イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】情報インフラを取り込むまちづくり会員限定

2016年度第4回CSV経営サロン 2月14日(火)開催

サステイナブルなまちづくりをビジネスとして行うにはどうしたら良いか、それを考える目的でスタートした「CSV経営サロン」。道場主の小林光氏は「3年計画の取り組みで、その1年目としては、こんなビジネスが可能なのではないか、というビジネスの糸口を出すところまでを今年の出口としたい」と話しています。これまで「エネルギー、建物それ自体をファイナンスする仕組み、地域資源で利益を生み出す観光」(小林氏)という3つのテーマで講師をお招きし、インプットをしてきましたが、第4回目の今回は「まちにある情報をどう使うのか、を聞いてみたい」(同)との発案から、株式会社スマートコムラボラトリーズ代表取締役社長の川崎日郎氏を講師にお迎えし、まちづくりと情報・メディアの連携についてお話しいただきました。

小林氏は「かなり面白い、"まち"ならではの情報インフラの作り方、収益の立て方があると思う。ぜひ期待してお聞きいただきたい」と呼びかけ。
川崎氏は広告代理店のオリコムのOOH(Out of Home)メディア本部メディア開発部長の肩書も持っており、広告、特に屋外広告の視点から新しいまちづくりのあり方にアプローチしてきた人物。「大学では文学部、史学を学んだ」ということもあってか、まずは広告、メディアの歴史からトークがスタートします。

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時代の潮目から見えてくる新しいメディア

時代の潮目から見えてくる新しいメディア

川崎氏は「マクロ視点である『鳥の目』、ミクロ視点の『虫の目』という言い方があるが、今日は『魚の目』すなわち"潮流を読む"というところから話したい」と口火を切り、ルネサンス期に発明されたグーテンベルグの活版印刷が社会に与えたインパクトを説明。「印刷が発明されたことで、ルターの宗教改革とあいまって聖書が一般に普及し、ドイツ語の標準語が生み出された。これは最初のメディアの誕生といえるだろう」と川崎氏。そして、現在進行中の「Industry4.0」すなわち「第4次産業革命」を引いて、第1次産業革命から第三次産業革命までをメディアと広告の観点から解説します。

それによると、第1次産業革命(18世紀中葉から19世紀)では「紙の大量印刷が可能になり印刷術が完成」。この時期はカラー印刷の原理やガリ版印刷、タイプライターも発明されてマスメディアの誕生が準備されます。第2次産業革命は「電気の時代」。1865年から1900年までを指し、エジソンが電気器具を発明したことで、映画やラジオなどのメディアが一斉に花開き、「ジャーナリズムが誕生した」。そして20世紀後半の第3次産業革命は「ここにいるみなさんが体験してきた時代」で、「新聞、雑誌、テレビ、ラジオといういわゆるマス4媒体が成立した」。屋外広告の一種とも言える大型サインやネオンもこの時代の産物です。そして、この時代になって「コマーシャリズムも成立した」と川崎氏は指摘します。

そして、「じゃあ、今起こりつつある第4次産業革命では、どんなメディアが登場しどんな進化が起きるだろうか」と問いかけ。そのヒントは「スマホとタブレットにあるだろう」と川崎氏は読み解きます。これは「まちで暮らす人々が、高機能のOOHメディアを持っているということ」であり、「IoTですべてが繋がる今、新しい挑戦ができるようになったということ」と説明します。

屋外広告価値の再定義

六本木ヒルズはタウンメディアとしても有名だ(写真はイメージです)["Roppongi Hills" photo by shibainu(frickr)

そして話題を屋外広告へと移します。氏は長年OOHを扱ってきた広告マンであり、六本木ヒルズの屋外広告を開発、日本初の大規模タウン メディアとして大成功を納めています。その後も表参道ヒルズ、札幌地下歩行空間メディア、丸の内メディアリンクの開発にも携わってきた屋外広告のプロ中のプロ。その氏が気付いた屋外広告の課題が、「価格形成システムと流通体制の不備」でした。

氏によると屋外広告の価格は「これがいくらであるとロジカルに説明できるものではない」とのこと。「経験と勘でしか値付けできない」、もので、「業界内でイエス!と合意が得られるものがゴールになっていた」という、広告業界の実態を赤裸々に語ります。そんな屋外広告がタウンマネジメントでもまかり通っているところにも問題があると川崎氏は指摘。「タウンマネジメントの費用を広告でまかないましょうと言うけどできるわけがない。だから屋外に不良媒体(広告)が大量に生み出されることになる。しかしタウンマネジメントにおける広告の本当の役割とはそんなものだろうか」。

