イベント特別イベント・レポート

【レポート】都市の生物多様性実現に向けて

第2回 都市緑化における生物多様性に配慮した新たな評価の方向性についての検討委員会 1月26日開催

千代田区がすすめる「千代田区いきものさがし」のリーフレット

行政が進める都市緑化と生物多様性

1月26日、第二回「都市緑化における生物多様性に配慮した新たな評価の方向性についての検討委員会」(以下「検討委員会」)が開催されました。1月13日に開催された第1回では、国、都、区の緑地行政関係者、民間からはディベロッパーなどの開発のステークホルダーが参集し、主に民間サイドからの都市開発における生物多様性に配慮した緑化の可能性と問題点を議論しましたが、第二回目は行政サイドの取り組みと今後の課題について討議しました。

行政側の報告とともに、都内で複数進行しているさまざまなプロジェクトに関わる委員らからの忌憚のない意見が出され、活発な議論が行われました。そこで改めて確認されたのは、生物多様性を評価する、より広範かつ柔軟なフレームワークを設定する必要があるということでした。出席者は環境省、東京都、千代田区のほか、都市開発、不動産に関わる民間企業数社。進行は事務局の長谷川氏が務めました。

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東京都の取り組み―誘導政策とガイドライン

東京都の取り組み―誘導政策とガイドライン

竹芝の都市再生で設置される予定の「スキップテラス」のイメージ(東急不動産、鹿島建設による「資料4 都市再生特別地区(竹芝地区) 都市計画(素案)の概要」(平成26年10月21日)から抜粋)

東京都からは、都市整備局・緑地景観課長の菊地正芳氏、同開発企画課長の吉野敏郎氏、環境局自然環境部緑施策推進課長の内藤義和氏の3氏が報告を行いました。東京都が現在進めている緑化行政は、連携、ネットワーク、生物多様性をキーワードに有機的な緑地造成への向けられているそうです。

菊地氏からは「公開空地等のみどりづくり指針」についてのレポートです。現在東京は開発による緑地が増加傾向にありますが、緑地同士、あるいは1~2km程度の近距離内で点在する拠点となる大規模緑地とのネットワーキングが今後ますます重要になると考えられているとのこと。
そのため事業者には「構想段階から緑のネットワーク形成に配慮」することと、「みどりの計画書」の作成が都から求められていますが、「現状規制ではなく、お願いレベル」であり、今後さらに積極的に指導・誘導する施策をとりたいと菊地氏。課題としては緑地ネットワークによる生物多様性のモニタリングの実施や行政区分をまたぐ際の対応などが挙げられました。今年度には生態系を守るための緑地保全について調査報告が出されるそうです。

吉野課長からは、「生物多様性」を主眼にした具体的な事例紹介として、大手町タワー、ソラシティ、ワテラスなどの実績と、今後の再開発プロジェクトの概要が報告されました。都は、事業者間の調整と効果の評価を行って有機的な緑地の実現を後押ししています。評価は、具体的には容積緩和などの形となります。
今後のプロジェクトでは竹芝と虎ノ門が紹介されました。竹芝では低層階の階段状「スキップテラス」に造成される立体的な緑地と、生物多様性に向けた8つのプロジェクトイメージがポイントになります。また、虎ノ門では高低差を生かした緑地化や交流や環境教育を行う広場の創出が眼目となるそうです。虎ノ門は、特に環状2号線、桜田通り、外苑東通り、六本木通りに囲まれる「大街区」でこの10年で緑地が1.4倍に増加しているそうです。吉野氏は「これからは緑地の量ではなく質が重要になる。生物多様性に配慮した周辺とのネットワークを形成したい」と話しました。

上記2氏は都市開発上の運用・指導を行う都市整備局でしたが、環境局は緑化行政の枠組みを示す立場にあります。内藤氏からは平成24年に策定された生物多様性の保全に向けた基本戦略の概要を中心とする発表がありました。そこでは「まもる」「つくる」「利用する」3つの切り口があり、現在中心となっているのは「つくる」。そして、「つくる」では「在来種」植栽を強く推進しています。イメージとしては「緑地間をつなぐ在来種植栽」であり、これにより昆虫などの在来生物の生息域が拡大することが期待されています。しかし、在来種導入は種の選定、管理方法が不分明であり、かつ「どのような緑地を目指せばよいのか、その理想像がない」という問題があるとのこと。そのため、都では在来種選定のガイドラインを策定しました。そこでは4つのグレード(下図表)が示されていますが、「100%(1)の在来種でなければならないというわけではない」としつつも、「もっとも必要とされるであろう(2)(3)の分類で品種をリスト化できていない」のだそうです。

生物多様性に配慮した植栽植物の分類(当日のプレゼン資料から抜粋し作成)

また、在来種の保全普及を目指す「江戸のみどり復活事業」も紹介されましたが、「在来種を選定することによって、"こんなにいいことがありますよ"という具体的な効果が見えてきていないことが一番の課題」であると内藤氏。来年度からの事業では、実際に在来種を使った緑地造成を行っている事業者と協定を結び、さまざまな形で実証調査を行う予定だそうです。

千代田区の報告―市民参加型の生物多様性実現

千代田区の「千代田生きものさがし」のリーフレット

千代田区からは環境案全部 環境・温暖化対策課長の菊地洋光氏、まちづくり推進部 景観・都市計画化 課長補佐の小俣富士夫氏から、千代田区がオンタイムで進める生物多様性の取り組みと課題について報告がありました。

