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【レポート】ヨソモノが考えるべきは「設問」

丸の内プラチナ大学 ヨソモノ街おこしコース DAY3 7月27日(水)

より深い理解のために

プラチナ大学ヨソモノコースは、地方創生でヨソモノがどう活動するか、そのケーススタディを、具体的に自治体やヨソモノの例を挙げながら考え、実践していく場です。離島モデル、高原リゾートモデル、近郊モデルの3つのモデルを抽出し、各モデルに該当する自治体から関係者が来場、地方創生の課題、取り組みを紹介していくという仕立てになっています。

7月27日のDAY3では、高原リゾートモデルの岩手県八幡平がテーマでした。市の企画財政課地域戦略係長の関貴之氏、"ヨソモノ"としてCCRCに取り組む「オークフィールド八幡平」の山下直基氏が登壇しました。また、「はちまんたい未来への種まきプロジェクト(はちたね)」主宰の田村恵氏もプレゼンテーション、地方と都市の結びつき方について、一石を投じました。

今回のクラスでは解決すべき問題を敢えて絞り込むことはせずに受講生に全体感を提示したのが印象的な回となりました。その分、受講生たちにとっては深い理解と考察が必要となったのではないでしょうか。

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高原リゾートモデルの課題

高原リゾートモデルの課題

安比高原の夜明け "sunrise appi kogen, iwate" photo by kiksuave[frickr]

関氏最初の登壇者は関貴之氏。氏は社会福祉課から現在の地方創生係へ異動した経緯があり、CCRCを地方創生の中心に据える同市で、中心的な役割を果たしている。冒頭「東京でこういうことをするのは初。プラチナ社会構想のことを上司に説明したが、おそらく理解はしてないのじゃないか」と笑いを誘いました。関氏からは、市全体のアウトラインと、大きな枠組みの中での課題の提示がありました。

それによると、八幡平市は2005年に西根町・松尾村・安代町が合併して成立しましたが、以降急激に人口が減少、高齢化率も30%を超えています。安比などの観光地を擁するものの観光客も減少傾向。「スキー客は半減、ペンションは2割くらいが空き家」という印象です。自然環境は「森林面積率が75%と非常に高く」、降雪は多いものの観光地らしく「四季が美しい」という特徴があります。主産業のひとつに花卉があり、「リンドウの栽培は日本一」。切り花で25種、鉢植えで8種のオリジナル品種を扱っており、近年では、雇用創出支援も兼ねてアフリカのルワンダで栽培実験もスタートしているとのこと。

同市は「農(みのり)と輝(ひかり)の大地」をキャッチフレーズに掲げており、ここに立脚した地方創生の総合戦略を立案。「生きがいを感じる 働く場の創造」「自然や絆で、新しい人の流入を促進」「八幡平で縁を結び、次世代を育む」「コンパクトなまちづくりで持続性向上」という4つの柱からなっており、「人口の減少を止める、高齢化率を40%に留めるという目標で、移住定住を促進したい」としています。

しかし、「この4本柱だけではどこの自治体もやっていること」と関氏。同市ならではの地方創生の特徴が「CCRC」です。CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略で、同市では"日本版CCRC"に倣い「生涯活躍のまち」とし、リタイア・セミリタイアの高齢者層の移住定住促進に力を入れているというのです。

独自のCCRC

さらに、同市ならではのCCRCの特徴として、市を「安比高原エリア」「オークフィールドエリア」「大更まちなかエリア」の3つに分けて、段階的な移住定住を進めようとしている点が挙げられます。安比は今もなお主要な観光地として人気を集めており、ここから「情報発信とロングステイ、二地域居住を促進」。続いて登壇者の山下氏らが運営する施設「オークフィールド八幡平」があるエリアで「具体的な移住に一歩踏み出してもらう」。そして最後に市街地の「大更まちなかエリア」で「地元の"原住民"とコミュニケーションを図り、定住の度合いを高めていく」という段階で移住定住を促進することを狙っているそう。

これに対して課題としてあるのは「遠いと思われていること」。岩手と言えば遠いイメージですが、「新幹線とレンタカーで約3時間程度。盛岡までは車で45分」と、決して思われているほど首都圏から遠いわけでもないのです。しかし、岩手=遠いのイメージからなかなか移住定住へのアクセスが伸びていかないという状況。また、交通の面では二次交通の不便さも課題になっています。そしてもうひとつの課題は「空き○○があること」。ペンションや別荘の空き家が増え、荒廃が進んでいる状況が危惧されているそうです。

