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【レポート】ESG投資の観点から見るグリーンインフラの価値

Green Tokyo研究会 有識者懇談会 第4回 2022年1月17日(月)開催

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2021年度からスタートしたGreen Tokyo 研究会「有識者懇談会」。年が開けて最初の回となる第4回目では、気候変動ファイナンスの日本における第一人者である吉高まり氏(一般社団法人 バーチュデザイン 代表理事)をお招きし、2021年11月に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」の報告と、「金融業界から見るグリーンインフラの価値」と題したご講演をいただきました。プレゼンテーションの要旨と、吉高氏と参加者とのディスカッションの様子をレポートします。

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世界では気候変動だけでなく生物多様性への関心も高まっている

世界では気候変動だけでなく生物多様性への関心も高まっている

image_event_230117.002.jpeg一般社団法人バーチュデザイン代表理事の吉高まり氏

吉高氏はESG投資やSDGsビジネスの領域における第一人者であり、2021年にはグリーンビジネスに関するデータ収集や調査分析、プロデュース、人材育成などを展開するバーチュデザインを設立。国内外を舞台にグリーンサステナビリティ分野を牽引しています。COPにも頻繁に参加しており、世界の気候変動対策の移り変わりを最前線で目の当たりにしています。吉高氏はまず、2021年にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26の報告を行いました。

2020年以降日本では新型コロナウイルス感染症のリスクや対策ばかりが取り沙汰されていますが、海外では「コロナと気候変動は天秤に掛かっている状態」で、COP26も大いに白熱していたと言います。中でも吉高氏がピックアップしたのが、産業界からの参加が多かった点です。

「アロック・シャルマ議長がフェイス・トゥ・フェイスにこだわり参加を求めたため、例年以上に多くの交渉団や団体が参加し、また、COPのオフィシャルパートナーにボストンコンサルティング、シスコ、グーグルなどのIT企業の参加は特徴的でしたし、日本からも日立がパートナーとして入りました。また、ジャパンパビリオンにはパナソニック、日揮、IHI、住友林業などが参加し技術展示をしていました」(吉高氏、以下同)

その甲斐もあってか、例年集客に苦労していたというジャパンパビリオンは高い人気を誇っていたと言います。その他に吉高氏が印象的だったとして挙げたのが、若い世代の参加者が"異常"なほど増加していた点と、議題の中心がCO2削減から生物多様性や弱者の人権に多様化している点です。特に後者に関しては、「日本企業も気候変動課題はCO2削減と同じレベルで考えていくべき」テーマになると指摘します。

「例えば北極やピートランド(泥炭地)の変化に関する研究報告やパビリオンが目立ちました。また若い世代の間では『MAPA(Most Affected People and Areas)』という言葉が使われるようになっていますが、気候変動の影響を最も受けるのは弱者であるという視点が広まっています。つまり、気候変動によって生態系が破壊され、水資源がなくなって貧困が進み、弱者は意見が言えない状況では、ますます格差が開いていく。こうした点に関する議題が非常に多かったと感じました。これらを踏まえ、経営者と話をする際には『CO2と生態系保護を別の問題として考えないように』と伝えるようになりました」

さらに吉高氏は、COP26での議論を通じて決定されたものの中から注目すべきポイントとして、「1.5度目標の確認と、温室効果ガス排出量削減のためのさらなる行動の促進」「パリ協定の目標達成や、開発途上国支援のための資金調達の増加」などを挙げました。

また今回の会議ではファイナンス面でも大きな動きが2つありました。まずひとつが、元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏と、バイデン政権で気候変動問題担当大統領特使を務めるジョン・ケリー氏らによって設立された「グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロ(GFANZ)」という470以上の金融機関から成る連合体が、ネットゼロ達成のために今後30年間で100兆ドルもの投融資をすると表明したことです。ふたつ目の動きが、企業の財務会計にサステナビリティに関する情報を入れる際の基準をつくる国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が設立されたことです。こうした流れを紹介した上で、吉高氏は「気候変動のリスクへの対応は金融機関にとっても急務である」「企業の財務担当役員がサステナビリティと会計基準の関係性を理解しているか否かは企業の存続に関わってくる」と見解を述べました。

image_event_230117.003.jpeg ジャパンパビリオンの様子

ESGを考慮した企業の方が高いパフォーマンスを発揮

COP26でファイナンス面の大きな動きがあったように、気候変動と企業の情報開示の関係性は変化を続け、投資家も注視しています。そこで吉高氏は「ESG投資と企業のリスクとビジネスチャンス」と題して、グリーンビジネスの現状や今後の展望についても解説しました。

