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【レポート】林業再生へ、川上から川下がつながる『MOKU LOVE DESIGIN』

『MOKU LOVE DESIGN~木質空間デザイン・アプローチブック~』完成披露会 2018年10月18日(木)開催

イベントのリレートークの登壇者。(左上)農林中金 常務執行役員 岩曽聡氏、(右上)速水林業代表 速水亨氏、(左下)加藤木材社長 加藤政実氏、(右下)乃村工藝社 空間デザイナー 鈴木惠千代氏

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林業の再生は、日本の山野の復興という環境問題の解決、産業の再生など経済的な問題だけでなく、居住空間を木質化することで日本人のメンタルヘルスや健康などにも好影響を及ぼすなど、幅広い課題解決のレバレッジポイントになると考えられています。その一方で、木質建材の利用は一部にとどまっており、林業再生の道のりは遠いと感じさせる状況が続いていました

ある関係者がこう話しています。
「木材、木質建材が、川上から川下まできちんと一気通貫で語られたことがなかった。それが現状を突破するポイントになるのではないか」

農業は生産者から消費者の口に入るまでのストーリーが可視化され、消費者の意識も大きく変わってきました。水産業は流通業者が中心となって意識改善のとば口に立ったところと言えるでしょう。しかし林業は――?

その答えのひとつが『MOKU LOVE DESIGN ~空間デザイン・アプローチブック~』となるかもしれません。木質空間利用の事例集であり、「森から『空間デザイン』へのリレー」を一気通貫のストーリーで示した、おそらくは日本初の冊子。10月18日には、3×3Lab Futureで、そのお披露目会が開催され、インテリア、内装関係のデザイナー、クリエイターなどが集まりました。

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ウッドソリューション・ネットワークとは

ウッドソリューション・ネットワークとは

農林中金常務執行役員・岩曽氏

この『MOKU LOVE DESIGN』は、ウッドソリューション・ネットワークが手がけて発行されたもの。そもそもこのウッドソリューション・ネットワークとは何でしょうか。

農林中央金庫(以下、「農林中金」)が主導し、2016年に設立された、木質建材の利用拡大や、林業関連産業の発展を目的とした有志のネットワークです。同年10月に、東京大学「木材利用システム学付研究部門」の設立を支援したことと併せ、ウッドソリューション・ネットワークを設立。農林中金にとっても、林業の低迷は大きな問題であり、川上ではさまざまな施策を展開していましたが、川中・川下にも領域を広げるべく取組みを始めました。ウッドソリューション・ネットワークは、木材関連の幅広い企業、団体が参画し、27社・団体が加入(2018年10月18日時点、設立当初は23社・団体)。特徴はまさに川上から川下までさまざまなプレーヤーが参加していることにあります。農林中金は事務局を務めています。

3つの分科会を設け、幅広く、木材利用の拡大を推進。「構造材分科会」は、非住宅での構造材(建物を支え、構造をなす建材。木材の場合、柱や梁、桁など)の利用拡大を扱っています。ここで主眼となるのは中大規模木造建築推進。「相互理解分科会」は、木材供給から消費まで、川上から川下までのプレイヤーを通じた、相互理解を促す活動を展開。

『MOKU LOVE DESIGN ~空間デザイン・アプローチブック~』そして「内装材分科会」が、今回の目玉となる、「木質空間デザイン・アプローチブック」を制作・発行しました。このアプローチブックの対象は、主にインテリアを扱うデザイナー、プランナー、設計者などで、彼らを総称してクリエイターと呼んでいます。住宅・非住宅を問わず、内装に木質建材を使う・使わないという問題に対して、関心の高い施主はそう多くはありません。内装の建材はこうしたクリエイター側からの提案によるところが大きいと考えられており、そのため内装材で木質建材の利用を拡大するために、クリエイターをターゲットに据えました。

