今回の震災では地震や津波だけでなく、原子力発電所の損傷とそれに伴う風評被害など、これまでにない被害が生じている。JXホールディングスは東北・関東地方の農家を支援するために、原発事故に伴う風評被害を受けた地域産の野菜を使用したメニューをJXグループ本社ビルの社員食堂で提供している。また、全国農業協同組合連合会(全農)から農産物の提供を受けて同ビル内で社員向けに販売している。農産物は全品買取りで、購入代金の支払いや販売はすべて現金。社員が毎週交代で販売員を務める。「自ら農産物を販売することにより、他人事ではないということを実感し、会社での販売会以外でも被災地の農産物を積極的に購入するようになりました」(JXホールディングス総務部談)。
自社も仙台製油所をはじめとする石油製品供給インフラに打撃を受けた同社が被災地支援に力を入れるのは、JXグループ行動指針「EARTH〜5つの価値観」の一つである「社会との共生」に基づき、風評被害を受けている農家を支援しようと考えたからだという。同社では今後も中核3社と連携して、こうした取り組みを続けていく方針だ。
物やお金ではなく、メンタル面での支えも求められている。[[丸の内朝大学]]は5月3・4の両日、被災地のメンタルケアを目的とした特別出張講座「心と体を整えるヴォイストレーニング」を仙台市で開催した。また、化粧品大手の資生堂の販売会社である資生堂販売東北支社は、避難所の要望に応じてビューティーコンサルタントが無料で化粧サービスを実施する「ビューティーボランティア活動」を福島、仙台、盛岡で展開している。女性だけでなく男性や子どもにもハンドマッサージやドライシャンプーの実習を行うなど、化粧品会社ならではの支援だ。
企業などによる復興支援は次の段階へと着実に進みつつあるが、課題もある。被災地へ救援物資を届けたある企業の担当者は、刻々と変化するニーズを把握するために現地との情報共有が必要であると話す。被災地のニーズに合った支援をタイムリーに、本業を生かして行うことが企業に求められている。
また、1社では取り組めない活動も、連携して実施する等の選択肢もあり、企業連携を進める、[[丸の内地球環境倶楽部]]の活動にも、期待したい。
東日本大震災の被災地に向けたさまざまな支援を総覧してみて、多くの企業がSR(社会的責任)を果たそうと奮闘している現状が見えてきた。一方、被災地では災害廃棄物処理などの難題が山積みで、被災者の生活再建や災害に強いまちづくりを阻んでいる。電力不足も深刻な問題だ。企業の取り組みを後押しするためにも、復興支援の枠組みが早急に示される必要がある。