イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】フードロスを減らす、持続可能なビジネスを作るには会員限定

2018年度第3回CSV経営サロン 2018年11月26日(月)開催

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「CSV経営サロン」では、「環境」をひとつの軸として、社会問題の解決をどうビジネスにつなげていくか、検討を続けてきました。8年目となる今期は、前年度に引き続きSDGsを念頭に置きつつ、社会や経営という視点も意識し、2020年以降のCSVビジネスの可能性を探っていきます。

第3回のテーマは、「ごみをゼロにする」。中でも特に、フードロスに焦点を当てた内容となりました。年末は、忘年会などもありフードロスが増える時期です。フードロス対策は世界的に見ても重要な取り組みですが、事業者の側からすれば、ビジネスを継続していく上で、ロスが出たからと安易に流通量を削ることはできません。ロスをおさえつつビジネスでも儲けを出すというのは、一筋縄ではいかない課題です。

今回も、"道場主"としておなじみの小林光氏(エコッツェリア協会理事、慶應義塾大学大学院特任教授)と、吉高まり氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のクリーン・エネルギーファイナンス部主任研究員、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任教授)が司会進行を務めます。

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ビジネスのメリットがあってこそフードロス対策も持続可能となる

ビジネスのメリットがあってこそフードロス対策も持続可能となる

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まずマイクを握ったのは、株式会社セブン&アイホールディングス総務部オフィサー、資源・リサイクル担当の藤乘照幸氏。「サスティナビリティの経営 ~社会課題の解決と企業価値向上を両立させるために」というテーマでの講演です。

株式会社セブン&アイホールディングスでは、経営目標の中にSDGsを組み込んでいます。そして、さらなる企業価値向上と持続可能な社会の実現に向けて「ESG投資を意識し、SDGsのゴールに向けて企業努力していく」という方針を立てています。
SDGsに関しては、社内で浸透を図るべく、従業員教育を行っているとのこと。組織としても、原材料や商品を少しでも無駄にしないように、顧客や取引先様を巻き込んで、エシカルな社会づくりおよび資源の持続可能性向上を目指しているといいます。

「当社が展開するセブンイレブンは、18の国と地域に67000店以上あり、6400万人がなんらかの形で店舗を利用しています。その他、ファミリーレストランやスーパーなどのグループ会社を含めれば、当社は食品のあらゆるゴミが出る事業者といえます。従ってごみをいかに発生させないようにするか、どうフードロスをおさえるかは、日々の大きな課題です。残りをどう売り切るか、またどのようにリサイクルするかだけではなく、その上流にある調達のフェーズから、いかにロスをおさえていくかも考える必要があると思っています」

セブンイレブンの取り組みの中で、もっとも参考になるもののひとつが、「サラダの"長鮮度化"」でしょう。「ビジネスとしての利益を追求し、結果的にフードロスも減った」と藤乘氏は言います。

「現在、健康志向からサラダのマーケットは拡大を続けています。そのシェアを獲得する戦略のひとつが、サラダの長鮮度化でした。専用工場で原料入荷から製品化まで一貫して4度以下に保つことで、消費期限を約1日半から約2日半に延ばすことができました。そして、サラダの販売量は2割増え、フードロスも約2%改善しました。管理を徹底し、いかに鮮度のいい状態、すなわちおいしい状態で店舗に運べるか。つまり商品の質を追求したことで結果的にフードロスが減ったのです。このプロジェクトは、商品管理や物流の改革でフードロスがおさえられるという、ひとつのモデルパターンであると考えています」

藤乘氏が強調していたのは、まずビジネスとしてのメリットがあり、その先にフードロスをおさえることにつながるポイントがある、という点です。

「生産に関して言うと、当社は全国13か所、栽培面積約200ヘクタールの農場を持っており、そこで循環型農業を行っています。食品残滓を資源として扱い、肥料などとして活用しているのですが、その事業の大きな目的は、自社管理によって野菜の質を高めることにあります。世界基準の農業認定であるJGAP認定も8拠点で取得しています。そうして安全・安心で新鮮な野菜を店舗販売し、それを利益につなげてはじめて、循環型農業も持続可能になると考えます」

「寄付」は事業者にとってリスクもある施策

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販売現場においても、フードロスの発生を抑えるための取り組みをいくつも行っているといいます。

「例えば当社が展開するファミリーレストラン、デニーズでは、2013年から全店舗参加で『食べきりげんまん スマイルフォトコンテスト』を実施してきました。食事を食べきったお子様の笑顔の写真を店舗に飾ることで、フードロスに意識を向けてもらうきっかけづくりになると考えています。食べ残しというのは、お客様が何を残すかが予想できず、もっともリサイクルしづらいものです。食べ残しをどう処理するかより、いかに残さずに食べるかが重要であり、そのための食育を広めていきたいです」

