イベント地域プロジェクト・レポート

【レポート】地域の宝の共有が日本の活性化につながる

第1回ANA総合研究所 地域活性化シンポジウム 11月11日(金)開催

地域の宝を共有し、活性化につなげるシンポジウム

「地域には独自の宝がたくさんあります。それを結果にするためには知恵が必要。今日この場で出し合われた知恵を吸収し、各地域のさらなる活性化につながることを祈っています」

航空事業をはじめ、観光や物流など、地方と地方をつなぐ事業を展開してきたANAグループの調査研究機関であるANA総合研究所が主催した「第1回ANA総合研究所 地域活性化シンポジウム」は、ANA総合研究所 代表取締役社長 岡田晃氏の挨拶によって幕を開けました。

このシンポジウムは、地域活性化に関する講演や先進事例紹介など、地域活性化の"いま"にスポットを当てることで知恵の共有を図り、将来的な各地域の連携、さらなる活性化を目的に行われたものです。

各地域の取り組み紹介では、西諸弁とフランス語を掛け合わせた移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」で大きな話題を呼んだ宮崎県小林市など、北は北海道、南は鹿児島まで18の自治体とその首長がプレゼンテーションを行ったほか、観光・旅と地域活性化をキーワードにした講演も行われました。5時間以上にも及ぶシンポジウムには約120名もの人が参加し、それぞれが地域活性化のためのヒントを探る様子が垣間見られました。

<登壇自治体>山形県酒田市、福島県観光交流局、富山県富山市、岐阜県美濃加茂市、愛媛県宇和島市、高知県四万十市、徳島県三好市、山口県岩国市、熊本県天草市、鹿児島県薩摩川内市、鹿児島県肝付町、宮崎県小林市、青森県十和田市、秋田県大館市、福島県会津若松市、北海道名寄市、山形県鶴岡市、長野県長野市(登壇順)
<講演>一般社団法人ロングステイ財団、ANA総合研究所「温泉ガストロノミー」、【先進事例①】熊本県天草市「民泊」、【先進事例②】島根県益田市(石見空港ターミナルビル株式会社)「萩・石見空港ミツバチプロジェクト」

宮崎県小林市の肥後正弘市長

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地域活性化シンポジウムを丸の内で開催する意義

地域活性化シンポジウムを丸の内で開催する意義

三菱地所株式会社 代表執行役 執行役専務/エコッツェリア協会 副理事長 合場直人氏

なぜ、地方のためのシンポジウムを3×3Lab Futureで開催することになったのか。それは「丸の内での活動は、地域に支えられている」からです。三菱地所株式会社 代表執行役 執行役専務/エコッツェリア協会 副理事長 合場直人氏は次のように話しました。

「今日皆様がお越しのこの地区は、明治の終わり頃に三菱が政府からこの周辺一帯の土地を買い上げた場所です。我々はここを拠点にこれまで120年以上に渡って様々な活動をしてきましたが、いつの時代であっても、都心での活動は地域に支えられてきました。そして現在進めている街づくりにおいても、地域との連携を重視して進めています」

「この場所は全国各地から人々が集まり、いろいろな議論をしていく場所です。ただし、こうした場を作ることは目的ではなく、あくまでも手段です。3×3Lab Futureが皆様の地域活性化の手段となり、新たな何かを生み出し、創造していただく場として使ってもらえればと思っています」

地域活性化について考えるとき、どのようなコンテンツをフックに、どのように人を呼び込むかということに注目が集まりますが、さらにその前提には、活性化を推進する人々とその地域との関係性を深めることが何よりも重要となります。長年に渡ってその醸成に取り組み続けている丸の内でシンポジウムを開催することで、生きた事例に触れることができると、合場氏は言うのです。

移住者増のカギは「ロングステイ」にあり

一般社団法人ロングステイ財団 理事長 弓野克彦氏

この日のシンポジウムでは、ロングステイの推奨・研究をする一般社団法人ロングステイ財団 理事長 弓野克彦氏より、ロングステイの現状と効果、課題についての発表が行われました。

ロングステイとは「暮らすように旅をする滞在型旅行の総称」で、多忙な日常から離れ、1週間以上の長期間、自分の趣味や目的に合わせた空間で暮らし、その地域の人々との交流を通じる余暇活動のことです。現在、国内では846万人がロングステイを楽しんでいると見積もられており、地方にとっては雇用創出や経済波及効果、文化の継承といったメリットが、ロングステイを実践する人にとっては新しいライフスタイルや人間関係の発見、健康寿命延伸といった効果があるとされ、近年注目を集めています。

