イベント環境プロジェクト・レポート

【レポート】都市の闇に潜む生命の神秘

大丸有シゼンノコパン 「夏の闇を斬る~神秘的! 夜の東京でセミの羽化~」 2021年7月28日(水)開催

少しずつ夜に沈んでいく街の灯りを見ながら、虫たちを追いかけて林に分け入っていく――。日比谷公園に慣れている人であっても、虫を追いかけると思うと、公園の林がいつもとは違った世界に思えてくるのではないでしょうか。7月28日開催の大丸有シゼンノコパンでは、そんな身近な場所で異世界感のある、不思議な体験をすることができました。

ゲストはキンちゃんこと、奇ニ正彦さん。奇ニさんと夜の公園の生き物たちを探し出し、その暮らしぶりを観察しました。

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夜の林では「おこりんぼ」に注意

夜の林では「おこりんぼ」に注意

夕方になってもコンクリートの暑さが滲んでくる日比谷。薄暮に輝きを増す街の灯りを背景に、車がびゅんびゅんと通る都心部ですが、日が傾くにつれて黒黒とした背後の林が存在感を増してきます。街の公園だと思えばただの公園。しかし、そこに無数のいきものたちがいると思うと、にわかに蠢きのようなものを感じてしまいます。

「今日は、公園の中に、どんな生き物がいるのか、皆さんと探していきたいと思います。いかにも生き物がいそうな木の周りや茂みの中だけじゃなく、低いヤブの周りや足元にも注意して見てください」

冒頭、奇ニさんからこの日の観察について説明がありました。集まったのは、年少から低学年までの比較的小さなお子さん連れの6組の親子。コロナ禍のため、安全性の高いアウトドアのイベントのニーズが高まっていると言われますが、この日は大人も子どもも、始まる前からワクワクしている熱気にあふれていました。

歩くルートや見るポイントの説明とともに、「おこりんぼ」の生き物に注意して、との呼びかけもありました。それはハチとヘビ。どちらも元来おとなしい生き物ですが、不用意に近づいたり、ガサガサとさせてしまうと、身を守るために怒って向かってきます。「怒らせないために、いきなり茂みをガサガサしたり、ヤブに入ったりしないようにしてください」と奇ニさん。

そしていよいよ夜の公園に分け入っていきます。

セミで観察者の眼に

最初に進んだのは、大通りに沿って伸びる小径。安全のために街灯が立ってはいるものの、街の灯りと森の暗さの対比が際立っています。

最初のうちは、夜の林が怖いのか、なんとなく静かにしていた子どもたちですが、「足元、気をつけて見てくださいねー」という奇ニさんの声に、しきりにキョロキョロ。すると即座に「いたっ!」という声が上がりました。

セミの幼虫です。羽化のために地下から這い出し、高いところへ登ろうとしているのです。一人が見つけると一旦はぱっと集まりますが、今度は「自分で見つけたい!」と思うのか、思い思いに散っていく子どもたち。すると、あちこちで「いた!」「見つけたよ!」という声が上がります。子どもたちは早くもコツを掴んだようです。

「セミの幼虫は羽化するために、気に入った場所を探して、高いところへ登っていきます。種類によっては、そろそろ羽化が始まるものもいるかもしれません。羽化で柔らかくなっているセミには触らないように注意してください」

幼虫が細い枝から転げ落ちてしまうと、そっと拾って枝に戻してあげる勇気と優しさのある子も。目の前でもぞもぞと動く小さなセミの幼虫から、いのちを感じたのではないでしょうか。目の前で懸命に歩く虫を見ると、ほんと不思議な気持ちになるものです。

また、参加者に配られた資料をもとに、セミの種類、オスメスの違いを奇ニさんが説明しています。日比谷公園で見られるのは、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミの3種。抜け殻もたくさんあり、大きさや形で種類を見分けることができるそうです。それを聞いた子どもたちが、「これはアブラゼミ」「これは何ゼミ?」と、観察しながら、種類にこだわるようになりました。