そこで改めて「タウンマネジメントに立脚した新しいメディアの開発」に取り組むことになります。その視点は魚の目、時代の潮流を読む目に即して、現在のまちに本当に必要な広告、媒体の価値を再定義すること。
川崎氏は「タウンマネジメントとスマートコミュニティの思想をベースに現代社会に適合した新しいビジネスモデルをベースに、広告・プロモーション価値拡大・再定義を狙う」「まちが求めるメディア創造と運営が必要で......それは企業活動を活発化し、市民に対し有益な情報を提供し、生活と生活圏を豊かにすることが目的」であると説明します。

「社会価値、社会資本性がなければそもそも広告メディアは売れるわけがない。広告で儲けましょうではなく、社会的に必要だからこの広告を置きましょう、その結果、さらに収益が立てられますから広告をやりましょう、というべき」と川崎氏。

そこで取り組もうとしたのが、広告市場の可視化と健全化(適正化)を図ること、広告価値の多様化、生活が豊かになる広告商品と費用負担の仕組み作りという3点でした。

異業種間連携が鍵

この1番目の広告市場については、2014年に「TOWN Media開発メソッド」として開発しようとしています。2万件におよぶ屋外広告データを取り込み、これまでは経験と勘に基づいていた値付けを「1万人に接触するからいくら」というように定量的に値付けする、これまでにはないもの。これは某社から「開発に200億円かかる」と言われたこともあり、社内会議でボコボコにされて一旦はお蔵入り。

しかし「普通ならそこで諦めるところですが、今やらなくてどうするんだと発奮して」自部門内の広告商品化計画としてリトライ。2015年2月から開発に着手します。

そこでチャレンジしたのが「異業種共同事業体」の結成でした。かつてこのサロンでもご講演いただいた、『未来予測』で知られるアクアビットの田中栄氏のご尽力もあり、必要な要素技術とノウハウを持つ複数社が結合。ここでは、健全な広告市場の構築のアイデアをベースに、新しいまちの広告商品の開発に取り組むことになりました。その結果、測位技術とビーコン技術を持つリコー、決済システムを持つ豊田通商、サイネージを自社開発しているトーメンエレクトロニクスなど6社が参加する事業体が結成され、「およそ3億円かかる初期開発費用を現物調達の形で調達」、2015年5月にプロジェクト化、同年12月には「SMART COM CITY」の名称で商品化に成功という、非常に速いスピードで開発しました。

「この仲間で話し合った重要な点は、補助金や助成金で実証実験をやろうねではなくて、ちゃんとお金を貰える、ビジネスとして継続的にやっていこうということ」と川崎氏。そこで、この商品を使った"ビジネス"として回してくために、2016年11月に株式会社スマートコムラボラトリーズが設立されました。

人とまちを活性化させるシステム

スマートコムラボラトリーズのコンセプト図(同社サイトより

SMART COM CITYとはどのような製品、サービスなのか。簡単に言えば、スマホアプリと連動したサイネージ広告であり、同時に来街者の地域での行動を促進しようとするシステムです。例えば、デジタルサイネージで地域内のショップのプッシュ型広告を配信、スマホがその情報をキャッチ。ユーザーはその情報を元にまちを回遊し、消費行動を行います。スマホアプリからのアクションには割引やポイントなどのインセンティブが付与され、お店もユーザーも、広告を扱うスマートコムラボラトリーズもうれしい、トリプルウィンの関係がまちをベースに構築されるというもの。

この仕組みを、川崎氏はマーケティングで言われる「AIDMA」「AISAS」になぞらえて「AINALS」であると説明しています。「Attention」(注目)→「Interst」(興味)→「Navigation」(誘導)→「Action」(購買)→「Loyalty」(愛着)→「Share」(共有)という流れです。「昔は広告と人の行動がどう結びついているかの実証はできなかったが、SMART COM CITYならそれが把握できる」と川崎氏。タッチした人数に応じて料金を設定できる仕組みも導入し、料金の適正化にも努めるとも話しています。

さらに、SMART COM CITY、ひいては広告から新しいまちづくりをする動きを拡大するために、「これから力を入れたい」としているのが「屋外広告取引市場(JAODAQ:Japan Advertising of Outdoor Automated Quotations)」の事業です。これは「本田宗一郎が車を作っても、藤沢武夫が流通を作らなければ車は売れなかった」ように、SMART COM CITYを拡大するために、屋外広告市場それ自体の活性化、底上げが必要だということ。2017年5月に稼働予定で、ポスターやフラッグなどを含む、あらゆる屋外広告を扱い、クラウド上で購入が可能なシステム。「米や油と同じ、広告の現物取引市場。山手線沿線で10万人に接触したい、というオーダーがあればそれに応える広告が購入できる」というもの。

