過去のレポート都市の“グリーンワークスタイル”を探る

都市と地方の連携に、大丸有は何をすべきか、何ができるのか(猪尾愛隆氏、小松俊昭氏、曽根原久司氏、古田秘馬氏)

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1. 都市と地方の新たなつながりが生まれている

持続可能な都市づくりを進めていく上で、周辺地域との連携や協力は欠かせない。大丸有は、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会が2007年に策定した[[環境ビジョン]]「未来へつなぐまちづくり」が掲げる「他の地域に支えられていることへの、責任を果たすまち」という理念に基づき、他地域との連携によるまちづくりに取り組んできた。新丸ビルが利用している再生可能エネルギーは、青森県と北海道から送られてくる100%[[生グリーン電力]]だ。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により、東北・関東地方は大きな被害を受けた。都市と地方が共生しながら持続的に発展していくことを可能にする新たなコミュニティとは? 「3.11以降」という視点から見たときに大丸有に必要なものは何か? さまざまな分野で都市と地方をつなぐ取り組みを続ける4人の担い手たちに語ってもらった。

1. 都市と地方の新たなつながりが生まれている

東日本大震災に伴う食料や電力不足を経験して、都市に住み、働く者は周辺地域にどれだけ頼っていたかを痛感した。一方、学び、ファンド、農業、トラストなど、新たな切り口で都市と地方をつなげようとする取り組みが始まっている。

朝大学の受講者が被災地支援、ファンドによる資金調達の取り組みも

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古田: [[丸の内朝大学]]には、これまでにのべ3,500人ほどの受講者がいます。朝の出勤前に仕事に直接関係のないことをわざわざ学ぼうという人だけに、テンションが高くて人生を楽しもうという志向の人々が多い印象です。会社でやや浮いている人が多いのかもしれません(笑)。自宅でも職場でもない第三の場所を「サードプレイス」と呼びますが、私たちは朝大学を、仕事のしがらみでもプライベートのつながりでもない第三の集まりと位置づけて「サードコミュミティ」と呼んでいます。最近はより深く、そして連続して学んでもらえるように、朝の時間帯を有効に生かすことに加えて「都市と地方」という視点を入れ込むようにしています。

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コミュニティアクション for 東日本大震災の一環として開催されたミーティング

温泉、ニッポン再発見、地域プロデューサーなど多様なクラスに共通するコンセプトは、さまざまな地域の人から信頼してもらえるコミュニティを育ててること、そして地域の価値を再評価して新しいコンテンツを生み出す場にしていくことです。そのためにはその場所に行くだけではなく、まず生産者に丸の内に来ていただき、地域について学んで、そして訪問して再会し、体験・体感するという手順を踏むことが大事です。このプロセスを経ることで参加意欲が高まっていく人が増えていきます。さらに朝大学では、東日本大震災が発生して間もなく「コミュニティアクション for 東日本大震災」をスタートしました。これは、受講者やOB・OGの方たちが被災地を「自分たちの場所」であると反応して行動に移したものです。

丸の内朝大学

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猪尾: 古田さんが「学び」を通じて都市と地方をつないでいるとすれば、ミュージックセキュリティーズのキーワードは「お金」です。初めは、CD制作などの費用を個人のファンから集めることで、アーティストがもっと自由な音楽づくりができる環境を生み出そうと、2001年に音楽ファンドを立ち上げた、アーティストを応援するためのファンドです。その後、酒蔵や料理人、農家などを個人的に応援したいファンがいるのではないかと考えて、ファンドがお手伝いする対象を音楽以外にも広げました。今では約110本のファンドがあり、14業種、約50の事業者の方々に利用していただいています。

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「セキュリテ」は、音楽、日本酒、林業、飲食店など、さまざまな分野の事業者を応援できるファンド

4月には当社が運営する資本市場をベースに、「セキュリテ被災地応援ファンド」が立ち上がりました。被災地では、これまでよい仕事をしてきた方々がすべてを失った上に、資金繰りが苦しくて仕事や生活を再建できない状況が続いています。私たちは、現在までに気仙沼市などで合計6社のファンドを募集しています。どこも工場が全壊するなど震災により大きな被害を受けた企業ばかりです。出資者からお預かりしたお金の半分を返却無用の応援金としてお渡しし、半分をファンド資金として出資する仕組みです。被災地復興の重要な要素となる事業の再建資金を、1口1万円で個人の方から広く、早く、直接集めようという取り組みです。

