イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】サステイナブルプロジェクトへのファイナンスとエンジニアリングの醍醐味と課題会員限定

CSV経営サロン2019第3回 2020年2月20日(木)開催

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エコッツェリア協会では、企業会員向けメニューとして、2011年からサロン形式のプログラムを提供。2015年度より「CSV経営サロン」と名を変え、さまざまな分野からCSVの最新トピックを学びながら、情報交換ができる場を設けています。2月20日(木)に開催されたCSV経営サロン2019 第3回のテーマは、「サステイナブルプロジェクトへのファイナンスとエンジニアリングの醍醐味と課題」。サステイナブルな世界を築くための金融とイノベーションが必要とされている今、その最前線に立つ2人のゲストを迎え、今後、日本企業の進むべき道を探るべく、熱い議論が繰り広げられました。

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SDGsビジネス最新動向トピックス

SDGsビジネス最新動向トピックス

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最初に登壇したのは、本サロン座長を務める小林 光氏(東京大学総合文化研究科客員教授)。「SDGsビジネス最新動向トピックス」と題して、最近、小林氏が訪問した世界各地の様子を紹介し、内外の新しい試みが共有されました。

具体的には、2019年9月、水素への取り組みを探るべく訪れた南オーストラリア地方を皮切りに、氏は、宮古島の需要端での発電や逆潮の制御システム実装、沖縄本島・浦添新街区で推進されている新しい発想の取り組み、すなわち現場で湧出する温泉含有ガスなどを使ったコージェネレーションで街区の電力を部分供給する取り組みを視察。そのほか、国内では、リコー御殿場事業所 環境事業センターが推進するリサイクルの高度化、富山県黒部市でYKKグループが取り組む「パッシブタウン」の最先端のリノベーションを視察したのち、今年1月末には、ドイツ・デュッセルドルフ、オスナブルクでの水素利用や再エネルギー最大化の取り組みを視察し、フランスの欧州エネルギー・トランジション会議にも参加しました。

「この会議では、水素の実装についての議論が行われました。フランスでは、500億円規模の補助金を使って、水素の実装が各地で始まっています。端的に言えば、世界は急速に変わっています。環境への取り組みが膨大な実需を生んでいます。日本も遅れないように、チャレンジが必要。そうした時に、何といってもお金が必要です。今日は、それをテーマに論じていきたいと思います」(小林氏)

ESG関連最新動向 「COP25とサステイナブル・ファイナンス」

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続いて、同サロン副座長の吉高 まり氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券環境戦略アドバイザリー部 チーフ環境・社会(ES)ストラテジスト、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科非常勤講師)が登壇。昨年12月にスペイン・マドリードで行われた「COP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)」の結果が共有されました。

吉高氏によると、COP25の結果は次の2点に集約されます。ひとつは、今回の主な交渉議題であったパリ協定6条の市場メカニズムのルール決定については合意に至らず、2020年に開催されるCOPに持ち越しされたこと。その背景には、京都議定書で蓄積された排出クレジットの活用においては、そのままの利用を求めるインドやブラジルなどの途上国と、パリ協定で排出目標を持つ途上国での利用の制限を求める先進国などとの対立があります。もうひとつの議題であった2020年2月末までに次期目標の提出(2025年目標の国)、もしくは目標を引き上げ、または確認(2030年目標の国)。これについては、パリ協定4条2:目標の再提出の確認と、パリ協定4条3:現在の目標を超える前進<progression>の提示に留まりました。

COP25での日本の発信において、吉高氏がとりわけ際立っていたと感じたのは次の5点です。 1.TCFDの賛同機関が世界1
2.経団連チャレンジ・ゼロ、SBT設定企業世界2位
3.フルオロカーボン排出抑制に向けたイニシアティブ
4.大阪ブルーオーシャン・ビジョン
5.緑の気候基金追加拠出

