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【レポート】「地方で成功する 」事業のツクリカタ

BFL地方創生セッションvol.6 「地方だからこそできる事業の創り方」2017年12月13日(水)開催

NTT データが運営するオープンイノベーションラボラトリー「BeSTA FinTech Lab」(BFL)と3×3Lab Futureの共催イベント「BFL地方創生セッション」。2017年7月から月に一度開催している本イベントの第6回が、12月13日に大手町のBeSTA FinTech Labにて開催されました。

今回のテーマは「地方だからこそできる事業の創り方」。ゲストはプロトスター株式会社・代表取締役の山口豪志氏です。2017年の1年間、「47都道府県:事業スタートカンファレンス」と称して、日本全国で起業を考える若者に向けたイベントを開催してきた山口氏。その体験を交えながら、地方における事業のはじめ方や、事業支援の重要性についてプレゼンテーションが行われました。

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地方での事業拡大は、起業家のつながりがカギ

地方での事業拡大は、起業家のつながりがカギ

はじめに、地方で事業を行うことについて、都心や大都市に比べて人口が少なく、情報量も少ない点からネガティブに捉えられがちですが、実は事業を始めやすい環境にあると述べます。
「地方は、生活コストが安く、中長期に渡って拠点を構えて事業検証ができるといった利点がある。また、ある特定の地方で評価・利用されているサービスが、全国的に展開していくケースもある。例えば、自治体に特化して広告代理業などを手がける株式会社ホープ(本社:福岡市)や、EC自動化プラットフォームサービスの開発・提供をするHamee株式会社(本社:小田原市)などがあるが、いずれも汎用性の高さが、広い市場の中でも成功するポイントになる」

こうしたメリットがある反面、日本全国をまわりさまざまな起業家に出会う中で、地方における起業の課題が見えてきたと話します。それはすでに事業を行っている人も含め、事業拡大を目指すよりも現状維持を求める保守的なケースが多いこと。
「地方には、事業支援をするプロデューサー的な存在や視座を上げるイベントなどの機会が不足している。そのため、事業を拡大しようと思っても身近に成功事例がないため、その後のイメージができずに現状維持に留まってしまう。地方で事業を拡大させるためには、起業家の卵を増やすのではなく、各地にいる起業家たちをつなげることが重要になってくる」

では、具体的にどのように起業家をつなげ、支援すればよいのでしょうか。山口氏が参画するプロトスターでの取り組みを例に解説していきます。

プロトスターは「挑戦者支援インフラを創る」ことをミッションとし、起業家を主体としたファイナンスや組織構築の支援や投資家や行政とのマッチングなどを行っています。現在約110社が参加しており、起業家同士が刺激を受け合うコミュニティとして成長している、と話します。
「同じように起業を志し、実際に成功している人を目の当たりにすると、自分もできるのでは!という刺激を得られる点が、こうしたコミュニティの良いところ。一つの企業が成長すると、他の企業の成長にもつながり、良い連鎖が起こっている」

起業に必要な情報やノウハウを教えることはできますが、それを実行するのは人。そこで、起業家のモチベーションをいかに上げることができるかが、支援のポイントだといいます。

■ 行政、起業家、支援者 3つの立場で見る、事業のつくり方

続いて、「行政、起業家、支援者」の3つの立場における、事業のつくり方・関わり方について解説がありました。

まず行政編では、「『日本初』という言葉を嫌う行政の方が多いですが......」と前置きしながら、できれば新しい取り組みには一番に手を上げて、アクションを起こしてほしいと投げかけます。具体的には、ベーシックインカムの導入や、持続可能な循環システムを整えたオランダの新しいコミュニティ「ReGen Village」の実現など、世界的にも注目の高く挑戦的な事例を挙げ、ぜひ積極的に取り組んでほしいと提案がありました。

続く起業家編では、事業を始める上でのテーマ探しから売り方、PR、組織づくり、事業開発、上場までプロセスごとにアドバイス。
まず、事業の始め方については以下の8つをポイントとして述べました。

