イベント環境プロジェクト・レポート

【レポート】野鳥の愛のささやきから見えてくるものは......?

大丸有シゼンノコパン vol.2 「冬鳥を覗る―愛の駆け引き―」 2021年2月14日(日)開催

「ソトへ出よう。ソトを知ろう。」をキャッチフレーズに、都市の中の自然へマナザシを向けてみよう。それが「大丸有シゼンノコパン」のコンセプトです。大都会・東京は、自然の対極のように見えますが、実は東京の中にもたくさんの自然があるのです。それに気づいて目を向けたとき、都市の見え方はグンと変わるはず。

「生物大好き! 自然大好き!という人だけでなく、自然に詳しくなく、大丸有でつながりを持ちたい人、大丸有をもっと知りたいという人にこそ参加してほしい」と話すのは、エコッツェリア、環境・R&Dディレクターの松井宏宇。今時代が求めているのは「自然-都市」「野生-理性」と二元論的な対立思想ではなく、多元的にミックスできる思考です。大丸有シゼンノコパンは、大丸有の自然を通じて、人と人がつながり、ビジネスやソーシャルアクションなど幅広く新しい「コト」を見つけだす場を目指しています。

毎回各分野の専門家が登場し、東京を見るための新しい視点を教えてくれる仕立てとなっており、第2回目のテーマは冬の野鳥の「愛の駆け引き」です。鳥は昆虫と並んで都市にもっとも近い野生生物。いったいどんな野鳥を見ることができるのか、そして見えてくる新たな視点とは――? バードウォッチング専門誌『バーダー』の編集委員や、NHKラジオ『夏休み子ども電話相談室』の野鳥担当回答者で知られ、現在はネイチャーガイドとしても活躍する、鳥の専門家、中村忠昌先生が、都市の中の鳥を語ります。

完全オンラインで開催しましたが、大人・子ども含め大勢の方にご参加いただきました。

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なぜオスとメスで派手さが違うの? 野鳥たちの愛と生存戦略

なぜオスとメスで派手さが違うの? 野鳥たちの愛と生存戦略

中村先生は、子どもの頃に自宅のエサ台に集まる鳥に興味を持ち、近くの公園の池でカワセミに出会ってしまったことから、野鳥の世界にのめり込んだという経緯の持ち主。都立葛西臨海公園鳥類園の勤務を経て、フリーの環境コンサルタント、そして、「一人でも多くの鳥好き・いきもの好きを増やしたい」という思いからネイチャーガイドとしても活動しています。

「例えば、この季節なら東京でもたくさんのカモを見ることができますが、カモは肉や卵を鴨せいろやピータンとして食べたり、羽毛をダウンジャケットや羽毛ふとんなどで使っていたりする我々人間にはとても身近な存在で、生活にも密接しているいきものです。東京でも気をつけて見ると、すぐそばにいますから、今日は一種類だけでも気に入った鳥の顔を覚えてほしいと思います。そして、鳥好き、生きもの好きの人が一人でも増えてくれればうれしいです」

今回は、まず3×3 Labo Futureのすぐそばにある、皇居のお濠の野鳥をピックアップ。「お濠」と一口では言うものの、実は環境は一様でなく、季節変動もあり、それに合わせて野鳥の居場所や生活も変わります。

「3×3 Labo Futureのすぐ近くの桔梗濠には、12月ころにはカモがたくさんいましたが、2月の今は日比谷濠、桜田濠のほうに移動してしまっています。水草の多いところを選んで、食べ尽くすとまた移動していくし、掻い掘りなどで環境が変わることも影響していると思います」

そして、冬の間に皇居周辺で見られる代表的なカモ類を紹介していきます。

キンクロハジロ(左)......ちょんまげ(冠羽)のある、「野武士みたい」な精悍な顔つきのカモ。
ホシハジロ(右)......白い背中に細かく黒い模様があることからこの名前に。世界的に個体数が減少し危惧されているが、あるテーマパークの池の池には多数飛来しています。