小売業においては、売れ残りは必ず出るものであり、完全に無くすことはできません。売れ残った食品について、セブンイレブンでは「寄付」を行っています。

「私たちのよきパートナーとなってくれているのが、全国の市区町村にある社会福祉事業部です。先駆けとして、横浜市の社会福祉事業部と提携し、生活困窮者の方々に対して食品など段ボール900個分の寄付を行いました。事業者の側からすると、寄付にはリスクが伴います。もしお腹を壊す人が出たら。誰かが商品を横流しするようなことがあったら。そのようなリスクを限界まで低く抑えた上でなければ、寄付はできません。そうした点も、小売業においてビジネスとフードロス対策を両立させるための課題となるでしょう」

こうした企業としての取り組みは非常に重要ですが、それだけではフードロスという課題の解決には至りません。消費者の側もまた、意識を高め、積極的に協力していくことが大切です。

「セブンイレブンでは、店舗店頭に回収機を置き、ペットボトルの回収を行ってきました。2017年には8000トンのペットボトルが集まり、累計で25244トンを回収してきました。こうしたお客様との接点こそ、フードロスやリサイクルを考える上で小売業が意識すべきもっとも大きなポイントです。今後も、お客様の意識を少しでも高めるべく、諸活動を展開していきたいと考えています」

リサイクルより、ロスそのものを減らすほうが効率がいい

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 続いて、フードロス問題への貢献を使命とし、ビジネスへとつなげているベンチャー企業である株式会社コークッキング代表の川越一麿氏が登壇しました。

「初めにフードロス問題をおさらいしておきましょう。農林水産省と環境省の推計では、2015年度の日本におけるフードロスは、646万トン発生しているといいます。これは世界食糧計画(WFP)による世界全体の食料援助量の2倍に相当する量であり、それだけの食料が廃棄されているというのが現実です。フードロスと一口で言っても、家庭から企業までさまざまなところで発生しているわけですが、当社でターゲットとしているのは、総菜やコンビニ弁当などの調理済み食品を自宅で食べる"中食"と、飲食店やレストランなどで食事をする"外食"です。2017年において、中食、外食のフードロスによる推定経済損失は1兆9000億円ともいわれています。そこをいかに抑えるかが、当社の課題でもあります」

中食、外食におけるフードロスの原因を、川越氏は以下のように分析します。 「中食においては、消費者心理に起因するロスが大きいです。例えば、棚がすかすかで商品がないパン屋さんがあったら『あそこは品ぞろえが悪い、好きなものが選べない』ということで、お客様の足は遠のくでしょう。そうしてイメージが悪くなるよりは、売れ残るとしても、棚を商品で満たしておいたほうがいい、と考える事業者は多くいます。外食については、衛生的な観点もあり、もし食事を残してしまってもそれを持ち帰るのは禁止というところがまだまだたくさんあります。また、予約のドタキャンなどによるフードロスもブラックボックス化しており、そこでどれくらいフードロスが生まれているかわかりません」

そうした社会的背景を踏まえ、コークッキングが展開しているのは、インターネットにより、ロスをなくしたい事業者と、割安で商品を手に入れたい消費者をつなぐサービス「TABETE」です。

image_csv1128_05.jpeg株式会社コークッキングサイトより

「TABETEは、安全においしく食べられるのに廃棄の危機にある食事をレスキューするサービスです。事業者がTABETEのウェブサイトに登録し、廃棄の危機にある食品の情報を掲載。それがアプリなどを通じ消費者に通知され、消費者はお店に直接出向いてそれを購入します。事業者は通常価格よりも割安で商品を出すことになりますが、捨てれば利益はゼロであり、もし買い手が見つかれば少しでもコストを回収できます。よく売れる店舗で月5~6万円分が、廃棄を免れ消費者の手に渡っていきます。消費者にとっては、安いというのが魅力ではありますが、それだけではなく、『食べるだけでフードロス問題に貢献している』と思える点も心に刺さっているようです。ビジネスモデルとしては、マッチングした分の手数料を利益源としています」

TABETEの会員数は現在75000人、登録店舗は都心を中心に272店舗。ユーザーの6割は20代~40代で、新しい食の選択肢として利用しているようです。なお、こうしたサービスは海外ではすでにいくつか展開されており、例えば「TooGoodToGo」はEU7カ国に渡って広まり、200万ユーザー、6000店舗の規模にまで成長しています。今後の日本でも注目を集めるのは間違いないでしょう。