現在世界中でサステナブルな経済のあり方が求められているのは、1970年代にアメリカの環境経済学者ハーマン・デイリーが唱えた持続可能な経済が満たさないとならない物的な3原則が満たされていないからです。エコロジカル・フットプリント(人類が地球環境に与える負荷を測る指標)で「世界の人が日本人並の生活をするには2.9個の地球が必要になる」と算出されるほど地球に環境負荷を掛けており、日本においても環境負荷の高い都市部が他地域との連携なしでは存続できないことは明らかです。当然ながら日本政府も時局を認識しています。SDGsに対する基本的な考え方を取りまとめた「SDGsアクションプラン」の中では、機関投資家が投資する際の意思決定プロセスに「Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)」といった非財務情報を考慮するESG投資の推進などを謳っています。

image_event_230117.004.jpegエコロジカル・フットプリントでは、世界の人が日本人並の生活をするには地球が2.9個必要になるといいます

このESGファイナンスは、コロナ禍の世界的な低金利政策や、欧米における株主至上主義の見直しの影響を受けて増加の一途をたどっています。その背景には、ESGを考慮してビジネスを推進する企業の方がよいパフォーマンスを発揮しているデータがあるからだと吉高氏は説明しました。

「もともと欧米では、株主に対して配当や手当が多い企業の株価が上がる傾向にあり、環境面などに投資する企業はリスク低減面でしか評価されていませんでした。しかし最近では、ガバナンスが効いていて透明性が高く、環境面、つまり将来のリスクに対して投資して事業を展開する企業の方が、コロナ禍のような社会的なリスクが発生してもパフォーマンスが落ちない、あるいは落ちても回復しやすいとのデータが出始めています。そのため、そうした企業に対してお金が回り始めるようになってきています」

1920年代から欧米ではキリスト教の教えに反しないで投資をする「社会的責任投資」の考え方がありましたが、非財務情報の詳しく見ると新たな市場価値創出の可能性を持つ企業の発見につながるとわかってきたため、現在のESG投資の隆盛につながっているというのです。欧州ではグリーンウォッシュ(実際には環境に配慮し切れていないのに環境に良いと謳うこと)を規制するため、2018~2020年の間のESG投資額は鈍化傾向にあるものの、アメリカでは2018年の12兆ドルから2020年は17.08兆ドルに増加しており、世界的にESG投資は拡大しています。しかし日本ではESG投資が展開されるようになったのが2015年頃からと遅く、この流れに乗り切れていない状況です。その分の伸びしろは残されているとは言えるものの、「ここで何もできなければ市場から期待されずに終わっていく危機感を抱いている」とも吉高氏は話しました。

こうした中で企業が取るべき行動は何か。吉高氏は、(1)ネガティブ・インパクトの排除、(2)ポジティブ・インパクトを出す持続可能な経営モデルのアピールの2つを挙げた上で、これらを非財務情報とともに語って定量化していくこと、またSDGsで定められた17の目標のそれぞれの市場規模を把握し続けることが必要だと訴えた上で、次のような考えを持つ重要性も説きました。

「経営トップはESG経営を行っていく上で、将来どんな企業として生き残っていくのかをバックキャスティングで考え、話せるようにすべきです。もちろん中期計画などはフォアキャスティングで積み上げることも重要ですが、ESG投資家は10年スパンでも企業価値を測ろうとしますから、単なるストーリーだけでは足りないんです。バックキャスティングで考えたシナリオに対して、どのようなロードマップを敷いて進んでいくかを考えて行かなくては評価されなくなって来ているのです」

image_event_230117.005.jpegESG経営はバックキャスティングで考えることが重要となると吉高氏

もう一つの指摘が、「三方よしで終わらないこと」です。上述の通り、今世界では株主至上主義からステークホルダー資本主義へと移りつつあります。日本では江戸時代から近江商人が唱えた「三方よし」の考えが浸透しているので受け入れられやすいものの、売り手・買い手・世間だけで留まってしまうのではなく、「株主よし」「従業員よし」、さらには「地球環境よし」など様々なステークホルダーに対象を広げていかなくてはならないのです。加えて、ESGやSDGsに関する取り組みはサプライチェーン全体で管理するものとして捉えられているため、大企業だけではなく中小企業にも求められています。その成功例として吉高氏は大川印刷の事例を紹介しました。

