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【丸の外NEWS】新しい「まちづくり」と「エコ」~その2 メーテルに会えるまち、北九州編

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前回のレポートはこちら! 新しい「まちづくり」と「エコ」~その1 広島編

広島から新幹線で小倉へ
今は1時間もかからないんですね。高速鉄道の進歩には、驚きます。

小倉駅のペデストリアンデッキ
小倉駅のペデストリアンデッキ
魚町商店街のエコルーフ
魚町商店街のエコルーフ
井筒屋屋上ローズガーデン
井筒屋屋上ローズガーデン
勝山橋
勝山橋
水環境館の河川観察窓
水環境館の河川観察窓
ちょこモ倶楽部のシティバイク
ちょこモ倶楽部のシティバイク

さて、のぞみ号を降り、小倉駅から北九州市役所へ向かいます。近くにある小倉城公園の会議室へ。
まずは北九州の環境まちづくりのレクチャーを受けました。
北九州市(環境の取組)

その後、バスで移動し、港湾エリアの再開発の状況をみます。
小倉駅北側は、工業系の施設が多かったのですが、大会議場や大きな小倉記念病院もできていて、まさに再開発が進んでいるエリア。駅から2Fレベルのペデストリアンデッキも途中まで延びていて、これから港湾部までつながるそうです。
このデッキはガラスの屋根で雨に濡れないようになっていますが、ここに順次、太陽光パネルを設置していく計画だそうです。
デッキを歩いて小倉駅へ。南側には、駅ビルにモノレールが進入していく光景がみられます。ちょっと近未来な印象。南側のペデストリアンデッキにも、近隣の商業施設まで濡れずにいけるよう、屋根が設置され、ここにも太陽光パネルをつける予定だそうです。

デッキを降りて下に行くと、モノレールの橋脚には、壁面緑化が。面積は大きくないのですが、できる箇所はできる部分だけでもやってみよう、という前向きな姿勢が感じられます。

ここから、魚町商店街のアーケードへ。この交差点の天井にも、5kWの太陽光パネル。つくられた電気は商店街のLED照明等に使われています。
魚町商店街

次に訪れたのは、百貨店「井筒屋」の屋上。バラが一面に植えられた「ローズガーデン」を中心とした屋上緑化が行われています。ウッドデッキにずらりと並ぶ、バラの鉢植え。散策路には、バラのアーチ。隣には、こども用の遊具もあり、親子連れがゆったりできそうな空間になっていました。
これは、環境省のクールシティ中枢街区パイロット事業に選ばれ、2008年から整備されました。単なるエコ整備、だけでなく、生活者が楽しめる場になっているのが、いいですね。

そして、その次は、小倉エリアの中心的存在、紫川の勝山橋へ。この橋の上にも屋根がつけられ、太陽光パネルがつけられています。実はここで発電された電気は、川沿いにつくられた「水環境館」で使われてます。
この「水環境館」は、市民のアイデアと、川の魚類の生態系を研究していた九州共立大学の日高秀夫教授(故人)のアイデアを活かしてつくられました。紫川や北九州エリアで生息する魚や水中の生き物を展示しています。展示ケースのライトや、水を循環させたり濾過したりする電気に、勝山橋の太陽光発電が使われているんですね。
水環境館

ここではさらに、高度経済成長の時期に工業排水で汚れてしまった紫川の歴史が解説されています。中央の大きなホールには、水族館の水槽のように見えるアクリルガラスの向こうに、紫川の水中が真横から眺められます。クロダイやセイゴ、クサフグなどが観察されるそうです。
この「河川観察窓」からは、魚もみられましたが、空き缶やコンビニ・スーパーの袋も時折みられるそうです。「川に要らないものを捨てると、こういうふうに川が汚れてしまうんだよ」というメッセージを、力強く伝えることができる「展示」ではないでしょうか?