内装での木材利用は量の観点からは構造材に及びませんが、内装での木材利用を推進するのは「人々の感性に訴えかけることができるからだ」と、農林中金、常務執行役員の岩曽氏は話しています。
「消費者に訴えかけるためには、オフィスビル等非住宅分野での利用は非常に有用。日常的に触れることで、消費者、施主も木材の利用を考えられるようになる。そのためにはクリエイターが提案できる、したくなるようなきっかけを作れればと考えた。この冊子はそのためのものとなる」

設計者やデザイナーが「面白そう」「使ってみたい」と思ってもらえるようにすること。それがこのアプローチブックなのです。この制作には、4者協定(JA、農林中金、三菱地所、エコッツェリア協会の4者による農林分野で新たな価値を創造するための協定。2017年6月に締結)を背景に、木質建材利用のノウハウもあるエコッツェリア協会も全面的に協力しています。発表会の場が3×3Lab Futureになったのもそうした事情があるためです。また、この日は前半にメディア向けの記者発表会が行われ、林野庁 林政部 木材利用課長の長野麻子氏から応援のコメントが寄せられたように、林野庁からも大いに期待が寄せられています。

川上から川下をつなぐ熱狂のリレートーク

後半のデザイナー向け完成披露会には、およそ100名の参加者が集まりました。ウッドソリューション・ネットワーク会員企業を中心に、デザイナーだけでなく、流通関連の事業者からも多く参加しているのが印象的でした。ここでは「リレートーク」と題して、川上を代表して三重県の速水林業代表の速水亨氏、中間事業社を代表して、木材流通・加工を手がける加藤木材社長の加藤政実氏、そして川下を代表し、乃村工藝社の空間デザイナー、鈴木惠千代氏の3氏が講演を行いました。それは、林業の未来を感じさせる静かな熱気を帯びたものとなりました。

▼速水代表と尾鷲の森を歩く――速水亨氏

速水林業代表・速水氏

速水氏は、「尾鷲檜」の産地で有名な三重県の尾鷲で江戸時代から林業を営み現在9代目を数える日本有数の林業家の1人。林業経営の合理化や機械化を図り、稼げる林業を確立し、日本でもっとも早くFSC認証(Forest Stewardship Council[森林管理協議会]の認定。適切に管理されている森林からの木材、木材製品であることを証明する国際的な認証)を取り入れるなど、先進的な林業に取り組んできました。また、森を100年のスパンで考え育てる思想の持ち主で、今も日本の林業をリードする人物の1人です。

「今日の参加者はデザイナーの方中心と聞いた。小難しいことは抜きにして、山を一緒に歩いてもらいたい」

速水氏は冒頭でそう呼びかけ、冊子の作成にあたり撮影した尾鷲の山の写真を見せながら、山と木について語ってくれました。この日の話から感じられたのは、木を育み、森を育てるために必要なのは愛であるというメッセージだったかもしれません。語る速水氏の言葉の端々から、山と森へのひたむきな愛情が感じ取れるのでした。

理想だと話す森の状態。下草、広葉樹、針葉樹の流れが美しい。当日の投影資料より

「山を見ていただく」という言葉通り、写真は山から始まり、作業場や仕事の様子にまで、多岐にわたるものでした。その所々で山や木に関するトピックスや解説、ネタなどが挟み込まれます。某有名アニメ監督が見学に来た話や、行政が林道の法面をコンクリートで固めようとしたのを頑として断った一件など、聞いて楽しいエピソードも数多くありましたが、興味深かったのはやはり森と木そのものについての解説です。

そのひとつが、雑木や広葉樹、森林の下草の大切さ。
「尾鷲は痩せた土地で有名で、土壌をどうやって作るかが大切。杉や檜の針葉樹林だけではもちろん駄目です。下草があって、中層に広葉樹があって、そのうえに檜がある。そんな森が理想です。そういう土地では、腐葉土から作られる森林土壌がしっかりとあって、70mm/hの雨が降っても1滴の土砂も流さないんです」

