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【レポート】世界の食を見つめる「FIP」、日本の食を考えるDFI

フードイノベーションプログラム×DFI 2018年6月18日(月)開催

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大丸有エリアの専門家や飲食店、この地域で働くワーカーと、農業等の生産者が連携して農作物や商品の価値を向上させる「大丸有フードイノベーションプロジェクト(DFI)」。6月18日(月)、イタリアの「フードイノベーションプログラム(FIP)」に取り組む人々を3×3Lab Futureに招き、両者の活動や、世界の農業・食に関する状況などについて情報交換会を行いました。

そもそもDFI設立にあたっては、FIPからもインスピレーションを受けています。FIPはイタリアのモデナ・レッジョ・エミリア大学大学院の修士課程のプログラムで、産官学連携で食のイノベーションを推進することを目的としています。イタリアに限らず世界各国から様々な分野の専門家が集まって未来の食についての調査研究に取り組んでおり、毎年世界10か国を視察。日本は京都、今年は東京を視察、縁あって今回のDFIとのセッションとなりました。

DFI側からは6次産業化やJAグループの取り組み、DFIの概要について、FIP側からは彼らの活動や世界の農業事情などについてプレゼンテーションが行われました。モデレーターは、関東学園大学教授、東京農業大学客員研究員、丸の内プラチナ大学アグリ・フードビジネスコース講師の中村正明氏が務めました。

モデレーターを務めた中村正明氏

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日本の未来を見据えて6次産業化に取り組むJAグループ

日本の未来を見据えて6次産業化に取り組むJAグループ

「日本の農業の現状と6次産業化」についての講演を行った原澤恵太氏

まず登壇したのは、JA全中の原澤恵太氏。原澤氏は「日本の農業の現状と6次産業化」と題し、JAグループが6次産業化にどのように関わっているかを紹介しました。

「日本のGDP(538兆4458億円)のうち、農業が占める割合は約1%(5兆2399億円)。食料自給率は生産額ベースで68%ですが、カロリーベースではわずか38%。つまり6割を輸入に頼っています。さらに、農業就業人口のうち7割近く(120.7万人)が65歳以上の高齢者の方が担っています」と、冒頭で数字を交えて日本の農業の現状を説明。そのような状況下で、氏が属するJAグループは日本の未来を見据えて6次産業化に取り組み、農業を含む日本の食の改善・改革を推進しています。

そして、FIPの4つの研究テーマに合わせて、JAグループの取り組みを紹介。
(1)フード・ケアと将来のフード・サービス
(2)タンパク質の未来
(3)スマートシティーにおける農業革新
(4)展開可能な持続可能性と循環するシステム

(1)は、日々の多忙さや家族構成の変化などによって食に対する需要が変化している時代の中で、食品加工業への参入や、外食店向けの業務用農産物の生産、新たなパッケージ商品の開発などを推進し、消費者ニーズに柔軟に対応していくというものです。

(2)の「タンパク質の未来」とは、輸出マーケットが拡大しているタンパク質(食肉)に関する取り組みです。例えば輸出マーケットを拡大することで所得を増大したり、代替肉の開発や動物福祉への取り組みなどを行っています。中でも、今、世界的に注目を集めている代替肉に関しては、福井県を拠点に活動する株式会社マイセンへの出資など、JAグループとしても力を入れているという話がありました。

(3)の「スマートシティにおける農業革新」とは、都市農業の推進や植物工場への投資などを実施し、前者においては新鮮な農産物の供給の実現、防災空間としての役割の付与、メンタルヘルスの向上といったことを、後者においてはは価格の安定化と生産効率の向上といったことを実現するものです。

(4)の「展開可能な持続可能性と循環するシステム」とは、日本における646万トン(2015年時点)のフードロスを減らすシステム構築への取り組みです。例えば愛媛県のJAおちいまばりグループでは、売れ残り品や規格外品をパウダー化する機械への投資を行い、新たなパッケージ商品を作り、フードロスを減らすとともに、売り上げをアップすることに取り組んでいるそうです。そして「このようにフードロスを考える上でも6次産業化は有効」とし、講演を締めくくりました。