私が被災地でお会いしファンドを利用していただいている会社の方が、「出資いただくということは、出資者の方一人ひとりと、復興するという約束をしている気がします。いいプレッシャーです」とおっしゃっていました。皆さんが、一人ひとりが出資してくださることによって、再建に必要なお金だけでなく、復興への勇気や元気も与えられているのだ、と感じています。その会社では海鮮丼を出す食堂をつくる予定で、出資者には復興したあかつきに海鮮丼を1万円で食べ放題という特典があり、数年後に食べに行く楽しみが生まれます。それを期待して待っていただくことで気持ちがつながり続けるのだと思います。
ミュージックセキュリティーズ(株)

社員が耕作放棄地で育てた酒米が純米酒に

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純米酒「丸の内」は、協働による「空と土プロジェクト」の成果の一つ

曽根原: 私は、バブル絶頂期に東京で経営コンサルタントの仕事をしていましたが、バブル崩壊のインパクトが強く、不良債権の処理や産業と雇用の空洞化など日本の先行きがさまざまなレベルで不透明になりました。食料、木材、エネルギーなど日本の総合的自給率も下がる一方で、地域共生型の市民ネットワーク社会をつくる必要があると考えて、今のNPOを立ち上げたのです。

この「丸の内」という純米酒は、三菱地所グループと連携して2008年から続けている[[空と土プロジェクト]]の成果です。都市と農村が交流しながら、それぞれが抱える課題を認識してともに活性化を目指すプロジェクトで、北杜市にある耕作放棄地だった棚田を同社社員の皆さんに開墾していただき、野菜やお米をつくってきました。2010年度は酒米をつくって山梨県内の蔵元「萬屋醸造店」が仕込んで商品となりました。現在、新丸ビルなどの飲食店舗で取り扱ってもらっています。

NPO法人えがおつなげて
空と土プロジェクト

小松: 私は大学を卒業してから25年間ほど日本政策投資銀行で働き、金沢転勤を機に退職して現在は金沢工大で産学連携のコーディネートをしています。今の仕事についたきっかけは、20年ほど前の米国駐在時にシリコンバレーのカフェに通ううち、新しいものを生み出すのには「場の持つ力」が重要だと気づいたためです。

今年の春からは大学院生として、都市と農村の関係性について、不動産やお金などの資産をいかに分かち合うかという視点から学んでいます。不動産については、英国発祥の「信託」という考え方があります。教会など信頼する相手に不動産などの財産を寄贈し、託された人は収益を上げて返す、いわゆるトラストと呼ばれる仕組みです。被災地では津波にのまれるなど無価値に近い状況になった資産に対して、将来に向けた価値付けを行わなくてはならないため、トラストの仕組みを生かせないかと考えています。

金沢工業大学産学連携機構

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2. コミュニティは地域からテーマの時代へ

2. コミュニティは地域からテーマの時代へ

コミュニティは地域からテーマの時代へと移行しつつあり、多くの企業人が社外でのつながりを求めている。目先の利益にとらわれず本業を生かした社会貢献を行う企業もある。こうした流れの背景には何があるのか。

一極集中や効率化への反動がふるさと願望に

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曽根原: NPOとして都市と農村との交流を通じた新しい社会のかたちを提案する活動をしていて感じるのは、経済とコミュニティという軸で見た場合、都会は経済が強いけれどコミュニティは弱く、農村などはその反対であるということ。また、国内全体で見ると過密と過疎が両極化して進んでいます。このように両極にわかれた状況が、交流や連携を進めることで再配置されてバランスが取れていけば、結果的に分散型の社会になっていくでしょう。

小松: 日本では一極集中、効率重視の社会が長く続いた結果、「ふるさと難民」が多く生まれ、都市生活者がコミュニティにふるさとを見出すようになっているのではないでしょうか。私の知り合いにドイツへ環境留学した経験のある若い夫婦がいて、帰国後に熊本・南阿蘇で就農して米づくりをしています。こうしたライフスタイルを求める人が多いのも一つの傾向です。

猪尾: 経済的な視点から見ると、森や川、海など日本が持つ資源のポテンシャルは地方に偏在しています。こうした天然資源をどのように活用していくか、長期的に考えることが必要です。昔は地域で森を支えていましたが、今は地域主体でも50年、100年先を見据えた投資がなかなかできません。これを「全国の森好きの集まり」のように、地域レベルからテーマ主体のコミュニティへと置き換えていけば、都市の人も参加しやすく、長期的に育てるシステムへと成長していけます。

古田: システム論的に言うと、豊かさの定義や考え方が多様化しつつあると感じています。バブル崩壊やリーマンショックを経て、多くの人が、実体のない効率優先で貨幣経済に限界を感じ始めています。その反動として、効率だけでははかることができない豊かさを、都市以外のところに求める人が増えているのでしょう。