ヒドリガモ(左)......地上の葉を食べるため農家に被害も。桜田濠の土手でよく草を食べている。カモ類では特にに鳴き声がかわいい。
ヨシガモ(右)......顔の緑色が特徴的。東京では皇居でしか見られないため、「顔を覚えるならお堀が超おすすめ」。"腰蓑"のようなもさっとした羽(ミノバネ)も特徴。

オカヨシガモ(左)......全身が、グレーがかったブラウンで、地味ながら翼の一部に白い羽根が見える。「シックなカモだけどこれも皇居周辺で観察しやすいオススメのカモ」。
ハシビロガモ(右)......しゃもじのように先が大きく広がったクチバシが特徴。水面をくるくる周りながら、浮かんでいるものを食べる習性があり、見つけやすい。

そしてここで、「紹介した6種のカモに共通しているのは何だと思いますか?」と参加者に質問。

左側がオス。右側がメス。オスメスともに、左上から順に、キンクロハジロ、ホシハジロ、ヒドリガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ、ハシビロガモ。

「正解は『すべてオス』です。あえてオスの写真だけで紹介してきましたが、メスと比較するとオスが圧倒的に派手で、メスは非常に地味な色合いをしていることが分かります。メスは卵を生んで子どもを育てるから、天敵に見つかりにくいよう、あたりの風景に溶け込みやすい地味な色合いをしているんです。対してオスは、結婚相手であるメスにアピールしなくちゃいけないので、派手な色・柄をしているんですね」

都心といえど、皇居には大きな林もあり、ノスリ、ハヤブサ、オオタカといった猛禽類が多く生息しています。オスは繁殖期に入ると派手な羽に生え変わりますが(これを換羽といいます)、派手でも生き残っているということが、逆に個体の強さを示すことにもつながります。また、色・柄は栄養状態を示すバロメータにもなります。鳥たちの「愛の駆け引き」は、種の生存を掛けた文字通り「命」を掛けた営みであることが分かります。

このように、オスが繁殖期に派手になるのは、渡り鳥のように、毎年つがいの相手が変わる鳥に限るそうです。大手町で有名なカルガモは、年間を通じて同じ場所にとどまる鳥(留鳥)で、つがう相手も変わらないため、繁殖期でもオスが派手になることはありません。

ハシビロガモのディスプレイ

また、オスがメスに対して行う求愛行動は「ディスプレイ」とも呼ばれ、これも種によって異なります。

ハシビロガモは、オスがメスの周囲をくるくる周って見せる。オスが水をかき回してメスのためにプランクトンを食べやすくしているとの説もあります。コガモは集団でお見合いをします。ヨシガモは頭を大きく前後に振り上げて、尾を震わせます。

コガモの繁殖活動の様子

前半までの内容に関して、いろいろな質問が出され盛り上がります。

Q.カルガモが渡りをしないのはなぜ?

A.カルガモとマガモは、遺伝子的にはほぼ100%一緒と言われています。種としては同じですが、カルガモはリスクの高い「渡り」をしないことで生き残る可能性を高めようとし、一方の渡りをするマガモは、渡りをすることで、ある種の選択をかけ、強い個体が残るようにして、種としての生存確率を高めようとしているのかもしれません。これはどちらが良いというものではなく、生存戦略の違いということです。

Q.カモが結婚相手を決める期間は? 決め手は?

A.これは難しい質問で「分かりません」というのが回答。1日だけ見ていても、それ以前から見ていた可能性があるため、どれくらい見ていたかを判別するのは難しい。また、野鳥は個体識別が難しいため、はっきりとした選択の理由を見つけるのも難しいのが現状です。

Q.渡りをする鳥はすべて、オスが派手になるのか。

A.必ずしもそうとは限りません。カモは見通しの良い水面で生活しているために、視覚的なアピールが有効ですが、ヨシが茂った、見通しの利かない場所で生活している鳥は、姿が見えないために、オスが派手な羽になることはありません。その代わりに鳴き声がすごく特殊になる。つまり、環境や生活様式によって、求愛のアピールも変わるということですね。