「大川印刷は環境負荷低減に特化した環境印刷の取り組みが評価され、大手企業や外資系企業などを中心に直近3年間で175軒の新規顧客を獲得したといいます。こうした取り組みは早い段階から行われていて、経営者自らが発信もしています。ここで大切なのは、単に取り組むだけではなく、しっかりと発信することです。いかに素晴らしい活動でもアピールしていかなければ知られませんし、知られなければビジネスには繋がりません」

また、2021年度のESG投資に関するテーマとして大きかったものとして紹介されたのが、上場企業が遵守すべきガバナンスの行動規範をまとめたコーポレート・ガバナンスコードが改訂されたことです。この改訂の主なポイントは、気候変動や人権、従業員の健康や労働環境への配慮、サステナビリティに関する取り組みなどを強化すると盛り込まれた点です。これを紹介した上で、吉高氏は「こういったものを経営課題として捉えて行かなくては、上場していられなくなる」「これらに関する情報開示を進められるか否かで、企業間に大きな差が出てくる」と話しました。

世界と日本における「グリーン」の定義にはズレが生じている

ここまで見てきたように、今や業種業態、規模の大小を問わず、事業活動を行う上でESGやSDGsへの取り組みは欠かせないものとなっています。気候変動への対策はEの観点ではどの業種においても重要項目となっており、、その関連ビジネスは今後盛り上がりを見せていくと予想されます。ではこのテーマのビジネスを推進するにはどのような知識や姿勢が必要で、どのようなリスクをはらんでいるのでしょうか。

まず吉高氏が触れたのが気候関連財務情報に関する開示についてです。気候関連の情報開示や、それに伴う金融機関の対応方法の検討を行う気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)では、気候変動が金融業界に及ぼす影響の中でも、政策や法律、技術、市場など変化を伴うリスク(移行リスク)と、気候変動によって起こる災害等で顕在化するリスク(物理的リスク)、及び機会の財務的影響の開示を促しています。この情報開示は世界的に上場企業に義務化する流れも出てきているため、対応は急務となっています。

また物理的リスクには急性的と慢性的の2つがあります。前者は極端な気象事象の増加を意味し、後者は降水パターンや気象パターンの変化、平均気温や海面の上昇といったかねてより対応が叫ばれているリスクを指します。それぞれのリスクはビジネスにどのような変化を及ぼすのかを経営者は理解・適応し、その上でリスクをビジネスチャンスに変える方法を考え、情報開示が求められます。

「例えばIHIと住友林業は温室効果ガスの抑制を目指して森林管理モニタリング技術に取り組んでいます。清水建設は、洪水の多いインドネシアにおいて物理的リスクを回避するための設計・施工などを行っています。こういったものが「適応」ビジネスであり、こうした情報を積極的に開示していく必要があります」

その他、JR東日本や積水ハウスなどは、自社ビジネスに関するシナリオ分析を行った上でリスク発生時の財務的インパクトを発表していますし、日立製作所は有価証券報告書にカーボンニュートラル宣言を明記するなどしています。このようにしっかりと情報を開示して投資家が評価をしやすい環境を作ることが重要になってくるのです。

image_event_230117.006.jpegグリーン成長戦略の14の重点分野

また吉高氏は、「グリーン」というキーワードに関連するものとして、経済産業省が掲げる「グリーン成長戦略」について紹介しました。これは2020年12月に発表され、2021年6月に改訂された環境に配慮しながら経済成長を実現するための政策です。エネルギー関連産業や輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業という3カテゴリ14分野の事業におけるイノベーションの実現を目標としています。気候変動ビジネスを推進する上で、こうした戦略の立案は重要ですが、一方で吉高氏は、環境政策におけるグリーンというワードの定義について、世界と日本ではズレが生じているのではないかと疑問を呈しました。