スキルや時間を社会のために生かす企業人が増加中

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小松: 今回の震災への対応を見ていて、個人だけでなく企業も現場を含めて大きく変わったと実感しました。ある重機メーカーは、震災後に社を上げて中古機材を被災地へ送っています。「新しいものを売って稼ぐ」のが従来の一般的な企業論理でしたが、まったく逆の発想で復興を支援しています。また、ある宅配会社は、一営業所が独断で被災地での救援物資の仕分けや配送を行ったところ、本社が追認して支援に取り組んでいるそうです。先ほど、朝大学に来るのは会社で少し浮いている人たち、というお話がありましたが、企業がそういう人材を求め始めている事例なのだと感じました。

猪尾: 大企業で働く人にとっても時間の使い方が多様化しつつあり、会社にいる時間と自らのスキルを社会のために生かす時間を両立してよいと思いますし、その一つが朝大学なのではないでしょうか。また、当社が行っているファンドの一つにカンボジアにおけるマイクロファイナンスがありますが、パートナーとして連携しているNPO「リビングインピース」のスタッフの中には、大丸有エリアの会社員としてそれぞれの仕事を持ちながら活動しているメンバーもいます。このように、仕事とは別の場で活動する人のスキルを生かしたネットワークを、企業がいかに活用していくかが次の段階です。

東南アジアカンボジアのマイクロファイナンスファンド

古田: 企業によるCSRの取り組みも、かつてはメセナと呼ばれて利益の一部を社会へ還元する手法が主流でしたが、今は本業を通じて社会を変えていく動きが本格化しています。また、知識労働者がスキルや時間を生かして社会貢献を行う、プロボノ*という新しいボランティアの手法が浸透し始めていて、奨励する企業もあります。

*プロボノ(Pro bono):語源はラテン語の「公共善のために」を意味する「pro bono publico」。各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動全般、またはそれに参加する専門家自身のこと。

小松: ある種の人材登録バンクのような仕組みが必要ですね。地方には魅力にあふれた人物が、都会にはスキルや能力に長けた人材が多い。地方の「人物」には最先端のスキルを身につける時間がなく、国や自治体の助成金一つ取るにしても申請書の書き方や会計申告で行き詰ることが少なくありません。一方、都会には仕事を通じてそうした作業を日常的に行っていて、週末は空いているという「人材」が豊富なんです。こうした人たちをうまくマッチングすれば、地方の価値の事業化につながる可能性が高まるはずです。

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3. 持続的な活動には価値付けが必要

3. 持続的な活動には価値付けが必要

プライベートでも仕事でもない「第三の領域」を模索する個人や企業が増えつつある。その一方で活動を持続的に発展させるには、魅力的なミドルウェアを見出して価値付けすることが必要だ。

企業が「第三の領域」を模索し始めた

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曽根原: 今は、個人や企業が、サードプレイスのような第三の領域を模索している過渡期ではないでしょうか。たとえば、私たちが進めている「企業ファーム」という事業は、農村の耕作放棄地を企業に活用してもらうために両者の受け入れ体制を整え、企業の社会貢献や福利厚生、農業ビジネスへの参入などを後押しするもので、一種のサードプレイスづくりです。このほかにも、1都10県を中心とした「関東ツーリズム大学」や「えがお大学院」という農村活性化の活動を支援する研修制度を設けています。こうした試みが根付いていけば、社会や人のマインドは大きく変わると信じています。

小松: 第三の領域のあり方を探るというのは、道路でいえばバイパスづくりに似ています。初めのうちは従来の行き方がかなりのシェアを占めていますが、従来の国道や県道を使う以外に第三の道があり、そちらの方がメリットが大きいと知るとたくさんの人が集まってきて、結果的に、時代にあった道路利用への誘導と、従来道路の再構築が起きるかもしれません。

魅力的なミドルウェアを見つけ出そう

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古田: 第三の領域を持続的に発展させていくためには、より多くの人を巻き込む必要があります。そのためには、活動に価値を与えていかなければならない。私はそれを、ソフトでもハードでもない、いわば「ミドルウェア」と考えています。このミドルウェアとはハードやソフトに意味をもたせる、「ストーリー」とか「舞台設定」のことです。以前、岩手県にある古民家を旅館に再生したいという相談を受けました。そのときに、ただ再生しただけではまた飽きられる時が来てしまう。ポイントとなるミドルウェアになったのが、ほかでもないその屋敷でした。もともと庄屋の屋敷だったので、「庄屋さまになれるお屋敷」という意味を与えたのです。そして、決められた料金体系ではなく、支払う料金によって宿泊者は、お屋敷に住む庄屋にもなれるし、お屋敷で働く小作人にもなれるようにしました。庄屋になれば優雅な生活を楽しめますが、代金は高い。安く泊まれる小作人には、風呂焚きや飯炊きが待っています。値段は提供されるサービスだけでなく、その地域の「庄屋のお屋敷」というストーリーの一部となる、というユニークな体験で価値付けできるのです。こんな発想は、震災復興にも生かせると思いますよ。

