イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】都会と限界集落がつながり、価値を共有する社会へ会員限定

2017年度第2回CSV経営サロン 2017年8月8日(火)開催

「CSV経営サロン」では、「環境」を軸としつつ、社会問題の解決をどうビジネス視点で取り組んでいくか、検討を続けてきました。7年目となる今期のテーマは「東京オリンピック・パラリンピック(以降オリパラ)」と「持続可能性」についてです。

第2回の本サロンでは、オリパラ関連の報告に加え、地球環境と人々の暮らしを持続的なものとするためすべての国連加盟国が2030年までに取り組む目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の分野のうちから、No15「陸の豊かさも守ろう」というテーマをピックアップして、その中でも「森林資源の活用」を中心に議論が交わされました。高齢化や過疎化で地方の農業や林業の担い手が減少を続ける中、資源をいかに活用し、どうビジネスに結び付けて持続可能な開発を行っていくのか、切実な課題に対し知恵を集約します。

冒頭を飾るのは"道場主"としておなじみの、主宰者・小林光氏(エコッツェリア協会理事、慶應義塾大学大学院特任教授)。「2020年をしっかり迎えるため、そして、それ以降の社会のためにも、今日はみなさんで知恵を出し合いましょう」と、穏やかな口調で参加者に語りかけました。

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持続可能性に配慮したオリパラの実現には課題が山積

持続可能性に配慮したオリパラの実現には課題が山積

まず行われたプレゼンテーションは、東京オリパラに関する内容でした。吉高まり氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のクリーン・エネルギーファイナンス部主任研究員、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任教授)が、マイクを取りました。

「2013年の都議会選挙時に掲げられたオリンピックに関する公約は、残念ながら全般的に機能していない、というのが現状です。組織委員会と東京都の足並みがそろっていないこともあり、持続可能性がまだまだ整ってはいません。組織委員会が発表した『持続可能性に配慮した運営計画のフレームワーク』に目を通しても、"○○を使用すべき"、"○○に取り組むべき"という表現ばかりが目立ち、肝心な部分に"実施する"という断定がありません。はっきり言って、準備不足です」

例えば、イベントの持続可能性に関するマネジメントシステム「ISO 20121」という国際規格に関して。2012年開催のロンドンオリパラは、スクラップ&ビルドではない持続可能性を目指す大会として運営され、史上最も環境に優しい大会として高い評価を得ました。このロンドンでの大会で採用されたのが、環境・社会・経済のバランスの取れた大会運営のために2007年に策定され、2012年に発行されたISO 20121であり、東京オリパラでも採用予定です。
しかしこの規格取得のための準備は、まだ整っていません。

「2016年のリオオリパラでは、4年間準備をして、2年かけてようやく規格を取得しました。しかし東京オリパラでは、まだ動き出していないのが現状です。こうした持続可能性に関するコミットメントというのは非常に重要なステップだと思います。今後は、遅れを取り戻すとともに、参加者をより大きく巻き込むようなスキームの構築を期待したいです」

限界集落と都会をつなぐ「空と土プロジェクト」

続いては、本日のゲストによるプレゼンテーションです。「都市における森林資源活用~背景、課題、方策」というタイトルが掲げられています。
今回のリソースパーソンは、NPO法人「えがおつなげて」代表理事の曽根原久司氏と、三菱地所株式会社 環境・CSR推進部の水田博子氏、見立坂大輔氏の3人です。三菱地所グループが現地で活動するNPO法人と組んで行った「空と土プロジェクト」を通じた取り組みを紹介する中で、持続的な資源活用について考えていきます。

「えがおつなげて」は、限界集落となった地区をフィールドに、都市部のボランティアの手で開墾した農地でお米や野菜を作るとともに、グリーンツーリズムをはじめとした都市農村交流事業などを推進し、地域共生型ネットワーク社会を創ることを目的として活動を続けています。
「私たちが本拠地とする山梨県北杜市の増冨地区は、高齢化率65%、耕作放棄地58%、生産農家はゼロで、JAも撤退してしまった典型的な限界集落です。こうした土地にある耕作放棄地をいかに活用するかは、今後の日本の大きな課題のひとつです」(曽根原氏)。

そんな「えがおつなげて」が企業向けに主催した「限界集落ツアー」に、三菱地所の環境・CSR推進部のメンバーが参加し、感銘を受けたことから、「空と土プロジェクト」が生まれました。2008年からスタートし、現在では三菱地所グループのCSR活動としてしっかり根付いています。
プロジェクト誕生のきっかけについて触れたあと、曽根原氏が会場に対し、こんな語りかけをしました。
「耕作放棄地や荒れた森林の開墾によって地域が元気になるわけですが、ここでひとつみなさんに協力してほしいことがあります。私が『開墾!』と言ったら、みんなで両手でガッツポーズをしながら『もりもり!』と言ってほしいのです」
こうして参加者みんなで、笑顔で「開墾ポーズ」。この後も、何度か「開墾!」「もりもり!」の声が、響き渡りました。こういった共同体験こそ、地域都市連携の礎かもしれませんね。

続いて、プロジェクトの具体的な内容と成果の発表に移りました。
「空と土プロジェクト」では、都市部と農山村が連携して、それぞれが抱える課題を解決し、都市と農山村が互いに元気になる社会を目指しています。都市部の課題は、希薄な人間関係、コミュニケーション不足によるストレスなどです。一方の農山村では、高齢化や過疎化、行政サービスの低下といった課題があります。それらを解消するため、三菱地所グループとNPO法人「えがおつなげて」が連携し、開墾ツアーや田植えツアー、地域と連携した酒米作り、地元産材の活用、農産物を使ったイベントなどを行ってきました。

