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【レポート】新たな「オープンイノベーション」のカタチ

事業創造TOKYO LEAGUE ―視点を変えて(リフレーミング)でビジネスを作る― 10月28日開催

「イノベーション」は規模の大小に関わらず企業や組織が常に取り組むべき課題。他企業との連携、アライアンスによる「オープンイノベーション」が必須とされている昨今、今までの"名刺交換会"とは違う、イノベーション意識を持ったマッチングイベントが多数開催されているほか、オープンイノベーションの必要性を説く、マインドセットのためのイベントも巷間に増えてきたと言えるでしょう

後者をオープンイノベーションへ向けた「ver.1.0」だとすれば、前者は次のステップへ進むための「ver2.0」と言えます。そして、10月28日に開催された「事業創造TOKYO LEAGUE」は、その間をつなぐ「オープンイノベーション 1.5」とも言うべき性格を持つイベントだったのではないでしょうか。それは一歩踏み出したい企業の背中を押すものであったに違いありません。

主催は日本政策金融公庫、中小企業基盤整備機構、エコッツェリア協会の3社。TIP*Sで開催された今回のイベントの冒頭ではおそろいのポロシャツを着用した3社のメンバーが挨拶。ファシリテーターを務めた臼井清氏(志事創業社)は、「いろいろな立場の方が"丁々発止"とやりあう場なので"リーグ戦"としている。話を聞くだけでなく、ぜひ合間合間に意見交換を」と呼びかけました。

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イノベーションの潮流

イノベーションの潮流

今回の登壇ゲストは、日経BPクリーンテック研究所主任研究員の菊池珠夫氏、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社代表取締役の中西敦士氏、キリン(株) CSV本部 ブランド戦略部 キリン食生活文化研究所所長の太田恵理子氏の3氏(登壇順)。シンクタンク、ベンチャー、大企業というそれぞれの立場から事業創発に向けた現状とその分析や課題を述べました。参加者の内訳も大企業、ベンチャー・中小企業、コンサル、投資家など多岐に渡っています。各登壇者からのトークの合間には、短いテーブルワークを行い、参加者同士で意見を交換し、内容の掘り下げを行いました。

菊池氏最初に登壇した菊池氏からは、「新しい価値を生み出すために」と題して、日経BPグリーンテック研究所が事業創造のために行っている事業を解説するとともに、新規事業開発に成功している事例としてアメリカのGeneral Electric社、コムトラックス、コニカミノルタ、東レなどの事例が紹介されました。

それによると、同研究所では、企業を招いての「スマートシティサービス研究会」、「地域創生研究会」などの複数の研究会を発足し、中には「イベントとしては成功したが、話を聞くだけで満足してしまって、なかなかビジネスを生み出そうとする人が育たなかった」という研究会もあったそうですが、現在は企業間コラボによる事業創発が始動し、自治体と連携したアクションに取り組んでいます。

また、大企業の事業創発の成功事例に関し、例えばGEの場合は「"その時代に世界が求めているものを作りなさい"という創業者のエジソンの言葉を守り」、事業ドメインを柔軟にシフトしてきたことや、コニカミノルタが「イノベーションは辺境から起きる」として、世界5カ所にビジネス・イノベーション・センターを設立したことなどを紹介。「経営者は危機感を持て」というコムトラックス(コマツ)の野路國夫会長の言葉を引きながら、主に経営陣側のマインドセットの有り様について言及しました。

また、大企業の事業創発の成功事例に関し、例えばGEの場合は「"その時代に世界が求めているものを作りなさい"という創業者のエジソンの言葉を守り」、事業ドメインを柔軟にシフトしてきたことや、コニカミノルタが「イノベーションは辺境から起きる」として、世界5カ所にビジネス・イノベーション・センターを設立したことなどを紹介。「経営者は危機感を持て」というコムトラックス(コマツ)の野路國夫会長の言葉を引きながら、主に経営陣側のマインドセットの有り様について言及しました。

ベンチャーの面白さと難しさ

続く中西氏は、排泄のタイミングを知らせるウェラブルデバイス「D Free」を開発するベンチャーの経営者。クラウドファンディングのReady forの購入型で1200万円を超える資金を獲得し、現在は5つの施設で導入実証実験に取り組んでいます。D Freeは現在は高齢者施設を対象にするもので、排泄は食事とともに人間の尊厳を守る課題であるという認識が高まりつつある昨今、社会的な注目度も高くなっています。

中西氏中西氏からは、D Free開発に至った経緯を青年海外協力隊やアメリカ留学経験での「便」にまつわる自己エピソードが紹介されました。また、開発のプロセスでは、直腸に水風船を挿入し、超音波計測の方法や便意の出方などを研究した苦労話も紹介。そして、「2013年には大人用おむつが子供用のおむつを逆転した」ことや、「全世界で、高齢者のほか、車いす利用者や過敏性大腸炎、便秘症などで5億人以上が排泄に悩んでいる」ことなどの状況のアウトラインを整理します。

