イベント特別イベント・レポート

【特別イベント】TIP*S/3×3Labo 10.30開設! 記念式典レポート

重層的異種コラボレーションに高まる期待

次のステージへ

2014年1月に開設され、利用者がのべ2万人を突破、多くの人に惜しまれながらも、ビルの建て替えのため2014年8月にクローズとなった、あの「3×3Labo」が10月30日にリスタートオープン。今度は中小企業基盤整備機構とのタイアップによる"ビジネス創発拠点"「TIP*S(ティップス)/3×3Labo(さんさんラボ)」として活動を再開しています。

中小企業基盤整備機構は、全国の企業の99.7%(2012年調べ)を占める中小企業、小規模事業者の経営支援などを行う団体です。全国の300万余の中小企業とコネクトしているその機構が3×3Laboとコラボして、どんなステージを目指すのか。非常に興味深い取り組みです。

3×3Laboは、CSRのトリプルボトムラインでもある環境・経済・社会の「3」と、会社、家庭とも違う「3rdプレイス」、2つの「3」を掛け合わせたものであることはご存知の通りです。TIP*Sは、tips=コツに掛けて、「Talk」「Imagine」「Perform」そして「Stage」から成る名称で、会話、想像、行動が生まれる場所にしたいという思いから付けられました。「*」を打ったのは、"しるしを付けたくなる"ヒントがたくさんあることを表しているそうです。

場所は大手町・日本ビル6階。各新幹線からのアプローチが良く、全国の中小企業から人が集まる場としては最高の立地です。有楽町サイドにあった旧3×3Laboとはまた異なった雰囲気ですが、いったいどんな「場」になるのでしょうか。今回は、10月30日のオープニングレセプションを振り返りながら、「TIP*S/3×3Labo」の可能性を考えてみます。

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目指すものは「新ビジネス」

目指すものは「新ビジネス」

(左)中小機構・高田理事長、(右)三菱地所・杉山社長

開設記念式典には、経済産業界を代表する人物が200名あまり来賓として訪れました。言葉は悪いですが"小さな"ビジネススペースのオープニングとしては破格の来賓であり、来場者数であったと言えるでしょう。当日は多数のマスコミが取材に入っており、注目度の高さを伺わせました。

冒頭、「TIP*S/3×3Labo」主催者として中小企業基盤整備機構(以下中小機構)の高田坦史理事長、三菱地所の杉山博孝社長が登壇し挨拶。 高田理事長は、小規模企業振興基本法の成立、同法に基づく基本計画が閣議決定されたことを受けて「2014年はエポックメイキングの年」であるとし、「その中で新たな取り組みとして始まるTIP*Sには、気づきと人と人のつながる場となることを目指したい」と話しました。機構では、高い技術を持った中小企業と、大企業をつなぐマッチングサイト「J-GoodTech(ジェグテック)」の運用を10月27日から開始、11月末からは多摩の中小企業大学校内でビジネススタートアップセンター「BusiNest(ビジネスト)」を開始するなど、次々と新たな動きに取り組んでいますが、今回のTIP*S/3×3Laboもその中核のひとつとして展開することになります。

また、杉山社長は「日本は技術の国で、iPhoneのような製品の部品や技術も日本にあったもの。それを"つなぐ"ことができなかったことに、今の問題があるのではないか」と指摘し、「TIP*S/3×3Laboには、そんな技術をつないで、新しいビジネスを興すことを期待している」と話しました。三菱地所としては、ビルを借りる企業が増えることだけが目的なのではなく、こうした取り組みによって街が活性化し、街としてのステイタス、バリューを向上させるのも狙いのひとつです。これまでもエコッツェリア協会を中心に、女性問題、教育問題などにアプローチすることで街のダイバーシティを拡大してきましたが、今度は「地方」「中小企業」という角度で、さらに街の多様化することも視野に入れているに違いありません。

期待されるものは何か

来賓を代表して、経済産業省、高木陽介副大臣が祝辞を述べています。

「日本の経済を支えているのは企業の99%を占める中小企業であり、そこで働いているみなさん。ここを盛り立てることなくして、日本の再生はあり得ない。このTIPS/3×3Laboは絶対に成功させなければならない取り組みであり、経産省としても全力でバックアップし、中小企業、小規模事業者を盛り立てていきたい」