「食のイマ」への意識の高さを伺わせる

「農林中央金庫が取り組む食と農業ビジネス」について紹介した左口貴規氏

次に登壇したのは農林中央金庫の左口貴規氏。左口氏からは、農林中央金庫が取り組む食と農業ビジネスについての紹介が行われました。

「日本国内には多くの金融機関がありますが、農林中央金庫はその中でも、農林水産業と食と地域の暮らしを支えるリーディングバンクになることを基本方針とし、様々な取り組みを行っています」と左口氏が語るように、同金庫は農林水産業の共同組織を基盤とし食や農業の発展に寄与する全国金融機関です。具体的には、生産基盤の集約化・効率化や農業の担い手の組織化・法人化のサポート、低コスト生産化や販路開拓等の高付加価値化に取り組み、そうした活動を通して一次産業従事者の所得を増やすサポートを行っています。

例えば、海外に販路を持つ食品卸会社と生産物を輸出したいというニーズを持つ生産者等を結びつける取り組みや、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県内のイチゴ農家の再興プロジェクトサポート、畜産農家の経営管理を高度化するするためのクラウド型システムを開発する企業向け出資などの事例を紹介しました。

左口氏の講演の後にはモデレーターの中村氏が登壇。大丸有エリアの特徴やDFI主催者であるJA全中・農林中金・三菱地所・エコッツェリア協会の4者が、大丸有エリアにおいて「食」「農」分野における新たな価値創造につながる仕組み・活動づくりに向けて四者連携協定を締結し、その一環としてのDFIの概要について紹介しました。

日本側の三氏のプレゼンテーションを終えると、質疑応答の時間へと移ります。

例えば「肉の代替品は消費者に受け入れられているのか?」という質問に対しては、「まだまだ定着はしていない。代替肉が持つ意義やストーリーが消費者に届いていない現状があるので、マーケティングを仕掛けていく必要がある」と原澤氏。また「DFIは商品開発の過程にも焦点を当てているのか?」という質問に対しては、「美味しい食物を作っても都市のニーズとの乖離が生じてしまうと売れないという現実がある。だからこそ商品開発の過程にもスポットを当てているし、消費者との溝を埋めるために大丸有エリアで活躍する様々な専門家やオフィスワーカーの視点を取り入れている」と中村氏。

このように、FIPのメンバーからはJAグループの取り組みやDFIの活動を深掘りする質問が発せられ、その意識の高さを伺わせました。

質問をするFIPのメンバーたち

世界の食を影で支えるFIPとUNIDO

FIPの概要紹介を行ったベアトリー氏

イベント後半は、FIPのメンバーからのプレゼンへと移ります。まずはFIPを代表してベアトリー氏より、FIPの概要紹介が行われました。

イタリアに拠点を置くFIPは、もともと食品業界で働いていた人物が「食品は社会や人類に対して大いに影響を与えるもの」という考えに至り、食品業界はもちろん、市井の人々、政治家など、食に関わるあらゆるステークホルダーを巻き込み、食に関する様々な調査や消費者の啓蒙、新商品の開発などを行う組織です。

「フードイノベーションと言っても、テーブルの上に乗るプロダクト(=食べ物)の話だけをしているわけではありません。食物が生まれてから食卓に上るまでのすべての過程で生じる課題や、そこで使われるテクノロジーなども含めてイノベーションをしようとしています」(ベアトリー氏)

食のイノベーションを目指すFIPの面々は、1年間の修士課程のプログラムの中で世界中の「フードヒーロー」に会い、各国が直面する食に関する課題や将来の可能性を探るという活動を行っています。そして(1)フード・ケアと将来のフード・サービス、(2)タンパク質の未来、(3)スマートシティーにおける農業革新、(4)展開可能な持続可能性と循環するシステム、という4つのテーマに沿って調査研究を進め、最終的には各テーマの活動を本にまとめ、企業や教育機関、政府機関に共有し、様々なビジネスや政策づくりに役立てると、ベアトリー氏は説明しました。

ベアトリー氏に続き、FIPとパートナーシップを結ぶUNIDO(United Nations Industrial Development Organization/国際連合工業開発機関)のアンドレア氏が登壇し、UNIDOの食や農業への取り組みについて発表しました。

産業に焦点を当てた国連の一機関であるUNIDOでは、「ISID(Inclusive&Sustinable Industrial Development)」というキーワードの下、各国の産業従事者を巻き込みながら産業の開発を推進しています。中でも農業は重要なトピックです。それは、発展途上国の経済成長が農業に頼っているからであるとアンドレア氏は説明します。

