過去のアーカイブ都市の“グリーンワークスタイル”を探る

1. 年間約1,200人のボランティア社員を派遣

企業ボランティアが復興支援に一役~CSRの新しいかたち(三菱商事、パソナグループ、SMBC日興證券、東京海上日動火災、アサヒビール)

東日本大震災発生後、多くの企業が本業を生かした支援や募金、物資の提供など、さまざまな方法で被災地の復興を手助けしている。こうしたなか、被災地でボランティアに取り組むオフィスワーカーが増えつつある。また、ボランティア休暇の制度を設けて社員に取得を促したり、支援のために積極的に人材を提供したりする企業も少なくない。CSRの新しいかたちとしても注目される、企業ボランティアの動きを追った。
取材企業 : 三菱商事、パソナグループ、SMBC日興證券、東京海上日動火災、アサヒビール

1. 年間約1,200人のボランティア社員を派遣

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仙台市宮城野区などでのボランティア活動の様子。初期の頃は力仕事が多かった

■ 被災地の力になりたい」という社員の声がきっかけ

2011年8月下旬の午後。東京・千代田区丸の内にある三菱商事ビル前に停まった1台のマイクロバスに、約20人の男女が次々と乗り込んでいく。バックパックを背負う人もいるなどオフィス街には似合わないラフな格好をしたかれらは、旅行に出かけるわけではない。2011年3月の東日本大震災で大きな被害を受けた、宮城県石巻市の被災地でのボランティア活動へ出発する、三菱商事とグループ会社の社員からなるボランティアたちなのだ。

三菱商事では、震災発生後すぐに4億円の義援金を拠出した。その後、4月に2回自ら東北を訪れて被災地の惨状を目にした小林健社長が、「復興には相当なお金と労力がかかり、しかも今すぐに必要」と痛感したことを受けて、総額100億円規模の東日本大震災復興支援基金の創設に至った。義援金や復興助成だけでなく、学ぶことが困難になった大学生向けの奨学金や、電気自動車の提供など多様な支援が盛り込まれている。企業ボランティアもその一環だ。

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三菱商事「東日本大震災復興支援基金」の概要。配分などはニーズに応じて変えられることもある

「被災地でボランティア活動をしたいという社員からの強い声を受けて、派遣を決めました」。こう語るのは、三菱商事環境・CSR推進部部長の秋田実さん。同社にはボランティア休暇があるが、いざ取り組もうと思っても一般のツアーなどに参加するのはなかなか大変だ。そこで、社員ボランティアを20名一組にしてローテーションを組み、現地のボランティア拠点と連携して3泊4日の日程で派遣して支援を行っている。当初は社内だけを対象として募集を行っていたが、10名の枠に応募者が殺到し、対象をグループ社員に拡大。7月からは20名に増員し、これまでに約 800人の社員がボランティア活動に取り組んだ。

■ ボランティアに求められる作業内容にも変化が

秋田さん自身、被災地へ何度も足を運んでがれきの撤去や民家の清掃などの作業を行った一人だ。「初めて現地入りした社員は被害の激しさに言葉を失いますが、仲間と必死でボランティア活動に取り組むうちに、人の役に立っているというやりがいを感じるようです」。社員たちは30℃を超える猛暑のなか、余震による津波注意報や局地的な豪雨に見舞われながらも、力を合わせて作業に取り組んでいる。過酷な作業が泊まりがけで続くにもかかわらず、ボランティアを希望する社員からの応募は途切れず、ボランティア休暇の取得率が急上昇しているそうだ。休憩中に地元の子どもたちとサッカーをして遊ぶなど、つらいなかでも楽しみはあるという。

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(左)泥かきボランティア前の荒れた畑、(右)今ではトマトが実り色づき始めている

一方、震災発生から数ヵ月経った今、現地で求められる作業内容に変化が表れているという。同部の社会貢献チーム兼国際貢献チームでマネージャーを務める大川由香里さんは、次のように話す。「6月頃までは個人のお宅やビニルハウスなどから汚泥や土砂を取り除いたり、がれきや漂流物を撤去したりする作業が多かったのですが、7月後半からは側溝の泥出しによる水流の開通や農地の整備、漁網や漁具のメンテナンスなどの作業が増えています」。
8月には仙台市宮城野区にあった津波災害ボランティアセンターも閉所になり、同社では8月下旬から活動拠点を石巻市へと移し、ボランティア活動を続けている。

先日は大川さんたちのもとに嬉しい報告があった。復旧に向けて整備を手伝っていた畑に植えられたナスやトマトが色づき始め、ついに収穫できたというのだ。農業再生とまではいかなくとも、浸水した土地で時間がかかると思われていた野菜の栽培ができたことは大きな希望につながる。

三菱商事 東日本大震災支援ボランティア活動レポート