過去のアーカイブ過去のニュース

耳をすまして目をこらすだけ!丸の内さえずり館「北の丸公園の野鳥と自然観察」で、都心で野鳥と出会うコツを教えてもらいました。

saezuribird_1.jpg 「いた!」の一声で一斉に双眼鏡登場

"自然保護・環境保全"をテーマに情報を発信している「自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館」の人気テーマの一つが"バードウォッチング"。丸の内には豊かな生態系が残るとは言われていますが、まさかカラス以外の野生の鳥=野鳥にそうそう都心で出会えるとは、にわかには信じられませんよね。そこで、3月5日に開催された「北の丸公園の野鳥と自然観察」に同行し、実態をウォッチングしてきました。講師はNPO自然観察大学学長の唐沢孝一氏。都市鳥を中心とした都市生物の生態、自然観察方法の研究者で、カラスやスズメの生態研究の第一人者です。2時間半のコースで、千代田区役所をスタートし、清水門から吉田茂銅像・芝生広場をへて、ヤマモミジの林・滝を抜け、北の丸で一番の高地という怡和園を目指しました。

清水門

門の手前左側は清水濠、右側は牛ケ淵。同じお堀と片付けてしまいますが、「濠」=軍事戦略上必要のため人工的に掘ったもの、「淵」=もともと沼や湿地などを整備したものだそう。ちなみに「堀」=物流のために掘られたものとのこと。
さい先よく、ここで遠くの土手にオオタカを発見。

saezuribird_2.JPG唐沢先生の指の先に、オオタカ!

オオタカの若鳥が鳥らしき獲物(ヒヨドリかドバトでは?)を捕食していました。天気が良いと、狩りをする猛禽類との遭遇率があがるようですが、食事風景が見られるのはかなり珍しいそうです。他にも清水濠ではアオサギ、ゴイサギ、牛ケ淵ではセグロカモメ、ユリカゴメにも出会いました。

清水門直前の橋の石垣には、先生の"ご友人"のアオダイショウがいるとのことですがこの日は不在。代わりに(!?)先生の宝物、完璧な抜け殻を披露してくださいました。

saezuribird_3.JPGアオダイショウの抜け殻。アオダイショウは枝などに皮をひっかけて脱ぐので、抜け殻は裏返しとのこと。

参加者からは皇居外苑の木に抜け殻がぶらさがっているのを見た!という証言もあり、アオダイショウは皇居周辺に多数生息しているようです。

話は歴史秘話から越冬草(野草のオドリコソウが都心の清水門でみられるのは大変貴重とのこと!)にまでおよび、千代田区役所から清水門までおよそ50m、ここまでの所要時間が1時間。時間内にゴールまでたどりつけるのでしょうか。

吉田茂銅像付近の芝生広場

清水門をくぐり、少しのぼり、芝生広場へ。

saezuribird_4.JPG巣箱を観察。ふんなどからまだまだ解明されていない野鳥の生態がわかるそうです。
saezuribird_5.jpgヒヨドリとハクセキレイの撮影に成功。

ここで出会った野鳥たちは人に慣れているのか、ある程度近づいても飛び立たないので、ヒヨドリやハクセキレイをカメラにおさめることに成功。ツグミやジョウビタキにも遭遇しました。ちなみにヒヨドリには群れをなして渡っていくものと単独や数羽で越冬するものがいるそう。この時期に日本で出会えるのはこの少数での越冬型のヒヨドリです。このあたりの高度までくると、外来のセイヨウタンポポが進出しておらず、カントウタンポポの貴重な生息地となっているそうです。

ヤマモミジの林

芝生広場を抜けて林を目指す途中、あとかたもなく食い荒らされてしまったユズリハを発見。

saezuribird_6.JPGユズリハ、たしかに見事に食べ尽されています!

最近、ヒヨドリが異様にこの葉に執着し食べることが発見されました。体内の寄生虫を抑制する働きがあるとか、中毒性があるのでは?などと言われていますが、実際のところはまだ解明されていません。バードウォッチングの世界では今とてもホットなトピックスなのだそう。
「野鳥は野鳥だけで存在しているわけではないので、野鳥と出会った場所にどんな植物や昆虫、クモなどがいるかにも注目してみてください」(唐沢先生)

林に入って行くと、そこはハシブトガラス天国。うるさいくらいの鳴き声は止まず、ふと視線を感じると木の上からたくさんでこちらを見ている...存在感に圧倒されました。

saezuribird_7.JPGカラスの水浴び、気持ち良さそう!

カラスは食べものを秘密の場所に隠す習性(貯食)があるので、昼間は遊ぶ時間があるとのこと。東屋からカラスの水浴びを観察。優雅な生活をしているようです。

怡和園

saezuribird_8.JPG北の丸公園の一番の高台を目指す!

滝が流れる横の小径を少しのぼり、怡和園へ。

saezuribird_9.JPG静かにお花見できるとのこと。桜の季節が楽しみです。

近衛兵の憩いの場としてつくられた怡和園には、ミズキの木。4月5月に幹に耳を当てると、勢いよく水を吸い上げるごぼごぼっという音が聴こえるそうです。またここは、対岸の桜をゆっくりお花見できる穴場だそうですよ!
今回のツアーはここまで。

最後に唐沢先生にバードウォッチングを楽しむコツをうかがいました。
「自然の変化はレギュラーであったりイレギュラーであったり、また、数百年、数万年というスケールで変化します。二度と同じ自然に出会うことはまずありません。今日の観察は、おそらくこの世で1回しかない観察かと思います。そう思ってこれからも楽しんでみてください。また、バードウォッチングは、バードハンティングではありません。名前を覚えて、識別することが目的ではありません。まず、どんな食べ物を食べているのか、どんな暮らしをしているのか観察してみてください。図鑑を開くのはその後。自然を見ていると、いろいろなことが見えてきますよ」

全くの初心者の私でも、たしかに耳をすますと(カラス以外の)聞き慣れない鳥の鳴き声も聴こえてきたり、小鳥=スズメとざっくり思っていたものがよく見てみるとスズメではないことがわかったり(今回はシメでした)と、見過ごしているものの多さに気付かされました。現にこの日見られた野鳥は26種もありました!

これからの季節、ランチを東御苑や北の丸公園など屋外でという方も増えてくるかと思います。せっかくですので、少し耳をすまし、少し目をこらして、野鳥との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか?

自然環境情報ひろば 丸の内さえずり館

この春からも、耳のすまし方、目のこらし方のヒントを教えてくれるツアーやセミナーを随時開催するそうです。
お昼休みに参加できる短時間のものもありますよ!
http://www.m-nature.info/