イベントCSV経営サロン・レポート

【CSRイノベーションWG】人にやさしい、人々が働きやすい職場(人権)とCSR会員限定

2013年12月19日(木)開催

CSRイノベーションWGが12月19日(木)開催されました。ゲスト講師に笹谷秀光氏(株式会社伊藤園 CSR推進部長 取締役/元農林水産省審議官・環境省審議官)、ファシリテーターに臼井清氏(一般社団法人企業間フューチャーセンター/かなりあ社中)をお招きし、講演とグループでのワークショップが展開されました。

今回は自己紹介を兼ねた、テーブルごとのワークショップからはじまりました。テーマは
■「CSRイノベーションWG」に参加した理由は何ですか?
■「人権」と聞いてどういったことを思い浮かべますか?
のふたつ。個人の考えと、企業としての考えの共有がされ、以下のような気づきが出ました。
・日本で人権というと、自分ごとになかなかならないが、職場にも存在するもの。気を遣っているつもりが、その人の権利を奪っている場合もあるのでは。
・雇用問題、ブラック企業、ダイバーシティの尊重など、身近に多くある。
・人権を表すさまざまな言葉があり、人権という言葉自体は遠ざかっている気がする。
・人権というと、ネガティブな言葉に捉えがちだが、暖かい言葉に捉えられないか。

人にやさしい社会・職場・環境〜笹谷氏

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そして、笹谷氏による事例を交えた講演です。
ISO26000にある中核主題「組織統治」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画及びコミュイティの発展」のすべてに、今回のテーマである「人権」が関連しています。この7つは、相互に依存するもので、人権を考えるときも、残りの6つの中核主題と絡めて総合的アプローチで考えましょうということです。
「人にやさしい」をキーワードに、6つの中核主題を当てはめていくと、「人にやさしい社会」「人にやさしい職場」「人にやさしい環境」の3つに分類でき、考えやすくなります。

人にやさしい社会は、「消費者課題」「コミュニティへ課題」。人にやさしい職場は、「組織統治」「労働慣行」「公正な事業慣行」。人にやさしい環境は、「環境」に関連します。
6つの中核主題と人権をクロスチェックすることで、イメージが湧き、課題に取り組みやすくなる。そのためには、自社のCSR活動を、7つの中核主題に当てはめて考える癖をつける必要があると話されました。

人権の基本は、他人を尊重しその権利を擁護するという人類の基本的な約束事です。今の時代は改めて世界人権宣言を読み返す必要があり、ISO26000の基本となっているラギー報告にある人権の「保護・尊重・侵害されたときの救済」の3つを実行することが重要である。CSR が人による活動である以上、人を尊重するという考え方は CSR 推進上の基本中の基本となるとのことです。
人権課題は多くあるが、解決への主なポイントとして、デューディリジェンス(事前のチェック)と、加担の回避(人権について見て見ぬふりをすることは許されない)を挙げられました。関連企業が不法労働を強いていたことで、親会社への不買運動に発展したケースもあり、自社のみでなく調達先の企業へも注意が必要と話されました。

次の、人にやさしい職場では、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい職場)という考え方を挙げられました。
これまでの「お客様は神様」という言葉に従業員は入っていなかったが、ISO26000では、今や従業員(労働者)も重要なステークホルダー。ダイバーシティやワークライフバランスにしっかり対応しているかが、CSRの外部からの評価のバロメーターになってくる時代で、「ディーセント・ワーク」が職場においてのキーワードです。
働きがいのある、人間らしい職場作りには、さまざまなことをしなければいけませんが、ダイバーシティ対応の女性の活用が最近の代表的課題として挙げられます。

経済産業省委託事業報告書「ダイバーシティと女性活躍の推進:グローバル化時代の人材戦略」(2012年)で挙げられている課題は2つあり、女性就労の「量的拡大」と「質の向上」。意思決定層への登用や、女性の取り組みを経営に繋げていくことも重要で、効果は5つ期待されているそうです。
この報告書で一番面白いのは、外国人に比べれば異質な要素の少ない女性の活用すらできない企業が、外国人を活用できる訳がない、と書かれていることです。女性の活用は、ダイバーシティの入り口であると。言葉の障壁がない人を使えない企業が、外国人をどう使うのか。
女性の雇用数を20代から40代の世代別に表すと、M字カーブを描きます。このM字を描く国は、OECD諸国では日本と韓国のみ。それほど世界から遅れてしまい、大きな課題になってきていることが紹介されました。

以上の通り、「人権と聞いて構えず、幅広く『人にやさしい』という意味にとらえて、具体的取り組みに繋げてほしい」とまとめられました。

さいごに、これまで3回にわたり、企業にとっての「トリプル Sの CSR」を提唱されてきた笹谷氏は、改めて次の通りまとめられました。
すなわち、第1に、今日も説明した ISO26000で CSR の体系化を図る。第2に、ポーターの CSV(共有価値の創造)について理解する(株式会社伊藤園は競争戦略に関連しての一橋大学大学院国際企業戦略研究科主催のポーター教授にちなむポーター賞2013年を受賞したそうです)。特に、日本では、身近なところで社会課題への解決にもつながるCSVの嵐が起きている。第3に、それに気がついてほしい。だからワークショップをするわけです。自分が感じたことを持ち帰って話すことで、インタラクティブな環境ができ、お互いの「気づき」が生まれてきます。これが3番目の S の ESD(持続発展教育) です、と指摘されました。

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これについて詳しく知りたい場合は、「このトリプル Sの CSR については、12月20日に日本評論社から発行される著書 『CSR 新時代の競争戦略ー ISO26000活用術ー』をご参照ください」と、笹谷氏の著書の紹介がありました。

事例を考えるワークショップ

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後半のワークショップでは、女性用生理用品メーカーの海外展開、かつらメーカーの取り組み、聴覚しょうがい者や車椅子対応などのコミュニティ・カフェ、しょうがいを持つ子供の支援自動販売機などの事例に対して、なにが「人にやさしい」のか、企業の社会的責任にどう関係してくるのかを中心にディスカッションが展開され、次のような「気づき」が共有されました。

・ 女性向け用品は女性が販売することで、実体験を交え販売できる。共働き家庭の所得水準が増え、良い経済効果があるのではないか。
・ 子どもがいる場合、どこに預けるのか、親族なのか施設なのか。公共サービスとして託児所が増えつつあるのも人にやさしいことだと思う。
・ 聴覚に障害がある方も楽しんでいただけるようにしたり、車いすの方にも来店してもらいやすく工夫し、従業員の人間性の成長にも繋がっている。
・ かつらのコンプレックスを持つことで、貴重な人材が社会に出て行かない、活躍の場を減らしてしまっていることは、社会にとっても損失。それを改善していることに感銘を受ける。子供にもかつらが必要な場合があるがいじめ解消になる。新しいマーケット開拓へも繋がる。おしゃれを楽しむことにも繋がる。
・ いずれも、人にやさしい、笑顔になる社会活動という視点が重要。

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