広葉樹は針葉樹よりも後に生まれた樹木で、それだけ「進化」しています。広葉樹は「アレロパシー(他感作用)」という、他の植物の育成を抑制する機能を、針葉樹よりも強く持っているため、広葉樹だけでは下草が育たなくなってしまうなど、理想的な森を作るのもそうそう簡単なものでないことも紹介。

また、良質な木材として育てるための秘訣や工夫なども話してくれました。それによると、工夫のひとつは「樹冠を丸くすること」。
「今は板需要が多いから、木材にねじれがないほうがいい。良い板材を作るには、木を育てるところから始めないといけない。枝が片方ばかりに生えると、内部応力が生まれてしまって、乾燥させると曲がってしまうんですね。だから、バランスよく枝が生えるようにしなければならないし、結構テクニックがいるんです」
理想の木は「芯があって、年輪の幅が揃っている」もの。「太ってから年輪を育てるのは大変だからね」と改めて「育てること」の大切さを語るのでした。

速水氏が「好きだ」と話す林道。当日の投影資料より

写真によるツアーでは、ところどころ美しい山の姿が映し出されます。法面をコンクリートで固めることを断ったという林道は、法面が美しい下草で覆われ、檜の森林の向こうに大楠が見えます。拡大造林の時代に、桜を混ぜて植えた山は、春になると美しいマーブルを描きます。それを見せながら「私はこの景色が好きなんです」と語る速水氏の姿を見て、本当に木や森が好きなんだなと感じた参加者も多かったに違いありません。

その他、芸術関係でアーティストの日比野克彦氏や、イスラエルの環境彫刻家、ダニ・カラヴァン、各地の美術館とコラボしている例なども紹介し、リレートークのバトンを、次の加藤氏へ渡します。

▼百年杉の香りで世界平和を――加藤政実氏

加藤木材・加藤氏

「杉材は50~60年生がメインで使われているが、80年からランクアップする。黒帯とか、マイスターみたいなもので、だから僕は80年から120年の杉を作って家具を作って売っているんです」と、加藤氏は杉の魅力を冒頭から熱っぽく語ります。

杉の魅力とは何か。それはひとえに「香り」に由来しています。加藤氏によると杉の香りにはすごい力があるそうです。この日冒頭に、杉の箱に収めた千円札が会場に回されましたが、よく見るとお札のインクが溶け出しています。「世界トップクラスの日本の印刷技術の粋を集めて作ったお札が、杉の香りの力で溶け出していく。これだけの香り、力のある木はほかにない」と加藤氏。その木の力とは簡単にいえば香りや精油そのもの。そして、「これだけの香りのある、『木力(きぢから)』を持った木がたくさんあるのは日本だけ」だというのです。

「簡単にいえば、木の力とはその木が持つ精油の量。熱帯雨林の木は、パワーはあるし、多種多様な種類が揃うが、実は個体数はすごく少ない。一方、欧州は乾燥しているから香りのある木がない。地球上で、これだけ力のある木を多量に育てられるのは、多湿で梅雨もあり、雪も降る日本しかないんです」

しかも、その木の香り、精油の恩恵の受け方を(「利用の仕方」ではない)口伝で受け継いでいるのも日本人しかいないのです。杉を使った工作教室を日本各地で開催していますが、日本人だけが、大人から子どもまで、杉材を手に取ると必ず鼻に近づけ匂いをかぐのだそう。欧米人は香りがあることにすら無頓着なうえ、気づいてもフレグランスをかけてあるのだと勘違いしてしまう。「木の香りを楽しみ、生活に利用することは、日本人の遺伝子レベルで継承されている」と加藤氏は話しますが、その一方で、木をテーマにした健康の学究領域が成立しなかったこともまた、日本人のせいだとも指摘します。

「江戸時代までは、日本人は木と共に生きてきた。明治時代の脱亜入欧で、その学問を切り捨ててしまった。日本人にしかできないことだったのに、もったいないことだ」

そこで、「生意気にも提案したい」と話したのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村で、杉を使ったベッドサイドを、みんなで提供してはどうだろうか、というアイデアでした。

