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【レポート】京都×東京「二都物語」始まりの予感

2018年度エコッツェリア総会 2018年6月20日(水)開催

8,9,10

今、東京駅周辺で「京都」が盛り上がっています。2016年に「京都大学東京オフィス」が品川から新丸ビル10階に移転、2017年には京都府下10大学連携による「京都アカデミーフォーラム」が東京オフィスに隣接して開設、そして今年は東京駅八重洲口の京都館(3月に閉館)のリニューアルプロジェクト「京都館プロジェクト2020」が立ち上がるなど、東京駅周辺と京都の連携がさらに密になろうとしています。

こうした動きを受け、エコッツェリア協会でも京都との連携を深めようということで、6月20日に行われた2018年度の会員総会では、京都大学経営管理大学院 経営研究センター長で京都市伝統産業活性化推進審議会 会長の若林靖永氏をお招きし、京都をテーマにご講演いただきました。キーワードは「伝統産業都市・京都」です。氏からは京都の伝統産業の課題と挑戦についてお話を伺い、、その後、恒例となったエコッツェリア協会理事長の伊藤滋氏とのパネルディスカッションで、京都と東京の連携の可能性など議論を深めました。

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「伝統産業都市・京都の課題と挑戦」――若林氏講演

「伝統産業都市・京都の課題と挑戦」――若林氏講演

▼壊滅的状況の伝統産業
若林氏は経営学、とりわけマーケティング、流通を専門としており、2006年に設立された京都大学経営管理大学院では、設立時に尽力したほか2016年4月から2018年3月まで大学院長も務めました。

氏はまず、京都の伝統産業の今後を考えるために現状を整理。一言で言えば「壊滅的状況」と指摘します。統計で見ると伝統産業のピークであった1960~70年代との比較上、西陣織・京友禅・京焼などいずれも市場規模は10分の1以下~20分の1に下落し、産業人口は軒並み5%以下という状況です。
「高品質のものが大量生産され、コモディティ化したところに日本の伝統産業の限界があった。逆に現在は手作りの良さが見直される傾向が生まれているが、産業としては壊滅的だ」

▼「つなぎ手」の必要性

そんな状況の中でどんな未来を築こうというのでしょうか。そのヒントは長年に渡り権力の間際にあった京都ならではの「作り手と使い手の緊張関係」にあると若林氏。例えば茶の湯の道具は「おもてなしの総合プロデューサー」たる主人と、道具を作る職人のせめぎあいの中で磨き上げられてきたもの。

「作り手は、使い手を『分かってない』と言うし、使い手は作り手に『これじゃダメだ』と言う。つまりお互いが目利きで、育て合う関係にあったとも言える。現代ではこのような関係性がガタガタになってしまったことに問題の一端がある」

使い手を知らない作り手、モノの使い方を知らない使い手。そのような作り手と使い手をつなぐ関係性が欠如していることに問題があるとする。例えば現代の職人は消費者を知らない。流通も知らない。一方で消費者は、親から子へと継承されてきた着物のようなモノの価値、使い方や利用法などを見失ってしまっている。こうした関係性を補完することが伝統産業の復興の糸口になる――つまり、有効に機能する「つなぎ手」が必要ということです。

また、京都市が平成17年に制定した「京都市伝統産業活性化推進条例」の中で「暮らしの中に息づく多様な文化」という文言で示されているように、京都を京都足らしめているのは、ものづくりの現場が生活の中にある、その距離の近さです。それこそが京都の持つ産業力でありイノベーション力。つなぎ手は離れていく距離を縮め、京都の産業、生活を活性化する役目を果たすことになるのです。

▼東京と京都をつないでいく

その後プレゼンでは、いくつかの「つなぎ手」を紹介。例えば株式会社和えるは、日本各地の伝統工芸品を現代にマッチするように再定義し販売するプロデュースなどを手がけていますが、「和えるの素晴らしい点は、伝統産業だからといった理由ではなく、一貫して使い手の立場から日本の伝統工芸品を評価していること」と若林氏。これがまさに作り手と使い手を「つなぐ」ということ。この他、京和傘「日吉屋」、デザインブティックのCEMENT PRODUCE DESIGNなどを紹介。また、プロデュース人材として電通京都支社の各務亮氏などの例も取り上げました。

