イベント3*3 LABO・レポート

【3*3 LABO レポート】「森と人とのあいだ」 ~第三回 森の感じ方~

2013年8月5日(月)開催

3*3ラボ 2013年8月5日開催
シリーズ「森と人とのあいだ」第三回『森の感じ方』
ゲスト:高山 正明(たかやま・まさあき)
シリーズディレクター:井上岳一氏(日本総研/ソーシャルセンシングラボ主宰)
3*3LAB × social sensing laboとの共同トークイベント「森と人とのあいだ」
第3回のゲストは、「森の案内人」高山正明氏。高山さんはプロの自然ガイドとして
群馬県草津市を中心に多くの方に森の魅力と楽しみ方を伝えています。五感を開き、
全身で森を感じることを大切にしている高山さんは、森ほど五感を刺激する環境はな
いと言います。そして、森を感じることで人は元気になることができるのだとも。

私達は森を感じることで、何が変わるのか。そもそも、どうすれば森を感じることが
できるのか。実際のガイドで行っているアクティビティを交えながら、参加者の皆さ
んと一緒に考えました。

※「森と人のあいだ」シリーズの概要、及び本シリーズの開催レポートはこちら。

・第1回(2013年6月19日):「葉っぱに宿るもの,木から見えるもの」
http://www.ecozzeria.jp/events/lab33/0619report.html
・第2回(2013年7月3日):「里山自然主義」
http://www.ecozzeria.jp/events/lab33/0703report.html

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「森」と「五感」

まずは本シリーズ主宰の井上氏より、今回のテーマにもなっている
「森」の特徴、魅力についてお話いただきました。

「この『森と人のあいだ』シリーズでは、経済からこぼれ落ちてきたものに目
を向けてみるということが大きなテーマです。その中でも経済的な価値ではな
い部分での「森」の持つ魅力について考え、さらには五感を使って森を感じる
ことで、森と人との関係を考えてみていただきたいと思っています。

森という言葉は「木」が3つ連なってできています。それぞれの意味を紐解くと、
・生き=木(木の語源)
・生やし=林
・盛り=森(生い茂っている様子)
という言葉から来ているんです。つまり森は「生きの盛り」、これは古代日本人が
捕らえてきた感覚です。「生きの盛り」という名前の如く、森は生命力にあふれて
います。」(井上さん)

人は森にいるとストレスが緩和されてリラックスし、気分が良くなります。それは
科学的にも、また、地球が誕生した歴史や人類の習慣からも明らかにされてきてい
ます。

「森は人のストレスを緩和し、交感神経を良い状態にすることが科学的にも証明さ
れています。森林セラピー等森でのリラックスプログラムが多く存在するのもそう
いった理由からです。また、歴史的観点でこの現象を紐解くと、200~250万年前か
ら森の中で狩猟をし、1万年前に農耕生活に移行したことが明らかになってきました。
人類は200万年間もの間、緑の生い茂った森の中で生き、森に適応してきたんです。」
(井上さん)

また、森にはストレスを緩和するだけでなく、眠っていた感性を呼び起こすような
力もあるそうです。
「人間は高周波の音は聞き取れないのですが、その音が満ちている空間はとても気
持ちよく感じるようです。森では虫や鳥の声、木々の揺れる音など、私が聞き取れ
ない高周波の音が充満しています。その音を浴びることで心身が野生の能力を取り
戻し、感覚が覚醒してきます。また、森は私たちの美意識や精神性に働きかけて深
まっていくということも効果として考えられています。デザイナーやアーティスト
にとって森の体験が原点になっている人が多いということや、「生命の樹」モチー
フは精神性を表す際によく使われることがあります。私たちの感覚の奥深いところ
で木や森が影響を与えているのではと思っています。」(井上さん)

0805 takayama-4

森に行き、森を五感で感じるということ、そのために五感を開いていくこと、それ
はいったいどういうことなのか。本編ではゲストの高山さんから森との関わり方、
遊び方、森の魅力を伺いながら考えていきます。