「閣僚級開会式から閉会式まで出席した環境大臣は、小泉大臣だけでした。それほど市場メカニズムに関しては、日本はイニシアティブを取りたいというのがあって、(各国の参加者からも)大変評価されています。また、小泉大臣は、13カ国、4機関の計36回のバイ会談をすべて英語で行い、さまざまな国の環境大臣に、日本の事情を説明されていました。このような取り組みは、歴代の日本の環境大臣では見られなかったことです」(吉高氏)

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COP25 は、開催地がチリからマドリードへと変わったことで、EU色が極めて強かったこと、若者の正式な登壇者が多かったこと、SDGsのパビリオンが増えていたことなど、これまでのCOPとは違うさまざまな特徴がありますが、中でも、「日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の理事が来場していたことは特筆すべき」と吉高氏は強調しました。

「他国の政府系年金は、2014年くらいから来ていましたが、日本のGPIFは今回が初参加です。言い換えれば、それだけ日本が遅れているということなんですね。アメリカ関連のイベントについて、昨年と大きく違ったのは、民主党のロビー関係者が多く来ていたこと。また、欧州のパビリオンでは、水素やEV関係の技術の展示が大々的に行われていました。元イングランド銀行総裁で、TCFDの設立を提言したマーク・カーニー氏のスピーチで印象だったのが、『ルネッサンス』という言葉です。サステイナブルで、クリーンなイノベーションにお金を流していきたい。そのルネッサンスを興すこと。それが、今我々が取り組んでいることだとおっしゃっていました」(吉高氏)

「COP26は、地球環境問題に対応した投資とその資金調達(グリーンファイナンス)が主なテーマになると思います。イギリスですでに言われているように、クリーンな成長、グリーンなファイナンス。日本では、石炭に関することばかりに焦点が当てられがちですが、それではマーケットを見誤ります。お金が流れていくところをきちんと把握できず、成長戦略を立てられなければ、海外の投資家から見向きもされなくなる可能性はゼロではありません。企業の皆さんは、お客さまのためにも戦っていかなくてはなりません。生き残っていくためにも感度を高めていただきたい。そのためにも、今日の御二方のお話をぜひ参考にされてください」(吉高氏)

サステイナブル・ファイナンスの動向

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最初のゲストスピーカーは、三菱UFJ銀行 ソリューションプロダクツ部 サステナブルビジネス室室長・山﨑 周氏。前半は「企業価値とESGの関係」、後半は「サステイナブルファイナンスをめぐる動向」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

1,企業価値とESGの関係

伝統的な手法では、企業価値とは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローを資本コストで割り引いた現在価値を指し、企業全体の経済的価値です。事業環境を巡る目まぐるしい変化の中、企業が生き残っていくためには、ステークホルダーの期待に見合った「企業価値の維持・向上」が求められます。

「過去の傾向を見ると、通常の財務諸表に含まれていない無形資産が、市場では大きく評価されつつあります。S&P 500の市場価値を例に挙げると、無形資産が説明変数となっている割合は、1975年では17%、2015年では84%まで高まっています。時代とともに、株主価値において固定資産よりも無形資産に企業価値の比重がシフトしていることが認識できます」(山﨑氏)

その一方、企業の業績が安定していても、非財務リスクにさらされることで、企業価値の毀損、信用力低下、あるいは、最悪の場合は倒産の可能性もあるとも言われています。2019年に起きた非財務リスクによる企業価値の毀損事例には、天然ガス、電力供給を行う大手企業・PG&E(アメリカ・カリフォルニア州)が、米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を1月に申請したほか、燃料税引き上げ提案に反対するフランス政府へのデモ運動「黄色いベスト運動」や逃亡犯条例改正案への反対を契機に香港で拡大化した反政府デモによる経済環境悪化に伴う業績悪化、などが挙げられます。

「長期的な企業価値の向上を実現するうえで、ESG要素は多分に影響してくるものです。そのリスクにさらされるということは、すなわち企業価値の低下につながることを示唆していますが、一方、時代に先立って大局的に世界のトレンドを予測するなど、世の中の流れをうまく掴んでいくことで、企業価値向上も期待されます。もうひとつ、ここでお伝えしたいのは、ボラティリティ。当然ながら、ボラティリティは投資家にとって投資リスクになるので、資本コスト上昇につながります。ESGへの取り組みは、ボラティリティ低減、ひいては資本コスト低減により、企業価値の向上につながると言えます」(山﨑氏)