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① やってみたい事業の事例を調べる
② やっている人に話を聞く
③ 自分の過去、キャリア等を棚卸しする
④ 24時間やれる情熱があるものを見つける
⑤ 仕事後や週末の自分の自由時間からはじめる
⑥ 仲間を集める
⑦ 実際に事業をはじめる
⑧ 尊敬できるメンターを見つける
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特に、③、④については「Will / Can / Must」の3つの輪を持つことが軸になる、と言います。 事業に対して、「心から情熱を持ってやれることか(Will)」、「得意なこと、いちばんになれることであるか(Can)」、「目指すべき課題、ハードルであるか(Must)」をそれぞれ見極めることが、事業を始めるだけでなく、しっかり続けていくためにも大事なポイントとなります。

また、続く事業の育て方については、山口氏がかつて参加していたランサーズ株式会社でのケースを例に、広報に力を入れたことが企業の急成長につながったと話します。
「いいサービスを作っていても、実際に使ってもらわなくては存在していないことと同じ。ランサーズの場合は、クラウドソーシングで個人と企業をマッチングする仕組みを、『新しい働き方の提案』として押し出すことで注目された。共感を得るためには、そのサービスが社会とどのような接点があるかと見つけ、社会的文脈の乗って売り出すことが重要になる」

最後に支援者編では、本イベントが地方銀行とベンチャー企業をつなぐBeSTA FinTech Labが会場ということもあり、地方銀行の場合を中心にアドバイス。プロトスターが行う支援の中で、地方銀行と企業がビジネスマッチング契約を結ぶ例が増えていると話します。
例えば、業務マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を提供する株式会社スタディストは2017年9月から地方銀行(千葉銀行、四国銀行)との業務提携を始めました。「Teachme Biz」は、スマートフォンやタブレットで、画像や動画ベースのわかりやすい業務マニュアル作成・共有を可能にし、オペレーション品質の向上や新人研修時の指導負荷軽減など、業務効率化につながるとして注目されているサービスです。業務提携により、各地銀が「Teachme Biz」を取引先の地方企業に紹介・導入することで、生産性向上、人材不足の課題を解決し、地方全体の経済力を高めます。
「金融庁でも、新しい金融機関のビジネスモデルの再構築を目指す動きがあり、自分たちのハンドチャネルを活かして、サービスを拡大することが求められている。取引先の地域企業の経営課題を把握する地銀がハブとなり、スタディストと地方企業のビジネスマッチングが進んでいる」

今回例に挙げた「Teachme Biz」がさまざまな地方銀行と提携しているように、成功しているサービスは、どんな地域でも使うことができる点が成功の大きな要因となると付け加えます。そのため、事業支援する際には、自分の地域以外でも使えるか、事業領域の広がりがあるかの見極めが重要となるとアドバイスしました。

「三人目の男」が加わるまで諦めない!

講演の後は、参加者同士で意見交換が行われ質疑応答へ。起業家、行政、地方銀行などさまざまな立場の参加者から質問が上がりました。

中でも多かったのが、「地方の経営者には自分が食べていければいいという人が多く、その中でどうマインドを変えていければいいのか」、「起業家向けのイベントを開いても、新しい事業が生まれてこない」といった新規事業に一歩踏み出せないという悩みです。
これに対して山口氏は「『2020年問題』や『2035年問題』と言われているように、今後取り組むべき社会課題はさまざまある。これからの社会で、新しい事業を考えたり、既存の事業モデルを見直すことが求められる中、それをいま自分の代で取り組むのか、次の世代に先送りするのか。地方銀行の担当者であれば、ぜひそうした話を経営者に対して発破をかけて欲しいし、起業家であれば、自分の代で!と、未来志向の熱い気持ちで事業を始めて欲しい」と参加者の背中を押しました。

最後に、山口氏から参加者に向けたエールとして、一つの動画が紹介されました。
「デレク・シヴァーズ氏が『社会運動はどうやって起こすか(動画)』と題して行ったTEDでのプレゼンテーションの中で紹介する動画を、ぜひ見て欲しい。内容は、ある会場で一人の男が突然踊り始める。周りから嘲笑されながらも踊り続けていると、それを見た別の男が踊りに加わる。続いて三人目の男が加わって踊り出した途端、踊る人が一気に増えてその場がダンス会場のように大盛り上がりする、というもの。これは地方創生にも言える例で、想いを持って活動し続けていれば、必ず仲間は増えていく。楽しんでやり続けていれば、共感してくれる人はできるはずなので、根気強く続けていってほしい」
山口氏の熱い言葉に答えるように、会場は大きな拍手に包まれ、閉会となりました。


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