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【CSRWG】丸の内井戸端会議 for women ~2020年までに女性管理職30%な未来を想定して~

2014年11月4日(火)

2014年11月4日、日本ビル6Fにオープンしたばかりの「TIP★S/3×3 Labo」でCSRイノベーションワーキングの特別イベント「丸の内井戸端会議 for women ~2020年までに女性管理職30%な未来を想定して~」が開催されました。日本総研の小崎亜依子氏をゲストスピーカーに迎え、女性が企業で活躍していくための課題とそれをクリアしていくための知恵を、参加者40名が共有しました。

女性の活躍推進にはGDPを押し上げる効果がある

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター/ESGリサーチセンター・小崎亜依子氏はじめに小崎亜依子氏(株式会社日本総合研究所 創発戦略センター/ESGリサーチセンター)の講演です。働く女性の現状と課題をデータをもとに解説されました。

女性の企業における待遇の改善は、1986年に施行された男女雇用機会均等法をきっかけに前に進みました。同法は企業に対し、募集、採用、配置、昇進の際に女性と男性を同等に取り扱うことを求めました。ただし、職種による区分は性別による差別ではないとして、このときに総合職と一般職という職種ができ、男性は総合職に、そしてほとんどの女性が一般職という区分けが生じることになりました。
1992年には出生率の低下を問題視した政府は育児休業法を制定し、男女とも子どもが満1歳になるまで育児休業を取得する権利が認められました。その後も1999年の男女雇用機会均等法改正では制定時には努力義務だった男女差別が禁止規定とされ、2014年の同法改正では性別以外の転勤の可否など、間接差別となり得る範囲を見直すなどさまざまな取り組みがなされてきていることが紹介されました。

(グラフ上)年代別女性労働力率、(グラフ下)ウーマノミクス女性活躍促進のさまざまな取り組みが進む一方で、現在でも半数以上の女性が第一子の出産を機に退職している現状が、年代別女性労働率グラフを用いて解説されました。女性の労働率は20第後半から大きく減少しており、「これはM字カーブと呼ばれ、女性の活躍推進が進む欧州などでは見られない減少です」と小崎氏。女性管理職の比率も諸外国と比較すると日本は韓国と並んで断トツに低くなっています。

安倍政権は女性活躍推進を成長戦略の柱として次にあげる2つの大きな目標を掲げています。①指導的地位に占める女性の割合を2020年までに少なくとも30%程度に上げる、②25~44歳の女性就業率を73%に上げる。この背景には2050年には日本の総人口が1億人を割り込み、少子高齢化に伴って生産年齢人口比率も50%近くまで落ち込むという問題があります。50年後の日本の未来を検討するため、経済財政諮問会議に置かれた「選択する未来」委員会は、生産年齢人口が5,000万人程度になることで、2040年以降の成長率はマイナスに陥る可能性があると指摘していることが紹介されました。
働く女性を応援し、女性の就業者を増やしてくことが日本の持続的な成長・発展のためには必要です。ゴールドマンサックス証券では、女性の就業率が男性と同様に8割くらい高まると労働人口が1割程度アップするため、1990年代以降500兆円付近で推移しているGDPを最大12.5%押し上げると推計しています。

女性の就業については別の視点からのデータがあると小崎氏は続けます。世帯年収の推移を見ると、全世帯・子どものいる世帯ともに1996年以降は右肩下がりとなっており、年収額は子どものいる世帯が全世帯よりも大幅に高くなっています。これは「それなりの年収がないと子ども持つことができないという実態を表しているのかもしれません」と小崎氏は指摘。また、1997年を境に共働き家庭が専業主婦家庭の数を上回りその差は広がり続けていることを紹介し、この2つのデータから「夫婦で働かないと食べていけない時代になり、女性には働かないという選択肢がなくなってきている」と小崎氏は話されました。

現在の日本で管理職をしている女性はどんな人なのでしょうか。小崎氏は労働政策研究・研修機構によるデータ(調査対象3,500人、うち女性管理職は約600人)を紹介。男女別の「未婚」「有配偶・子なし」「有配偶・子あり」「離死別」の属性調査によると、男性は「有配偶・子あり」が8割近いですが、女性は「未婚」が4割で一番多く、「有配偶来子なし」「離死別」も1割を超えています。