山﨑氏は、企業のサステナビリティに影響する要因として、非財務(ESG)項目を取り上げ、ESGの切り口から見たリスク・機会例と、具体的なリスク・機会の影響分析の際に有用な指標例について説明しました。

E(環境)のリスク・機会例には、地球温暖化、環境汚染、自然資本の減少、生物多様性の破壊、環境市場の変化などがあり、指標例としては、CO2排出量、廃棄物管理、汚染物質の排出・管理などがあります。S(社会)のリスク・機会例は、人権、労働、消費者、地域・社会等など、指標例は、社内での人権ポリシーの策定・遵守、労使マネジメント、ダイバーシティによる新たな機会などです。また、G(ガバナンス)のリスク・機会は、企業の経営体制、事業の公正性、情報の透明性などで、取締役会の構成・独立性、監査と内部統制、役員報酬、情報開示などが指標例となっています。

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次に、山﨑氏は、ESGを企業価値に結び付け、定量化するための新しい試みのひとつとして、「ROESG」を紹介しました。ROESGは、経済産業省が2016年8月設立した「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」で座長を務められた一橋大学の伊藤邦雄特任教授による造語で、企業価値を表象する代表値ROE(自己資本利益率)とESGを組み合わせたROESGモデルを用いた、ESGとROEの両立による価値協創を啓発しています。

PBR(株価純資産倍率)とは、会計上の1株当たりの純資産に対して、市場での評価(株価)が何倍になっているかを示す指標のこと。PBRが1倍以上の部分は財務的な価値以外を示す「見えない価値」と捉えられ、この部分を非財務資本やESGの価値とみなすことができます。この見えない価値を定量化する手法のひとつとして考案されたのが、ROESGモデルです。

「欧米企業のPBRの平均が2〜3倍であるのに対し、日本企業のPBRの平均は約1倍とかなり低い。ROESGモデルの問題意識はここにあるのではないかと思います。この差は、欧米企業において、見えない価値が評価されてきた結果であり、日本企業においては、BV(株主資本簿価)の清算価値しか評価されておらず、見えない価値が全く評価されていないと言えます」(山﨑氏)

2019年8月12日に日経新聞が掲載した「世界における企業のROESGランキング」によると、上位30社に日本企業は入っておらず、花王、NTTドコモ、KDDI、日本たばこ産業の4社が、上位100社にランクインしています。ROESGの提唱者である伊藤教授は、「今後いくらROEが高くても、ESGの取り組みが低水準の企業は、企業価値がディスカウントされるだろう」と述べています。

前半の最後に、山﨑氏は、企業価値とESGの関係性にかかる実証研究やS&P 500 ESG指数の概要について紹介したのち、短期的な業績向上から、長期的な視点からの持続可能な成長路線への転換を図った企業事例として、イギリスの大手一般消費財メーカー・ユニリーバを取り上げました。

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2,サステイナブルファイナンスをめぐる動向

後半の冒頭、山﨑氏はESG投資・サステイナブルファイナンスの歴史を取り上げ、「歴史はかなり長いが、ここ5年くらいの動きが激しい」と説明しました。特筆すべきは、2015年。この年、国連でSDGsが採択され、パリ協定が合意に至ったと同時に、当時のマーク・カーニーFSB議長がスピーチの中で、気候変動問題を「Tragedy of Horizon(時間軸による悲劇)」と述べ、TCFDのタスクフォースが発足しました。これら一連の出来事によって、世界でのサステナビリティ推進が加速したことに加え、同じ年、GPIFがPRIに署名したことが、日本でのESG投資躍進の要因にもなりました。

続いて、山﨑氏が取り上げたのは、欧州サステイナブルファイナンスの動向です。サステイナブルファイナンスは、EU主導のもと、資金動員、開示、リスク管理の3分野で議論が進められています。

