過去のアーカイブ大丸有 エコまちづくり解体新書

1. インフラ復旧から救援物資の船舶輸送まで

届け!大丸有からの想い――本業を生かした復興支援

(日本郵船、鹿島建設、大林組、清水建設、戸田建設、竹中工務店、大成建設、JR東日本、東京ガス、NTT、ニッポン放送、三菱電機、シャープ、日本政策投資銀行、農林中央金庫、プロミス、大和証券、パナソニック、イトーキ、東京交通会館、トーイズ、三菱地所、日本製紙、丸紅、日本郵政、JXホールディングス、全国農業協同組合連合会、資生堂)

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、世界最大級のマグニュード9.0という激甚な地震に加えて、その引き起こした大津波による人的・物的被害は未曾有のものとなり、日本の社会と経済に大きな打撃を与えた。しかし、この試練に対して官民さまざまな主体による支援の輪が広がっており、復興を進めていく上で大きな役割を果たしている。大丸有に立地する企業やエコッツェリア協会の会員企業等による本業を生かした支援の取り組みをレポートする。

1. インフラ復旧から救援物資の船舶輸送まで

■ モジュール船で被災地向けの食料品や衛生用品などを輸送

fukko_01.jpg
fukko_02s.jpg 救援物資を積み神戸港を出る「YAMATAI」(写真提供=日本郵船)

2011年3月27日、青森県の八戸港に一隻の大型貨物船が到着した。船の名は「YAMATAI」。プラント設備などの重量貨物を輸送するために建造された「モジュール船」と呼ばれる船で、日本郵船の100%子会社である日之出郵船が所有している。今回「YAMATAI」が積んできたのは、東日本大震災(以下「震災」)による被災地向けの食料品や乳児用品、衛生用品など約146t分の救援物資だ。震災発生を受けて日本郵船は「YAMATAI」の被災地支援活動への投入を決定し、すぐに韓国から日本に呼び寄せた。

日本郵船東日本大震災

同社は(社)日本経済団体連合会(経団連)を通じて被災地自治体と救援物資の受け入れなどについて協議し、経団連とともに「救援物資ホットライン便」を立ち上げた。経団連が1%(ワンパーセント)クラブとも連携して会員企業やウェブサイトにより救援物資の提供を呼びかけるとともに、日本郵船グループ各社にも物資の提供・手配を依頼して救援物資の受付を開始したところ、たちどころに多くの物資が集まった。

経団連1%クラブ

fukko_03s.jpg fukko_04.jpg
八戸港では感謝の声とともに出迎えられた

こうして多くの企業や団体から提供された救援物資は20フィートコンテナにして約24本分にもなり、「YAMATAI」に積み込まれて神戸港を出港。八戸港到着後、船上でコンテナからトラックに積み替えられて陸揚げされ、翌28日中に青森、岩手、宮城各県の被災地へと届けられた。27日の入港セレモニーには、青森県の三村申吾知事や県関係者、船長以下乗組員らが出席。同県の担当者は、「食料品や日用品などの供給が滞るなかとてもありがたく、勇気づけられました」と振り返る。

一方、同社の社員からも「私たちはメーカーと違って自社の製品を提供することはできませんが、『モノを運ぶ』という本業によって被災地のお役に立つことができて大変にうれしく思っています」という声が上がっている。同社では今後も、海外からの被災地向け支援物資の輸送協力や、日本郵船氷川丸でのチャリティー蚤の市(6月4日)開催などの活動を行う。

■ インフラ復旧の要望に応えるために

fukko_05.jpg
fukko_06.jpg
被災地ではがれき除去などのインフラ復旧作業が日々進められている(写真はいわき市の除去前後の様子=国土交通省資料より、本文とは関係ありません)

今、このような本業を生かした被災地支援に多くの企業が取り組んでいる。まず急がれたのが被災地でのインフラ復旧。ゼネコン各社は震災発生すぐに対策本部を立ち上げるなどして、現地取引先からの支援要請に応えることはもちろん、被災地でのプレハブ建設や救援物資の輸送など建設土木分野ならではの支援を行っている。

鹿島建設は、インフラなどの構造物や取引先の建物の被災度調査と応急対策、そして復旧復興支援などを行っている。震災翌日に支援物資を積載したトラック4台を被災地へ送り出したのを皮切りに、震災発生後2週間で約200台のトラックなどで飲料水、食料、日用品、燃料、資機材などの支援物資を届けた。また、国や自治体と災害協定を結んでいる業界団体を通じて、テントやブルーシート、仮設トイレの資機材や食料品などを、被災者や自治体などへ提供した。現地へ派遣した社員の数は延べ3,700名を超え、同社東北支店の社員とともに復旧復興対応に従事。同社が請け負った新幹線や高速道路などの復旧作業は終わったものの、生産工場などでは生産再開に向けた作業を続けている。

鹿島建設

大林組は、テレビ会議システムによる各店との通信を開始。建物診断状況の確認や資機材の配送計画、現地の必要物資の確認などを進め、宮城県南三陸町での仮設トイレの設置をはじめとするその後の支援につながる体制づくりを早くから行った。清水建設は、「震災対策要綱」に基づき支援物資や資機材の輸送、被災建造物の診断調査、応急復旧・復旧対策工事などの活動を実施し、4月1日に「東日本大震災復旧対策室」を設置して全国的な支援体制を整えた。また、被災建造物の診断調査について3月31日までに、同社の施工建造物を中心に約5400件の初動調査を実施した。

大林組清水建設

fukko_07.jpg
震災で破壊された仙台駅のホーム(国土交通省資料より)

戸田建設も本社に災害対策統括本部を立ち上げ、取引先を中心とする被災状況の調査や、ダンボールシェルターの輸送などを行った。竹中工務店は名古屋と大阪から東北支店災害対策本部に支援要員を派遣していたが、4月1日以降は東北支店を増強して災害対策体制から復旧対応体制へのシフトを図っている。大成建設など他のゼネコンも同様に復旧支援へと軸足を移しつつある。

戸田建設竹中工務店大成建設

ゼネコン以外では、JR東日本が震災で破壊された駅舎やホーム、電柱・送電線などの修復に全力をあげ、ゴールデンウイーク初日の4月29日に東北新幹線の全面復旧にこぎつけた。また、東京ガスは管内の一部地域でガスの供給を停止していたが、倒壊した家屋などを除くほとんどすべての顧客への供給を、震災発生後約1週間で可能にした。

JR東日本東京ガス