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味噌汁・お吸い物・塩むすび、全て無料!有楽町に「だしCafe」。新たなフリービジネスの目論見とは?

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10月の大丸有は"食育"がアツい!

「秋の情熱 ご馳走パスタ」や「コメタリアン宣言」「イートアカデミー」に「青空市場 × 丸の内マルシェ 秋の収穫祭」など、食育丸の内によるイベントが盛りだくさんの10月の大丸有。

そんな10月の初日に、楽しみながら食を考えるスポットがまたひとつ誕生しました!有楽町の東京交通会館2階にオープンした「だしCafe(カフェ)」では、昆布、かつお節、煮干を使って本格的にだしをとった味噌汁やお吸い物と塩むすびが無料で提供されるそう。

また、11月以降は月に1回有名料理人による、だしを活用した料理教室が開催される予定とのこと。料理教室の参加費は1回500円(予定)のお手ごろ価格で、興味をそそられます。

クリス・アンダーソン著『フリー ~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』が流行し、さまざまなフリービジネスがもてはやされているこの時代。とはいえ、東京の中心の一等地でなぜこのような無料カフェが可能なのか。目指すものは何なのか。だしCafeを運営する味の素株式会社の、だし・うま味普及担当部長 山本恵裕氏に伺いました。

―なぜこのようなカフェを出店されたのでしょう?
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だし・うま味普及担当部長 山本氏(左)と、齋藤氏(右)

今は働く女性が多い時代です。毎日疲れて帰ってきて、それから料理をするのはなかなか難しいですよね。実際、私どもが20代~50代の女性3,000人を対象におこなったアンケートでは、全年代での料理頻度の平均は週に5.4回、20~34歳では週に4.2回と、若年になるにしたがって頻度が落ちるという結果が出ました。また、だしを使わずに料理をする方も増えているようです。

そういった方々がこのカフェでだしを体で感じることで、「もう少し家でだしを使った料理をしようかな」という気持ちになってもらいたいと考えています。

―味噌汁・お吸い物・塩むすびが無料で、なおかつ物販もおこなわないということですが、売上げやビジネスの面はどのようにお考えでしょう?

食品メーカーなので、商品をご購入いただきたい気持ちはもちろんあります。しかし、先ほどお話したように、まず料理をしない・だしをとらないという方々が世の中に増えている。

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店内にはさまざまなだしが陳列されている

食は文化です。この豊かな日本食文化を、まずここで認識いただき、それがベースになったその先で私どもの商品の購入へとつながっていけばいいと思っています。まずは、だしを認識していただくこと。それによって、商品に接するチャンスを増やすことだと考えています。

また、昆布やかつお節などの食材は企業などからの協賛で、すべて無償で提供いただいており、それらをカフェ内に陳列しています。売上げはありませんが、ここで企業や商品への認識ができ、そのうえここでお金にかえられない気づきや共感が得られれば、数ステップ先で商品購入につながる効果は間違いなく期待できると思います。

―ここで本格的なだしを知ってしまうと、味の素の簡易だしの利用減にはつながりませんか?
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無料で提供される味噌汁と塩むすび

10年前ならばそうだったかもしれません。しかし、時代が変わり、ライフスタイルが変わりました。時間の余裕がない方々には、やはり私どもの商品も必要だと思います。

忘れられつつある日本のアイデンティティを、国民の一人一人が自信を持って世界に表明するためにも、このような日本の食文化の基本を実感する場所を持つことは意味があることだと思います。

ここで得た実感をもとに、将来的に自分の子どもに"おふくろの味"を伝えていってほしいですね。それこそが、文化の継承だと思います。

―ありがとうございました

だしCafeは、大丸有に勤める20~30代の女性をメインターゲットに、一日200人程度の利用を見込んでいるそう。店内は明るく柔らかい木目調で、落ち着ける雰囲気になっています。

味噌汁やお吸い物を味わったときに「ほっ」と漏れる温かいひと息は、男女年齢を問わず日本人に共通のものではないでしょうか。有楽町 東京交通会館に誕生したこのスポット、本格的なだしを学びに、忙しさの中で忘れかけていた「ほっ」を味わいに、みなさんもだしCafeを訪れてみては?


お料理教室の講師となる料理人のみなさんからのコメント

東京・赤坂 Wakiya―笑美茶樓楼 オーナーシェフ 脇屋 友詞氏

dashi_wakiya.jpg「だしCafeには、"うま味"とはどういうものか、再確認してもらえる場になってほしいですね。日本人であれば、昆布などのうま味を感じたとき、きっとどこか懐かしい感じがするはずです。そういった日本のおふくろの味を思い出してほしいです。そして、ここでうま味やだしの基本を覚えて、自分の子どもにおふくろの味を伝えていってほしいですね」

東京・築地 つきぢ田村 三代目店主 田村 隆氏

dashi_tamura.jpg「うま味とは味の記憶です。最近ではお母さん方が料理をしなくなって、"おふくろの味"が"袋の味"、つまりパッケージされた食品の味になってきています。今、そんな味の記憶をつくってくれる人がいなくなっているのは大きな問題です。ここで味を記憶していってほしいですね」

京都・祇園 菊乃井 主人 村田 吉弘氏

dashi_murata.jpg「味は教養です。だしの味を知っていることは教養であり、だしは文化です。世界中でも日本のだしは"DASHI"と呼ばれています。"上等なものは外国のもの"という時代はとうに去りました。たくさんの、特に女性たちに来ていただいて、日本の文化を継承してほしいですね」

だしCafe

メニュー: 味噌汁/お吸い物(数種類のだし使用)
* 10:00~/15:00~の、各回100個ずつ小さな塩むすびの試食が可能。お一人様ひとつまで。なくなり次第終了
* メニューは全て無料
* 使用している昆布・かつお節・味噌・具材は時期によって異なります
営業時間:10:00~19:00(内10:00~15:00は女性専用* ) 、 火曜定休
* 女性と小学生以下のお子様のみご利用可
アクセス: 東京都千代田区有楽町二丁目10-1 東京交通会館2F
JR 山手線・京浜東北線 有楽町駅
京橋口・中央口(銀座側) 徒歩1分
有楽町線 有楽町駅 D8出口 徒歩1分
有楽町線 銀座一丁目 2出口 徒歩1分
ウェブサイト

dashi_shimada.jpgだしCafeでは、丸の内朝大学に通う嶋田麻美さんがスタッフで活躍中です!
「以前はあまり料理はしませんでした(笑)。でも、だからこそスタッフやお客様に"ふつう目線"の提案ができると思っています」