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猪尾: 私は被災地応援ファンドの仕事で、被災した宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市へ行ってきました。あの辺りは「気仙」と呼ばれる地域で、仙台市からも盛岡市からも遠いせいか独立の気風が強いのです。そこで出会った方々は、地域を第一に考え、愛していて、本当に素晴しい経営者の方たちでした。自分たちで立て直していく、という強い意志を肌で感じました。震災復興を機に農作物の畑、醤油の蔵など、生産物だけでなく「気仙」という生産の場を全国に知ってもらうのに、ミドルウェアによる価値付けは有効ですね。

古田: 第三の領域とはいえないかもしれませんが、ソーシャルビジネスを起業する人が増えています。ところが事業として安定化できている事業家が少ないのも現実です。ここでも安定化させるために、ミドルウェアで事業に価値を付けていく、という発想が有効だと思います。

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4. 大丸有が持つパワーを、被災地を含めた日本全体へ広げる

4. 大丸有が持つパワーを、被災地を含めた日本全体へ広げる

自宅でも職場でもないサードプレイスをいかに構築していくかが今後の課題だ。大丸有のブランド力を保ちながら門戸を広げていくことでより多くの人が集うとともに、このエリアが持つパワーを日本全体へ広げていくことができるだろう。

エコッツェリアに期待するサードプレイスとしての役割

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小松: 震災復興に対して大丸有に何ができるかを考えたとき、被災地で困っている人と、支援したい人との間で情報をマッチングする機能を担うことが求められているのではないでしょうか。私は、サードプレイスがその役割を担うべきであると考えています。たとえばエコッツェリアには企業のCSR担当者や、ここにいるNPOや地域プロデューサーのように自由な立場の人が日常的に来ています。こうした人たちで構成されるコミュニティで、情報交換やマッチング、政策策定を進めて発信することで、行政や企業とは一味違った社会へのはたらきかけができるようになります。

曽根原: サードプレイスをいかに設計するかが大事になってきます。たとえば、アメリカには行政の市役所とは別に、NPOが運営する市役所を置く市があるそうです。こうした事例は、大丸有におけるサードプレイスのあり方を考えるヒントとなります。

古田: 環境首都として有名なドイツのフライブルクでも、行政は場となるハードウェアを提供し、管理や責任は市民にまかされています。エコッツェリアでも、[[丸の内朝大学]]がすでにそれに近い形になりつつあります。

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2011年5月27日に丸ビル内マルキューブで開催された「青空市場×丸の内マルシェ」

猪尾: 朝大学や、エコッツェリアの隣にある、私たちのオフィスがある「日本創生ビレッジ」は、知り合いにふらっと出会ったり、出会って仕事の悩みを交換したり、純米酒のプロを通じてテナントの飲食店と仲良くなったり、職と食と遊びが密接にかかわりあっているところが、大丸有エリアの魅力と感じています。サードプレイスは遊びの部分から生まれることも多いので、人やオフィスが密集していることの意味は、とても大きいですね。

小松: 食と農の分野では、「[[食育丸の内]]」プロジェクトの一環として丸ビルで開催された「青空市場×丸の内[[マルシェ]]」がその好例です。丸の内で働く人に国産の食材を紹介する「市場」を開いたところ、生産者、消費者、そしてレストランシェフや社員食堂の担当者が集い、交流する場となりました。都市には旬のおいしい食材を求める人が多く、地方には無農薬などにこだわる生産者がたくさんいる。このマッチングができたことで、需要と供給そして人のつながりといった関係が成り立つ好例でしょう。

「種麹」となる人を育てる

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曽根原: 大丸有でのサードプレイス設計を考えたとき、次に求めたいのは「ハブ」としての役割です。私たちNPO含めてコミュニティはそれぞれ単独での活動が中心でした。コミュニティのハブともいうべき場があれば、そこに人と知恵が集い、活動の輪が広がり、都市と地方との交流も加速すると思います。大丸有は、既に都市と地方をつなぐ国内の結節点と、国内と海外をネットワークする国際的な結節点という、物理的な2つのハブ機能をもっています。その立地性に基づいて蓄積されたノウハウと人的ネットワークを、コミュニティに対して提供していただけたら、将来的には大丸有のサードプレイスをベースとした政策提言や事業を行う構想がでてくるかもしれません。アメリカの「第2自治体」を日本で具体化される環境が整いつつあると感じます。

