エコッツェリアについて

大丸有のまちづくり

2050年へのまなざし-2(大丸有CSRレポート2012年度版掲載)

環境と防災の一体化で
次代の大都市エリアマネジメントをリードする

小林重敬
東京都市大学教授、
NPO法人大丸有エリア
マネジメント協会理事長

 エリアマネジメント活動は地域特性に根ざした活動でありながら、共通する取り組みや課題が多くあります。東日本大震災を経験し、大丸有や交通結節点の大都市では、環境・エネルギーや、防災・減災の面でさらに踏み込んだ、次代の活動が必要だと強く感じています。

 防災・減災へ取り組む上で、もし日本を代表する地域が大規模な災害に見舞われても、機能を停止せずすぐに回復できることが示せれば、経済活動の回復や、海外への日本に対する信頼性をアピールすることにもつながります。環境については、スマートシティ構想など新たな都市の姿が論じられる中で、省エネ・創エネ、エネルギーの融通等に関して、もう一段上の取り組みが必要です。さらに、環境と防災は、それぞれが今後のエリアマネジメント活動の中心的テーマであるだけでなく、一体的に取り組むべき時代に入りました。

環境と防災への取り組みは、教育・啓発活動などソフトな活動だけでは足りず、都市のハード面と連携させてこそ実効性を持ってきます。そのためにはハードに責任を持つ主体(地権者等)を動かすことが重要です。しかし実際には、そうした主体からの反応は鈍い。それは環境や防災に取り組むメリットの説明・理解が十分ではないからでしょう。設備導入にかかるイニシャルコストに見合った中長期的なメリットの大きさを、具体的に示すと同時に、さまざまな助成制度・支援策の活用を積極的に進めていくことが肝要です。また地下水や地熱等の地域ならではの資源を活用したエネルギー供給や、さまざまな取り組みに対するインセンティブ設定等を、組み入れていく工夫も必要です。

 エリアマネジメントは地域の交流・賑わい創出等に大きな力量を発揮していますが、これらだけでは組織運営のために十分な財源を生み出せていない、という課題を抱えています。しかし欧米のエリアマネジメントの多くは、自ら活動の公共性を社会に認知させ、結果として公民問わず資金が入る仕組みをつくり上げている。自らの利益とともに社会課題を解決する公共的な活動をも担っているからです。日本のエリアマネジメント組織も、より社会的な存在へ脱皮する時期にきています。

 その実現には、関係者で議論を重ね、イベントや定常的に行っている活動等を通じて地域の地権者が地域の共通テーマを共有していくこと。そのエリアをどういうまちにしていくのかを、ビジョンをつくりブラッシュアップするプロセスを積み重ねていくことが重要です。

 エリアマネジメントは、「つくること」つまり施設をつくる段階と、「育てること」すなわちソフト活動との両面で構想しながら取り組むべきものです。それができる基盤がようやく整ってきました。2011年に大丸有のまちづくり 3団体が、エコッツェリアを舞台に全国各地のまちづくり団体・専門家を集め、「環境まちづくりサロン」を開催しました。先進事例や課題の共有、本音での活発な議論を通じて、大都市主要駅の交通結節点地区におけるエリアマネジメントが抱える共通の課題を確認し、解決を目指した試みです。これをさらに発展させて政策提言等の発信や、大丸有エリアでの議論と実践のスパイラルアップが進むよう期待しています。

小林 重敬(こばやし・しげのり)

東京都市大学教授。 NPO法人大丸有エリアマネジメント協会理事長。エコッツェリア協会理事。東京大学大学院工学研究科都市工学専攻博士課程修了。工学博士。エリアマネジメントを中心に、都市政策やまちづくりなど、大都市および地方の中心市街地の再生、活性化などの活動に参画。著書に、『エリアマネジメント』『条例による総合的まちづくり』『都市計画はどう変わるか』(学芸出版社)などがある。

22050年へのまなざし-1「紺野 登(KIRO(株)代表)」

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