イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】つくりたいまち×サステイナビリティ会員限定

2016年度第5回CSV経営サロン 2017年3月16日(木)開催

「サステイナブルなまちづくり」をテーマに、CSVやCSRに造詣の深い経営者や事業責任者を招いてトークセッションを行ってきた「CSV経営サロン」が、2016年度の最終回を迎えました。 今回は、これまでの学びをアウトプットすべく、参加者によるワークが中心となります。参加者からどんなアイデアが飛び出すか、注目です。

まずは、道場主・小林光氏により、これまでのセッションの振り返りがありました。過去4回のテーマとゲストスピーカーは、以下の通りです。

第1回【地域エネルギー】
ゲスト:みんな電力代表取締役 大石英司氏
http://www.ecozzeria.jp/events/csv/csv1102.html
第2回【環境不動産】
ゲスト:東京大学生産技術研究所教授 野城智也氏
三井住友信託銀行 環境不動産推進チーム長 伊藤雅人氏
http://www.ecozzeria.jp/events/csv/csv1213.html
第3回【地域リソース】
ゲスト:星野リゾート 代表取締役 星野佳路氏
http://www.ecozzeria.jp/events/csv/csv0202.html
第4回【地域ICT】
ゲスト:スマートコムラボラトリーズ 代表取締役 川崎日郎氏
http://www.ecozzeria.jp/events/csv/csv0328.html

小林氏は、各回で印象に残ったことを挙げていきました。
「みんな電力の大石氏がおっしゃっていたのは、エネルギーをコモディティにしてはいけない、ということです。そこにストーリーをつけて消費者と再生可能エネルギーをつなげようというお話でした。東京大学の野城先生と三井住友信託銀行の伊藤氏は、環境不動産は今や利益を生む魅力的なビジネスであるということを解説してくれました。星野リゾートの星野氏は、自らのビジネスモデルをもとに地域資源活用を示し、そこにしかないモノやコトが価値を生むということを熱く語りました。スマートコムラボラトリーズの川崎氏からあった、地域ICTに取り組むならサプライヤーはユーザーが得た利益に応じて収益すべきであるとの指摘は、私もその通りであると思います」

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まちづくりは、足し算ではなく掛け算であるべき

まちづくりは、足し算ではなく掛け算であるべき

続いては、本日のワークの課題である「サステイナブルなまちをつくる」ということについて、小林氏から方向性のヒントが提示されました。
「どんなまちがつくりたいか、そのためには何が必要か。都市の力を活用すべく、その都市ならではのアイデアを出して価値や利益を生み出す方法を考えていただきたい。そのヒントとしていくつかお伝えすると、まずまちづくりは掛け算であるべきです。一人ひとりの取り組みの足し算ではなく、掛け算にして、より高次の機能を実現すのが理想です。例えばCO2削減率というのは、省エネ率と炭素密度逓減率の掛け算です。したがって、エネルギー需要側と供給側の協力が双方に追加的な利益を生むわけです。また、生態系の成り立ちのように、相互報酬的な関係が自立的に発展するような設計ができるといいですね。規模の経済を用いるのも有益です。規模があればニッチな需要も成立します」

かなり具体的な方法論がいくつも挙がりました。参加者は真剣な様子で聞き入り、ペンを走らせていました。
解説が終わった後には、アイスブレイクとして各テーブルで自己紹介がスタートしました。「あなたが住みたいまち」も一言添えるということでしたが、さっそく各テーブルで話が白熱し、参加者の関心の高さが伝わってきました。

テーマごとに班に分かれ、ワークがスタート

そしていよいよ、ワーク開始です。
事務局側から「あなたがつくりたいまちは?」ということで、以下の4つのテーマが提示されました。参加者は、この中からひとつを選び、即したアイデアを出していくことになります。

