イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】丸の内プラチナ大学 第5回 ~「ソーシャルリーダー入門」プレ講座、土佐山アカデミー紹介~

――2015年7月30日(木) 開催

構想から実践へ、丸の内プラチナ大学の本格開校に向けて

丸の内プラチナ大学が、来年度の本格開校に向けて確かな一歩を踏み出しました。7月30日に、プレ講座としてワークショップを開催。来年度に向けてステップアップを図ります。講義内容はセカンドキャリアの中でも関心の高い「ソーシャルリーダー入門」です。

3×3Laboの活動の1つに掲げている、地域との連携で重要な人材が「ソーシャルリーダー」。冒頭、エコッツェリア協会の田口氏は前回示した丸の内プラチナ大学の科目案の中で「ソーシャルリーダー入門」は人気が高かったと話しています。では、地域はどのような人材を求め、地域に貢献するための能力とはどのようなものなのでしょうか。

この日のプレゼンターは2人。東北復興や地方創生の事業に取り組んでいる株式会社キュムラス・インスティチュート代表取締役で、一般社団法人こはくの代表理事である岩井秀樹氏。そして、もう1人は出身地の幕末の英雄である高杉晋作や吉田松陰より土佐の坂本龍馬に魅せられ、高知県で地域事業に取り組んでいる土佐山アカデミーの事務局長、吉富慎作氏です。

岩井氏のワークショップはソーシャルリーダーになるための能力開発につながる実践的な内容で、丸の内プラチナ大学が展開する講座のプロトタイプ的な内容でした。また、吉富氏の土佐山アカデミーの活動紹介は、地方と都市部との関係を明確にし、発想の転換をはかり、そこに見出す魅力的な地方ならではの仕事やアイデアの数々が楽しく示され、ソーシャルリーダーに求められる人材像や能力が具体的に伝わってくるものでした。

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丸の内プラチナ大学構想の再確認

丸の内プラチナ大学構想の再確認

臼井氏(左)、森氏(右)

ワークショップの開始にあたっては田口氏と合同会社志事創業社代表の臼井清氏、株式会社三菱総合研究所の森卓也氏の3氏で丸の内プラチナ大学のこれまでの活動を振り返り、本格開校へ向けての構想が語られました。

丸の内プラチナ大学の存在意義のひとつは、現代日本が抱える課題である少子高齢化の解決にあります。多くの企業がそうであるように、会社の組織構造は一般的に末広がりのピラミッド型をしています。この構造は、多くのサラリーマンは会社の重要ポストに就けないことを意味しています。かといって、会社の中で出世できなかった人たちの能力が劣るということではありません。有能でありながら、就くべきポストがないという現実がそこにはあります。

そうした不遇であったサラリーマンたちにも、シニア、プレシニアとなると目の前に定年というファーストキャリアのゴールが姿を現します。そこでおとなしく家庭に入るか、不遇の時代とおさらばしてアクティブなセカンドキャリアを目指すかの選択が迫られることになります。丸の内プラチナ大学は、定年を迎える前から社会的視野を広げ、マルチキャリアの可能性を応援する場です。

「今の定年世代は若い」というのが、丸の内プラチナ大学関係者の共通した認識です。若さもあって能力もある――こうした人材の能力の棚卸を行い活躍する場に結びつける。それが丸の内プラチナ大学の役割と田口氏は説明します。

田口氏課題はシニア側のものばかりではありません。最初に掲げた現代日本の少子化問題からは、人材不足が当然の帰結として現れます。若年者の不足は、特に地方に暗い影を落としています。数少ない若者は大都市圏を目指し、定住。地方が疲弊するのも当たり前。限界集落と呼ばれる高齢者比率の極端に高い地域も多数存在してきました。しかし、それらの地域にもたくさんの魅力ある素材が存在します。そこに有能なビジネス人材が集えば、新たな価値の創造も不可能ではありません。丸の内プラチナ大学はそうした地域で活躍できる人材の輩出を目指しています。

