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【環境コミュニケーションの現場】 工事現場で太陽光パネルが大活躍―「鹿島"現場deソーラー"プロジェクト」

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北陸新幹線・富山駅の高架橋JV工事事務所屋上に設置された太陽光パネル

企業による環境やCSRに関する広報・普及の現場を取材する【環境コミュニケーションの現場】。第5回は、太陽光発電を利用して建設現場におけるCO2を削減する「鹿島"現場deソーラー"プロジェクト」に取り組む鹿島建設の挑戦を紹介します。鹿島建設環境本部地球環境室次長の三浦一彦さんに、建設現場へ再生可能エネルギーを導入したきっかけと現状、コミュニケーションにあたっての工夫などをお聞きしました。

リース方式でコストを抑えたことが現場での普及につながった

―ビルの屋上や住宅の屋根ではなく、工事現場の事務所に太陽光パネルを設置するのは珍しい試みであると思います
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環境本部地球環境室次長の三浦一彦さん。「太陽光による現場での発電データを『見える化』することが目的です」と話す

三浦:鹿島は、施工高あたりのCO2排出量を2020年に1990年度比で30%削減することを目指しています。そのために省エネや工法・機器の合理化、カーボン・オフセットなどに取り組んでおり、「"現場deソーラー"プロジェクト」もその一環として2009年からスタートしました。
建設現場に設置するプレハブ仮設事務所の屋根などに太陽光パネルを取り付けて、つくった電力を事務所の照明などに使う電力の一部にあてるものです。以前から構想を練っていたところ、国土交通省の「新たな温室効果ガス削減環境事業モデル」に選定されたことをきっかけとして事業化に踏み切りました。

―現場でのコスト削減が厳しい中、現場への導入にあたってコスト面での課題をどのようにクリアしたのですか
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「鹿島"現場deソーラー"プロジェクト」のサイトでは、発電量などのデータを誰でもリアルタイムで確認することができる

三浦:現場ごとに購入して設置するのではなく、本社が一括して太陽光パネルをリースして現場から現場へと転用する仕組みを採用することにより、設置コストが低く抑えられ現場での導入が進みました。この手法は、当社のグループ会社である鹿島リースなどのリース会社の協力を得て可能になったものです。2011年6月現在で、東京都や神奈川県、富山県など全国16の現場で展開しており、総設置容量は64.7kWに達しています。
また、これらの発電システムを自社開発した太陽光発電モニタリングシステムと連動させることにより、発電量や使用電力量を専用のウェブサイトを通じて、誰でもリアルタイムに確認することができます。

鹿島"現場deソーラー"プロジェクト

屋根だけでなく仮囲いなど多様な設置場所、ウェブでの情報発信も充実

―屋根だけではなくいろいろな設置場所があるんですね。太陽光パネルを設置することで、現場事務所の電力をどれだけまかうことができるのでしょうか
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三浦:現場の規模にもよりますが、1現場当たり3~4kWの太陽光パネルを取り付けると、晴れた日なら約10~20kWhの発電が可能で、事務所で使用する電力の約10~20%をまかなうことができる計算です。一方、設置の場所や方法については、屋根に限ることなく仮囲いや地上など現場の特性に応じて最適と思われるものを選ぶようにしています。
たとえば、東京都の町田市庁舎新築工事の現場では、JR横浜線に面した仮囲いの上部に36枚の太陽光パネルを並べました。この現場には小型風力発電機も設置してあるほか、バイオマスによるグリーン電力の購入なども行っています。
また、大規模な土木工事などの郊外の現場では、地面に直接パネルを置くことも珍しくありません。太陽光パネルの設置自体は難しい工事ではないので、現場の状況に合わせた導入できる点が魅力です。

町田市庁舎新築工事

―競馬場の改築工事現場にも太陽光パネルが設置されていると聞いて、ウェブサイトを拝見したら凝ったつくりで驚きました
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アニメを使って発電量などのデータをわかりやすく提供している中京競馬場のサイト

三浦:愛知県豊明市で行われている、中京競馬場スタンド等改築工事のことですね。「"現場deソーラー"プロジェクト」としては8件目の現場で、事務所の屋根に3kWの太陽電池を設置して、事務所で使う電力の一部をまかなっています。
町田市の現場もそうなんですが、現場からの情報発信が大変に活発でして、中京競馬場の場合は発電量などのデータを、競争馬のアニメーションなどを交えて楽しく、わかりやすくお伝えしています。
こうした情報発信をほかの現場事務所でも手軽に行ってもらおうと、現在、ウェブに実装できるデータ配信用のツールを開発しているところです。

中京競馬場スタンド等改築工事

建設現場の「見える化」をめざす

kajima06.jpg「新宿六丁目N街区計画新築工事」では、仮囲いにモニターを設置して発電の状況を表示
―ウェブでの情報発信は大変に充実していますが、近隣住民の方などへの情報の提供はどのように行っているのですか

三浦:新宿の日本テレビゴルフガーデン跡地で進められている 「新宿六丁目N街区計画」の現場では、通りの歩道に面した仮囲いにモニターを設置して、発電量や使用電力量などを表示しています。ここは同じく仮囲いに最近流行りの「緑のカーテン」をはわせたり、グリーン電力を利用したりするなど環境への意識が高い現場です。

―仮囲いの内側というのは、外からは見えないのが当たり前だと思っていました

三浦:「"現場deソーラー"プロジェクト」の目的の一つが発電量などのデータを「見える化」することであり、その手段がウェブサイトであり、モニターによる情報の表示なのです。事務所を訪れた人に発電状況を知ってもらうために、カウンターにモニターを置いている現場もあります。
当社ではこのほかにも、現場がある地域の子どもや保護者を対象とした見学会を開催したり、現場だよりのような広報紙を自前でつくって配ったりするなど、建設現場で行われている作業を社会から「見える化」するための活動に取り組んでいます。

―「"現場deソーラー"プロジェクト」をこれからどのように育てていきたいとお考えですか
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三浦:このプロジェクトを当社の建設現場におけるCO2削減の象徴的な活動と位置付けて、当面、年間約20現場程度、3年後には50現場以上に太陽光パネルを設置するという目標を立てています。これにより、年間で約50tのCO2を削減できる見込みです。また積極的に、近隣住民の方をはじめステークホルダーの皆さんに認知していただくため、広報活動にも力をいれていきます。 一方、今後の課題としては、天候に左右されやすい太陽光パネルの弱点を補うために、蓄電池を組み合わせたオールインワン型のシステムを構築できればと考えをめぐらせているところです。
また、東日本大震災の被災地における復興工事では、電源の確保が難しい場面も出てくるかもしれません。そのような現場でもこのプロジェクトがお役にたてればと思っています。

「鹿島"現場deソーラー"プロジェクト」を本格展開
鹿島建設「CSRの取り組み」

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