イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】電気と会社とまちづくり――みんな電力の挑戦会員限定

CSV経営サロン 2016年度 vol.1(9月28日開催)

事業創発を目指す企業が集い、CSV事業を環境まちづくりに活かすアイデアを交流させる「CSV経営サロン」、2016年度の第1回目のセッションが9月28日に開催されました。

"道場主"小林氏本サロンはエコッツェリア会員企業を対象としたもので、新しい企業価値、社会価値を創発するために、コ・クリエーション(共創)に取り組もうとするもの。今年1年は「環境まちづくりの実践を継続的に掘り下げ、来年度には具体的なアクションにつなげたい」と主宰するエコッツェリア協会の平本真樹氏。"道場主"を務めるエコッツェリア協会理事の小林光氏(慶応大学教授)も、「これからは、(インプットトークで)社会や企業の良い活動を聞いて"良かったね"で終わるだけではなく、実践へとつなげていきたい。2020年に向けて大きく社会が変わろうとしている。そのど真ん中で、まちづくりという公益に企業がどう取り組むのか、非常な難題だがここから取り組みを始められたら」と期待を語りました。

2016年度のセミナーは、前半はゲストを招いてのインプットトーク、後半は、参加者同士によるグループワークという構成で行われます。また、グループワークには、小林氏の大学・大学院での教え子である学生たちも参加します。企業人と学生たちとの協働を、ビジネスアイデアにつなげ今年度の最後には、参加企業によるなんらかのプレゼンテーションも行うことにもなっています。

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地域の人が選ぶ。「この人の電気なら、買いたい」

地域の人が選ぶ。「この人の電気なら、買いたい」

みんな電力のサイト

今回のインプットトークには、みんな電力株式会社の代表取締役・大石英司氏が登壇しました。みんな電力は、ユニークな取り組みで知られる電力小売事業者です。「一言で言えば、顔が見える電力」と大石氏。「生産者の顔が見える野菜があるが、それの電力版。コンセントの向こうにいる人が見える新しい体験で、"コンセントを差すのが楽しくなってきた"という嬉しい声も寄せられている」。

2016年4月に電力小売が自由化し、現在では348業者が参入しています。しかし、「その多くが価格競争による差異化をしているが、電力の仕入値に大きな違いがない以上、価格競争も現在では頭打ち」という状況です。そのようなビジネス環境の中でみんな電力が提供しているのが「顔の見える電力」です。それは、電力を購入している再生可能エネルギーの小規模発電事業者たちを、消費者に「見える」ようにしたもの。消費者は自分が使う電気を使う人と直接つながることができる仕組みです。

みんな電力・大石氏もともと大石氏は大手印刷会社で勤務しており、新規事業開発などを担当し、電子書籍なども扱ってきた経歴があります。電力を手がけるようになったきっかけは「有楽町線にいたソーラー発電のストラップを持ったお姉さん」でした。「ちょうどその時、自分の携帯電話の電池が終わりそうで、このお姉さんが発電してくれた電気だったら200円で買ってもいいなと思い(笑)」、発電事業者と消費者をつなげることの可能性に気づいたそう。

この日は、そんな大石氏が「電力自由化市場の現状」「みんな電力の特徴」「企業としての電源責任」という3つの切り口で話題提供をしてくれました。

再エネへ切り替える「こだわり層」は3%

当日のプレゼン資料から作成

まず電力自由化以降の電力市場について、既存電力会社からの切り替えをしているのは全体のわずか3%であることが紹介されました。「日本独自の背景として、3.11で自分たちの電気がどこから来るかを強く意識した経験がある」と大石氏は説明。しかし、切り替えを実施している消費者はごくわずか。大石氏は「切り替えた人はいますか?」と会場に問いかけましたが、その数はゼロ。「環境意識が高い人でも電気の切り替えをしている人はとても少ない」現状を、会場にいる人々は身をもって感じたのでは。