「日本の場合、緑化の文脈でもグリーンと使いますし、再生可能エネルギーでもグリーン投資などと表現しますが、これは外から見ると非常にわかりにくいんです。グリーン成長戦略の中では『グリーンイノベーション基金』として2兆円の基金の用意や、税制の変更、グリーン国際金融センターの設立なども謳っていますが、こうした"グリーン"の文脈の中に、Green Tokyo研究会の皆様が使っている"グリーン"がどう入ってくるのかが私はわかっていません。このように日本ではあちこちで違うグリーンが使われているのは課題だと感じています」

もう一つ吉高氏が指摘したのは、政府が進める「地域炭素ロードマップ」についてです。2030年度までに全国で少なくとも100ヵ所の脱炭素先行地域をつくるために200億円の予算を計上していますが、まちづくりの観点が必要な施策であるにも関わらず視点が偏ってしまっているため、「下手すると自治体間で格差が出てきてしまう恐れがある」のです。そのため「政府はもっとホリスティックに考えていく必要があると思っている」とも話しました。

最後に吉高氏は、地域と企業が連携した適応ビジネスの事例として、宮城県東松島市の一般社団法人東松島みらいとし機構(HOPE)とアサヒビールによるブランドビールの連携開発事例を紹介。これは地産地消の大麦を用いたブランドビールを開発したというものですが、一方、HOPEは災害時の停電用に地域強靭化のためオフグリッドの再生可能エネルギー事業を行おうとしています。RE100を宣言しているアサヒビールがFeed in Premiumなどを使って、そこから再エネを購入することが考えられます。アサヒビールはこれらの事業をするためにグリーンボンドを発行し、ESG投資家が購入するという図式です。

「これは何らかのフレームワークを活用したものではなく、各社が個々でやったものですが、背後にESG投資の流れがあるからこそだと思うのです。今後はこのようなフレームワークをつくる人が出てくることが期待されます」

気候変動に関する改革は本気で進み始めている

image_event_230117.007.jpeg質疑応答の様子

吉高氏の講演を終えたところで、Green Tokyo 研究会会員を交えた質疑応答とディスカッションへと移りました。その模様をQA形式で紹介します。

●グリーンインフラに対する組織の意識に関する質疑応答
Q. プレゼンの終盤で指摘いただいたグリーンの定義については、ご指摘のように日本ではグリーンインフラという言葉がとても狭い意味になっていますが、欧米ではグリーン≒環境として捉えられています。そのため、グリーンインフラについて語るときに矮小な議論で収めてはならないというのは当会の課題でもあります。ところがこうした話をしようとすると、縦割り行政の弊害を受けたり、投資家に説明ができないと言われたり、大それた話だとして避けられたりと、色々な抵抗に遭うことも多いんです。こうした状況を打破する方法はありますか?

A. 私自身同じような経験をして疲れ果ててしまったこともあります(笑)。ただし、最近は徐々に空気が変わってきている実感もあります。まず政府に関しては、内閣の気候変動に関する有識者会議に出席していましたが、初めのうちは内閣官房と経済産業省、環境省からの出席者だけでしたが、次第に国土交通省や農林水産省の大臣も出席するようになっていましたし、金融庁や日本銀行でも動きはじめているので、本気で取り組んでいかなくてはならない状況として改革が進められているのは確かです。岸田文雄首相もCOP26に出席していましたし、「新しい資本主義」に脱炭素が入り、気候変動に対する感度が高くなっていると感じています。

企業に関しても同様で、色々な企業の役員の方と話していると危機感が高まっているのを実感しています。特に、コーポレート・ガバナンスコードの改訂でTCFDの義務化の流れが生じ、ガバナンス面で投資家の視線をより強く意識する必要が出てきた点は大きかったと思います。加えて、学生の間にも気候変動に関する危機感は浸透し始めています。優秀な学生ほど感度が高い傾向にありますから、人材確保の面でも、企業の情報開示の重要性は増しているといえるでしょう。

Q. 確かに幹部クラスの意識の変化は感じますが、その反面、現場サイドではホリスティックなビジョンを持てていないようにも感じますし、技術にばかり走ってしまっているようにも感じます。そこは技術立国としてのプライドが邪魔をしている印象があるのですが、吉高さんとしてはそういったものを感じますか?