「杉の香りを、イヤな匂いだ、不快だという人は、世界中どこを見てもいない。杉の香りの効用は、近年になってようやく認められ、さまざまなエビデンスが得られるようになってきた。今こそ、その杉の力を世界に知ってもらうべきではないでしょうか。東京五輪の選手村で寝てみたら、なんかよくわからないけどいい香りがしたよ、よく眠れたんだ。しかもそれが木のおかげで、電気もエネルギーもいらないうえに、1000年も効果が持続するなんてすごくない?ということを、トップアスリートのみなさんにインフルエンサーになって世界に広めてもらえたら、きっと世界が変わるはず」

加藤氏が目指すのは、「杉で儲ける、稼ぐ」ということではありません。木を通して「世界平和」や「植物資本主義」ともいうべき、あらたな生き方を学ぶこと。

「人間の力では及ばないことを植物から教えてもらう。人間は植物からいろいろなものを借りて生きているということを知る。そうすれば、いつまでも人間同士で罵り合ってる場合じゃねえな、と思うようになりますよ。だから僕が『百年杉』を通してやろうとしていることは、世界平和なんです(笑)」

また、最後にはMOKU LOVE DESIGNに、「適材適所の使い方を提案していくものになる」と期待を語っています。
「木の恩恵を受けるという文化は、今は木目をプリントしたビニール製の床の上をスリッパで歩くというように風習としては残ったが完全に形骸化してしまっている。勉強机で使うとか、赤ちゃんが木の恩恵を全身で受けられる床を作るとか、素直にその力を受け止めて発揮できる、適材適所の使い方を提案していけるものになると期待しています」

最初から最後まで、走り抜けるような熱さとスピードで語る加藤氏に、会場の参加者もみなアテられたようになっていたのでした。

▼デザイナーは森へ行く――鈴木惠千代氏

乃村工藝社・鈴木氏

リレートーク最後の走者は、空間デザイナーの鈴木惠千代氏。鈴木氏は「私の空間デザイナーとしての行動原理は『森につながる』ということ。いつも頭の片隅にあるのがこれで、それによってこの3×3Lab Futureも作りました」と話し始めます。

その行動原理にたどり着くまでには長いプロセスがありました。最初は2003年にオープンした「大手町カフェ」の空間デザインを手がけたこと。
「総合プロデューサーの井上成さん(三菱地所)が、環境のコミュニケーションの場を作るんだと。でもそのとき僕は環境問題のことを知らなくて、そこから一生懸命勉強するようになりました」
ちょうどアル・ゴアの『不都合な真実』が世に出た頃で、巷は二酸化炭素、温暖化ガスの話題でいっぱい。「居酒屋で環境談義をする珍しい国民になっていた」と当時を振り返ります。

その3年後には新丸ビル10階にオープンした「エコッツェリア」のデザインも手がけました。しかし、その頃からリサイクルの諸問題が噴出するようになり、環境問題に疑問を感じるように。「改めて環境問題をちゃんと考えないと」と考え、本を探すうちに、たどり着いたのが小松正之(元水産庁官僚の研究者)の『豊かな東京湾』(雄山閣 2007)。そこで海の砂漠化の問題を知り、海の勉強を始めました。しかし、「海の問題を勉強していると、川とその流域のことを学ばねばならなくなり、さらに川が始まる森についても学ばなければならなくなってきた」と、次第に森と山に引き寄せられていった経緯を説明。そして、「どうしても最後には、最初の雨の一滴が降る、森にたどり着くんですよね。そこで、ハッと気付いたのが、環境とはすなわち循環なんだということでした。つまり、環境問題とは、循環の問題をクリアすればいいんだと理解するようになったんです」