来賓紹介では、元経産副大臣で現荒川区長、特別区長会会長の西川太一郎氏、日本貿易振興機構理事の吉村宗一氏、川崎市商工会議所会頭の山田長満氏、日本ウズベキスタン・シルクロード財団代表理事、バヒリディノフ・マンスール氏らが紹介されました。
また、祝電披露では、青木信用金庫、朝日信用金庫、西武信用金庫、多摩信用金庫などの金融機関から多数の祝電があったことが紹介されました。

これらは儀礼的なものかもしれません。しかし、各地の信用金庫からの注目度が高いことは間違いありません。多摩信用金庫の例を挙げるまでもなく、各地の金融機関では、地場の中小企業にソーシャルな視点で投資することがトレンドになりつつあります。各方面からの来賓、祝電は、改めてそうした動きが盛んになっている証でもあり、この場所での取り組みもまた、その大きな潮流の一部であると認識されていることを物語っているのではないでしょうか。裏を返せば、中小企業の活性化が、抜き差しならない喫緊の課題として、今そこにあるということでもあるのでしょう。

これからの取り組みと課題

(左)浜野製作所・浜野社長、(右)コラボラボ・横田代表取締役

TIP*S/3×3Laboの運営は、三菱地所、エコッツェリア協会、中小機構が共同で行っていくそうです。これまでのようにさまざまなイベントを行い、有機的に人が交じり合う「場」を作っていくのは、これまでの3×3Laboと同様です。

TIP*Sとしては、さまざまな全国の中小企業が集まる場として機能させるとともに、これまでアクセスがなかった「大企業へのチャンネル、ソーシャルビジネスへのアプローチに期待したい」(TIP*S、越智稔之氏)そう。当面は「女性」「地方(地域)」などの具体的なテーマ性を持ったイベントを定期的に開催し、可能性を探っていくそうです(イベント詳細はこちら)。

現場に近いところからはより具体的な期待がかけられています。応援メッセージで登壇したのは、深海探査艇「江戸っ子1号」で知られる浜野製作所代表取締役の浜野慶一氏、女性が社長を務める中小企業をネットワークするコラボラボ代表取締役の横田響子氏のお二人。ともに「ワクワクする」「マッチングイベントをここで開きたい」と期待を話しましたが、どちらも中小企業のモノづくりの現場の悩みに精通しており、それは「技術はあるが、インサイトと掛け合わせてプロダクトアウトできない」というものです。応援メッセージでは、そうした現状とともに、大企業や、3×3Laboに集まる人たちからヒントを得て、イノベーティブな活動へとつなげたいと語りました。

もちろん、参画する中小企業側が、こうしたTIP*Sや3×3Laboのようなゆるやかな集まりや活動を評価し、積極的に参加するようになるのかに疑問は残ります。中小企業の経営者というのは大体においてソリッドであり、3×3Laboのようなリキッドな雰囲気にはなじみにくいのではないかという不安もあります。しかし、先述のTIP*S担当越智氏は「モノづくりに携わるワーカーは非常に意欲的で研修会などのリピート率も高い。TIP*Sの運営では課題も多くあるだろうが、取り組みながら課題を浮き彫りにし、解決策を探っていきたい」と話しました。

世界に負けないイノベーション震源地に

写真右がJIN専務理事・西口氏

課題はありつつも、中小機構TIP*Sと連動したことで、3×3Laboはまたひとつ階段を登り、大きなステージに立ったことは間違いありません。もう一人の応援メッセージ登壇者、一般社団法人ジャパン・イノベーション・ネットワーク専務理事の西口尚宏氏の言葉が印象的です。

「今、イスラエルもアメリカもイギリスも、世界中でイノベーションへの動きが加速しています。アメリカでは東海岸にも飛び火し、ワシントンDCのホワイトハウスから10分のところにインキュベーションセンターが発足し、オバマ大統領も顔を出しているそうです。世界はものすごい速さで進んでいます。TIP*S/3×3Laboができたことは大きな一歩ですが、それだけで喜んでいてはいけません。大企業、中小企業、ベンチャー企業、すべてが一緒になり、互いに支え合わなければなりません。そのために、もっとすごいスピードで走らなければならない。みんなで一緒頑張って、東京を世界一のイノベーションの街にしましょう」

TIP*S/3×3Laboを舞台に今後どんな活動が展開されるのでしょうか。「地方-中央」「中小企業-大企業」「女性-男性」といったいくつもの軸がポリフォニックに交じり合う、有機的な現場が立ち現われそうな予感があります。これからもTIP*S/3×3Laboの動きに注視していきたいと思います。


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