「資金動員とは、タクソノミーで定義された分野に資金を流していこうというフレームワーク。開示については、TCFDのみならず、欧州の非財務情報ガイドラインにおいても、情報の開示が求められる傾向にあります。リスク管理は、世界40以上の金融監督当局が加盟するネットワークNGFSが、気候関連リスクの報告書を出している状況です。イギリスが取り組みを主導しており、2019年12月には、英金融当局が気候変動リスクに関わるストレステストを提案しました」(山﨑氏)

欧州委員会の技術専門家グループ(TEG)の報告書に示されたタクソノミーには、具体的なセクターとして自動車、鉄鋼、ガス火力発電、海運などが挙げられており、自動車を例に挙げると、「2025年まではテールパイプエミッションが50g CO2/km以下の車であれば適格」「2026年以降は、EV、FCVなどのゼロエミッション車のみ適格=ハイブリッド車は除外」といった定義がなされています。

「ここでお伝えしたいのは、やや急進的な定義の内容になっているということです。これに対して、物申したい場合は積極的に発信していかないと、欧州がどんどん先に進めている状況です。タクソノミーの定義は、現状はまだドラフトの段階ですが、ここ1〜2年をかけてしっかり固めていくものであると私は理解しています。昨年12月、ブリュッセルへ行き、当局者やその他の金融機関の方々と議論してきましたが、具体的な例を挙げて説明すれば、意外と理解を示してくれるという印象を受けました」(山﨑氏)

続いて、山﨑氏は、金融当局の動向として、気候変動による経済・金融システムへの影響を説明しました。気候変動リスクは、移行リスク、物理的リスクの2つに分類されており、それぞれのリスク要因が、座礁資産化あるいは事業の停止を招き得ると考えられています。

「企業の保有資産価値の低下などが起こり、金融システムでは、金融市場での損失(株、債券、コモディティ)などを生む。そして金融市場での損失が、経済に悪影響を与えうるということです。金融当局も、金融市場におけるリスクを非常に重視していることが分かると思います」(山﨑氏)

最後に山﨑氏が紹介したのは、今年1月20日に公表されたばかりの国際決済銀行(BIS)報告書「グリーンスワン」。この報告書は、気候変動という金融安定に対する新たなリスクへの対応方法について、金融安定の責務を負うBISの観点からレビューしたものです。金融安定を確保するために、BISができることには限界があるとしたうえで、政府、民間、一般社会などによる集合的アクションを呼びかける内容となっています。

「中央銀行としての危機感の現れであると同時に、BISがこの報告書を発表したことは、我々のように、自己資本比率規制の制約がある金融機関にとっても潜在的なインパクトが大きい。将来的には、リスクアロケーションとしてどこに融資をするかという判断にも大きなインパクトが出てくる可能性があると思います。最近の動きとしてもうひとつだけ付け加えると、世界最大の資産運用会社・ブラックロック会長兼CEOのラリー・フィンク氏が、投資先企業に毎年送っているレターがあります。その中で、ラリー・フィンク氏は気候変動への強い危機感を表明すると同時に、企業に対して具体的なアクションを求めています。我々も危機感をもって、今後の活動に取り組んでいきたいと思います」(山﨑氏)

サステイナブル・エンジニアリングの最前線

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続いて、日揮ホールディングス アセットマネージメント部部長代行・熊谷 司氏が登壇。同社の主軸であるエンジニアリング事業の観点から、サステナビリティを語る上で欠かせない環境問題や地球温暖化対策との関わりについてのプレゼンテーションが行われました。

熊谷氏が取り上げたのは、IEA(国際エネルギー機関)が昨年12月に発行した「World Energy Outlook 2019」。エネルギーの需要や技術開発に関する見通しなどを示すレポートとして、世界的権威のあるものとなっています。WEO 2019で想定されているのは、次の3つのシナリオです。

1,Current Policy Scenario(現行政策シナリオ)
世界が何ら現行政策を変更せず、現在の道を歩み続けるシナリオ。

2, Stated Policy Scenario(公表政策シナリオ)
パリ協定で各国が提示している削減目標や政策など、すでに公表された事実に基づくシナリオ。(政策の方向性が将来どのように変わるかは推測していない)

