマ、人材、場、実践のために本サロンがある」と改めてCSV経営サロンの目的の説明がありました。

今回のセミナーのゲストスピーカーは、明治安田生命保険相互会社の執行役企画部長を務める永島英器氏。同社は2006年から社内風土を創出するため人材育成に力を入れており、「MoT運動」、「丸の内イクメン部」などの小集団活動を通し、企業のバリューを高める人材を育て上げることに成功しています。今回は同社のそれらの事例を通して、「自社」の「既存事業」の中で、イノベーション人材を育成する方法論について考察を行いました。

いつものように"道場主"に小林光氏(慶應義塾大学大学院特任教授/元環境省環境事務次官)を迎え、ファシリテーターは、企業間フューチャーセンターの臼井清氏、塚本恭之氏が務めました。

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経営危機から始まった新風土創出

経営危機から始まった新風土創出

2014年に発足した「イクメン部」が、丸の内で始まった珍しい活動としてマスコミを賑わせましたが、そうした活動を含め、組織風土創造プロジェクトとして、各部署(本社・支社・法人部・関連会社等)が創意工夫のもと、顧客や地域とのリレーションを強化する自主的な活動「「MoT(もっと)運動」が、明治安田生命保険相互会社(以下明治安田生命)の人材育成の重要な取り組みとなっています。

登壇した永島氏も、静岡支社長時代に、今で言う街コンイベント「しずコン」を県内で多数開催し、地域の活性化、人的交流の拡大の取り組みを手がけてきたそうです。「しずコンから結婚したカップルもいる。長い目で見れば、保険会社としては結婚し、子供が増えることが望ましいのでこれは良い取り組みとなった」と永島氏。その他、顧客へ訪問の際に手書きのメッセージを添えるようなホスピタリティを意識した活動も「MoT運動」のひとつです。

「丸の内イクメン部」で知られる小集団活動は、「企業間の枠を超えて交流する」ことを目的にしたもので、丸の内では「大人の部活動」が盛ん。タイガースファンの集い「猛虎部」や登山をする「山楽部」、40~50代の粋な大人文化を創造する「新大人部」など多数の部活動が発足しています。

こうした取り組みが始まったきっかけは、2005年の保険金不払い問題を端緒にした二度にわたる行政処分だったそうです。「経営管理機能の低下というガバナンス上の問題はもとより、現場で働く職員一人ひとりのモチベーションの低下が大きな問題となり、風土を変えなければと考えられるようになった」と永島氏。そこでスタートしたのが、2006年1月~2008年3月までの「明治安田再生プログラム」です。

これは、新たな企業風土を生み出すための「新風土創造MOTプロジェクト」と、中期経営計画を両輪とし、経営と現場の健全化を目指すものでした。再生プログラムはその後、「明治安田チャレンジプログラム」(2008年4月~2011年3月)、「明治安田発展プログラム」(2011年4月~2014年3月)と発展的に改変を続け、2014年4月から次の成長を目指す「明治安田NEXTチャレンジプログラム」に移りました。ここで「MOT」は、「Moment of Truth(感動を生み出す瞬間)」=「MoT」となり、「感動を生み出す生命保険会社」を経営ビジョンに掲げて「感動実現プロジェクト」としてリスタートしています。

人材から「人財」へ

当日の発表資料より抜粋

こうした活動の根幹になっているのが人材育成です。「"ES(従業員満足)なくしてCS(お客様満足)なし"と考え、"人材"ではなく、"人財"を育てることを目指している」と永島氏は言います。求める「人財像」とは、「感動を生み出すプロフェッショナル人財」。挑戦し、持続的に成長し、ダイバーシティにも対応する、柔軟で強い存在です(図表参照)。

そのため「人財として評価する制度も制定」したと永島氏は解説します。業務成績だけで評価する一元的な方法ではなく、「個人の資質や志を、直属の上司だけでなく、近くにいる常在職員とともに議論して評価」するとのこと。画一的な評価に陥ることなく、多様な価値観を評価軸に取り込むことができる、優れた制度といえるかもしれません。

企業がこうした取り組みを「始める」ことは、もしかしたら、それほど難しいことではないかもしれません。しかし、「持続的に行い続ける」ことこそが本当に難しいのではないでしょうか。明治安田生命では、その難しい、持続的な取り組みのために、さまざまな工夫を重ねているのです。

