イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】キリンの取り組みからCSVを俯瞰する会員限定

第2回CSV経営サロンセミナー 10月5日開催

10月5日、CSV経営サロン第2回セミナーがエコッツェリアで開催されました。CSV経営サロンは、大丸有に籍を置く企業が一体となってCSVビジネス、オープンイノベーション創発プラットフォームを目指すもの。昨年までの環境経営サロンと、CSRイノベーションワーキンググループが発展的に統合され、企業のマネージャークラス、経営層を主な対象に開催されています。

サロンには、CSVビジネスのシーズを現場で見て学ぶフィールドワークと、座学とワークショップで各企業の持つリソースやニーズをあぶり出すセミナーの2種類があります。10月5日に開催されたのはセミナーの第2回目。ゲストスピーカーには、CSVビジネスの雄、キリン株式会社CSV推進部長の林田昌也氏を迎え、キリンが取り組んできたCSV事業のこれまでと現状、そしてこれからについて語っていただきました。また、後半は、小林光道場主による"模範稽古"と、"かかり稽古"という名のワークショップを行い、参加者の理解を深める作業を行っています。ファシリテーターは企業間フューチャーセンターの臼井清氏、塚本恭之氏が務めました。

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世界の動きを解説

世界の動きを解説

会に先立ち、クレアンの水上武彦氏から、9月に開催されたワークショップイベント「NPO/NGOと企業間のパートナーシップによるCSV~The Power of CSV Partnerships~」のレポートがありました。FSG(Foundation Strategy Group)、クレアン、ジャパン・プラットフォーム、JPモルガンなどが主催するもので、タイトルの通り、CSVの連携において、NPO、NGOとのパートナーシップがテーマのイベント。当日は内外のさまざまなCSV事例の検証や分析を行い、近年の傾向や求められる要素の確認が行われたといいます。

水上氏はその概要を説明するとともに、「NPO、NGOと企業が連携するのがグローバル・スタンダードになっている」と話し、これからは「セクター内に留まることなく、ひろく企業、非営利セクター、行政と、より広くパートナーシップを結ぶことが求められ、それを実現する人材を"トライセクターリーダー"が重要になってくる」と、世界のCSVのトレンドを語りました。

復興支援がCSVの起点

キリン絆プロジェクトのサイトより

続くゲストスピーカーの講演で、キリンCSV推進部長の林田氏から、キリンが取り組むCSVの現状の紹介がありました。キリンは福島県産の梨を使った「氷結」などCSVに様々取り組んでおり、この日も東日本大震災の復興活動におけるCSV事業が主なテーマとなりました。「復旧」を主目的とした復興の第1フェイズでも多彩な活動に取り組んでいますが、この日の話題は林田氏が「農業・水産業復興支援の第2ステージ」と呼ぶ、一歩進んだ復興支援活動の話題が中心となりました。

キリン・林田氏林田氏によると第2ステージは「経済的な自立を目指す復興支援」であり、"生産から食卓までの支援"をテーマに、「地域ブランド創生支援」「6次産業化推進と販路拡大」「担い手・リーダー育成支援」を3本柱にして進められています。支援先は、被災3県で、農業支援25地域、水産支援14地域(福島除く)に及びます。

「気仙沼茶豆」「麓山高原豚(はやまこうげんとん)」といったプロダクトのブランド化もあれば、女川市で取り組んだ包括的な「AGAINおながわ」にまつわるプロジェクトもあります。こうした取り組みについて、林田氏は「CSVとして見た場合、飲料メーカーとして短期的に成果が見えるものではない。企業イメージ、お客様から見た企業の好意度や親近感からスタートするもの」と話します。
「女川のプロジェクトで、改めてまちづくりに取り組んでいる町のリーダーとネットワークができたことで、5年後、10年後まで視野に入れ、長期的な視点で成果を考えたい」とも話しています。リーダーや行政の方々とのつながりから町民・市民の方々へ企業の存在感が伝わっていけば、例えば町の飲食店で扱われるビールの種類にも好影響が出ると考えることもできるということです。「もちろん、それを端的な目標にするのではなく、人とつながることが、広い意味で様々な成果につながることを認識させ、巻き込む社員を増やしていきたい」と林田氏は話しています。

人のつながりが生むCSV

TONO BEER EXPRIENECEのサイトより

人と人のつながりがさらに際立つのが、人材・リーダー育成事業の「農業トレーニングセンター 『パドロン ブランド育成、販路拡大』支援」と、そこから発展したプロジェクトの数々です。