①働きながら健康になるオフィスがあるまち
②省エネ&メンテナンスフリーなビルがあるまち
③新しいビジネスが生まれるまち
④働く以外も充実しているまち

テーマが決まったら、それぞれを選んだ参加者同士で班を作ります。
今回は、「働きながら健康になるオフィスがあるまち」を3人が、「新しいビジネスが生まれるまち」を8人が選び、残りの11人は「働く以外も充実しているまち」を選択しました。そこから班が割り振られ、計5班に分かれたうえ、それぞれのテーブルに移動しました。

あらかじめ配られていたワークシートには、まず「○○なまちを目指す」として、自分がつくりたい町を要約して書く欄が設けられています。その下は、「そのために......」として「強み」「足りないもの」「リソース」を書く設計です。そして最後に、「目指すまちへの第一歩」として、具体的なアクションを記載するようになっています。ワークシートを見てみると、細かくびっしりと字で埋める人から、すぱっとコンパクトにまとめて数行で表す人まで十人十色。ただ、みんなあまり迷うことなく積極的にペンを動かしているのが印象的でした。
全員が一通り書き終えたタイミングで、班内でのプレゼンテーションに移りました。そして、班の中でもっとも評価が高かったアイデアを、全体に向けて発表、シェアするという流れです。

自由なアイデアが続々飛び出し、ワークショップは盛況

こうしてそれぞれの班のベストアイデアが出そろい、代表者による全体発表が始まりました。いくつかを紹介しましょう。

「働く以外も充実しているまち」を選んだ1班では、丸の内について「おしゃれなオフィス街なのは強みだが、それゆえに多様性に欠いている」と分析。幅広い層の人を呼ぶために「知的好奇心を満たされるまち」にしてはどうかと提案しました。その具体的な方法は、街角に50インチほどの大きなディスプレイをいくつか設置し、そこで興味深いコンテンツを発信していくというものです。例えば、発展途上国のニュース、銀座はなぜ銀座という名前なのか、都会の大理石の中に埋もれた化石......。幅広い層が楽しめるよう、いろいろな内容を流していくとのことでした。

それを受け、小林氏からは「新たな発見が得られる仕組みを作るのはおもしろい。スマートフォンでいろいろなものが発見できるというようなことを加えるとさらに面白いのではないか」と提案がありました。

「新しいビジネスが生まれるまち」を選んだ班である2班は、東京という都市の強みと弱みを分析。企業や人が集まり、オリンピックなど催しが多いが、企業や人々の間の垣根が高く、つながりが薄いと指摘しました。そして、新たなビジネスを生むには、つながりの強化が必要であると説きました。どのように実践するのかといえば、第一歩としてイベントを開催する際には交通インフラを無料化し、人の流れを作ってはどうかと提案しました。また、ドラスティックに変えるには、人と人、企業と企業の間だけでは難しく、国が法令を作って制度から変えていく必要があると訴えました。

このプレゼンに対し、小林氏は「つなげるための仕掛けを無料でやるのが肝だと思うが、インフラの何を無料にするかの具体的な提案があればもっとよかった。例えば丸の内を走るバスで無料で乗れるものがあるが、車内には広告がたくさん入っている。そうした仕掛けを考えるといい」と述べました。

そのほかにも、新たなビジネスの機会を作るため「丸の内をいったん壊そう。既存の企業の枠組みを壊して、他人の企業でも働けるようにする。働く内容の垣根も取っ払っていこう」というアイデアが出るなど、参加者はかなり自由な発想で"まちづくり"を行っていました。予想外の視点が続々飛び出し、小林氏も驚きの声をあげていました。

発表が一通り終わると、事務局から「今日のアイデアをみんなでシェアして、温め、なんらかのアクションにつなげていってほしい。私たちも、この場所を提供するなどして応援していきたい」との言葉があり、ワークは終了しました。

