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【大丸有】パソナグループの「地方創生塾」から広がる、地方創生の未来像

大丸有企業のCSR、CSV (7)

「社会の問題点を解決する」ことを目指すパソナグループ

「人材」を軸に、HRソリューションやライフソリューション事業など、様々な事業を展開するパソナグループ。同社は2016年1月から、「地方創生塾」という取り組みをスタートさせました。この塾は、各界の有識者による実践的な講義に始まり、地方が抱える課題の把握や解決に向けて専門知識を学ぶ研修等を経て、地方創生を担う人材を育成することを目的としています。

もともと同社は「社会の問題点を解決する」という企業理念の下、10年以上前から地方創生に取り組んでいました。では、なぜ今、地方創生をリードする人材育成に着手し始め、そして今後、どのような展開を目指しているのでしょうか。

大丸有に拠点を置く企業の社会貢献的活動をご紹介するこのシリーズの第5回では、パソナグループ 代表取締役グループ代表の南部靖之氏にお話を伺い、同社の取り組みをレポートします。

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実現のキーは人材流動の仕組み作り

実現のキーは人材流動の仕組み作り

パソナが取り組む農業事業のひとつ「農援隊」

そもそもパソナグループが地方創生事業に取り組み始めたのは、ITバブルが崩壊し、日本の失業率が5.3%にまで及んでいた2003年のことでした。農業分野での雇用創造を目指し、就農支援や農業経営者の育成を目指したことが発端です。

その後、地域産業を活性化させ、さらなる雇用創出を促進させるために、農業の分野だけではなく、淡路島における産業創出や京丹後の産業活性・観光事業促進、東北地方の復興支援なども展開。自治体や地元企業と連携しながら、人材を軸とした地方創生に取り組んでいます。

パソナが地方創生に取り組む理由を、南部氏はこう説明します。

「かつて、東京の企業が地方にできることは、工場を地方に建設したりという、ハード面が主なものでした。しかしそれでは企業業績に左右され、工場が閉鎖されると失業者が出てしまうなど、地域の継続的な活性化が難しい。地方創生の起爆剤を作るためには、ハードではなく、人材を誘致しなければならないんです。人材が動くということは、その人が持つ夢や可能性もその地方に移動するということ。そうした夢や可能性こそが地方を活性化させることにつながります。だから我々は、人が地方に流動できる『人材誘致』の仕組みを作りたいと考えているのです」

地方創生を行うためには、お金や仕組みがまず必要になると考えられがちですが、そうしたものを動かすには何よりも「人」が重要になります。「人」を地方へと動かす仕組みを作ることは、れまで40年に渡って人材を軸とした事業を展開してきたパソナグループだからこそできることだと言えるでしょう。

人材流動を起こすことが地方創生実現のキーであり、地方創生を実現することで「いま日本が抱えている課題のほとんどを解決することができる」とも、南部氏は言います。

求められているのは"地方創生プロデューサー"

3月の講義の様子

人材流動の仕組み作りのひとつとして、地方創生を担う人材を育成する「地方創生塾」をスタートさせたパソナグループ。ではこの塾では、どのような素養を持った人材を育成しようとしているのでしょうか。南部氏は次のように語ります。

「文化的、歴史的に、地方には多くのコンテンツがあります。例えば京丹後は、数多くの古墳があり、古代には日本の文化の中心地の一つでした。日本で初めて稲作が行われた地であるという伝説もあります。そうした地域が持つ話題性を広く伝えて行くことで、人は集まります。つまり、地方創生に必要なのは、地方が持つ可能性をプロデュースできる "地方創生プロデューサー"の育成です」

地方創生プロデューサー育成のために、地方創生塾では多彩な顔ぶれの講師陣を集め、座学研修や実地研修など、約30のカリキュラムを展開。将来的に地元に戻って地域活性化を行いたいという学生から、現在実際に企業の中で地域活性化事業に関わっているという社会人まで、モチベーションの高い人々が30名以上参加しているそうです。そうした人々に「これまで私が学んで来たことを、お伝えしていきたい。そして、共に地方創生を実現させていきたい」と南部氏。多彩な講師陣は、これまでパソナが農業や地方での活動を通して得た人脈やコネクションによるもの。「もともと社外の力を取り入れる、外部の人と活動したいという思いは常に持ち続けている会社」であるパソナが、満を持して講師を揃え、大々的に外部から受講生を募ったのが今回の地方創生塾なのです。

地方創生塾の受講料は、1人当たり約13万円。個人で支払うには決して安くはない金額ですが、パソナにとっても利益が出るものではありません。金銭的な損得勘定を脇に置きこの塾を展開することは、南部氏のリーダーシップがあってこそではありますが、グループ社員が南部氏の夢や思いを共有しており、「ベストセラーよりもロングセラーの企業に」というもっとも基本的な考えがあるからです。昨今、"ブーム"とも言える地方創生ですが、地域を育てることも、人材を育てることも時間が掛かるものです。一過性のもので終わらせず、継続的に取り組んでいくためには、こうした「ベストセラーよりもロングセラー」という考え方が必要なのではないでしょうか。

地方創生の実現はワーク・ライフ・バランスの実現につながる

このような学びの場に人が集まる背景には、経済における地方創生の重要度の高さの認識が広まっているということと共に、人々が持つ価値観が変わってきているからでしょう。かつては物質的な豊かさを求め、ガムシャラに働くことが是とされていましたが、現代は、自分のため、家族のために、心の豊かさを求める時代になっているのです。

そして、南部氏が目指す地方創生が実現した姿もまた、人々の心の豊かさを満たせるものだと言います。

「私が実現したいのは、ひとりの人がダブルキャリア、トリプルキャリアを持ち、時間に余裕を持って生活をしていける姿です。地方に暮らし、農業をやりながらインターネットで世界を相手に物を売ったり、綺麗な海で釣りをしながら複数の事業を行う。それも、時間に追われて働くというのではなく、1日4時間だけ、1ヶ月に1日働くだけでも正社員と同じレベルの待遇や福利厚生を受けられるという働き方。地方が元気になっていけば、そうした未来を実現することができると思っています」

テクノロジーの進化により、地方のグローバル化は今後ますます進んでいくと考えられています。またテクノロジーの進化は、ダブルキャリア、トリプルキャリアという生き方を叶え得るものです。こうした時代背景と、雇用創造に取り組んできたパソナグループの取り組みがマッチすることで、地方創生と、その先にあるワーク・ライフ・バランスの実現が近づいてくるのでしょう。

理想的なCSVの形

今回紹介したパソナグループは、創業以来一貫して「人を活かす」ことを目指し、そしてその「人」が生活しやすい環境づくりを行って来ました。例えば、「主婦でも正社員と同じように働ける環境を」という思いからパソナが創業されたように。地方創生塾が目指すものも、地方創生に対して意識の高い人を集め、育成し、地方での生活がしやすい仕組みを作ることです。こうありたい、こうあってほしいという社会のあるべき姿を実現するための活動をビジネス化していく。こうした動きは、まさに本業で得た知見を活かして行われているもので、理想的なCSVの形のひとつとも言えるのかもしれません。

今後、地方創生塾からどのような人材が輩出され、地方を活気づけていくことになるのか。注目が高まります。


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