その循環の最初の一歩である森を理解するために始まったのが書物遍歴。最初は林野庁関連の白書や調査書などを読んでいたが「まったく分からない」。そこで自分なりに本を探して、大内正伸『山を育てる道づくり』(農山漁村文化協会 2008)、鋸谷茂『鋸谷式 新間伐マニュアル』(全国林業改良普及協会 2002)、船瀬俊介『奇跡の杉』(三五館 2009)と遍歴を訪ね歩いていきます。

「なるほど、その通りだと思うものを読んでいった」そうですが、それはまさに「求めよ、さらば与えられん」ということかもしれません。書物を通して材木の低温乾燥を知り、その木を使いたくなって、尾鷲の畦地製材所実際に訪ね、「お宅の材木を使いたいんだけど」と相談してたどり着いたのが加藤木材の加藤社長だったという次第。SNSが納豆にも例えられたことがありますが、志を持った人が何かを求めていけば、カスケード的に何か化学反応が起きて、必ずどこかにたどり着くことになるのです。3×3Lab Futureは、まさにそのようにして作られた結晶のようなものだったと言えるでしょう。

畦地製材所の様子。当日の投影資料より

「都市部で木材を使うには、実はものすごくいっぱい制約があって、消防法とかも改正してほしいなと思うところなんですが(笑)、そうした問題を加藤さんとひとつひとつクリアして、3×3Lab Futureを作りました」
使った樹種は100種以上。杉の柾角材を木口を見せて使うなど、これまでにない木材利用の方法も提示するなど、意欲的な取り組みも詰め込んでいます。

しかし、「それでもまだ、森の作り方が分からなかった」と鈴木氏はさらに読書遍歴を続け、優れた林業技術を紹介する全国林業改良普及協会(全林協)の『林業現場人 道具と技』シリーズ(年に2回発行)を知り、「こうした知識や技術が日本中の林業家の間で共有されれば、森がよくなり、日本という国も良くなるんじゃないか?」と考え、そして最後には、東北大学教授の清和研二『多種共存の森』(築地書館 2013)を読んで「完全に腹に落ちた」そうです。
「山は杉材だけじゃないんだ、間伐材をどうにかするだけの問題じゃないんだと。多様じゃないと成り立たない、ということが科学的に証明されたという本で、森林を広葉樹も含め幅広く考えなければならないんだと知りました」

そして、最後に空間デザイナー、インテリアデザイナーとして、今後どうあるべきなのかについて語ります。
「デザイナーとして、樹種指定するだけ、近所の材木屋で話をしているだけじゃまだ足りないんだなと気付きました。僕もまだ森にはなかなか行けていないのですが、せめて森につながっている人を知ること。僕もようやく、北海道ならこの材木屋、富山なら、屋久島ならこの製材所、というようなことがイメージできるようになってきました。そういうイメージができるようになって、初めて僕たちは、自分の独特のデザインというものができるんじゃないかという気がしています」

佐野末四郎氏が作る木の自転車。当日の投影資料よりではなぜ、自分独自のものを作らなければならないのか? それは、大げさにいえば、次の文明を作るためだと鈴木氏は言います。
「明治時代に、塗装の文化が入ってきて、日本の木の文明が失われました。しかし、日本中の樹種で建具を作る有賀建具店の有賀恵一さんや、船大工の技術を使って木の自転車を作る佐野末四郎さんみたいな現代で活躍する人たちを知ると、日本人が木を使うと文明レベルで新しいものを作ることができるはずだと思えるんです。先代の江戸時代を超えるものが作れるんじゃないか。僕らデザイナーはそういうものを目指すべきでしょう」

MOKU LOVE DESIGNもそのきっかけにするためのもの。「森に近づき、ストーリーのある木、材木を使って」と鈴木氏は呼びかけています。「そのことが、きっと林業、森林にとっても役に立つことになるはずです」とリレートークを結びました。