最後に、今後はさらにSMART COM CITYに環境センサーやビル管理システム、健康管理システムなどを盛り込む構想を持っていることなどを語り、「いずれにしても広告を売ることではなく、社会に必要なものを作り、売ることが大事」と語り、自らが六本木ヒルズ以降の屋外広告業界で悩んできた課題が、今のまちづくりと連動した広告につながっていることを示し、「そのためには『セレンディピティ』(予想外の偶然の出会いから新しい気付きを得ることのたとえ)が重要」と語り、締めくくりました。

未来のまちづくりに開眼

川崎氏のトークの後は、小林氏から後半のグループワークに向けた話題提供としていくつかの質問が挙げられ、それら質問の中から、初期投資について、川崎氏と小林氏がパネルディスカッション的に話し合いました。

それによると、初期費用は3億円ですが「システム構築上、個人情報と現金を扱わないだけでシステム開発費の桁ががくんと下が」り、開発もスムーズにできたそうです。また、例えば現在地方で導入を検討している事例では、「LLC(有限責任会社)を立ち上げて補助金や寄付金をプールし、導入のめどが立ったらスタート」「SMART COM CITYは無償で提供し、利益が出たらレベニューシェア」するなど、有限責任で、たくさんの事例を扱って利益が出る仕組みにしていることなどが説明されました。
「現在6カ所で導入に向けて動いており、5カ所から引き合いが来ている。これが全部トントンで行くと、利益がようやく出る。それくらいのバランスシートでやっている」と川崎氏。これに小林氏が驚き「そんな薄商いで大丈夫なの?」と重ねて質問。

これに対して、過去、関東近郊の都市博的イベントで、来場者750万人もいたはずが終わってみたら大赤字だった事例があったことを示して「これはそもそもの立て付けがおかしかったのではないか。イベント会場に来て有料チケットを購入するだけでは採算が合わない。まちで使う食事や買い物のアクションから少しずつ利益をあげていく仕組みにしなければ意味がない」と話し、その部分が今後の大きなビジネスになるとも話しています。

この後は、各グループでのワーク、グループごとに川崎氏へ質問、ディスカッションのパートへと移りました。各グループとも非常にインスパイアされたようで、議論も白熱、その後の質疑応答も大変に盛り上がりました。質問は主に技術的な面と、マーケティングに関する質問に分かれ、例えばSMART COM CITYで使っているビーコンの種類や技術的な課題点などについての質問、現状、街アプリは多数あるもののダウンロードされず、利用率が極めて低い事例なども取り混ぜ、どのようにして利用を促進するのかといった議論が交わされました。まち、スマホ、健康のキーワードでも話題が尽きず、今後、どのようにして健康を作る仕組みをまちに実装していくか、SMART COM CITYができることは何かといったことも話し合われるなど、参加者たちも未来に向けて大きく視野が開かれたようでした。

会員企業の研究施設視察に向けて

また、会の締めくくりに当たっては、会員企業のダイキンから、大阪・摂津にあるテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)の紹介と、先ごろ創刊されたというこれにちなむ社内誌『Challenge』の紹介もありました。TICは「各所に分散していた研究者が集まってワイガヤするために作った場所」で、現在700名の研究者が在籍。「3×3Lab Futureともジョイントできることがあればぜひご一緒したい」と、今回この場での発表となりました。

小林氏は先日すでに見学しており、小林氏は「空気作り、ひいては場作りに尽力されているダイキンさんならではの素晴らしい場所」と太鼓判。「エントランスの里山のような植栽が素晴らしい。3×3Lab Futureは文系だが、TICには理系ならではの面白い仕掛けがたくさんある。ぜひみなで見学に行けたら」と話しています。エコッツェリア平本氏からは、来年度には施設見学する方向で調整中であるとインフォメーションもありました。

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今回ご参加いただいた会員企業のみなさまは以下の通りです。

旭化成ホームズ株式会社
株式会社イトーキ
エーシーシステムサービス株式会社
シャープ株式会社
ダイキン工業株式会社
大成建設株式会社
東日本電信電話株式会社
前田建設工業株式会社
三菱地所株式会社
リガーレ(大丸有エリアマネジメント協会)

<オブザーバー>
国土交通省
総務省

<学生>
慶應義塾大学および大学院
東京大学大学院


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