ソーシャルリーダーに必要なアイデア創造能力

最初のプレゼンター――というより、講師を務めるのは岩井氏。現在取り組んでいる東北の復興事業や地方創生にかかわる仕事の経験から気づいたことを示しつつ、この日の講座「ソーシャルリーダー入門」に入っていきました。

岩井氏岩井氏が最初に指摘したのは、「地域にはできることがたくさんある」ということ。これは「会社で培った力を発揮できる場がたくさんあることを意味している」と指摘して参加者の興味を惹き起こしていました。
しかし、地方には地方の難しさが存在することも指摘。それは、同じ地域に住む人たちが必ずしもみんな仲が良く、同じ意見を持ち、何かをするときには必ず同じ方向を向いているわけではないということです。異なる意見の渦巻く中に飛び込める能力が必要で、そこにある課題と直面しながら自分の能力を発揮することがソーシャルリーダーに求められていることがわかります。

岩井氏は今回のプレ講座を、地域にいかに溶け込み、どのように気持ちを交感し、自分の能力の提供を行うかの実践練習に位置づけていました。講義では、以下のステップをワークショップ形式でテーブルごとに行いました。
ステップ1 インタビュー
ステップ2 気づき
ステップ3 アイデア
ステップ4 ブラッシュアップ

テーマは「生活習慣病×鉄道会社」に設定。生活習慣病に対して鉄道会社として何ができるかをアイデアとして見つけ出す実践的練習です。
4つのステップで求められているのは、生活者や関係者目線で課題を考え、ニーズに近づき、アイデアにたどり着くことです。ワークショップでは参加者を2人ずつの組に分け互いにテーマに沿ったインタビューをしてもらいます。参加者はあらかじめ用意された質問に沿って尋ねたり、話題をふくらませて問いかけたりと工夫する様子も見えました。次はステップ2の「気づき」。インタビューの回答をもとにアイデアののもとを拾い出す重要なステップです。ステップ3の「アイデア」を出すときに重要なのは一般解を出そうとしないこと。アイデアは、いまインタビューした相手の課題を解決することに焦点を当てることが大切だということを強く指摘していました。そしてアイデアは、イラストや絵で表現することが重要と実践的な思考法を紹介していました。

「私も描くのは下手ですが、だれでも線や○△は描けるはずです。下手でもいいですから、アイデアは絵で描いてください。イラストで描くとアイデアは出やすくなりますよ。絵を描き始めると、手が自然に動いてくれるようになります」

このアイデア出しのコツは参加者たちにとって大いに参考になったようでした。このあとステップ4の「ブラッシュアップ」でアイデアの精度を高めていく作業になるわけですが、この日のワークでは時間の関係でその手順は割愛されましたが、最後にテーブルごとにシェアする作業に入り、発表者のアイデアにはさまざまな視点から検討され、問題点の指摘などもあったり、ブラッシュアップへ結びつく作業が行われました。実際の現場でも、そんなに短時間にアイデアが出ることはありません。岩井氏は、半年とか1年とかというそれ相応のスパンで考える必要があることも指摘していました。

さらに岩井氏は、この日の講義のまとめとして、現場の実際にも触れました。
地域に出ると、今回行ったようにアイデアを見つけ出し確定していく作業はもっと複雑になる。地域には多様な考えがあり、一筋縄ではいきません。本格的な講義では、こうした現場の事情も考慮に入れ、実行可能性のある内容を生み出す講義にしたいと抱負を語り、この日の講義を終えました。

先頭を走る地方の実践活動。「土佐山アカデミー」の報告

※当日のプレゼン資料より

実際にソーシャルリーダーとして地域で活動している吉富氏。その地域は高知県高知市土佐山地区で「土佐山アカデミー」の事務局長を務めています。高等専門学校時代はロボットコンテスト等で活躍し、その後、デザイナーに転身。外資系広告代理店に入社し、企業プランニングやWebキャンペーンなどを手掛けます。そして2年前に、土佐山アカデミーに新たな居場所を見つけたそうです。

