イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】持続可能な社会実現の切り札『グリーンボンド』の舞台裏とは?会員限定

CSV経営サロン2020年度 第3回 2021年2月2日(火)開催

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エコッツェリアに集う企業の経営者層が、環境まちづくりを支える環境経営について考えるCSV経営サロン。10年目に突入した今年も、将来のCSVビジネスの可能性を探るべく、環境をひとつの軸として、社会問題の解決とビジネスをどうつなげていくかについて検討します。2月2日(火)に開かれた今年度第3回のテーマは、「環境と投資~グリーンボンド」です。

コロナ禍からの復興のカギとして注目を集める「グリーン・リカバリー」機運の高まりに伴い、世界中でサステナブルファイナンスの動きが急速に進んでいます。その中でも、資金使途を再生可能エネルギーの開発など環境改善効果のある事業(=グリーンプロジェクト)に限定した社債であるグリーンボンド市場が急拡大しており、多くの発行体が脱炭素に向けて様々に展開しています。

今回のCSV経営サロンでは、「金融」「スタートアップ」「都市開発」の3分野から、グリーンボンド発行体の方をそれぞれお招きし、グリーンボンド発行にまつわる成功体験や苦労談、今後の展開などについてお話しいただきました。

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2021年、国際会議で取り上げられるテーマは?

2021年、国際会議で取り上げられるテーマは?

冒頭、当サロンの座長を務める小林光氏(東京大学大学院総合文化研究科客員教授)が、脱炭素の取り組みに対する期待を述べました。

「2020年10月の菅総理による『2050年カーボンニュートラル宣言』、それに続く政府諮問会議の『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』採択により、日本国内の脱炭素機運が一気に高まっています。この機を逃さず、環境改善に寄与する事業に取り組む『良い企業』にグリーンな『良いお金』がたくさん集まるようになってほしいですね」

続いて、師範を務める吉高まり氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング経営企画部副部長、プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科非常勤講師)が2021年の国際会議の動向について話し、会議が開幕しました。

「2021年に予定されている国際会議のテーマは、軒並み気候変動と生物多様性です。8月のダボス会議では、環境健康の回復と持続可能なビジネス開発を両立させながら産業革命を実現するという『グレート・リセット』がテーマになります。世の中の趨勢は完全にサステナビリティやSDGsに傾いており、特に欧州とアメリカにはその取り組みで先行している企業が多く、グリーンボンドをうまく活用してビジネスにつなげている企業がたくさんあります。日本の奮起を期待したいですね」

資金を融通するのではなく、顧客企業とその技術を理解し信じる

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最初に登場したのは、ESGファイナンスの組成で日本初や世界初の事例をいくつも手掛けてきたMUFGグループ(以下MUFG)の、三菱UFJ銀行(以下銀行)のソリューションプロダクツ部サステナブルビジネス室次長の緒方雄一氏です。最初に緒方氏は、同社のサステナビリティへの取り組みについて説明しました。

「以前まで、MUFGは『ビジネスとして手掛けない案件』を厳密に定めていたわけではなく、環境・社会影響への配慮と政策・事情等を考慮し、真に必要と思われる場合は、石炭火力発電をはじめとするCO2多排出ビジネスに対しても、グループ各社を通じてファイナンス提供を行なってきました。しかし、近年になって脱炭素の取り組みが世界的に浸透していく中で、投資家の意識も変化しつつあり、投資家や市場からの目線が厳しくなり、「金融機関もその声を無視できず、どこにださない、だけではなくどこに出していくか、というアクションが求められるようになってきました」(緒方氏)

そこでMUFGでは、2019年5月に「サステナブルファイナンス目標」を設定し、2019年度から2030年度までに環境分野で8兆円、全体で累計20兆円のファイナンスを実行することを宣言しました。それに伴い、同年8月に、銀行内に、企業の機会とリスクを踏まえて、ESG/SDGsビジネスを推進する部署として、『サステナブルビジネス室』を設立しました。緒方氏が次長を務めるサステナブルビジネス室では、ESG格付けの融資スキームやサステナビリティ・リンク・ローン等のESGローンを手がけるほか、顧客のESGへの対応を促し、さらに企業やファンドへの出資も行なっていると言います。

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「当室では、お客様にグリーンボンド等のESGボンドの発行ニーズがある場合は証券に直接連携させて頂きますが、そうした具体的なニーズが出てくる前、実際にはそのはるか手前の、まだ事業としてはスタート段階の水素等環境エネルギー関連や社会課題解決のプロジェクトへのサポート及び事業化支援がメイン業務となっています。脱炭素の取り組みを中心とした環境エネルギー関連の新規事業は軌道に乗るまでに時間がかかるため、ただ単に資金を融通するのではなく、事業化に向けて伴奏しながらお客さま企業とその技術と事業を理解することが何より重要だと思っています」(緒方氏)