「大きな流れとしては、まず初めに耕作放棄地の拡大という地域課題がありました。その解消のために新たな農業が始まって、そこをベースに商品開発やさまざまなエコツアーが開催されるようになり、それが農地だけではなく森林分野にまで広がっていった、というところです」(曽根原氏)
「2010年から、三菱地所グループの社員と丸の内エリアの就業者で、増冨地区の耕作放棄地に作った田んぼに酒米を植え、田植えや稲刈りを行っています。そして、山梨県の老舗酒蔵と共同で、純米酒『丸の内』を作ってきました。この収益の一部は寄付され、増冨地域の農業用水路のメンテナンス費などに充てられています」(水田氏)
「増冨地区を始めとした山梨県の山林で、これまで廃棄されていた間伐材や小径木を、高品質な国産構造材として加工し、三井地所ホームの戸建て住宅に標準採用しています。これにより受注住宅の国産材比率は50%を超えました。国産材の比率を高めることが持続可能性につながりますし、事業という面でも国産材という付加価値がつくため、双方にメリットがある取り組みとなっていると考えています」(見立坂氏)

熱気あふれる質疑応答から、課題が浮かび上がる

プロジェクトに関する紹介がすべて終わった後は、参加者を交えたディスカッションです。まずは「道場主」小林氏から、指針となるテーマが発表されました。
小林氏が挙げたのは、以下の2つです。

①山梨県北杜市と丸の内が助け合う事業が、世の中を変えるインパクトのある事業になるためにはどうしたらいいか
②地方と中央で直接、人がつながる事業のメリット、デメリットと、持続可能性どうか

それに対し、見立坂氏は次のような所感を述べました。
「森のプロジェクトに関して、持続可能性というところから言うと、ボトルネックとなっているのは、林業を担う人材が不足していることです。人がいないので事業を拡大させることが難しくなっています。より太いサプライチェーンを作りあげ、事業として魅力のあるものに育て上げていく必要があります。また、地方と中央でうまくパートナーシップを結べるかもポイントです。現在は、人材がどうしても都市に偏ってしまっていますが、そうした人材が地方に出ていくようになると、横展開が可能になり、インパクトのある事業になるのではないかと思います」(見立坂氏)

ここで参加者は5~6人のグループに分かれ、それぞれのテーブルで課題を検討し、よりよいプロジェクトにするためにはどうしたらいいのか考えていきます。
「横展開をするには、コストの問題がネックになるだろう」、「仲立ちとなってくれるNPOが存在しない場所では、どうするのか」、「結局は、手を挙げる大企業がなければ成立しないのではないか」......。各テーブルで、議論が白熱。予定されていた時間をオーバーし、意見の交流がなされました。
その後は、各グループの意見をひとつに集約した上、代表者がリソースパーソンに対して課題の問いかけを行いました。
以下、主だった質問と回答をまとめます。

Q「非常にいい取り組みだと思うが、約10年続けているのにあまり世の中に知られていないように感じる。もっと認知度を高め、社内とその関係者だけではなく、一般の人々を巻き込んではどうか」
A「CSR活動なので、できるだけ一般の方々を巻き込みたい、という思いはあります。しかし受け入れる側のキャパシティに制限があって、例えばいきなりたくさんのツアー参加者を連れていっても、昼食にもトイレにも困ることになるでしょう。そのあたりも加味しながら少しずつ活動の輪を広げていければ」(見立坂氏)

Q「プロジェクトでは、土地を持っている人に一定のフィーが入るという仕組みにはなっているが、移住者が増えて地域が再生するようなことには結び付きづらいように思う。持続可能性はどう見るか」
A「農業分野でいえば、私たちNPOが同じようなスキームで一番初めに手掛けた北杜市の黒森集落は、限界集落を脱し、生産農家も4人住むようになりました。そうした先行モデルから推測すると、増冨集落もこれから5年ほどで移住者が増えるだろうと見ています」(曽根原氏)

Q「CSR活動としての社内の理解はうまく得られているのか。会社に対するフィードバックはあるか」
A「プロジェクトを始めた当初は、なぜ農業なのか、と首をかしげるような反応が多かったです。しかし、実際に社員たちがツアーに参加し、稲刈りなどを体験してもらってからは、もっとこうしてはどうか、という前向きな意見をもらうことが増えました。フィードバックの例としては、日本酒という「見える」商品ができたことで、それがCSR活動をアピールするツールとして使えるようになりました。いずれにせよ約10年やって、それなりの評価がついてきているように感じます」(水田氏)

そして最後には小林氏から、主催者としての総括がありました。
「大変すばらしいディスカッションができたと感じています。CSVでは、わくわくするようなストーリーが必要であり、いかにそれをつなげていくかも大切です。そして、地方と中央においては、短期では終わらない持続的な関係を築いていくこと。そのための新たなプロジェクトを、みなさんもぜひ引き続き、考えていって欲しいと思っています」 大きな拍手の中で、第2回CSV経営サロンは幕を閉じました。
なお、終了後には懇親会が開かれ、参加者はさらに胸襟を開いて、思いのたけを述べ合っていました。こうした交流もまた、本サロンの大きな魅力といえるでしょう。

今回ご参加いただいた会員企業のみなさまは以下の通りです。

株式会社伊藤園
鹿島八重洲開発株式会社
クラブツーリズム株式会社
シャープ株式会社
ダイキン工業株式会社
パタゴニアインターナショナルインク
東日本電信電話株式会社
三菱地所株式会社

<オブザーバー>
株式会社アドバイザリー・カンパニー
株式会社三陽商会
凸版印刷株式会社
農林中央金庫
株式会社博報堂
株式会社乃村工藝社
株式会社ワイス・ワイス


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