猪尾: 大丸有には、日本社会の中長期的なあり方についてふだんから考えている人や、よいものを知っている目利き・通がたくさんいます。エコッツェリアや朝大学のように定期的に会う場があることで、人と人のつながりが点から面へと発展していきます。また、ここで働き、集う人のスキルを、お金とともに地方へ提供していけば、この地域が潜在的に持つパワーを、被災地を含めた日本全体へ広げていくことができると感じています。

小松: 大丸有では、さまざまな主体が20年以上もまちづくりなどの活動を行っているので、ブランドとしての価値はできています。[[エリアマネジメント]]を進めていく上での次のステップは、大丸有を起点として周辺の地域、例えば、神田、銀座、日本橋等を包み込みながら連携する「母都市」のようなエリアを目指すことでしょう。それが、より開かれたサードプレイスを構築していく際のポイントにもなります。

古田: 千葉県香取郡にある寺田本家という清酒の醸造元では、種麹が強いため、ふつうの蔵元の麹室では禁止されている飲食ができます。大丸有を一つの室として見たとき、強い種麹となる存在を担う人を育てることが、室の再生・活性化につながっていきます。大丸有は少し敷居が高いですけれど、一度入ってみると面白いつながりがあることわかります。ブランド力を維持しつつサードプレイスとしての入口を示せば、もっといろいろな人そして知恵が集まってくるでしょう。丸の内朝大学には、自由な空間と人的ネットワークがあります。この場を大丸有全体に広げていくことができれば、魅力的なアイディアが生み出される、知恵と人が集まるまちになると思います。

猪尾愛隆

猪尾愛隆(いのお・よしたか)

「もっと自由な音楽を」という想いで設立された、音楽ファンドを運営するミュージックセキュリティーズ(株)取締役。大学院卒業後、(株)博報堂に入社。2005年に退社の後、同社証券化事業部担当として現職に。現在では、音楽に加え、飲食店や酒蔵、農業、スポーツ、途上国のマイクロファイナンスなど多様な分野の最前線で戦う事業者に必要な資金を個人が出資できる「セキュリテ」を運営中。東京都出身。
http://www.musicsecurities.com/

小松俊昭

小松俊昭(こまつ・としあき)

金沢工業大学研究支援機構 産学連携室コーディネーター、合同会社「家守公室」代表。日本開発銀行ならびに日本政策投資銀行でロス勤務、地方開発部、交通・生活部、北陸支店勤務などを歴任した後、金沢工業大学へ出向。2006年に日本政策投資銀行を退職して現職に。地方の歴史や文化に根付いた、地域資源を生かす「地域資源活用型産学連携」プロジェクトの実現を目指して、さまざまな活動を展開している。大丸有[[「都市の食」ビジョン]]検討会座長。埼玉県出身。
http://www.llc-yamori.jp/index.html

曽根原久司

曽根原久司(そねはら・ひさし)

大学卒業後、金融機関をはじめとする企業経営コンサルタントを経てNPO法人えがおつなげて代表理事に。地域共生型の市民ネットワーク社会づくりを目指して、まちづくりや環境保全、保健・医療、自然教育など広範な事業に取り組み、2009年には関東ツーリズム大学を立ち上げる。内閣府地域活性化伝道師。長野県出身。
http://www.npo-egao.net/

古田秘馬

古田秘馬(ふるた・ひま)

プロジェクトデザイナー、株式会社umari 代表。慶応大学中退。1999年にノンフィクション本「若き挑戦者たち」を出版。2000年渡米、NYにてコンサルティング会社を設立。2002年より東京に戻り、山梨県・八ヶ岳南麓の「日本一の朝プロジェクト」、大丸有の「丸の内朝大学」など、数多くの地域のプロデュース・企業ブランディングなどを手がける。2009年農業実験レストラン「六本木農園」を開店。東京都出身。
http://www.umari.jp/

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編集部から

今日のお話から、都市と地方の新たなつながりをつくる努力が確実に実を結びつつあることがわかった。この動きを加速するのが、サードプレイスに代表される自由な場づくりだ。震災を契機に、都市と地方の関係を取引から信頼に基づくものへと高めていくことが、両者の持続可能な発展につながっていくのではないだろうか。

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