今後の動向として、世界的にグリーンボンド等のESGファイナンスが急増し、発行体、借入人や投資家層の裾野が拡大していくことが予想される中で、「金融機関には、顧客のエンゲージメントを高めること(目的をもった対話)が何より重要」になると緒方氏は言います。

「お客さまの事業はどういうものでそれがどのようなインパクトを世の中に与えるのか、環境や社会課題の解決にどうつながるのかということを『見える化』する仕組みこそが、金融機関が提供するESGファイナンスだと思っています。MUFGとの関わりをきっかけに、お客様企業が、自らの事業に誇りを持っていただきつつ、我々がその事業をPRしていくことが重要だと考えています。一言でいえば、お客様企業と一体となって事業を創り出し、育てていくことが大切です」(緒方氏)

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実際、グリーンボンド等へのESG投資を表明する投資家が日本でも少しずつ増えており、グリーンボンド等の購入を発表・表明する投資家が相次いでいます。そのことによって資金の還流が促され、資金調達の多様化と共に、『経済性』という側面から見ても徐々にメリットが生まれていると緒方氏は話します。

「2050年の脱炭素実現は技術的なハードルが相当に高いはずですが、難しいからといって背を背けるのではなく、そこにしっかり向き合っていくことが大事と考える人がお客様企業の中に増えてきています。先日グリーンボンドを発行した某企業は投資家から『2050年に向けて、どういう絵を描いているのか』と質問されたそうです。まさしくトランジションの考え方が反映されています。現在のグリーンボンドは『資金使途』という意味合いが強いのですが、今後は2050年に向けた姿勢や描いている道程を紐づけて考える投資家が増えていくのではないかと思いますし、市場の動向、お客様の方向性を踏まえたESGファイナンスについてお客様としっかり議論することが金融機関の責務と考えています。」(緒方氏)

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『大義』と『プラン』があれば、何でもできる

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次に登壇したのは、電力小売事業や太陽光発電所システムの販売、再生可能エネルギー発電所の運営などを手掛ける株式会社Looopの松本雄一郎CFO管理本部長。『エネルギーフリー社会の実現』を理念に掲げる同社は、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーとテクノロジー、そしてファイナンスをうまく融合させて、社会に安価な再エネを届けるための仕組みの構築を目指している再エネベンチャーです。

2020年4月、Looopはベンチャー企業としては破格の規模となる総額30億円のグリーンボンドを発行し、話題を呼びました。松本氏は、資金調達の手段としてグリーンボンドを選択した理由から説明を始めます。

「2019年の段階で、弊社が自社保有する発電所の発電容量は51MWに達していました。2030年には約20倍の1GWまで拡大する目標を立てており、それを実現するには継続的かつ規模の大きな投資が必要になります。当社のようなベンチャー企業が金融機関から多額の資金を通常融資で調達することは簡単ではなく、そのハードルを乗り越えるには『大義』が欠かせません。これらの問題を解決できる手法こそグリーンボンドだったのです」(松本氏)

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Looopは事業内容とその持続可能性をリスクを開示しながら説明、メガバンクや地銀がESG投資に対して関心を強めるなどグリーンボンドへの投資機運が高まり始めていたことも幸いし、MUFGを引受人とするグリーンボンドの発行に成功しました。調達した資金は、同社が掲げる『エネルギーフリー社会の実現』を目的に活用するとしています。

「『エネルギーフリー社会』とは、完全に無料でエネルギーが自由に使える社会です。再エネは、化石燃料由来のエネルギーなどと違って燃料費がかかりませんし、枯渇する心配もありませんから、再エネの最大普及が実現できれば、少なくともエネルギーを巡っての争いはなくなり、また移動や輸送のコストがフリーになることで多くの社会課題の解決も可能とします。人類を大きな制約から解放し、余力を別の分野に投入できる社会をつくることが当社のビジョンです。そのためには再エネの普及が欠かせず、大量のパネルを各所に設置していくことが必要で、今後も多方面と連携して多様な取り組みを進めていくために、グリーンボンドで調達した資金を活用していきます。具体的には、自社太陽光発電所の開発および新たな発電所の取得などに活用する予定です」(松本氏)

加えて、「グリーンボンドは柔軟性が高かったことも選択する要因のひとつになった」と松本氏は話します。

「通常のローンの場合、投資先物件が決定している、あるいは、投資が済んでいる状態でなければ資金が調達されません。一方のグリーンボンドは投資前に資金が流入するため、余力を発電所の精査などに振り向けることができます。また、投資対象とする発電所の変更が可能だったことも助けになりました」

では、グリーンボンド発行に際して、『難所』となる局面はあったのでしょうか。松本氏は「実は、ほぼありませんでした」と述懐します。

「グリーンボンド発行体には、環境改善効果を測定して報告する『現況レポート』の作成・発行や、グリーンボンドの発行により調達した資金使途の適切性などを客観的に評価する機関からの認証を取得することが課せられます。特に『現況レポート』の作成には相当の労力がかかると予想して『身構えていた』のですが、実際には、引受人のMUFGさんから多大なサポートをいただくことができたため、大きな労力とはなりませんでした。資金使途等については、我々の事業は『グリーンプロジェクト』のど真ん中に位置していますから、支障はほぼ皆無でした」(松本氏)