A. それはどうしてもありますが、そこで重要になるのが技術の活用の発信です。世界中の企業が変化し、需要のあり方や売り込み先も変わっている中で、技術に対する意識や考え方も変化していく必要があります。その技術が社会の中でどう役に立つのか、成長戦略の中のどこに関係してくるのかを説明できないとらならないのです。ですから、本当にその技術が大事だと思うならば、技術の先をぜひ話して欲しいなと思います。

●「国土強靭化」の捉え方に関する質疑応答
Q. 物理的リスクの話題に関連して「国土強靭化」という言葉が出てきましたが、日本が謳っている国土強靭化と、ESG投資における国土強靭化では目指す方向が違うように感じていますが、いかがでしょうか?

A. 金融機関のESG情報データベースなどには、企業が所有する工場の位置情報が掲載されています。各工場がある地域で想定外の気候変動が起こった際に、ビジネスにどのような影響が生じうるか情報提供がされてはじめています。地域にとって企業法人の税収入は重要で、企業の資産の強さが地域産業の強さであり、経済の強さとなります.こうしたものの積み重ねとして国土強靭化があります。国土強靭化というのは、防波堤を建てるだけではなく、エネルギー、水、食料というライフライン、地域の人々のウェルビーイングを高めることも強靭化ですし、人材育成も強靭化ですので、こういったものが合わさったものとして国土強靭化があると思っています。

Q. Green Tokyo研究会では、緑や水などの自然環境だけではなく、人と人をつなげたり、ビジネスを生み出す緑のあり方などについて考えていこうとしています。今の回答をお聞きして、そうした動きを継続的に行い、未来に残していくことが、ESG投資で言われる国土強靭化につながるのではないかと感じました。

A. おっしゃるとおりで、どんなに素晴らしい防災システムがあっても、人と人のつながりがなければ意味をなさないケースがありますし、そうしたものをつくることで気候変動に対する人々の意識が変わる可能性もあります。地域や企業の価値を考えていくとき、そうした情報も開示していく必要がありますし、これからはデータとして欲する企業も増えてくるのではないかと思っています。

●中間支援組織についての質疑応答
Q. 脱炭素地域の取り組みなどの事例を聞いていると、ハブになる存在が必要なのではないかと感じました。中間支援組織が入れば様々な活動がスムーズに進み、投資やパートナーシップも成り立つのではないかと思っていますが、現実的には誰がその役割を担うのかが大きな課題になっています。この点に関して、吉高さんのお考えをお聞かせください。

A. 紹介した事例ではHOPEという一般社団法人が中間支援組織として立ち回っていましたが、必ずしも新たな組織を立ち上げる必要はないと思っています。今、日本では各地の地方銀行が地域の新しいビジネスをつくるために動いている事例はたくさんありますし、企業から自治体に出向して動いているようなケースもあります。特に地銀の場合は生き残るために色々な仕掛けをしていかなくてはならないので、今後、サステナビリティファイナンスはコアビジネスになっていくと考えています。

●"グリーンコンフリクト"に関する質疑応答
Q. カーボンニュートラルに関する事業を展開する際、里山が開発拠点になるため、ローカルの視点で見ると逆に環境負荷を抱えてしまうケースがあり、大きな課題だと感じています。こうした"グリーンコンフリクト"と言える問題は、投資家目線ではどのように見られているのでしょうか?

A. ご質問のような課題は各社が抱えていますが、例えば住友化学では、社内に自分の仕事とSDGsやカーボンニュートラルといったテーマがどう関わっているかを投稿できるプラットフォームをつくっています。そこに投稿された情報を経営層がピックアップして整理し、施策を考えたり社内で共有したりしています。これこそがガバナンスだと言えるでしょう。

 "グリーンコンフリクト"に対する投資家目線という点については、欧州ではグリーンウォッシュが問題視されているため、見かけだけのグリーンを非常に危惧しています。ただ、投資家は開示されている情報に頼るしかありませんし、企業の方はリスク情報を出したがらないので、ここに関しては公的機関に期待する部分になるかと思います。

質問は多岐にわたりましたが、こうしてこの日の講演は終了となりました。

2021年度のGreen Tokyo研究会の有識者懇談会は、次回が最後の開催となります。

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