3, Suitable Development Scenario(持続可能な開発シナリオ)
パリ協定が目指す2℃以内の気温上昇(可能であれば1.5℃以内)に合致させるためのシナリオ。

「面白いのは、SDGsと合致させるための前提条件を設定していることです。ひとつは、今後も世界の人口は増え、しかも人間は豊かさを追求し続けるので、いずれのシナリオでも世界のGDPは同じく伸び続けるという前提。もうひとつは、効率化などによりエネルギー需要を抑え、GDPあたりのCO2排出量を減らしていく前提です」(熊谷氏)

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熊谷氏は、WEO 2019の温暖化対策シナリオを紹介し、次のように述べました。

「現行政策シナリオでは、2040年に向かって、石炭、石油、ガス、CO2排出量もどんどん増え続けています。一方、公表政策シナリオでは、上昇の度合いは緩やかになっていますが、それでも増え続けていき、2040年には、3℃上昇に至る可能性が大きくなっています(66%確率)。では、2℃以内に留めるには、どうすればいいのか。持続可能な開発シナリオでは、石炭、石油、ガス、CO2排出量のいずれも、2020年ぐらいにピークを迎えたのち、2040年に向かって使用量は減少している一方、再生可能エネルギーが増えていることが分かります。つまり、一次エネルギーの使用量をどんどん減らしていき、それを再生可能エネルギーで補うことによって、将来的には1.6℃、1.8℃くらいの気温上昇で収まるであろうというシナリオです」(熊谷氏)

持続可能な開発シナリオを実現するためには、省エネ、再生可能エネルギー利用、石炭・石油からの燃料転換、原子力、CO2地中貯留(CCS)、CO2有効利用(CCU)などのさまざまな対策が必要です。

「ご存知のように、再生可能エネルギーだけではすべての電力需要は補えない。補うためには、再生可能エネルギーをベースとした原子力や需要にあった電力を供給するために化石燃料の火力発電所などが必要になってきます。そこからのCO2 排出量を少しでも減らすために、CO2を集めて地中に貯留したり有効利用したりするCCUSも必要になるでしょう。このように、WEOでは、何か新しい技術のイノベーションに期待するのではなく、今あるあらゆる技術を活かして、どれだけ目標が達成できるかという観点からシナリオが描かれています」(熊谷氏)

電力設備容量は、2018年の7,220GWから、2040年の13,000GWへと増え続けると言われています。特筆すべきは、太陽光発電で、公表政策シナリオでは、1年間に100GW増えている状況にあること。原子力発電所100基分の発電設備が毎年増え続けているにもかかわらず、まだ足りないのが現状です。

「2℃以下目標を達成するためには、太陽光発電は、200GWに増やす必要があります。洋上風力も増やさないといけない。持続可能な開発シナリオを達成するためには、かなり無理をしなければならないことが分かると思います」(熊谷氏)

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持続可能な開発シナリオを実現するためには、2019年から2050年の総投資額を25%増加する必要があります。供給サイドでは、化石燃料開発費が40%減少する一方、電力設備投資は75%増加し、需要サイドでは、ビル、産業プロセス、交通での効率化が投資の半数を占めており、エンドユーザーについては、効率化への投資、再生可能エネルギーへの投資が増加するシナリオが描かれています。

熊谷氏は、大規模なCO2排出削減技術への期待として、CO2を約800メートル以深の岩石中に超臨界状態で圧入して孔隙に貯留する技術である「CCS」の概要や日本のCO2地中貯留のポテンシャル、CO2海洋隔離を紹介しました。

「CO2を意図的に深海に注入する海洋隔離の概念については、数十年の研究実績があります。深海であれば、注入したCO2のほとんどが何世紀にもわたって大気から隔離できますが、主に社会的受容性が問題となり進んでいません。日本でも海洋隔離についての研究が進んでいましたが、実証試験をやろうとしたところ、反対運動があり中止となりました。また、廃棄物の海洋投棄を規制するロンドン条約では、CO2は廃棄物とみなされ、海洋隔離は容認されていません。しかし、1.5℃目標を実現するためには、さまざまな施策を打たなくてはなりません。こういったものも含めて、もう一度考え直す必要があると思います」(熊谷氏)