吉富氏今回の講座では、吉富氏がフィールドとしている高知県、特に高知市土佐山地区の土地柄紹介と都市部との関係や位置づけに対する考えを披露。その考えを元に土佐山アカデミーではどのような活動をしているかを活き活きと紹介してくれました。その活動には類を見ない斬新な発想があるように思えました。

これまで経済市場の面から高知は、都道府県のビリのほうに位置していたといいます。それを吉富氏は「向きを変えれば先頭」になると逆転の発想で考えます。確かに、中央の中途半端な位置づけよりビリのほうが特色を出せるのかもしれません。新たな価値観の創造に結びつくユニークな発想はなかなか出てきませんが、「発想の転換」というキーワードは肝に銘じておいたほうがよさそうです。

さて、吉富氏の活動の中心地である土佐山の地勢と吉富氏らの活動について少し紹介しておきましょう。
土佐山はユズの産地で風光明媚なところと吉富氏は紹介していました。「かつて高知県土佐郡にあった村」とあり、「現在は高知市土佐山地区となっている」そう。高知県の中央部やや右側に位置し、平成の名水百選に選ばれた鏡川が中央を流れ、周囲は四国山地に囲まれた典型的な自然豊かな山村です。

「いなか、面白いか 否か」
これは吉富氏の掲げたダジャレ含みのコピー。参加者に大いに受けていましたが、吉富氏の「いなかの可能性は高い」という発言に共感していたようです。その可能性を拾い出し、事業化に結びつけているのが土佐山アカデミーの活動。ここで吉富氏は、現在取り組んでいるさまざまな企画を画像とコピーを交えて紹介しました。民間や行政を問わず、さまざまな組織の参画があり、幅広い活動に結びつけていることがわかりました。

土佐山は明治のころから自由民権運動につながる夜学会という学ぶ場があり、社学一体という地域社会が人を育てる風土もあったといいます。土佐山地区はもともとが「学びの村」という性格があり、最先端の知識吸収も自然に行われる地域なのです。今、その学びの村は改めて「次の100年のために、新たな出会いやアイデアを生み出す 学びの場」と強く意識して活動しているそうです。
来年度にも多くのユニークな企画が予定されていて、ここでは、そのうちのいくつかを紹介しましょう。

※当日のプレゼン資料より

「隠居ベーション」
都市部では退職後ひきこもりに陥りがちな傾向があるのだという。せっかくの人材がそれではもったいないというところから田舎での隠居を推奨。土佐山の豊かな自然の中での生活に結びつくツアーなどを計画。
「大人の秘密基地プロジェクト」
少年少女時代のあこがれであった自分や仲間だけの秘密基地をつくろうという誘い。自然との融合も期待できる企画に思える。
「空き家フォワード」
土佐山に移住したい人たちのための家探しが課題。すでに土佐山での空き家は不足しているので高知県全域に広げての家探しを計画

このほかにも「土佐のクリエーター一本釣り!」「地方創生ージ」「地域コーディネーター養成プログラム」とユニークな企画があふれるように、ずらりと並びました。ソーシャルリーダーに求められるアイデア実践の姿がそこにはあり、吉富氏は、企画を実現するためには人材が必要と参加者に土佐山アカデミーへの参画を訴えていました。

まとめ――さらに前進するために

1つずつ階段を上るように丸の内プラチナ大学は本格開校に向けて前進をしている感があります。今回のプレ講座もそのステップの1つであることは前に触れました。より実践的な内容は、既存の大学とは趣を異にしています。社会人、とくに新たなセカンドキャリアを目指すシニア向け内容としては刺激的な感じがします。よりアクティブなシニアを育てる環境が整いつつあると言えるでしょう。


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