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NO FOREST, NO LIFE

まず、参加者の方に入場時に配っていた小さなシールについて高山さんから
説明がありました。

「今皆さんの手に貼られているシールは『BIODOT』といって、色によってス
トレス耐性を把握できるというものです。これを貼っていると、自分がどう
いうときに緊張するのか、あるいはリラックスしているのかが分かります。
私が森のガイドをするときは、森に入る前にこのシールを参加者の方に貼っ
ていただき、森に入ってからストレス耐性がどう変化したか感じてもらいま
す。」(高山さん)

こういった遊び心のあるツールも試していきながら、五感で森を感じてもら
うガイドをしている高山さん。ガイドを始めてしばらく経って、単に草木の
名前を教えていくようなガイドでは面白くないと思っていたとき、ある人と
の出会いが高山さんのガイドとしての在り方を考え直すきっかけになったと
言います。

「高崎市にある長坂牧場、ここで食べたアイスクリームが私の考えを変えま
した。今までに食べたことのない味、バケツ一杯食べられる程おいしく、(笑)
とても感動しました。素材の味が本当に良かったので、生産者の方にこの味
の秘密を聞いてみたんですが、当初は飼料を変えたり牛を歩かせたりと様々
な方法を試しましたが全てうまくいかなかった、そして飼料ではないという
考えに至ったそうです。通常牛の乳を搾るときにつける搾乳機を外し、柵も
取っ払いました。自由な環境にすることで牛自身が乳を絞ってほしくて牛舎
へ集まって搾乳機に並ぶんです。そのタイミングで搾乳すると牛にとってス
トレスがなく、かつ非常に脂肪分の高いおいしい牛乳が搾れるとのことでし
た。この話が、自分が考え方を変えなければいけないというきっかけになり
森を楽しい場所にしたいなという思いが強くなりました。」(高山さん)

ここで、参加者に新聞紙が配られ、ちょっとしたアクティビティが。「二つ
に折って、ハサミで角を切って、また折って・・」という高山さんの指示に
従い、参加者の皆さんが新聞紙を折り、ちぎり、ハサミを入れていきます。
そうして出来上がった作品がこちら。

0805 takayama

皆さん見事に異なる柄になりました。
「同じ説明をしたのに、出来上がった模様は一人一人全く違います。これが
「世の中」。同じ話をしているのに解釈が様々あるということを体感してい
ただきたかったんです。」(高山さん)

森に入って感じることは人それぞれ。高山さんが同じ説明をしても感じ方は
多様だし、自由に感じてほしいということを伝えるためのアクティビティで
した。

「森を感じる」ということ

高山さんは、主に草津温泉(標高1200m)のエリアで自然ツアーガイド
を行っています。森に行って高山さんがいつも感じることは「人がいないな」
ということ。
「森に来る多くの方は普段の生活が忙しく、ストレスがたまっているのでリ
フレッシュしたいという思いを持っています。ではなぜ森に来るとリフレッ
シュできるんでしょうか?普段の生活、仕事で一番ストレスがかかることは
人付き合いです。森では人とほとんど出会わないので、ゆったりとした気分
になります。森は疲れたときにほっとできる場所、それは森が自分の『居場
所』になるからだと考えています。疲れたとき、ストレスがたまったときの
自分なりの対処法を知る、自分の居場所を見つけることはとても大切です。
お気に入りの場所で寝ころんで風を感じたり、うつ伏せに寝て大地を感じた
りしてみてください。」(高山さん)

ここで、高山さんがツアーガイドをしながら参加者にする話をしていただき
ました。
「疲れていると色々なことが面倒になりますよね。面倒という漢字は『面
(つら)』が『倒れる」と書きます。そして、だんだんうつむくようにな
ります。これがうつ病の始まりです。逆の言葉が『面(つら)』が『白い
(=太陽に顔が照らされ明るく輝く)』。見上げてみると今まで見えなか
った景色が目に入ります。『面倒』と『面白い』は相対する意味なんです。
日本人は空にあるものに『お』と『さま』を付けて敬意を示してきています
(『お日さま』『お月さま』『お星さま』『お天道さま』)。『お山さま』
『お草さま』『お石さま』とか言いませんよね。空にあるものを大事にする
ためにも、上を向きましょう。上を向いて胸を開くと気分が変わります。そ
れを実感できるのは森なんです。」(高山さん)