セミの抜け殻と生きている幼虫。一番上の小さく、土がついているのがニイニイゼミの抜け殻。下の2つは生きているアブラゼミの幼虫。

セミの抜け殻と生きている幼虫。一番上の小さく、土がついているのがニイニイゼミの抜け殻。下の2つは生きているアブラゼミの幼虫。

また、夜になって、低いところで休んでいる成虫のセミもいて、それを捕まえた子どもたちにセミの正しい持ち方を教えています。ミンミンゼミです。必死に羽を羽ばたかせて逃げようとするセミ。そんなときは、背中側から羽の両側を軽く押さえるようにつまみ持つと、おとなしくなります。

「こうやって持てば、セミも怪我しないし、じっくり観察できるでしょう。羽がきれいですよね、どんな姿をしているのか、詳しく見てみてください」

ミンミンゼミの羽は透明で、文字通り透き通るように美しい。その内側には、目立たないながらも2枚の小さな羽があります。ただの"虫"から「セミ」になり、観察の対象になる。子どもたちはこうして、観察者に成長していくのでしょう。

また、面白いのは、次第に大人たちも熱中してくることでした。最初はセミを探す子どもたちの後について歩いていたのが、子どもと並んで探す姿が目に付きます。子どもと競争するように、熱心に探している方もいて、世代を問わず昆虫観察は人気のコンテンツであることが分かります。

都市でも自然のいのちを感じられる

道中、コガネムシの一種のアオドウガネを見つけて盛り上がったりしながら、大噴水へ。水生昆虫を探しました。

しかし、雨が降ったためか、思ったよりも昆虫が少なく、みんなで懐中電灯を照らしてようやく見つけたのはヤゴ1匹。「大きさ的に、シオカラトンボか、アキアカネか、コシアキトンボかな」と奇ニさん。「この噴水は掃除もしているのに、去年の卵から孵ったのは不思議ですね」と解説しています。

その後、また林の中に戻り、セミの羽化するシーンを全員で見学しました。真っ白な姿のセミが、幼虫の姿から、徐々に徐々に抜け出してくる姿は神々しくさえあります。

「今日はすごく図鑑を見ているような、虫に詳しいお子さんがいっぱいですね」と奇ニさんがいうように、基本的に虫好きが集まった今回、ほとんどの子は最初から食い入るように見つめていました。一方で、その白い生々しい姿に、最初は「きもちわる~い」と言っていた子も一部いましたが、動いているのかも分からないくらい、徐々に徐々に、本当に少しずつ羽化していく姿に、いつしか口をつぐんでいました。

最後に、セミの抜け殻の簡易標本を作り、一旦終了となりましたが、「あずまやのヤモリを見に行く」という奇ニさんについていき、ヤモリの卵を見て、三々五々の解散となりました。ヤモリは、家屋の隙間などにたまごを生むのだそうです。たまごのそばにはヤモリも休んでいて、どちらもじっくりと観察することができました。セミの羽化しかり、ヤモリのたまごしかり、いのちをとても身近に感じた観察会となったのでした。

参加したある親子は、親子口を揃えて「すごく楽しかった!」という感想。子どもは、「ヤモリのたまごがたくさんあってびっくりした。セミの幼虫がこんなにいると思わなかった」と、想像以上に生き物と出会えたことを喜んでいます。大人も、都市部でもこんなに出会いがあることに驚いたと話しています。

「正直、街の中なのでそんなにたくさんの生き物がいると思っていなかったので、意外な気持ち。家の近くにも公園があるので、今度見に行こうと思います。また、セミが"盲点"だったなと。知識をもって観察すれば、セミも面白い、たくさんの発見のある生き物だとわかったのは収穫です」

今回の大丸有シゼンノコパンは「神秘的」と謳っていますが、たしかに生命の神秘にふれるような不思議な回となり、参加者の皆さんにも、大満足していただけたようでした。

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