そして最後に、「ぜひ提議したいと思っていたこと」と、市北部にある田山地区を紹介。それは、ごく普通の地方の、中間山地の集落の姿であり、課題です。「リンドウの産地で、郷土芸能も盛んで、小さなまちなのに飲食店が4軒もある。しかし、高齢化率は52.2%と非常に高く、集落の維持に難しさがある」。観光地のモデルとして取り上げられた同地域ですが、ごく普通の地方の、生活圏の姿もまたあるのです。ひとつの典型例にはめ込んで議論すれば良いのではない、地方課題の難しさがそこにはあります。

「課題は盛りだくさんあって、とても語り尽くせない。もっとディープなネタを聞きたい方は、ぜひ(会場にいる)自治体職員に話しかけてみて」と関氏は締めくくります。自治体が抱える課題をざっくりと投げ込まれ、受講生たちの面持ちも厳しくなりました。

地方と都市の関わり方

「八幡平ホワイト」("岩手盛岡らあめん同好会のサイトより)

田村氏続いて登壇したのは「はちまんたい未来への種まきプロジェクト(はちたね)」主宰の田村氏。はちたねは、農業・商業に従事する「若手プレイヤーの集まり」。「繋ぐ・紡ぐプラットフォーム」をキャッチフレーズに、八幡平の情報発信、各種イベントのプロデュースとともに人材育成にも取り組んでいます。

一昨年には「八幡平には魅力がありすぎるので、丸の内朝大学と連携したモニターツアーを開催」し、「観光業へフィードバック」するといった活動も。また、八幡平では各種イベントを開催していますが、「イベントのリノベーションが必要」と、イベントを再構築するためのワークショップを開催。この種のワークショップは、八幡平市が20年に渡って交流するタイのタマサート大学の学生とも開催しているそうです。

こうした活動の結実のひとつに、地元産品を使ったオリジナルラーメン「八幡平ホワイト」の開発があります。岩手盛岡らあめん同好会とのコラボで開発、地元の菜彩鶏を使った濃厚な豆乳白湯ラーメンで"八幡平の雪山をイメージ"したもの。「安比で観光客や海外からのお客さんにすごく受けている」と田村氏。

そして最後に、「東京のシェフが八幡平の食材で腕を振る」い、来場者に振る舞うイベント「Harvest Restaurant」(2016年は8月6,7日に開催)の紹介をし、「ぜひ八幡平へ足を運んで」と呼びかけ。土地の若年層が、都市部と積極的に関わり、外部の人間を誘引し、地元のアクションを盛り上げている形は、日本各地で徐々に起こりつつありますが、はちたねほど、自発的で積極的な取り組みはあまり例がないのではないでしょうか。丸の内朝大学とのリレーションは受講生たちにとってもイメージしやすく、活動を考える大きなヒントになったようでした。

CCRCを支える民間施設

"オークフィールド八幡平のサイトより

山下氏最後の登壇者、ヨソモノとしてCCRCに取り組んでいる山下氏は、現在所属するアーバイン・ケア・クリエイティブが開設した「オークフィールド八幡平」の挑戦と課題についてプレゼンテーションしました。

氏は東京生まれ東京育ち。東京の大学を卒業後、大手企業に就職。岩手県で展開する同社のグループ企業に転職し、安比に定住することになったそうです。移住定住に踏み切ったの理由はやはり「自然」。「アウトドアが好きで、ある時安比高原で過ごしたときに見えた天の河にびっくりして。"あー、こっちだなー"と思った」ことがきっかけだったそうです。

オークフィールド八幡平は、一言で言えば「サービス付高齢者向け住宅」ということになるのですが、日本版CCRCが「生涯活躍のまち」と謳うように、ここで実現するのは「楽しい老後」であり、「移住者がこれまでやりたかったことを実現する」ための場所という意味において、従来のサ付高齢者住宅とは明らかに一線を画しています。

すぐ分かる特徴として、桑原聡建築研究所によるモダン・シンプルなデザインがあります。「高齢者向け住宅によくあるような、ピンクを使ったような住宅にはしたくなかった」と山下氏。また、住宅内は「バリアフリーではない」とのこと。「人間の能力を維持するためには、バリアがあったほうが良い」という理念で、住宅内には傾斜もあります。この点、近年話題になった、「バリアアリー」の考え方に近いものがあり、興味深いところです。