「食料は、ごみとして廃棄されるものを再び繊維や肥料などに加工するよりも、そのままの状態でできる限り消費するというのがもっともエネルギー効率が高い。そうした立場で私たちは事業をしています。これからの課題は、登録店舗の開拓です。少しでも多くの事業者の方々に、ぜひ一緒にフードロスを減らす取り組みをしてほしい。そう思っています」

無駄が出ているからこそ、大きなビジネスチャンスがある

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ここで、道場主の小林氏や参加者から、登壇したお二方に質問があがりました。以下、主だった内容を紹介します。

Q:セブン&アイホールディングスでは、自社の取り組みをどう消費者にアピールしていますか。また、サラダの商品管理や流通に投資した金額、費用対効果はどれくらいですか。

藤乘氏:店舗側には周知され、たくさんの協力を得られていますが、消費者に対するアピールはほとんどできていません。いかに価値を伝えていくかは今後の課題といえます。サラダに関しては、ご質問の数字までは算出していませんが、「売り切り」を追求していった結果が、フードロス削減につながった感覚です。今後もさらに公益性を高めていきたいと思います。

Q:TABETEについて、ユーザーの満足度は割引率によっても変わってくるでしょうが、実際にはどれくらいの割引率で売られているのでしょう

川越氏:割引率は、平均すると3割程度です。ただ、飲食店で余るのは圧倒的に米であり、それだけでは当然、買い手が少ないので、満足度をあげるなら、消費者に人気がありそうなメニューも掲載する必要があります。また、もともと持ち帰りサービスを行っていない店舗には、サトウキビの搾りかすから作った容器を我々が提供しているのですが、そうした副次的なコストをどうするかが現在の課題のひとつです。

続いては、会場の参加者からの質問です。主だったものを挙げていきます。

Q:「脱プラスチック」という課題について、セブン&アイではどう考えていますか

藤乘氏:プラスチックはとても便利なものですが、ご指摘の通り脱プラスチックもまた課題であり、農水省からもそれを求められています。例えば化学メーカーの花王では、シャンプーのパッケージに5層、6層の機能性の高いプラスチックを使用、そしてそれをさらに高度な技術でリサイクルする取り組みがあります。こうした試みを積極的に展開し、いい落としどころを見つけるのが企業の課題だと思っています。

Q:消費期限に関して、長すぎるという指摘もありますが、実際はどうでしょう

藤乘氏:現在の消費期限は、慣習によって定まっている、いわば「暗黙のルール」です。確かに世界的にもっとも厳しい基準となっていますが、それは消費者保護の観点から業界が主体的に取り組んでいる結果です。必要以上に短すぎればフードロスにつながりますが、仮に基準を緩和するなら、安全性とのバランスをどうとっていくかが課題となります。

Q:TABETEの登録店舗数を増やすという課題に対し、どう取り組んでいく予定ですか

川越氏:現状は「ぐるなび」などの黎明期と同じであるという認識でおり、まずは営業リソースをつぎ込むことです。ただ、いくつかのハードルがあります。中食に関して、現場では実際に食品を捨てているので「ロスをなくそう」という理念がすぐに響くのですが、大企業は複数のグループ会社と協調せねばならないことなどもあり、プロジェクトの進行がどうしても遅くなってしまっています。外食は、衛生面の配慮から持ち帰りNGであったり、人材不足で余裕がなかったりして、「フードロスなど二の次」という店舗が多くあります。そうした壁をいかに乗り越えられるかが、今後の事業の発展を左右すると考えていますから、全力でチャレンジしていきたいです。

最後に、道場主からの総括がありました。
「フードロスの問題は、一夕一朝とはいかぬ難しい課題ですが、まずは消費者の意識を少しずつ変えていき、ルールなども見直していく必要性を感じました。無駄があるというのは、そこに大きなビジネスチャンスがあるということに他なりません。本サロンがきっかけで、新たなアイデアが生まれ、それがビジネスとフードロスを結びつけるひとつのモデルになることを願っています」

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サロン後は、毎回の「お楽しみ」である、アルコールを交えた「ワイガヤ」の会が開催されました。その会場においても、フードロスを意識しつつ、さらに議論が深まったことでしょう。

今回ご参加いただいた会員企業のみなさまは以下の通りです。

株式会社伊藤園
株式会社イトーキ
エーシーシステムサービス株式会社
クラブツーリズム株式会社
シャープ株式会社
ダイキン工業株式会社
東テク株式会社
パタゴニア東京・丸の内

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エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。

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