横軸に「電気へのこだわり」、縦軸に「価格へのこだわり」を取った四象限に消費者を分類すると、再生可能エネルギーを中心に電力切り替えをした層は電力へのこだわりが強く、価格へのこだわりが低いという特徴があります。ここがみんな電力のメーンターゲット層になります。電力へのこだわりがなく価格へのこだわりが強い層が、価格競争をする新電力のターゲット。問題は「価格にも電気自体にもこだわりのない無関心層と、どちらにもこだわりが強い慎重派の層」であり、そここそ新たなターゲットとして掘り起こしたい層だと大石氏は話しています。

野菜のように、電気も選ぶ、応援する。つながる楽しさへ

顔の見える発電事業者を「応援する」。ポータルサイト「ENECT」より

そこへリーチするのは、価格競争しかしていない新電力会社にはできないこと。みんな電力は、そういった層にリーチするために、さまざまな取り組みをしています。ひとつは発電事業者を応援する仕組み。「言ってみれば電気版ふるさと納税のようなもの」で、消費者は月に1回、100円の応援金を事業者に応援として贈ることができるようになっています。それを続けると、例えば牧場で発電している事業者は、そこで採れた牛乳やヨーグルトがお返しとして贈られるというもの。また、これから、有名ミュージシャンやアイドルが発電する電力を販売するというアイデアもあるとか。「ばかばかしいアイデアだと思うだろうが、無関心層へ訴えかけるにはこうした違うファクターを掛け合わせていく手も必要ではないか」と大石氏。また、慎重派層へのアピールとしては「透明性」が何よりも重要であると話しています。「3.11で消費者は電気に対して、再生可能エネルギーなどに興味を持つか、不信感を持つかの2つに分かれたと思う。不信感を持った人に対しては、情報を開示していくしかない」。

また、地方を応援するスキームを作ることができるのも、みんな電力の特徴です。例えば群馬県の川場村のバイオマスで作った電気を、世田谷区で消費できるようにした取り組み。「首都圏の人が地方を応援する地域間連携の関係を作ることができれば」と、今は神奈川県、福島県でもそんな取り組みを手がけているそうです。

こうしたみんな電力の特徴を、大石氏は「透明性、参加性、社会貢献性」などのキーワードで整理。そこから生まれる付加価値を「選ぶ楽しさ」「おまけの楽しさ」「つながる楽しさ」「応援する楽しさ」と解説しました。

電気も"原料"

最後の「企業の電源責任」は、いかにもCSV経営サロンにはマッチした切り口です。「電気も経営資源の"原料"だが、調達元等に配慮する日本企業は少ない」とし、アメリカ企業が再生可能エネルギーへの電力切り替えに意欲的な例を紹介。「日本では電力問題は環境団体が取り組む、社会運動の一種として考えられているのではないか」と大石氏は疑問を提示します。

企業が電力切り替えに対して積極的でないのは「経営層の理解がない」「送配電業者への配慮」、「投資家の無理解」といった「たくさんの問題があるだろう」としながら、「ひとつひとつしっかりと議論し、クリアしていきたい。今日はエコッツェリア協会の企業のみなさんと、シフトしていこうよ!という大きなムーブメントを起こすことにつなげることができたら素敵なことだと思う」と会場に呼びかけ、締めくくりました。

学生も交えたグループワーク

インプットトークを受けて、小林氏からのコメント、質問がありました。小林氏は「現代は安いだけでは売れない、コ・ベネフィットの時代なんだと、その意味でも大変面白かった」とコメント。市場規模や実際の価格などについて質問しています。大石氏からは一般ユーザーは少ないものの、もともと電力の市場規模が15兆円(法人向けの特別高圧7.5兆円、一般向け自由化市場7.5兆円)で、そのごく一部を取るだけでも相当な金額になること、法人向けの特別高圧と低圧の狭間で高くついてしまっている中小企業などが新たなターゲットとして想定されることなどが回答として述べられました。