これからのウッドソリューション・ネットワーク

懇親会の乾杯は、林野庁林政部 木材利用課長 長野麻子氏が音頭を取った。

リレートーク終了後は、会場を移して懇親会を行いました。会場では、ウッドソリューション・ネットワークの内装分科会で取り組んだ、木製オフィス家具についての説明もありました。これは、参画企業のオフィス家具大手のイトーキ、オカムラ、コクヨが、「タッチダウンオフィスを創る」というテーマを共有し、それぞれ「こもれる」「たちよる」「ひらけた」をテーマに材木を使って家具のコンセプトモデルを製作するというもので、10月22日~11月2日に大手町のJAビル1階に展示されました。懇親会では、それぞれの担当デザイナーが、コンセプトや苦労話を紹介し、木材の今後の家具、内装材利用の可能性を語り合いました。

今回は、参加者の多くが設計やインテリアに関わる、林業の"川下"に当たる人たちでした。こうした川下の人たちは、今回の取り組みをどう見たのでしょうか。あるインテリアデザイナーはこう話しています。
「ユーザーに木の良さを伝えるのはメーカーだけでなく我々の仕事だとは思うのだが、良い素材を使おうと思うと、流通経路が分からない、市場性が不透明で早く言えばぼったくられる、という問題が実際にある。木材利用拡大の潮流が来ていて、どこも盛んに取り組むようになってはいるのだが、実際に商用利用しようと思うと高いハードルがある」
だからこそ、MOKU LOVE DESIGN企画には期待するところも大きい。
「普段から、なかなか森そのものに深く関わることがないし、関わることも難しかった。MOKU LOVE DESIGNに関わる人がもっと増えて、木質化の潮流の中でプレゼンスをアップさせていけば、きっと市場の状況も変わるのでは」

内装分科会の家具展示の説明の様子

また、インテリアや設計を学ぶ建築系、デザイン系の学生も多く見られました。ある学生は、3×3Lab Futureで100種類以上の木を使っていることに感動したと話し、「木材利用は難しいだけだと思っていたが、いろいろな可能性があることを肌で感じることができた」と話しています。特に木口を見せる杉の使い方には感動したそうで、3×3Lab Futureでの木材利用は良いショーケースになっていると言えそうです。

別の学生は「どうマッチングすればいいのか、デザインと木材生産の現場をもっとつなぎたい」と希望を語っています。「いろいろな木を使い分けるためには、知っている人が間に入ってきちんと伝えていかないといけない」と感じたとしています。設計、意匠を学んでいるが、将来的には建築資材を扱うような、中間業者のような役割を果たしたいとも夢を語っていました。

逆に、川上、つまり木材の生産側の人たちはどう受け止めているのか。ある製材関係者はこう話しています。
「川下のほうの人と触れ合う機会はまずない。どんな人が、どんな思いを持って家具なりインテリアなりをデザインしているのか、それが分かって、非常に楽しかった。また、どんな売り方をすればいいのかを考えるきっかけにもなりましたね」

交流会で、インテリアデザイナー、クリエイターと接してみての感想だ。「売り方」も、デザイナー目線の考え方は気付かなかったという。

「どうしても我々は歩留まりとか生産効率とか、安さとか。そういうことに囚われてしまう。でもそればかりじゃないのだなと。見え方とか、木の色とか、今まで考えていなかったところに木材の価値を見出そうという人もいる。そこに可能性を感じました」

林業の川上から川下までが一堂に会する滅多にない機会となった本イベント。さまざまコミュニケーションが生まれ、この流れはやがて大きな流れになっていくに違いありません。今後、『MOKU LOVE DESIGIN』を起点にしたデザインやアクションが、日本各地で起こることになるでしょう。ウッドソリューション・ネットワークでも、今後さらに普及活動に努めていく予定です。

ウッドソリューション・ネットワーク
※「ウッドソリューション・ネットワーク」は農林中金が2016年10月東京大学への寄付を通じた「木材利用システム学寄付研究部門」の設立支援と併せ、森林・林業・木材産業の一層の発展を願う関係企業等が参画し設立。


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