再三触れてきたように、農業トレセンは丸の内朝大学発のプロジェクト。東北の若手生産者とのつながりを深め、東京のオフィスワーカーのリソースを農業復興支援に投入しようとしたもの。そのトレセンからさらにスピンアウトしたのが岩手県遠野市のパドロンプロジェクトです。遠野とキリンはホップの契約栽培で52年の歴史がありますが、生産者の高齢化による後継者不足が大きな課題となっています。遠野の若手生産者が着目していたスペイン産のビールに合う野菜「パドロン」の育成を取り組みの柱にし、遠野発の新たな作物として様々なアクションを行い、地元の生産者の育成にも寄与しました。パドロンプロジェクトでも販路拡大に取り組み、「例えば、キリンシティでメニューとして採用しました。ビールとの相性がとても良く、2014年には枝豆以上の売上となった」そうです。

このパドロンプロジェクトは、単にパドロンのブランド化にとどまらず、非常に多様な人材を巻き込んだネットワークでパドロンとホップを中心にした新しい遠野の町づくりに発展していきます。

プロジェクトは「遠野TKプロジェクト第2ステージ」へと進み、"Tono Beer Experience"をキーワードに、市民参加型ホップ収穫祭、ビアツーリズムの開発、シェフズツアーの仕組み化などを行っています。

推進のため必要な制度とルール

キリンのコーポレイトサイトより

林田氏によると、CSV事業推進のために、企業組織も大幅に改編されました。2013年に国内の飲料事業を一体化したキリン株式会社を設立し、「CSV本部」を設置。R&Dのセクションと並んで本部化しています。この2部署は「企業の価値を生む部署」と定義され、「ブランドを基軸とした経営」というキリンの企業経営の中核的な存在となっています。

そして、「企業理念」を「社会課題の解決=社会的価値」に照合し、「製品・サービス」「バリューチェーン」「地域社会」という3つのアプローチで、6つのテーマで取り組んでいる方針を説明。中でも6テーマのうち「人や社会のつながりの強化」「健康の増進」の2つは「キリンならではのテーマ」と位置付けて最も力を入れて取り組んでいます。

最後に「とはいえ、CSVの取り組みはまだまだ不十分。私自身長年マーケティングの仕事をしてきたが、CSVのテーマは単なる課題の解決ではなく、開発というか新たな創造があってはじめて意義があり、社会にも受け入れられる。様々な社会的課題はつきつめれば『世界をより良い場所にする』ということ。CSVをめぐる議論が激しくなることもあるが、そんなときは、その目的を思い出し、より良い地球を次世代に残すためにどうするか、キリンとして何ができかを考える。それがお客様のためであり、社会のためであり、企業のためになる」と締めくくりました。

CSVをどう理解するか

インプットトークの後は、恒例となった「稽古」という名のワークショップへ。最初に道場主の小林氏と林田氏による「模範稽古」としての対談が行われました。最初に小林道場主からは「世界的に見ても立派なCSVだが、社員、社内にはどう理解されているのか、認知度はどんなものか」という質問が出されました。キリンといえばCSV業界では著名ですが「実際には社内認識は6割程度がポジティブ。4割はニュートラルだが"自分ゴト化できない"というスタンス」なのだとか。「結局ひとりひとりの社員におちていくものであり、志と個々の体験に基づくもの。長い道のりだと思っている」と今後の展望を語ります。

また、一方でCSVの認知が高いならではの問題もあります。それは「それはCSVですか?と訊いてくるような"CSV原理主義"みたいな人間が出てくる」ことだという。林田氏は「だから社内ではCSVという言葉は使わない」。会場から「じゃあCSVをどう説明するのだ」と質問が上がると「社会課題の解決がお客様の幸せと同義だと。日々の幸せを阻害するものは何か、我々の商品や行動によって、その要因をなくしていくということを考えよう。ひいてはそれがキリンにも還ってくる。それがCSVなのだ。」など、細かな事例から、理念的なところまで、さまざまな質問・意見が飛び交う模範稽古となりました。

議論を深めるヒントに

その後、各テーブルで取り組む「かかり稽古」では、「CSV経営の視点でどう新プロジェクトを生み出すか」を前提に、「そのために必要なことは何か」「地域プロデューサーの立場から見て必要なもの、こだわるべきポイントは何か」といったテーマでダイアログを行いました。

基本的には企業のマネージメント層が多く参加するサロンのため、各テーブルでは、経営レイヤーでの考え方や判断についての意見が多く交わされたようでした。最後には、各テーブルの意見のシェアも行っています。

これまでのサロンとは異なり、参加者は必ず対話として意見を述べる場があります。アウトプットのためにはインプットされた内容をよりよく理解する必要があるため、それだけに参加者ひとりひとりが"持ち帰る"ことができたものも多かったようです。ワークショップの後の懇親会でも、理解をさらに深める意見を交わす姿が数多く見られました。


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環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。

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