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最後に、松本氏は『グリーンボンドによる調達効果』について次のように説明し、発表を終えました。

「最も大きかったのはIR効果です。MUFGさんが引受人になっていただいたという影響が大きく、調達金額の規模感や引き受け条件のほか、弊社の事業内容やビジョンが、SDGs投資に興味を持っている方々や投資ファンド、地銀の現場担当者などさまざまなレベルに周知されました。その結果、SDGs関連の社債やローンのご提案をたくさんいただき、資金調達額のさらなる拡大をもたらすという好循環が生まれました。今後も、ぜひグリーンボンドを活用していきたいと考えています」

小さくなかったPR効果

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大トリを務めたのは、三菱地所経理部財務ユニットの岡本洋平氏です。2018年、三菱地所は『東京駅前常盤橋プロジェクト』A棟建設※に関する事業資金の調達において、総合不動産会社としては国内初となるグリーンボンドを発行しました。調達総額は200億円です。
※グリーンボンド発行当時の名称。現在は街区名称「TOKYO TORCH」A棟名称は常盤橋タワーに決定。

発行目的について、岡本氏は「当社のESGの積極的な取り組みを幅広いステークホルダーに認知していただくために、事業の一部の資金調達において、世界的に客観的な指標を有する『グリーン』というメッセージを有するグリーンボンドを選択しました」と話しますが、当時は今ほどグリーンボンドが注目されておらず、『黎明期』と呼べる時期だったこともあり、発行に際しては「苦労が多かった」と述懐し、苦労した点として3つのポイントを挙げました。

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1つ目は、第三者認証機関との調整の難しさ。

「当時は第三者認証機関が少なく、弊社は外資系の企業を選びました。当然、契約内容やフレームワークについての協議は英語を介して行なわれることになります。フレームワークのベースは英語で作成し、最終的にそれを日本語に翻訳したのですが、英語から日本語に訳したときに、『確かに直訳するとその通りだけど、我々が言いたいことと少し違う』と違和感を覚える点があり、調整に苦労したことを覚えています」(岡本氏)

2つ目は、欲張って中身を盛り込みすぎたことによる苦労だと言います。

「総合不動産会社としては初の発行ということもあり、投資情報として環境改善に資する程度を表すグリーンボンドの客観指標である『R&Iグリーンボンドアセスメント』や、環境省のモデル事業にも応募させていただきました。特に環境省さんからは内容について細かな問い合わせを何度もいただき、『細かいところまでよく見ていらっしゃるな』と感嘆したと同時に、経理部では対応が難しい問い合わせが多かったため苦労しました」(岡本氏)

3つ目は、資金管理の難しさ。

「財務畑の人間はよく『お金に色はない』と嘯くことが多いのですが、グリーンボンドは特定事業の目的のために調達・使用することをコミットした資金ですから、資金は厳格に管理していかなければなりません。システムやExcelなどを活用しつつ、それぞれの資金がいったいが何に対して使われていくのかを細かく確認していく必要があったため、地味とはいえ、それなりの労力をそこに割いたことを覚えています。とはいえ、発行からすでに2年以上が経過し、すべての資金が『東京駅前常盤橋プロジェクト』A棟建設に充当されたことを確認できていますので、担当として胸を撫で下ろしています」(岡本氏)

最後に、岡本氏はグリーンボンド発行による効果について説明し、発表を終えました。

「通常の社債とは比べ物にならないほど頻繁にメディアに取り上げていただいたことで、必然的に『東京駅前常盤橋プロジェクト』A棟建設プロジェクトの認知度アップにつながりました。また発行当時、多くの機関投資家さまに投資表明をいただきました。中には弊社の社債を購入した経験がなかった新規の機関投資家さまにも投資していただいたと聞いておりますし、『日経ヴェリタス』誌の"ディール・オブ・ザ・イヤー2018"の機関投資家向け社債の上位にランキングされるなど、グリーンボンドだったからこその賜物だったと実感しています」

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この後、登壇者によるパネルディスカッションが行われ、サロンは閉幕しました。

登壇者の話から共通して見えたのは、資金使途を再生可能エネルギーの開発など環境改善効果のある事業に限定したグリーンボンドは、発行の際の調整や管理の難しさなどがありつつも、それを上回る期待や効果が見込める社債であるということ。これから先、環境問題への関心がさらに高まるにつれ、企業がグリーンボンドを発行する動きもさらに広まっていくのではないでしょうか。

CSV経営サロン

環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリア協会では、2011年からサロン形式のプログラムを提供。2015年度より「CSV経営サロン」と題し、さまざまな分野からCSVに関する最新トレンドや取り組みを学び、コミュニケーションの創出とネットワーク構築を促す場を設けています。

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