最後に熊谷氏は、「地球温暖化を防止する取り組みにおいて、原子力は理想的」と明確に指摘したビル・ゲイツ氏の言葉を紹介し、次のように話しました。

「ゲイツ氏は、昨年12月29日付けのブログで、再生可能エネルギー源による発電コストが低下していくのは喜ばしいことだが、これを『間欠的』だと定義しました。原子力だけが、1日24時間の利用が可能であるとともに、炭素を発生せずに規模の拡張縮小が可能なエネルギー源であり、現時点で問題となっている事故の発生リスクも、技術革新によって解決できると説明したうえで、『温暖化を食い止めるため、世界は数多くの解決策に取り組む必要があるが、先進的原子炉もそのひとつである』と強調しています。原子力についても、さまざまな意見があると思いますが、1.5℃目標を目指すなら、こういったことも考えていかなければならないと思います」(熊谷氏)

サステイナブルファイナンスの行方

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本会合の後半では、質疑応答とディスカッションが行われました。最初に吉高氏から、2名のゲストスピーカーに質問が投げかけられました。

Q. 今後、サスティナブルファイナンスをどのように最適化していくのか、具体的な方向性を教えていただきたい。

A. 2019年5月、三菱UFJ銀行は、お客さまへの金融サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現、SDGsの達成に貢献するために、2019 年度から2030 年度までに累計20 兆円の「サステナブルファイナンス目標」を設定しました。同年8月に立ち上がったソリューションプロダクツ部サステナブルビジネス室では、サステナビリティの観点で、顧客の事業における中長期的な環境・社会課題に対して、その解決策をともに検討し、将来にわたる大きなビジネス機会の創出・拡大をサポートすることなどを通じて、顧客の持続的な成長を後押ししていくことを目指しています。

具体的には、環境・社会課題に向けたリスク管理の高度化、ESG動向を踏まえたローン商品の開発や出資の検討など、新たな金融ソリューションを提案・提供していく予定です。 最近の事例では、企業向けのサスティナビリティリンクローンをはじめとしたファイナンス推進に加え、環境社会ポリシーフレームワークを作り、ネガティブなインパクトを軽減するような取り組みを進めています。(山﨑氏)

Q. 貴社(日揮ホールディングス)は、ガスプラントなどのエンジニアリング事業を主軸とされていますが、今後、この分野で、持続可能なビジネスをどのように行っていくのですか?

A. EPC(設計・調達・建設)プロジェクトにおいては、顧客の事業活動を支える各種プラント・施設を実現するために、ストラクチャラルファイナンスのお手伝いも行ってきています。当社は、EPCだけでなく事業投資も行ってきました。さまざまな事業を展開していく中で、SDGsに貢献することを示すためのプラスの指標のようなものがあると非常にありがたいと感じているところです。(熊谷氏)

参加者の方からは、「太陽光発電に関する今後の施策を詳しく教えてほしい」「海洋隔離の今後の課題について知りたい」など、具体的な質問が数多く挙がりました。

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CSV経営サロン2019 第3回の締めくくりとして、小林氏が講評を行いました。 「御二方のお話をお聞きして思ったのは、まず、サステイナブルファイナンスの仕組みは、いい企業にはお金が来て、わるい企業にはお金が来ないという、企業の淘汰を進めるすごい力になるだろうということ。また、CCSや海洋隔離のお話がありましたが、非常にインパクトのある事業であると同時に、さまざまな要素を合わせて考えていくことが必要だと思いました。SDGsを考えることによって、もちろんポジティブなこともありますが、ネガティブな部分もいろんなところに転がっています。それをひとつの企業で考え切れるのかというのもひとつの問題として挙げられますし、むしろ、実務にいる側の方から、政策に対する訴えかけを行っていく必要があるとも思います。今後は、実務を担うためには、何が本当に必要なのかということについて、もう少し議論していきたいと思います」(小林氏)

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