菊地氏は2013年に策定された「ちよだ西部多様性推進プラン」について、その概要と成果を報告しました。区としては皇居を中心とした緑地ネットワークを推進していきたい意向で、2020年までの短期目標、2050年までの長期目標、10項目の行動計画が策定し活動を展開。しかし、区民への認知が低いことが課題だそうです。2014年は指針に基づき参加型のモニタリング調査「千代田区いきものさがし」を実施しましたが、「参加は限定的」であり、今後さらに参加型モニタリングの拡大を図りたいそう。さらに、「自治体、民間が多数モニタリング調査を行っており、その内容は重複しているところが多々見受けられる。効率的・効果的に行うためにも、事業者、自治体が連携し、モニタリング調査のネットワーク化、データを共有することが重要になるのではないか」と訴えました。

小俣氏からは行政側の課題が提示されています。それは、「緑地化の推進は民地が中心で、区有地、都有地などの公有地をどのように利用するのか」という点が明らかでないこと、「行政内部の連携が不十分であること」などが挙げられました。それは例えば区の環境部と道路行政のつながりが取れていないことなどのようなこと。また仲通の例を挙げ「快適なすばらしい通りとして延伸を進めたいが、維持管理を含め公としてどう関わるかが不分明」であり、かつ「こうした取り組みをどう評価するのかといった課題もある」と話し、今後さらに検討を重ねたいと話しました。

モニタリング調査のこれから

続いて井上委員から、三菱地所が開発を行う「大手町1-1計画」についての概要と、第1回でも取り上げられたモニタリング調査の概要と方向性についての報告と提言がありました。大手町1-1計画では、2棟の間に「緑豊かなコミュニティ広場を作り交流を図る」ほか、広場と連動し、環境ビジネス創発、交流啓発機能を持つ「ビジネス・エコシティ・センター」(仮称)を整備するそうです。
モニタリングについては、前回示されたビル管理業務としてのモニタリング、市民参加型のモニタリングの方法が改めて提示され、「東京全体、日本全体の調査ともリンク」していくという大きな枠組みが示されました。オープンプラットフォームでのデータ共有のメリットとして、ユーザーインターフェースが一元化し参加が容易になること、既存調査とのリンクにより種々の調査研究への活用もあるとしています。

井上委員は、モニタリングにおいては、「データをどのように使うのか?がもっとも重要な問題である」とし、教育分野での利用、サイネージほかさまざまなメディアのコンテンツへの転用、人材育成支援ツールとしての利用などを例示しましたが、「今後さらに皆さんのご意見を伺い、議論を深めたい」と話しました。

課題と方向性が示されたディスカッション

報告を受けて、座長の横張氏から、在来種の定義、モニタリングの目的、住民参加型の手法の3点についてコメントがありました。在来種については「一部で生物多様性と在来種が"イコール"のような論調があるが、多様性とは『さまざまな種が安定的持続的にひとつの生態系を構築している』ことを示すものであり、都市という特殊環境下では外来種の意味も変わってくる可能性がある。そこに留意したい」。モニタリングについては「達成したい目的の検証だけではなく、良いと思われたものが本当に"良い"のか、悪いとされているものが本当に"悪い"のか」という点、都市という特殊環境下で侵略的とされる外来種が、本当に侵略的な挙動をとるのかといった調査、生物地図、植生地図の変化が環境変化の指標になっているように「環境変化のインジゲーター」としてのモニタリングの必要性などを指摘しました。また、住民参加型モニタリング調査では、モチベーションアップのための施策が必要であるとし、「お願いします、ではただの下働きみたいになってしまうので、住民が生物を見つけて"してやったり!"と思えるような形も考えてみてほしい」と話しました。

続くディスカッションでは、委員から多くの質問、意見が示され、活発な議論が交わされました。慶應大学環境情報部教授の一ノ瀬友博氏からは、在来種利用推進に伴い「予期されない山採り(山野から自然の樹木を取ること)が増えるのではないか」というリスクについて疑義が出され、「在来種以外の幅広い種の選定ができるほうが良い」とし、都の分類による(2)のリスト化が必要ではないかという質問がありました。これに対して東京都・内藤氏は「山採りは大きな課題のひとつとして認識しており、フォーラムなどでも取り上げている。多摩の林業関係者からは『山取りした木が都心のような環境で根付くのか』という質問も出されている。今後検討を重ねたい」「リスト化は学術的な根拠に欠けるため難しいのが現状であり今後の課題である」という回答がありました。

原口委員からは「ようやく生物多様性に配慮した緑地政策が2次元、すなわち設計段階まで来た。今後『構造』という3次元、時間軸を持ち込んだ『ライフサイクル』『維持管理』としての4次元まで持っていく必要がある」とし、そのためにモニタリングデータの収集と活用が重要であるという指摘がありました。また、都市における生物多様性には「本には載っていない現象が多く見られる」と話し、植栽が整っても猫がいるだけで集まる小型鳥類の種類がまったく違う例を挙げました。「環境を整えても来ないなら、『来ない』で終わるモニタリングではなく、その原因にも言及できる調査にしていくべきである」と指摘。 これを受けて東京都の菊地氏は「誘導する植生にしても、科学的な裏づけがあるとは限らず、実はモニタリングしなければ効果があるかどうかは分からない」という人為的な生物多様性の誘導の難しさを語り、改めてモニタリング調査の重要性を指摘しました。

このほかにも多数の意見が交わされ、1時間以上にわたる熱心な議論を受け、座長の横張氏は「自省を込めて言いたいのが、生物多様性を考えるときに、どうしても情緒的に"自然に近い"ことがうれしいのだろうと考えてしまうこと。しかし、生物にとって何が本当に重要で必要なのか、ドライに考え分析する視点も必要だ。情緒的ではない工学的な視点も盛り込んで考えていきたい」と締めくくりました。

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