セッション中盤で、高山さんが森の中で実践している呼吸、アクティビティ
を実践します。

鼻が詰まっている場合、詰まっているほうの鼻をおさえて、鼻だけでゆっく
り呼吸をしていく。自分のタイミングで、はいたタイミングで指を離して呼
吸をしていきます。

しばらくすると、押さえていた方の鼻の通りがよくなった、との声が会場の
あちこちから聞こえてきました。

さらにもう一つ、全身を使った呼吸法を実践します。
手をゆっくりぶらぶらし、手のひらを上に上げながら息を吐きます、そして
手を降ろしながら息を吸います。次は吐くときに手を横に押し出し、同じよ
うに吸いながら手を降ろします。最後は吐くときに手を地面に。足裏の真ん
中あたりに意識を向けていき、いらない気持ちを押し出していきます。

0805 takayama-1

自分の呼吸に集中し、自分の息に耳を澄ませます。

最後に、会場全体で輪になり、掌をこすり合わせてから隣の人と触れるか触
れないかくらいの距離感で掌を近づけます。体のコンディションが良い方は
掌がくっついていないのに隣の人の気(弾むような感覚)を感じることがで
きます。
0805 takayama-2

普段使っていない感覚に耳を傾けることで、参加者の皆さんも生き生きとし
た表情になっていきました。
そもそも何故五感が刺激されると気持ち良いのか、井上さんからの問いに高
山さんは答えます。
「五感は普段刺激されないからではないでしょうか。私たちが受ける刺激は
視覚からのものが95%です。森に入ると、嗅いだことのない匂い、聴いた
ことのない音にあふれています。普段とは違うものを感じたときに五感が刺
激されて感覚が開くのだと思います。さらに、森に入ると、今まで当たり前
に思っていたことが違っていたことに気付く人が多いのです。興味を引き出
すコミュニケーションを取ると、自分で気付いて顔つきが変わっていきます
よ。」(高山さん)

まずは森を楽しむことから

井上さんがこの「森と人とのあいだ」シリーズを始めることになったきっか
けは、森との関わり方における問題意識がきっかけでした。

「『温暖化防止のために二酸化炭素の吸収源としての森を守ろう』『洪水を
防ぐ森を守ろう』『日本の森を守るために国産材を使おう』という大きなメ
ッセージは、理解はできますが、どうしても森が抽象的な存在になってしま
う。森に対する人々の意識は上がっていますが、パーソナルな『自分』と『
森』との関係性が築けていないと思っています。大きなメッセージはいった
ん脇に置き、まずは森を感じ、楽しむところから始めよう、森が自分たちに
とって必要な存在であるということを感じてもらおう、というメッセージを
伝えていきたいと思ったのがこのシリーズの狙いです。」(井上さん)

井上さんからの投げかけも受け、最後に高山さんから会場に向けてのメッセー
ジを頂きました。
「森で色々なことを考えると、普段とは違った発想や感じ方が生まれてくるよ
うな気がします。森の在り方、自分と森との関わりについて、答えはないけれ
ど、考えていくことが大切です。」(高山さん)

0805 takayama-3

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森に入るということは、森のことを知るだけでなく、自分にとっての心地よい
居場所で森を感じながら、自分の持つ本来の感覚、感性を呼び起こすというこ
と。森は私たちが自分らしくいられるための助けとなって支えてくれる場所な
のだと高山さんのお話を伺って感じました。

森を写真や文字で見て「森についての情報」をインプットするのではなく、ま
ずは森に行き、全身でその場の空気や自然の営みを味わうことから始めてみま
せんか?

3*3ラボ(さんさんらぼ)

環境プロダクト「ものづくりからことづくり」研究会

3R(Reduce:減らす、Reuse:再活用、Recycle:リサイクル)と3rdプレイス(家と職場以外の場所)づくりを目指し、毎月ゲストをお招きしたセミナーを実施します。

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