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【レポート】近未来の東京と働き方改革―人間の真価と都市の未来を考える(中編)

エコッツェリア協会会員総会(2017年6月22日) 苫米地英人氏が見る未来

エコッツェリア協会2017年度総会で、「近未来の東京と働き方改革」と題して行われた有識者による講演。前回の渋澤健氏に続いて、AI、コンピューターサイエンスの専門家である苫米地英人氏の講演の模様をお届けします。(前編はこちら後編はこちら

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AIが進んだ未来のまちづくりとは

AIが進んだ未来のまちづくりとは――苫米地英人氏

続いて登壇した苫米地英人氏は、1980年代からカーネギーメロン大学でAIの研究に取り組んだ数少ない日本人研究者の一人で、現在もコンピューターサイエンスの大家として、AI、FinTech、サイバーセキュリティ等幅広い分野で世界の最先端で活躍しています。そのような世界トップクラスの研究者から見た「現在」と「未来」とはどのようなものなのでしょうか。

まず氏は「ようやく今、1980年代が現実のものになっている」と見ています。ディープラーニングで一躍実用化された(ように見える)AI、ビットコインなどFinTech分野で知られるようになったブロックチェーンなどの技術、アーキテクチャーは、1980年代にすでにアメリカの研究者たちの間では実装もされていたものばかり。ビットコインのような仮想通貨も1990年代には苫米地氏が日本国内で実装させており「ベチユニット」として知られています。ただ違うのはPCの速さで、1980年代と現代では「1千万倍違う」と苫米地氏。当時は「最高のマシンで浮動小数点数が5万FLOPS(フロップス)」、現代は「その辺のPCで5テラFLOPS」であると解説しています。
(※浮動小数点数はコンピューターの性能指標のひとつでFLOPS[FLoating point number Operations Per Second]で示される。CPUの周波数と回路数の積)

つまり当時はマシン性能が科学者の頭に追いついていなかっただけ。常に30~40年先を見ているそんな最先端の研究者たちが今考えているのは、少なくとも2030年より先の未来とのこと。苫米地氏が「ちょっと2030~2040年をシミュレートしてみたい」と話した例では、入力系では生体センサー、繊維=服のセンサーは当たり前、脳インターフェイスは「実用化が近い」。出力系では「布型のペラペラのディスプレイが最初」で、ということは「壁や服がすべてディスプレイになる」世界になり、生活の景色が一変します。そして倫理的な問題は残るものの「視覚野に直接投影する技術は20年以内に間違いなく実用化される」等々、苫米地氏は次々と列挙します。

また、昨今進展著しいAIについては「本当のAIじゃない」と話します。一方でコンピューターが人間の知能を持ち精神が宿る、いわゆる「強いAI」(Strong AI)が「そろそろ実現する」としています。また、人間の境界線を変更するものとして、「寿命が150歳になる」可能性を指摘。それは再生医療やクローン技術によって実現するとしています。また、最大の難関とされてきた現在の記憶を維持したままの脳の入れ替えも「イケる」。「実現してしまえば理論上寿命が無限になってしまうので、2040年~50年はその過渡期という意味で、寿命が150歳くらいかなと考えている」(苫米地氏)。

さらに、ビットコインなど仮想通貨による資金調達「ICO(Initial Coin Offering)」が世界的に盛んになっており、「毎日200億円以上の資金調達が行われている」例を挙げて、「新しい仮想通貨を、何の信用もない個人が発行することできる時代」になる、すなわち通貨発行権が国家から個人に移るとしています。

そのような未来が到来したときに「人はどのように働き、どのような街が必要になるのか」。例えば苫米地氏の会社で働くトップクラスのエンジニアは「隣の席の人ともメールやスカイプでしか話さない」そうです。物理的空間で人と関わることにメリットを見出さず、肉体的な移動も厭う人が中心になったとき、都市はどのような構造、機能が求められるのでしょうか。苫米地氏は「三菱地所には、街に住宅を作れって言ってるんですが」と話し、2030、2040年には「パラダイムは完全に変わる」と改めて指摘、その未来を見据えたまちづくりをしてほしいと呼びかけて話を終えました。(近未来の東京と働き方改革 後編へ続く)


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