リサイクル循環型社会を作れば、戦争が減り、世界は平和になる

ここで、特別ゲストの登壇です。オブザーバーとして参加していた、日本環境設計株式会社会長の岩元美智彦氏が、壇上にあがりました。
岩元氏は、10年前にリサイクル事業のベンチャー企業を立ち上げました。「環境は儲からない」という当時の常識を覆し、ここまでビジネスとして大きく成長させてきました。「リサイクル循環型社会を目指す」という理念を掲げ、綿やポリエステルといった衣類や、携帯電話などのリサイクル技術を開発。その高い成果に世界中が驚きました。2016年の日経ビジネス「次世代を作る100人」では1位に選出され、今もっとも注目されている人物のひとりです。
まず岩元氏が語ったのは、リサイクル技術の進歩についてでした。

「今までは、モノをリサイクルする時代でした。しかしこれからは、分子や原子という観点からリサイクルを考える時代になります。モノを分解すればなんらかの原子や分子になります。それを再構築すれば、永遠に循環させられるわけです。このようなことができると、例えば今、家庭から出ている4000万トンのごみから、1000万トンの石油と同じプラスチックができます。国内の石油の総使用量が960万トンですから、石油は一滴も輸入する必要がない計算になります」

そうした技術の一端は、すでに岩元氏の会社で開発され、工場として稼働しています。ただしそれだけでは、リサイクル循環型社会は到来しない、と言います。

「消費者が参加してくれないと、社会規模でのリサイクルはできません。確かに近年、リサイクルという言葉に対する理解は広がってきましたが、理解と行動は別。リサイクルしてください、だけでは消費者は動かないのです。いかに消費者が楽しめる仕掛けを作るか。楽しいイベントに参加した結果、気づいたらリサイクルに参加しているというのが理想です」

岩元氏はこれまで、「楽しみながらリサイクルする」ためのイベントをいくつも開催してきました。その代表的なものが、SF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで登場した、ゴミをエネルギー源とする自動車型タイムマシン「デロリアン」を、お台場で実際に走らせたというもの。衣類から作ったバイオエタノールを燃料に、見事デロリアンを走行させました。ちなみに参加者も、古着やおもちゃなどを持ってくれば、デロリアンに乗ることができるという仕組みでした。

岩元氏が最終的に目指すのは、地上資源だけが循環する社会です。
「現在、地球上で起きている戦争やテロの8割以上は、地下資源の奪い合いが原因です。それを使わない社会にすれば、この世がずいぶん平和になります。100年後の戦争をなくすために必要なのは、お金でも武器でもなく、リサイクル循環型社会を作ることであるというのが僕の思いです」

こうして素晴らしい将来のビジョンと熱い思いが語られると、会場は大きな拍手に包まれました。

そして最後は、道場主である小林氏から、総括がありました。
「岩元氏のお話にもありましたが、CSVにもわくわくどきどきするストーリーが必要であると私も常々思っていました。環境というのはとても面白いものなので、きっと楽しいストーリーができるはずです。みなさんには、このサロンで学んだことやつながりを生かし、力を合わせて、ぜひ面白いプロジェクトを生み出してほしいと思います」
あらためて力強い拍手が会場全体に広まり、本年度のサロンは終了となりました。
2017年度は、さらにパワーアップして開催予定とのことです。

今回ご参加いただいた会員企業のみなさまは以下の通りです。

エーシーシステム・サービス株式会社
株式会社NTTデータ
株式会社岡村製作所
シャープ株式会社
ダイキン工業株式会社
東日本電信電話株式会社
三菱電機株式会社
三菱地所株式会社

<オブザーバー>
株式会社アイマックス
グーグル合同会社
慶應義塾大学
株式会社国際協力銀行
さいたま市
相蔭学園
日本環境設計株式会社
株式会社博報堂


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CSV経営サロン

環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリア協会では、2011年からサロン形式のプログラムを提供。2015年度より「CSV経営サロン」と題し、さまざまな分野からCSVに関する最新トレンドや取り組みを学び、コミュニケーションの創出とネットワーク構築を促す場を設けています。

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