そのひとつが「組織化」。感動実現プロジェクト/MoT運動の推進のため、全国各地の支社、営業所、法人部、本社組織には「感動実現委員会・チーム」「クオリティ向上委員会・チーム」「Jリーグ・サポート委員会・チーム」を必ず設置し、個々のMoT運動のサポートを行うとともに、部署ごとに「職場MoTミーティング」を開催して組織内コミュニケーションの向上を図っています。各組織内だけで完結しないよう、"姉妹組織"も制定し、組織を超えた情報交換や交流を促しています。
また、MoT運動をテーマにした全国代表リーダー研修会を毎年開催し、好取り組み組織を表彰したり、社内では「働く仲間への感謝の気持ち」「称賛の気持ち」を手書きのメッセージで伝え合う「サンクスカード」という活動も行っています。

ポイントは「みんなで」「たのしく」ということでしょうか。個々人の活動に収束させてしまうのではなく、皆の活動に敷衍することで、お互いに良い影響を与え合うことができるのではないでしょうか。全国の従業員それぞれが、応援するJリーグ・クラブを社内連絡簿に表記する「マイ・サポーター」というスタイルもそのひとつといえるでしょう。

変わる意識、風土

明治安田生命のサイトより

2006年から続けてきた活動で、風土はどのように変わったのでしょうか。あるいは、そもそも変わったのでしょうか。社員へのアンケートでは、「社会貢献する企業風土があるか」という問いに対して、「ある」の回答率が、2006年の31.4%から、2015年には66.9%に上昇していたそう。同じく「創造性」、「変革」についても2倍以上へと上昇。そこで働く人の意識が、10年でこれだけ変わったというのは驚くべきことかもしれません。

現在進行中の明治安田NEXTチャレンジプログラムは、2017年3月を持って終了となります。その次の取り組みについて、永島氏は「イノベーションが鍵になるのではないかと考えている」。生命保険は、静態的なもので、「イノベーションからはもっとも遠いもののひとつ」だが、エピジェネティクス、遺伝子工学、先進医療、ヘルスケア産業が進歩し変化する中で、「いずれ生死すら不確実性が低下し、保険のありようも変わらざるをえなくなる」ため、「イノベーションに取り残されないようにしないといけない」と考えていると永島氏は指摘しています。

そのためには「個人、組織の余力」が必要であり、そのため「効率的で柔軟な働き方を目指した働き方改革」を行い、コミュニケーションの活性化、ホスピタリティの向上を通して、イノベーションの創出を図っていくそうです。

自分事にすること

永島氏のスピーチを受けて小林道場主も登壇し、"模範稽古"として、両者によるトークが行われました。
冒頭小林氏は「長期的なものをどう進めるのかということが、どこでも非常な悩みになるが、中期計画に組み込んでいる点、方針だけではなく、サンクスカードのようなやりとりできる"通貨"のような単位を設定したことが素晴らしい」と高く評価。そして、質問として「次の一手の具体策」「投資の可能性」等を挙げました。

そんなやり取りで印象深かったのは、部活動等の小集団活動のメリットについてです。「感動とは違う、どんなメリットがあるのだろう」という小林道場主の疑問に、「もともと保険会社は人と人をつなぐのが仕事のようなもの」と永島氏。「特に、明治安田生命は株式会社ではなく『相互会社』。いわゆる株主への利益還元を考慮しなくていい。だから、利益を還元するのは契約者であり、言ってみれば、契約者の皆さんとは、運命共同体、同じ船に乗る仲間になっていただくということ。だから、そんなステークホルダーと結びつくのはごく自然のこと」。

これは、会場から出された「風土を作る秘訣は?」という問いへの答えとも通底しているように思えます。「結局、お客さまを大事にするのは、誰のためなのか、突き詰めて考えたら、"自分のため"と思えなければ、従業員個々の腹に落ちないし、業績も上がっていかない、といつも言っている」と永島氏が言うように、実は、自分-顧客の間に彼我ほどの差はない、そう思うことが、CSV、イノベーション創発に必要なことなのかもしれません。

続いて行われた稽古=ワークでは、「あなたの会社に新規事業人財はいますか?」「新規事業人財をどのように増やすのが良いと思いますか?」という2つのテーマが出され、各テーブルで熱心な議論が交わされました。シェア(発表)では、「外部(他社・他業種)との交流」「制度設計」といった企業側のマネジメントについて意見が多く出された点が印象的でした。

つながり、広がる

ちょっとしたアクションで、顧客とつながる、仲間とつながる。そんなMoT運動を通して、企業風土が醸成され、人財が育っていく。「人材とは人財である」「顧客のためは、自分のため」といった永島氏の言葉ひとつひとつが身にしみたセミナーとなりました。CSVやソーシャルビジネスの要諦とは、数字としての金銭のためではなく、あくまでも"自分ごと"としての幸せを追求したその先にある、そんなことを考えさせられる内容でした。次回は、会場を明治安田生命に移したセミナーを、再度開催する予定です。


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