旅行をきっかけにその地域に移住してもらうことを狙う自治体もありますが、弓野氏は「旅行から即移住ということにはつながりにくい」と話し、「旅行という"非日常"はきっかけであり、次にロングステイによって"異日常"を体験してもらう、そして実際にその地域に移り住み、コミュニティの一員になるというのが移住のプロセスだと考えています」と説明。つまり、移住者を増やすためにはいかに有意義な異日常を体験してもらうことがカギになるといいます。

一方で国内のロングステイには「ロングステイに適した長期滞在施設が少ないこと」「泊食分離型システムの欠如」「地域によっては滞在中に楽しめるコンテンツが少ない」といった、ハード・ソフト両面での課題もあると、弓野氏は指摘。今後、地方への移住者を増やすためには、こうした課題に対して、地域と自治体がどれだけカバーできるかということがカギになりそうです。

経済効果だけではない、地域づくりとブランディング向上に取り組む先進事例

天草市経済部産業政策課 天草宝島戦略マネージャー 平塚正巳氏

先進事例の取り組みとしては、熊本県天草市が取り組む「民泊」の事例と、島根県益田市の萩・石見空港で実施されている「萩・石見空港ミツバチプロジェクト」についての発表が行われました。

修学旅行というと、かつては有名観光地を巡る観光型旅行が主流でしたが、近年は農林漁業家庭に宿泊し、地域の人と触れ合うことで豊かな人間性を養うことを目的とした体験型旅行へとシフトしています。その変化に着目した天草市では、同市が持つ豊かな自然を生かして民泊事業を展開しています。民泊事業に取り組むメリットについて、天草市経済部産業政策課 天草宝島戦略マネージャー 平塚正巳氏は次のように語りました。

「民泊のためには、各家庭のリフォームや、近年多くなっている空き家を最低限の予算で改築して使えばよく、大きな箱物を作る必要はありません。また、受け入れる側にとっても、外部の子供たちと触れ合うことで喜びや生きがいにもつながります。つまり、観光振興だけではなく、地域づくりの要にもなるものだと思っています」

続いて発表された「萩・石見空港ミツバチプロジェクト」は、「環境指標生物であるミツバチとの共生によって自然環境のいい玄関口であることをアピール」「地元を元気にする活動の提供」「地域ブランド工場と国内外の交流人口拡大」を目的に、民間企業が主導しているプロジェクトです。

石見空港ターミナルビル株式会社 代表取締役社長 本橋春彦氏は、「空港でのミツバチ飼育は、アジアでは初のものです。このプロジェクトは、萩・石見空港を有名にして、訪れるきっかけにしたいと考えてスタートしたもの。これからも継続していき、他の地方空港と連携を図っていきたい」と、今後の展開に向けての意気込みを語りました。

石見空港ターミナルビル株式会社 代表取締役社長 本橋春彦氏

シンポジウムの最後には、株式会社ANA総合研究所 代表取締役副社長 小川正人氏によって「温泉ガストロノミーツーリズム」についての発表が行われました。

ガストロノミーツーリズムとは、地域に根ざした食の魅力に触れることを目的としたもので、近年、欧米を中心に世界各国で人気を博している新しいツーリズムの形です。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、「訪日外国人が次に日本に訪れたときにしたいこと」として、「日本食を食べること」「自然・景勝地観光」「温泉入浴」といったことが上位にランクインしています。こうした訪日外国人のニーズを満たすためには、ガストロノミーツーリズムが最適であると、小川氏は語りました。

「日本各地には美味しい食やお酒、素晴らしい景勝地、そして心と体を癒す温泉が数多くあります。訪日外国人の方々が求めているものをアピールすることで、地域の活性化にもつながるのです。またガストロノミーツーリズムは、ウォーキングをしながら地域資源に触れるというものなので、ハードへの投資も必要ありません。長期間のプランを立てることもできるので、先に紹介があったロングステイにも有効なコンテンツだといえるでしょう」

11月には大分県別府市でキックオフウォーキングを実施し、2017年からは本格的に事業を展開、日本全国に「温泉ガストロノミー」を広げていくと、小川氏は力説し、発表を締めくくりました。

株式会社ANA総合研究所 代表取締役副社長 小川正人氏

数多くの自治体、団体の取り組みが発表されたこの日のシンポジウム。自治体の首長や地域活性化の要職に就く人々が一堂に会するという貴重な機会でもあり、「地域の宝、地域の知恵を共有・吸収することで、それぞれの地域の活性化へつなげる」という目的は十分に果たされ、多くの自治体が次のステップへのヒントをつかんだのではないでしょうか。

このシンポジウムをきっかけに、各地域がこれからどのような取り組みを展開していくのか。楽しみです。

懇親会では、各自治体の名産を地域フードプロデューサー・比嘉康洋氏が調理し、参加者に振る舞った


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