「次世代型オフィス」をテーマに掲げた本フォーラムは、大きく2つのプログラムで構成され、第一部では、「次世代型オフィスをつくる共同開発プロジェクト」をテーマに、三菱地所株式会社 取締役 常務執行役員の谷澤淳一氏と株式会社トヨックス取締役会長の宮村正司氏による対談セミナー、続く第二部では、ジェグテックに掲載されている中小企業4社による自社製品のプレゼンテーションとその内容に基づくワークショップが実施され、50名近い参加者による密接な意見交換が行なわれるとともに、具体的な事業協力の可能性などが検討されました。
近年、大企業は高い技術力を持ったパートナー企業探しに苦労している一方で、中小企業は販路の開拓に悩みを抱えています。第一部は、三菱地所とトヨックスが共同開発した「天井輻射空調パネル」について、大企業、中小企業それぞれの立場から共同開発のプロセスや課題などを対談形式で振り返ることで、大企業と中小企業の協業の可能性を探るセミナーです。
対談は、トヨックスの宮村氏による商品開発の経緯説明からスタート。トヨックスは、もともと工業用・家庭用ホースで国内トップのシェアを誇っていましたが、今から約30年前、ホース材料の塩ビがダイオキシンを生成する可能性が指摘されたことを受けて事業転換を余儀なくされたとのこと。「新事業を模索する中で、"これからは環境ビジネスだ"との結論に至り、ヨーロッパの環境先進企業約80社を視察した」と宮村氏。その中で、「弊社の技術を活用できるものに、冷温水の輻射熱を応用した冷暖房システムの輻射空調パネルがあった。それを商品化したが、日本では当初、全く受け入れられなかった」と宮村氏は振り返りました。
一方、三菱地所の谷澤氏は、「私たちはビルを建ててそれを貸し出すというビジネスを営んでいることから、ビル内で働く人々にとって、いかに快適な空間を提供し、知的生産性の向上や業務の効率化を図れるかということについて、常々、頭を悩ませていた」と述べました。
その後、話題は谷澤氏と宮村氏の出会いへと移ります。それぞれに解決策を欲していた両者が出会ったのはある勉強会の席上で、そこで宮村氏から天井輻射空調パネルについて説明を受けた谷澤氏は、そのアイデアと技術に感心し、「すべての人が快適に過ごせるオフィスづくりに欠かせない技術だと感じた」と語りました。トヨックスの本社を訪れて輻射空調の効果を体感した谷澤氏は、すぐさま実証研究に着手。データを収集し、省エネ性能と快適性能の両立効果が証明されたため、複数のビルへの導入に踏み切ったという経緯が紹介されました。対談セミナーは、「どんな商品でも、本当にそれを必要としているお客様に巡り会えるかどうかがカギ」(宮村氏)、「世の中にはさまざまな技術を持った会社が存在するが、その存在を認知して協業できる仕組みを作ることが大事」(谷澤氏)という問題提起で締めくくられました。
第二部では、ジェグテックに掲載されている企業のうち、オフィス関連の製品やサービスを提供している「株式会社アコースティック・アドバンス」「株式会社井之商」「株式会社システム空調」「株式会社有紀」の4社による自社製品のプレゼンテーション、そして、プレゼンされた商品や技術と参加者のアイデアをコラボレーションさせることで、新たな研究開発や事業創出の可能性を模索するワークショップが開催されました。
50名近い参加者は、それぞれ5つのグループに分かれ、「製品には自信があるが、販売に結びつかない」「顧客の心に刺さるプレゼンができない」「コストが高い」といった4社の課題に対して、販売促進の方法や解決の方策、打開のアイデアを出し合い、最後に、とりまとめた意見を代表者が発表。約40分という短いセッションだったにもかかわらず活発な議論が交わされ、「すぐに事業化できるのでは」と思えるような具体性の高いアイデアも散見されるなど、参加者にとって有意義なワークショップとなりました。
プレゼンテーションされた4社の製品は、いずれも市場性の高さを感じさせるものばかり。日本の全企業数の99%以上は中小企業と言われますが、今回のセッションを通じて、あらためて日本の中小企業の技術力の高さとそれが秘めるポテンシャルの大きさを感じさせるイベントとなりました。