この後は各テーブルでのグループワークが行われました。ここには各テーブル1、2名の学生が加わります。専門はそれぞれ異なりますが、それぞれ環境問題で小林氏の薫陶を受けた学生たちばかり。企業人側の意見と、研究者目線の学生の意見がクロスオーバーし、活発な議論となっていたようです。

また、3×3Lab Futureでのテーブルワークというと、どちらかといえば"発散型"で、和気藹々とした、楽しげな雰囲気の風景が印象にありますが、今回のワークはいささか趣を異にしています。通年のテーマ「環境まちづくりの実践」に向けて、発散型ではなく集約型の議論で、しかも百戦錬磨の企業人たちが鋭く活発な意見が交わす、そして、大学生・大学院生が専門領域で交じり合う。なかなか目にすることのない、ユニークな場であったように思います。

電力自由化市場の裏表

各テーブルから大石氏に質問や意見が出されましたが、そのどれもが厳しく内容の詰まったものばかり。例えばFIT(固定価格買い取り制度)の是非や、自由化市場における今後の発電業者・小売業者のビジネスの可能性、通信の自由化との違いなど。

その中で注目したいのは、自由化市場における送配電業者との関係(もしくは課題)です。「現状、送配電コストは法人向け高圧で1kwhあたり2~3円だが、一般家庭向け低圧が9円と非常に高い。この価格について検証する術がなく、業者は決められた金額で対応するしかない」。みんな電力では、この辺の数字を消費者に明示し、不安感、不信感の払拭に努めていますが、「送配電コストが適正なのかどうか、業者ではなく消費者から問題提起をしてもらえればインパクトがあると思う」と指摘しています。

また、小売業者が消費者に請求を立てられるように使用量を確定するのは送配電業者の役割になってはいるものの、そのデータが「めちゃくちゃ」で、「信用できない、それどころか送られてこないといったこと」もあるのだとか。「電力は仕入れが先で、消費者の入金が後になるので、この辺で(状況を)舐めてた業者は大変なことになっている。せめて正しいデータをもらえないか、といつも思っている」と、なかなか一般の消費者には知られていない裏事情なども明かされました。

今後の市場動向とともにみんな電力の方向性について問われた折には「(自由化市場の)システムや、託送料など市場関係はまだ落ち着いてない印象。3~4年はこのまま冷静に対応していき、勝負のタイミングが来たらアクセルをぐっと踏みたい」と回答。一般消費者とともに法人をターゲットに狙っていきたい考えですが「どのエリアで、どんな方法でアプローチすれば良いか見えてきた。タイミングが来たら人員を投入」するとのことでした。

そして最後に「発電の世界にはまだまだイノベーションの余地が多く残されている。夢の素材もたくさんある。世界中にあるそんな技術や企業をネットワークし、まとめていくことができれば、きっと世界が変わっていくだろう」と締めくくりました。

学生が「活性剤」??

グループワークの後は恒例となった懇親会も開催されました。かつての環境経営サロンはとてもマジメで、どちらかといえば厳粛な雰囲気。それが昨年CSV経営サロンになってからだんだんと、良い意味でくだけた雰囲気になってきましたが、今年のサロンには学生も参加することで、さらにその良い雰囲気が加速している印象がありました。懇親会で熱心に耳を傾け、考えを話す学生たちが良い「活性剤」となって、懇親会の会場はいつになく盛り上がっていたようです。

主宰のエコッツェリア協会・平本氏によると、今後のCSV経営サロンも今回のインプットトークのように「まちづくり」の周辺の実践的な研究成果や企業活動を取り上げることで思索を深めていき、同時に最終回のアウトプットに向けた会員企業のグルーピングの方法も検討していくそうです。

【9月28日 参加会員企業】
伊藤園
イトーキ
シャープ
東京ガス
トヨックス
日本郵政
東日本電信電話
前田建設
三菱地所
三菱電機


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環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。

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