免震は、建物を地面から浮かせて免震装置を設置することで揺れを伝えないようにする技術だ。地震が起こってもビル自体の揺れを小さくすることができるため、耐震技術の筆頭と目されている。一方で、マンションなどの場合は安全性だけでなく、居住性や居室プランの自由度の高さが大きなポイントとなる。このようなニーズを満たす免震技術として、住戸内に柱や小梁の出ない壁式免震構造があるが、従来は主に低層マンション向けに用いられていた。その常識を破ったのが、早くから制振・免震技術の研究に着手し実用化してきた鹿島建設だ。
鹿島の壁式免震構造「HIスマートウォール」は、壁式構造の建物の中央部に、超高層マンションで多くの実績をもつ「コアウォール」をあたかも大黒柱のように配置。高層マンションにおける耐震性の確保はもちろん、広々とした室内空間を得ることが可能となり居住性のよさを実現した。プランの自由度の高さは、天井までの大きな窓を設けることもできるほどだ。また、免震装置を設置することで、地面から建物へと伝わる揺れを大きく低減する。すでに東京・板橋区にある14階建ての分譲マンション「加賀レジデンス」をはじめとして、各地に実施例がある。
東京・豊島区高田で建築中のマンション「桜プレイス」には、柱や梁がなく開放的で自由度の高い居室や、重厚になりすぎないすっきりとした外観デザインなど、「HIスマートウォール」のもつ長所が存分に生かされている。2012年に完成する予定だ。また、室内に柱や梁が出ない「HIスマートウォール」には、将来のリフォームやリニューアルに対応しやすい良さがある。さらに、不整形な形状の建物にも導入しやすい。
これまで見てきた各社に負けず劣らず、多様な耐震・制振・免震技術をもっているのが大成建設だ。同社が誇る免震技術の「ハイブリッドTASS構法」は、すべりを併用した複合免震構法により強い地震の揺れを低減する効果があり、これまでに100件近い採用実績がある。このほかに、地震の大きさに応じてオイルダンパーの性能を変えることで高い免震効果を得る「セミアック免震構法」や、既存の建物を基礎や中間階で免震化する「免震レトロフィット構法」、「超高層免震技術」などがある。
制振技術では、既存超高層ビルの柱や梁を補強しなくても地震時の揺れを低減することが可能な「T-RESPO構法」や、建物にかかる地震や風のエネルギーを吸収して揺れを緩和する制振機構の「TASMO」、「ハイブリッドブレースダンパー」など幅広い技術をもつ。また、既存建物の耐震補強技術についても「あと施工アンカー」を使わない「TAFF構法」や、外部補強構法、デザイン性の高い「格子型ブロック耐震壁」などがある。同社ではこれらの耐震技術の特長や効果、導入事例などを紹介するとともに、耐震診断を受けたい施主の入り口となる専用サイトの「耐震ネット」を開設しており、インターネットによる顧客の取り込みにも積極的だ。