シリーズ知恵ブクロウ&生きものハンドブック

丸の内に大自然?3年の調査で思うこと。

さえずり館に「丸の内の自然を探そう!」コーナーが常設されて、早や3年。当初から丸の内を調査して感じることとは――

なぜ?丸の内で生きもの調査!?

丸の内で働く多くの人に、この街にどんな生きものがいるのか紹介しよう!というのが、「丸の内の自然を探そう!」コーナー設置の、そもそもの目的。
2009年から毎月、丸の内の生物調査を行い、その調査結果をテーマを変えて、館内で展示しています。

丸の内は「とても面白い」!

なぜなら、日比谷公園や皇居などの緑と、お濠などの水辺が、たくさんの生きものにとって貴重な生息地となり、街の中心部とも有機的につながっていることが、調査の中でわかったからです。

例えば、有楽町駅前にたくさん植えられている樹木、「ベニバナトチノキ」(写真左下)。
5月の開花時期には、どこからともなくやってくるたくさんのハチやアブが、蜜を食したり集めたりしている光景を目にすることができます。 そして、そこから東京駅方面に歩くと、街路樹は「プラタナス」が多くなります。
その中に、まれに洞のある木がありますが、そこはスズメやシジュウカラにとって"優良物件"。毎年、草の茎などの巣材を運ぶ、彼らの姿が確認できます(写真右下)。

さて、歩道と車道の間の植え込み下に目を向けてみましょう。
ここはあまり手入れされないことから、実は野草天国! セイヨウタンポポやオオイヌノフグリなど、様々な野草を見つけることができます。

ある時、イヌガラシという草が生えていたので観察していたところ、幼虫がその葉っぱを食べて育つ、スジグロシロチョウ(モンシロチョウに黒いスジが入ったような姿の蝶)が産卵しているではありませんか。それを見つけた時の、感動と言ったら!

また、他のスタッフは東京駅前で、鉄塔にとまるハヤブサを目撃したり、ハシブトガラスがお濠で騒いでいるのでよーく見たら、オオタカが悠々と飛んでいたり・・・丸の内での感動体験は、例を挙げればきりがありません。

大都心からみえること

調査を続けてみて、まずわかるのは、大都会・丸の内においても、大自然の中と同様に、自然の摂理がしっかり働いているということ。
時代が大きく変わりつつある今、「生物多様性」というキーワードは、決して大自然だけの話ではなく、日本の人口の約8割が生活する都市部でこそ、重要な意味を持っていると感じています。

これからも丸の内の自然の変化を通じて、その不思議や魅力を皆さんにお伝えしていきますので、どうぞお楽しみに!

奇二 正彦
奇二 正彦(きじ まさひこ)

立教大学文学部卒。TLC INTERNATIONAL SCHOOL OF ART(ニュージーランド)、自然学校指導者養成講座、自然映像プロダクションなどを経て、(株)生態計画研究所主任研究員。立教大学非常勤講師。専門は生物多様性調査、環境教育、展示企画デザイン。
株式会社 生態計画研究所
水元かわせみの里のブログ

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