2015年12月にグランドオープン。現在は10世帯が暮らしています。今後さらに第2、第3工事で拡張し、「農園を作ったり、温泉をひいたりもしたい」と、さまざまなプランを構想中だということです。

"みんなで"取り組むCCRC

"オークフィールド八幡平の内部の様子

そして、八幡平CCRCの基幹施設として、また「楽しい老後」のための活動には、「3本柱+1を掲げている」と山下氏。それは、農業、生涯学習、芸術文化を3本柱にしつつ、「結果として、若者支援に繋がる体制」という「プラス1」を合わせた4本柱です。オークフィールド八幡平の基本姿勢に、「さまざまな企業・団体とパートナーシップを組む」がありますが、これらの取り組みも他団体とのアライアンスのうえに成り立っています。

農業では(株)マイファーム、前出のはちたね。「八幡平には休耕地、耕作放棄地も多い。楽しみながら農地開拓ができれば」。今年6月からは農園の開発などにも着手。しかし「新規就農というと本格的にやらないといけないイメージがあるが、まずは徹底的に楽しもうというところからスタート」したい考えで、この点、新規就農にハードルを感じている移住希望者にはありがたいところでしょう。オークフィールド八幡平内の農園もそのための第一歩として機能するそう。

生涯学習では、岩手県立大学社会福祉学部と連携し、遠隔授業を展開しています。これは高齢者側が学ぶだけではなく、「高齢者のスキルや記憶を財産として残していこうという思い」から、学生が高齢者に学ぶ授業も行っています。また、芸術文化の面では、「空き家率が20%になる別荘やペンション」を、「アーティスト(芸術家)と連携して再生する」プロジェクトに着手しているそうです。

そしてそこから生まれる「プラス1」。
例えば若者による起業チャンスなどがそれに当たります。「高齢者の方々の取り組みが、若者にとってのビジネスチャンスになる」と山下氏は言います。すでにベンチャー、若手企業による新規事業の創出が進められており、施設内で使用できるワークシェアリングシステム「Time to work」が実際に稼働しているそうです。

チャンスと課題

こうして活動をスタートしたオークフィールド。「開業後に見えてきたチャンス」として、まず「Cターン」があると山下氏。「観光に来て、リピーターになり、長期滞在を経て移住へとつながっていくCターンの流れが見えてきた」。また、別荘所有者の高齢化というネガティブな要素が逆にプラスにも作用します。「別荘で1人で暮らす不便のある人が、オークフィールドのような集合住宅を求める」可能性があるそうです。同様に半数のペンションが廃業してしまったネガな状況を、「ストック活用のためにオークフィールドを実験場として使う」と、ポジティブな方向に転化しようと新たな取り組みも始めました。

一方で課題もクリアに見えてきました。

まず、八幡平特有の課題として「雪国イメージ」がネガティブに働いていることが挙げられます。「マスコミは雪の大変さばかり報道して楽しさや美しさは報道してくれない」。また、移住が具体化したことから見えてきたさまざまな「移住障壁」。所有不動産処分の手間ひま、家族からの心配、荷物が多い・捨てられないといった、移住に伴う細々とした問題が障壁になっているそう。

さらに、山下氏が「一番の課題」と掲げるのが、関氏も挙げていた「二次交通の問題」。地方は車社会ですが、高齢者には能力低下や免許返納がリアルな問題になり、二次交通の重要度が一層増してきます。「自動運転が発展してきたが待っていられない」、そんな状況なのです。そのほかにも情報発信の不足や、金融機関の理解が得られない(これがないとビジネス的な拡大に難が生じる)といった課題もあるそうです。

そして最後に、アメリカの詩人サミュエル・ウルマンの『青春の詩』を引いて、オークフィールドの目指しているのが、「青春であり続ける場を提供すること」であると深い余韻を残して締めくくりました。

目指すべき日本版CCRC

これに続いて、講師の松田氏から改めてCCRCについての解説と講義がありました。 松田氏はまず、日本の「50/55問題」が背景になっていることを解説。それは「55兆円の税収に対して、医療・介護費が50兆円」という財政上の問題です。これに対しては、税収を上げる経済対策とともに、医療費を減らすための努力もしなければなりません。CCRCはその両軸が交差する地点にあるものなのです。