また、介護施設でのD Freeの導入実証実験を紹介するとともに、D Freeの価値のひとつとして、「介護における排泄物の処理が、"作業"から"サービス"になるのでは」と期待を語ります。現状、介護施設での排泄物処理は、用を足したおむつを決められた時間に処理するというもので、介護従事者にとっては負荷の多い作業であるとともに利用者にとっても良いコンディションとは決して言えない側面もあります。D Freeを使うことによって、「画一的作業から、個別的な介助となって、利用者にとっても気持ち良いものになるのではないか」と中西氏は話しています。

そして最後にイノベーションに向けた秘訣を「世界を面白くするという発想だと考えるといいのでは」と語り締めくくりました。

大企業の論理と課題

最後の登壇者、キリンの太田氏からは、大企業ならではのイノベーション創発の取り組みと課題が語られました。キリン食生活文化研究所が取り組んできた事例に、民間企業同士(特に大企業)で取り組む「リビングの未来研究会」、ベンチャーとの取り組みであるASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)、そして公的セクターと取り組んだ「『食』を考えるKIRIN・東京大学パートナーシッププログラム」があります。

まず「リビングの未来研究会」では、「共通する関心事を持つ人が集まり、気付きを持ち帰るゆるやかなつながり」で、「リビング」とは言いながらも家の中にかぎらず、外にも飛び出し、新しいビジネスの手がかりを探し、思索を深めるワークに取り組んだことを紹介。いずれも名だたる大企業からの参加で、直接事業領域はかぶらないものの、研究会内部からコラボが生まれ、新事業開発を目指しているそう。

ASACでは、太田氏がベンチャー支援のメンターを務め、短期集中型の事業創造ワークを展開しており、キリン内部でもベンチャー支援のKIRINアクセラレーター2016が立ち上がりましたが、「東レやソニーのようなところにまで行けてない」と太田氏。また、過去に実施した東大との取り組みでは、「身近な食卓から食環境の未来へ」をテーマに調査やワークショップを行ったことが語られました。

これらの取り組みにおける課題として、大企業間では新規事業の種が持ち上がっても自社トップを説得できないケースが多いこと、ベンチャーとのコラボでは、大企業と時間軸が違うことや、ベンチャーが求める「早期の失敗」を企業側が厭うことなどが指摘されました。また、公的セクターとの関わりについては、想いを共有する人が異動や組織改変でいなくなってしまい、継続できないことなどが挙げられています。

そして、オープンイノベーションの成功には、「想いの共有」「自分事として推進するプロデューサーの存在」「素早く小さな成功を積み上げること」が必要ではないかと語り、改めてベンチャーを含めた多企業でのアライアンスを組むことの必要性を訴えて締めくくりました。

やる気とアクションを喚起

途中途中で行われたテーブルワークも、最初は初参加者同士でやや緊張気味でしたが、プレゼンに触発されて徐々にヒートアップし、熱心な意見交換が見られています。そして、その後の登壇者、会場を交えてのパネルディスカッションでは、主に中西氏の取り組みを軸に、世界で日本のベンチャーがどう戦うべきかという議論や、大企業とのアライアンスの可能性について熱心な質疑応答が交わされました。

今回の事業創造TOKYO LEAGUEでは、参加者の"レベル"の幅が広いのが特徴のひとつであったようです。すでにマッチングイベントにも多く参加している人もいれば、初めてこうしたイベントに参加した人もいます。それぞれのレベルに応じた楽しみ方と理解の仕方があり、持ち帰るものも一様ではありませんが、そうした人々が交じり合うことがひとつの成果となったと言えるでしょう。

初めて参加したというある中小企業の経営者は、まさに現状の経営について課題意識を持ち、他企業との連携を検討し始めたところで、「(今日のような)さまざまな立場の人の意見を聞き、懇親会で交流できるというのは大変な刺激」と次のアクションへの意識を高めていたようです。

次回開催に向けて

主宰する日本政策金融公庫の小池氏は、「立場の異なる人からさまざまな意見が出て、共有できたことが大きな収穫。他の企業とコラボしたいが、どうやったらいいか分からないという人に良い出会いの場が提供できたのでは」と振り返り、次回は来春そうそうにでも開催したいと話しています。

同じく中小機構の岡田氏も「大企業とベンチャーの"対比"を超えて未来価値を作るための場。共創のための、最初の一歩に向けて相互に学び合うことを目指したい」と成果と期待を語りました。また、ファシリテーターを務めた臼井氏は「イベントとして面白いインプットができた回となった。次回は"リーグ"としてのアクションを加速するための仕掛けも考えたい」と次回への期待を話しています。オープンイノベーション1.5として、どんな"リーグ戦"になるのか、次回開催に期待が高まります。


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