カモだけじゃない。皇居の周りの豊かな野鳥の世界

後半は、皇居周辺で見られるその他の鳥を紹介しました。

左上:オオバン、右上:カワウ、左下:カイツブリ(夏羽)、右下:コブハクチョウ

オオバン......カモの仲間ではなくツルやクイナの仲間。クイナの仲間は草むらなどにいることが多いが、オオバンは開けた水面を好みます。「お濠に行けば、目をつぶってさえいなければ必ず見られる」鳥。
カワウ......鵜飼いで使われる「ウミウ」より一回り小さい。近年増加しており、食害や糞害が都内でも聞かれるようになった。オスメス同色で、繁殖期には頭や足の付け根などが白くなる。
カイツブリ......カモの半分くらいの大きさの小さな水鳥。冬は顔が白っぽく、夏に近づくと赤くなる。5~6月が繁殖・子育て期で、お濠でも、親子連れで泳ぐ姿が見られることがあります。 コブハクチョウ......クチバシの根本にあるコブが特徴。実は1953年にドイツから寄贈された個体が全国に広まってしまったといわれ、最近では各地で増加し、食害等が報告されている外来種で、「今後の影響を注視したい鳥のひとつ」です。

左上:カワセミ、右上:ツグミ、左下:ジョウビタキ(オス)、右下:ジョウビタキ(メス)

カワセミ......中村先生をこの世界に引きずり込んだきっかけの鳥。意外とお濠での目撃例は多いが、双眼鏡などがないときちんと見るのは難しい。漢字では「翡翠」(ヒスイと同じ漢字)と書き、翡がオス、翠がメスを表すという。
ツグミ......10月ころシベリアから日本に飛来する渡り鳥。冬の間はさえずりをしないことから、「口をつぐむ」=ツグミと名付けられたとか。
ジョウビタキ......ユーラシア大陸で生息しており日本で越冬する渡り鳥。オスメスの色柄が異なるが通年でこの柄で、カモのように繁殖期の換羽はしない。

左上:メジロ、右上:ユリカモメ、左下:セグロカモメ、右下:ミコアイサ

メジロ......目の周りが白いからメジロ。雑食だが木の実、花の蜜などを好む。梅や桜が咲くと蜜を吸う姿が見られます。
ユリカモメ/セグロカモメ......ユリカモメは東京都の鳥。カモメ類は、かつては皇居周辺でも多く見られたが、近年ほとんど見られなくなった。中村先生は築地市場の移転にその理由を見ているが、「想像の域を出ないのであまり言わないでくださいね」とのこと。
ミコアイサ......バードウォッチャーに人気の鳥の一種。東京では2008年ころから減り始め、2010年にはぱたっと見られなくなった。「葛西のほうでもいなくなったので、皇居だけでなく東京湾周辺というより広いレベルでの環境変化があったのではと考えている」と中村先生。

そして最後に、バードウォッチングを楽しむポイントを、次のようにまとめました。

「まず1つ目は、山とか川に行かなくても結構身近で楽しめるということ。家の近所でも通勤通学の途中でも、いろいろなところに鳥はいます。特に水鳥は双眼鏡なんてなくてもよく見えます。2つ目は続ければ続けるほど面白いということ。続けてみていると変化も分かるし、自分なりにいろいろ考えるのも楽しくなる。考えを確認するためにまた見に行きたくもなるものです。

そして3つ目は、人との出会いがあるということ。私は鳥の観察で恩師に出会い、今のような生き方を選ぶことになりました。年齢や職業が違っても、鳥関係での出会いは人生を豊かにしてくれると思います」

鳥は人間の生活圏にもいる生き物で、意識さえすれば、その存在をより身近に感じることもできるはず。「名を知るは愛の始まり」という某植物学者の言葉がありますが、鳥の姿カタチを知り、名前を知るだけで、意識は変わるでしょう。それが取りも直さず自然を身近に感じることにもつながります。そして、自然を見る目は観察眼を養い、新たな視点から街を見ることにもつながるに違いありません。

この日は、終了後にフリータイムを設けたところ、野鳥ファンの大人から小さなお子さん、建築関係者からカメラマンまで、多種多様な参加者からの質問や議論がひっきりなしに。それぞれの視点から野鳥に関する考えを話し合う場となり、楽しいひとときとなったのでした。

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