そして、アメリカ・ニューハンプシャーではダートマス大学と連携し400人の高齢者の町で300人の雇用創出に成功した事例を紹介しましたが、「アメリカ"では"、ヨーロッパ"では"こうだ、というような"ではの守"からは脱しなければならない」とし、日本版CCRCを「そんな難しい言葉ではなく、分かりやすいように、"生涯活躍のまち"と名付けた」ことを語ります。そして、アメリカではクローズドなコミュニティで、高齢者を対象にしていますが、日本版CCRCは「地域に開かれたコミュニティで、多世代が関与する形が望ましい」と松田氏。

また、アメリカではわざわざCCRC用の施設を建設しましたが、「日本には、廃校になった学校など、豊富なストックがたくさんある。これらを使うことで初期投資も抑えられる」と、地方課題をリソースに転換する"逆転の発想"で臨むことの重要性を示しました。

そして、「CCRCでは施設などのハードばかりではなく、コンテンツやプログラムなどのソフト面、それを支える仕組みや精度が重要」であると"因数分解"して見せ、「今後はあらゆる場所でヨソモノが必要になるだろう」と、会場に集まったヨソモノ志願者たちに、求められている要素、需要度の高さを語りました。

深まる理解と考察

この後、登壇者への質問を経て、会場内でワークショップも行いました。フリーテーマで気付きのシェアから始まりましたが、テーブルによって話し合われる内容が多岐に渡っていました。

あるテーブルでは各々が持つリソースを開示し、具体的なビジネスプランを検討。またあるテーブルでは八幡平市が持つ課題に対してどうアプローチするか、その方法論を考察するところもありました。課題がまるっと渡され、「何をすべきか、考えるべきか」が受講生に預けられていたため、受講生たちの身の入り方もいつもとは違っているようでした。このワークはワールドカフェ方式で行われ、話し合われた内容は最後にシェアされています。 ワークショップの後は、恒例となった地元産品を使った懇親会も行われ、さらなる交流が深められたようでした

かかる期待は大きい

関氏は、イベント後の取材に答えてCCRCにおける行政の役割が「ソフト面での対応」にあり、さらに「CCRCの本当の目的は、CCRCを入り口にして、人の移動と新しいビジネスが起こること」であると語っています。これは、山下氏が掲げる「プラス1」と同じ考え方。CCRCをきっかけにして、若年層を含む多くの世代の活動が活発化することを目指しているもので、「農業に限ったことではなく、いろいろなビジネス展開が可能になるだろう。行政ではそんな動きもサポートして行きたい」としています。そして、このヨソモノのクラスに期待することとして、「シティプロモーションが弱かったので、まず知ってもらうことが大切」で、1人でも「地方の課題にアクセスしてくれる人がいてくれれば」と期待を語りました。

そして先輩ヨソモノである山下氏に、改めてヨソモノの可能性を訊くと、真っ先に「地元の人には気付けない魅力に気付くこと」と勢い込みます。「なんの変哲もない牧草地に価値を見出す地元民はいない。ヨソモノでなければその美しさには気付けないだろう」。 もちろんヨソモノならではの苦労もあります。ヨソモノに対するアレルギーや反発。しかしその一方で、一度受け入れてくれれば「実に根気強くお付き合いしてくれる」のも地方の特質だと太鼓判を押します。移住して20年弱。「そろそろお互いにいたわりの目で見ることができるようになったんじゃないかな」と、遠い目で頷く姿が印象深い。

関氏・山下氏とも「ヨソモノならではの視点と発想に期待したい」と言葉を募らせます。なんらかの形で、受講生たちの声を地元の面々へフィードバックしていくことが期待されているのでしょう。

もっとリアルに

今回は、実に雑駁に現地の状況と課題が受講生たちに手渡されたようでした。ある受講生は「どう(課題に)アプローチするのか、その取っ掛かりからしっかり考えたい」と悩んだ表情を見せます。「何をすべきか?」という"What"を提示してしまうことは、実は簡単。優秀な受講生が集まっているために、アイデアや解決策はいくらでも出てくるでしょう。しかし、今回受講生が立たされた場所は、その設問自体を考える場所でした。今後、宿題が出され、現地への視察も部分的に行われます。これまでは漠然としていたあるべき「ヨソモノ」の姿が、少しずつリアルになっていくかのようでした。


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