川の対岸は、再開発で「リバーウォーク北九州」として復活しました。NHK、朝日新聞、北九州芸術劇場、西日本工業大学や、デコシティ、グルメシティといった商業施設なども入る複合施設で、ここでは再開発にあたって、屋上緑化や河川水熱利用が行われています。
当然、北九州市も、コミュニティ自転車を導入済み。「ちょこモ倶楽部」では、自転車だけでなく、カーシェアリングなども行なっています。
リバーウォーク北九州
ちょこモ倶楽部

この後は、東田エリアへ移動。ここは、新日本製鐵の工場跡地。1901年に操業開始した「八幡製鉄所」の跡地で、高炉のモニュメントが空高く建っています。テーマパーク・スペースワールドができ、2001年には地方博「北九州博覧祭」が行われた場所です。
ここの一角に「環境ミュージアム」がつくられました。北九州の公害の歴史を中心に、環境問題や生物多様性、3Rなどを、楽しみながら学べる施設です。
楽しい雰囲気の中にも、工場の煤煙などで苦しむ姿や、市民が立ち上がり、市や企業と闘う姿勢が、映像として残っており、当時のつらさの実像を知ることができます。
この奥には、「21世紀環境共生型モデル住宅」と銘打った北九州エコハウスが建てられました。自然素材を活用し、日光の差し方を踏まえた位置取り、間取りや、風の塔・風の道を住宅内につくって夏の涼しさを確保、また省エネトイレや、太陽光、太陽熱、地中熱の利用を取り込むなど、ふんだんに環境対応を進めています。ここではCO2を年間で60%=約3,700kg削減しており、杉の木のCO2吸収量265本分に相当するのだとか。ぜひ、暮らしてみたい場所ですね。
このエリアでは、2010年より、北九州スマートコミュニティ創造事業が企画され、新エネルギーを企業・家庭間で融通したり、地域エネルギーを効率的に利用するマネジメントシステムを導入、電力の需給状況に応じた電気料金の変動による需要制御や、産業活動からのリソースである廃熱や副生水素を、一般生活で利用する取組などを検討、実施する取組です。
北九州市や、新日本製鐵、日本IBM、富士電機システムズなどで構成された事業体を核に、5年間取り組むプロジェクトになっています。

水素ステーションのトヨタFCHV-ad
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水素ステーションの水素タンク
水素ステーションの水素タンク

この事業の目玉はやはり、水素をつかった燃料電池自動車でしょう!
この日は、水素ステーションに、トヨタのFCHV-advがお目見え。走行中は水しか排出しないのが、燃料電池車の特徴です。
水素は、新日本製鐵の工場で石炭からコークスをつくる際にできる副生物です。これをパイプラインで送り、貯留しておくのが、水素ステーションです。新日本製鐵、新日本石油、岩谷産業のチームで運用されています。現時点では、クルマへの水素の充填が10分程度かかっているので、この点の技術開発を期待しましょう。
このパイプラインは、周囲の一般家庭、集合住宅、商業施設の燃料電池にも供給され、新エネルギーとして地域で活用する「北九州水素タウン」の整備も進んでいます。
温暖化対策の切り札ともいえそうですが、貯留施設の整備や、水素を運搬する際の制約を考えると、中期的にはまだ、水素が発生する地域を中核にした、代替エネルギーの一つとして考える必要もありそうですね。

さて、なぞなぞを一つ。
問:今回のFCHV-adv、車両ナンバーが「4020」。どんな意味があるでしょうか?

答:シーオーツーゼロ
CO2をゼロに、という思いを込めて、付けたのだとか。
市役所の方のダジャレ好き――ではなく、環境への思いの強さを、こんな何気ないところでも、感じられます。

空港案内ロボット「メーテル」
空港案内ロボット「メーテル」

東京への岐路は飛行機のため、。2006年に開業した北九州空港に向かいます。
ここではなんと、「銀河鉄道999」のメーテルが案内してくれるんです。表情も豊かに変化し、身振り手振りをまじえての動きは、まさに生きているよう。ぜひ、体験してみてください。
原作者、松本零士さんは、久留米出身ですが、終戦後に小倉に移り住み、少年時代をすごした土地。このまちの各所で、松本さんの作品キャラクターと出会えます。
さながら、メーテルは、「環境みらい都市」への水先案内人かもしれませんね。