そして最後には、専門とするマーケティングの観点から、京都の伝統産業が持つベンチャー精神を分析。それによると、京都では1000年に渡って政治権力と間近に相対してきたことから、常に「自分が何者か」という問いかけから産業が興っているそうです。自己定義をし、パートナーを探し、市場を創出するもので、「昔も今も京都の産業を進める原理になっている」と解説。これは現代の産業が市場分析し「マーケットイン」していく思考とは「真逆の方向」であると若林氏。また、サラス・サラスバシー(ヴァージニア大学、ダーデン・スクール・オブ・ビジネス教授)が提唱する「エフェクチュエーション」の概念に近いもので、現代ビジネスでも効力のある手法であるとしています。

「これは東京にはない思考法ではないか。単純な二項対立では語れないかもしれないが、東京と京都の対比のひとつとして、今後の連携を考えるヒントになるのではないか」 若林氏はそう話し、講演を締めくくりました。

東京と京都、次の一手へ

その後は、エコッツェリア協会理事長の伊藤滋氏がマイクを持ってのパネルディスカッションとなりました。

まず伊藤理事長からは、京セラ、島津製作所、村田製作所など「新しいものを作り出すすばらしい組織」があるが、「それは伝統産業に見られる京都の性質と通じるものがあるのだろうか」という問いがありました。これに対し若林氏は「根底はつながっている」と回答。それは「独立心」と「進取の気性」です。権力におもねることなく独立を保った職人の姿は、企業グループに属すること無く独立独歩する企業に通じます。また「京都は狭い町なので、広い世界に打って出るという伝統的な気風がある」としています。

次に出た話題が「ミラノ」でした。
理事長は、京都とミラノに似た部分があるのではないかと疑問を投げかけます。
「ミラノは職人が小さな組合を作り、社会や市場の変化に敏感に対応してきたことで、ブランドを育て、ファッション、文化の町として成長することができたのではないか」(理事長)
これに対して若林氏は、単純なミラノと京都の比較には違和感はあるとしつつも、「ミラノの機能は、室町の問屋街の機能に通じるものがあるかもしれない」と述べています。
「イタリアは各地のさまざまな技術と素材がミラノに集積された。そこから選りすぐりのものが結果現在のハイブランドに成長している。室町も呉服問屋が居並び、呉服が集積され、商人が集まる町になり、流行の発信源になった。室町とミラノの機能はよく似ているといえるかもしれない」(若林氏)

この回答を受けて伊藤理事長は次のように述べています。
「ミラノに負けない1100年の京都の歴史は、暮らしの中に息づく職人のクラフトマンシップが育ててきたもの。このような伝統産業があり、職人がいるから、どんなものも京都に入ると"京都化"してしまうのだろう」(理事長)
また、「東京と京都」という2つの特徴ある都を持つ国は世界にも例がないと指摘します。
「ニューヨークとボストン、パリとリヨン、ローマとミラノ。似たような例はあるが、京都と東京ほど特徴づけられた二都がある国はないのではないか」(同)

このあたりに、今後東京と京都の連携に関するヒントが隠されていそうです。伝統産業の集積地としての京都が、もうひとつの都の東京と結びついたときにどんな世界が開けるのか。東京が他地域や地方に対して「やってあげる」のではなく、「対等な関係」を築く必要があるとされている今、京都とのリレーションは今後を占う試金石のひとつと言えそうです。

食材でも東京-京都連携

総会の後は、おまちかねの懇親会。この日腕を奮った比嘉康洋シェフは「日本で一番地方創生に関わっている」と自認するほどで、今回も京都から取り寄せた厳選食材でこだわりのメニューが提供されました。

メニューの一部を紹介すると、「からし豆腐 香味野菜を添えて」「つまみ湯葉の刺し身」「宮津漁港からの旬魚の黒ちくわ炙り」「宮津漁港からの伸子イカの一刻干しをパスタに」など、多様なレパートリーで揃えました。
また、お酒も、京都醸造から地ビールを3種、京丹後の8つの蔵の地酒10種など貴重なものが並び、参加者もメニューに合わせた飲み比べを楽しみながら、様々な話に花が咲きました。

東京と京都、2つの都がお互いの魅力を活かして連携し、世界中から注目される、、そんな新しい「二都物語」の始まりと、エコッツェリア協会の今後の活躍にご期待ください。


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