女性管理職の家事分担度合い次に家事負担に関しては、子どもの有無にかかわらず、ほとんど妻が家事を負担していることがわかりました。職場・仕事に対する考えの調査によると、仕事にやりがいを感じているのは男性より女性のほうが多く4割を超えています。「これらの調査結果から女性が企業の中で管理職をやることの困難さが表れている」と小崎氏は話しました。

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女性管理職の"困難"

さまざまな障害を乗り越えて管理職を務める
女性は"スーパーウーマン"

男女賃金格差は依然として残る次に働く女性がどのような課題を抱えているのかいくつかの調査結果をもとに説明されました。労働時間に関しては、男女ともに週50時間以上労働する割合は諸外国と比べて高くなっています。一方で女性は男性と比較すると短時間労働(週30時間未満)を選択する比率が高くなっています。また、日本はフルタイムとパートタイムの賃金格差がアメリカについで大きく、男女の賃金格差が韓国に次いで大きくなっています。小崎氏はこれらのデータから、「家事などにより時間の制約がある女性は、パートタイムを選択せざるを得ず、能力の有無にかかわらず結果として低賃金の仕事になってしまう」と指摘しました。

女性の就業と家族の視点では、待機児童と介護の問題があげられました。待機児童数は東京が圧倒的に多く、仕事と子育ての両立は東京近郊における深刻な問題であることがわかります。また介護を理由にした離職・転職者数は2012年に10万人を超え、その8割以上が女性です。小崎氏は「現在23%の老齢人口比率が2050年には37%になることが予測されており、この問題はますます深刻になっていく」と話しました。

6歳未満児のいる夫の1日あたり家事・育児関連時間の国際比較男性の家事・育児の分担については、日本は約60分でデンマークやノルウェーの3分の1程度、OECD平均の半分以下であることが紹介されました。家事に関する意識調査では1979年は7割を占めていた「夫は外で働き妻は家庭を守るべき」という考え方が、2009年には4割まで減っているデータがあるものの、小崎氏は「男女とも理解はしつつも、賃金格差、長時間労働などの現実を目の当たりにして、若年層ほど専業主婦志向が増えていると耳にします」と話しました。

小崎氏は以上のデータから女性活躍を進めるには、①長時間労働、パート/フルの賃金格差など時間に制約がある女性が企業で働くには不利な現状、②足りない保育園、迫り来る介護負担、頼りない夫などにより働き続けることを躊躇させる環境――という2つの大きな課題があると指摘。「そのなかで管理職を務めているのはスーパーウーマンであり、2020年に女性管理職30%という目標を達成するには、抜本的な働き方、家族のあり方の変革が必要」と総括しました。

生産年齢人口対 全人口比率女性が働くと少子化が進むのではという危惧に対しては、諸外国では女性就業率が高くても合計特殊出生率が日本より高いということと、国内でも東京、千葉、埼玉、神奈川は就業率、合計特殊出生率も低いが、他道府県はいずれも4都県より高いという調査結果をもとに「東京には優秀な女性がたくさんいるはずなので、このテーマは大丸有エリアで議論することがふさわしい」と話されました。最後に、アメリカのシリコンバレーのある男性CEOが家族とのバランスをとるためにCEOを辞めた実話を紹介し、このことは女性だけの問題ではないとして講演を終えられました。

普通の女性が管理職になれる社会づくりを

小崎氏の講演を受けて、参加者がグループごとに感想や気づきを話し合いました。その結果をプレゼンテーションし、次のようなまとめを全員で共有しました。

●30%を達成するだけでなく、ワークスタイルを変えていかないと意味がない
●男性管理職の何割かにNPOなどに移ってもらい、その枠に女性管理職を配置すれば30%を達成できるかもしれない
●スーパーウーマンだけでなく普通の女性が管理職になれる環境が必要
●長時間労働の改善は自分たちで労働基準をつくっていくくらいの意識がないと難しい。 たとえば会議室は1時間しかとれないようにすれば、会議は1時間以内に収まる
●デンマーク大使の言葉に「働くだけのマッチョな男はいらない」というものがある
●日本の男性も働くだけでなく家事をシェアしてほしい

プレゼンテーションを受けて、小崎氏は「単純な解決策がない中では、女性だけでなく、老若男女が率直な意見を交わしていくことがとても重要だと思います」との感想で締めくくりました。

終了後の懇親会では、さらに深い意見交換が進み大いに盛り上がりました。

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エコッツェリア会員企業を中心に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)について学びあいます。さらには、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)をめざし、学びから実践に向けたアクションづくりを行います。

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