UNIDOは様々な形で各国の農業ビジネスの支援を行うとともに、発展途上国に適用可能で革新的なアイディア・テクノロジーを発案した企業に対して賞を与える「International Award」を実施しています。このアワードは農業に関するテクノロジー開発に取り組む企業を奨励するとともに、「企業や大学、研究機関、金融機関など、多様なステークホルダーを1つのテーブルに着かせる意図もある」とアンドレア氏。2017年のアワードでは、「食品の中にある病原体を早い段階で判別できるシステム」「食品の保存期間を伸ばす酵素」「コーヒー豆の精製過程で生じる廃棄物で製造した新たな食品」といったテクノロジー、アイディアが入賞したことを紹介しました。

UNIDOのアンドレア氏

世界の「食」事情に関する最新報告

最後に、FIPのメンバーたちが、各々が取り組むテーマについての紹介を行いました。

(1)フード・ケアと将来のフード・サービス
1組目は「フード・ケアと将来のフードサービス」の調査・研究を行うチーム。このチームは食に対する消費者ニーズの変化や、食を取り巻く技術の変遷などを調査した上で「今は家庭でもレストランと遜色のない料理を提供することができるようになっている。今後、食に関する産業はさらに細分化されていき、それに伴ってあらゆる角度から食が語られるような時代になっていくだろう」と、食の将来を予見しました。

「フード・ケアと将来のフード・サービス」チームの発表の様子

(2)タンパク質の未来
続いて「タンパク質の未来」に取り組むチーム。このチームは「食肉生産の持続可能性」と「代替肉を取り巻く状況」について報告がなされました。特にここでは後者について強調して説明がなされました。

植物由来の製品や昆虫食の研究開発なども進む中で、中々浸透が進まない代替肉。そこには人の感情も関係しているのではないかと、このチームのメンバーは推察しています。

「食品に対する感情の持ち方は人それぞれですし、肉は感情的になる要因を含んだ食材とも言えます。ですから、タンパク質の未来を考えていく上では、そうした点も考慮した上で解決策を考えていきたい」

つまり代替肉の研究開発が進み、いかに肉に近い代替肉ができようとも、それを受け入れる消費者側が「進んで代替肉を食べたい」という感情を持てる土壌が整備されなくては、代替肉は社会に浸透していかないのではないかと言うのです。その意味で、タンパク質の未来は、技術的な進歩だけではなく、人間の感情的な進歩も必要になると言えるかもしれません。

「タンパク質の未来」チームの発表の様子

(3)スマートシティーにおける農業革新
「2013年、人類史上初めて都市在住人口が、都市以外に在住する人口の数を上回りました。世界各国で都市化が進む中、このテーマは非常に重要度を増しています」と話してプレゼンテーションをスタートさせたのは「スマートシティーにおける農業革新」チーム。このチームが紹介した事例で印象的だったのは、ハードの取り組みだけではなくソフト面での取り組みです。

「アメリカでは、農業を使って物理や科学、数学といった科目を教えるという取り組みを行っています。そうすることで農業が身近に感じますし、共同体を生むことにもつながっていきます。そうした動きが進むと、地域の犯罪を減少させるという効果もあるんです」と、農業が持つ多面的な効果について力説しました。

「スマートシティーにおける農業革新」チームの発表の様子

(4)展開可能な持続可能性と循環するシステム
最後に発表を行ったのは「展開可能な持続可能性と循環するシステム」の調査・研究を行うチーム。冒頭、「今、世界のどこを見ても食の平等性はなかなか見られず、持続可能性の実現も難しい状況にある」と話します。そうした中でも、オランダで行なわれている人間が手を加えずに牛を飼育する畜産方法や、パッケージロスを減らす研究など、展開可能で持続可能な食のシステム構築に取り組む事例を紹介しました。そして最後に、このテーマのために消費者として何ができるのかについて、次のように訴えました。

「食材を買うとき、持続可能な形で作られたものなのかを意識すること。そして、家族や友人、同僚などと食について語り合うこと。そうした一歩一歩が、より良いフードシステムの構築につながるのだと感じています」

「展開可能な持続可能性と循環するシステム」チームの発表の様子

こうしてすべてのプレゼンテーションが終了を迎えました。「食」というテーマは人間が生きて行く中で切っても切り離せないテーマです。このテーマに真っ向から取り組み、より良い「食」を作り出していく上で、この日発表を行ったDFI、そしてFIPの活動からは目を離すことができません。


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