イベント地域プロジェクト・レポート

【レポート】ライブキッチンとSDGsが愛媛の魅力をより魅力的に伝える

「丸の内de地方創生 愛媛県」2018年1月22日(月)開催

8,11

大手町3×3 Lab Futureを拠点に、さまざまな地域とのコラボレーション企画を展開している「丸の内de地方創生」。
今回は「愛媛県」をテーマとして、2日間のワークショップが行われました。海、山、里がそろい、気候も温暖な愛媛県の魅力が参加者に紹介されるとともに、愛媛での暮らしを考えていきます。

初回では、まず株式会社伊藤園 常務執行役員CSR推進部長の笹谷秀光氏より、「地域の魅力のいかし方」についての講演があり、その後、愛媛で暮らす多彩なゲストパネラーとともに愛媛の魅力を探るトークショーを開催。そして最後は、愛媛自慢の食材と地酒を堪能する「ライブキッチン」が行われる、という流れになっています。

当日の天候は、あいにくの大雪......。それにもかかわらず会場はほぼ満員で、愛媛からの来場者もたくさんいました。

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感度のいい"地方"は、すでに世界とダイレクトに結びつきつつある

感度のいい"地方"は、すでに世界とダイレクトに結びつきつつある

まずは、大丸有フードイノベーションプロジェクトをサポートし、今回のコーディネーターも務める中村正明氏より、冒頭のあいさつがありました。

「エコッツェリア協会では、丸の内で地方創生と銘打って、様々な地域と都市をつなぐプログラムを展開しています。今日は特に食が豊かなエリアである愛媛県をテーマに話を聞きつつ、生産者の顔も見えるようなイベントになればいいと思います。ライブキッチンの食材は、ほとんどすべて愛媛から調達しました。文化も、食も、愛媛を丸ごと楽しんでください」

続いて基調講演がスタート。笹谷氏から、地方の魅力の活かし方に関する提言がありました。

「地方でも、感度のいいところではすでに世界を見据え、世界とダイレクトに結びつきを作りつつあります。これまで地方は、東京に入ってきたものを輸入していましたが、これからは自らが発信拠点となり、活動していく時代となるでしょう。例えば、冬に世界文化遺産である岐阜県の白川郷に行くと、しんしんと降る雪の中、街を歩いて写真を撮っている人のほとんどは外国人です。白川郷の年間の観光客数は180万人以上ですが、それは世界文化遺産という観光資源を活かして世界と結びついているからこその数字といえます。世界文化遺産のつながりでいうと、私の記憶にもっとも残っているのは、フランスのモンサンミッシェルです。昨年、改めて行ってきたのですが、周囲を海に囲まれた歴史ある場ながら、Wi-Fi環境が完全に整備され、宿泊施設まであって、年間300万人が訪れます。印象的なのは、歴史という"物語"をうまく活用し、名物を作るなどしてビジネスと結びつけていること。伝統料理のふわっとしたオムレツは、それなりに高い値段にもかかわらず、ばんばん売れていきます。こうして、歴史と伝統、自然と人の暮らし、観光客と住人など、さまざまなことが調和した上で経済が回っている都市から、学ぶべきところは大きいと感じています」

その他にも、日本や世界における地方創生の事例を豊富に示しながら展開していく笹谷氏の分析に対し、参加者たちは折々にうなずきながら、真剣に耳を傾けていました。

「愛媛県でも、自らが発信すべき個性を見出しておられるでしょうが、それに加えて、人を惹きつけるほどのシビックプライドがあるといい。有名なのは、オランダの首都、アムステルダムの事例で、シビックプライド作戦を大々的に展開し、プロモーションビデオを撮ったり、お土産に全部アムステルダムのロゴを入れたりと、徹底してやりました。そうした活動の結果、シビックプライドは市民の間に伝播し、共有されていきました。それが町おこしのさらなる原動力になるわけです。もうひとつのポイントは、日本古来よりある助け合いの仕組みです。白川郷の藁ぶき屋根は5年に一度はふき替えねばならないが、家主だけではその実施は難しいため、村人が総出で行ってきました。現代では、NPOやNGOもそれを応援しています。こうした助け合いの仕組みはきっと愛媛県の中でも残っているはずです。その仕組みをいかに現代風にアレンジしていくかが、自治体の腕の見せ所。IoTをうまく取り入れ、人々の心がつながっていく仕組みを考えてみましょう」

SDGsが今後の地方創生のガイダンスとなる

笹谷氏が、次世代の地方創生の在り方として注目しているのが、「SDGs(持続可能な開発目標)」。貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指した行動指標であり、2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2030年までに達成することを目指しています。

SDGsは、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成され「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「陸の豊かさを守ろう」など、幅広いテーマが掲げられています。
このテーマがどう、地方創生とつながってくるのか、興味深いところです。

「特に、SDGsの11番『住み続けられるまちづくりを』や、17番『パートナーシップで目標を達成しよう』などは、まさに地方創生のガイダンスとなるような内容です。伊藤園では、茶産地育成事業として耕作放棄地解消の手伝いをしていますが、そういった企業のCSR活動も、SDGsの発想と非常によくかみ合っている。持続可能な取り組みをするには、社会的課題と経済課題を同時に解決するのが不可欠ですが、実はその発想は、『三方よし』として日本に昔からあったものです。三方よしの構造を作るために必要なのは、まず発信すること。仲間内だけでやっていても新しいことは起きません。SDGsを社会課題へのガイダンスとして取り入れつつ、冒頭でお話ししたようなその土地ならではの物語や魅力を主体的に発信し、つながりを広げていく。そんなやり方で、取り組んでみてはどうでしょう」 会場は大きな拍手につつまれ、基調講演は終了しました。

笹谷氏自身も次の通り発信を強化しているそうですのでご覧ください。
Facebookページ 笹谷秀光の「協創」とまちづくり最前線レポート
https://www.facebook.com/sasaya.machiten/
月刊総務オンラインのコラム 「協創力が稼ぐ時代」
https://www.g-soumu.com/sasaya/

イベント時にはまだ公開されていませんでしたが、SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について、内閣府の地方創生推進事務局が進めています(5~6月頃に選定予定)。地方創生とSDGsの関連性は強くなっていくかもしれませんね。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_sentei.html

従来の食文化と最新技術で新たな名産品を作る

その後は、「愛媛の魅力を探るトークショー」がスタート。

愛南町地域おこし協力隊の森裕之氏、松山市で地酒にこだわった酒店を営む津田高啓氏、(公財)えひめ地域政策研究センター副理事長の青野昌司氏という、3人の愛媛の魅力に造詣の深いゲストパネラーたちが、思い思いの愛媛の魅力を語っていきます。

森氏:「私は、2017年の4月から、地域おこし協力隊として愛媛の愛南町に住んでいます。愛南町は、海も山も川も里もある、自然豊かな地で、食べ物がとにかくおいしい。鯛、寒ブリ、ヒラメ、牡蠣などの海産物に加えて、イノシシやシカを使ったジビエもありますし、近所の人が獲れたての野菜を玄関に置いていってくれたりもします。私は狩猟免許を取得していて、自分でシカを撃ったりもしており、ひろう、もらう、つくる、という生活を心から楽しんでいます」

津田氏:「松山市で津田酒店を営んでいますが、私自身、愛媛の地酒に非常に愛着を持っています。愛媛県は、東、中、南という三つのエリアに分かれており、それぞれの風土にあった酒造りが行われています。味わいの大まかな特徴としては、南はどっしりして甘みがあり、中は淡麗ですっきり、東はやわらかくふくよかです。こうして地域ごとに酒造りや食文化が変わってくるもの、愛媛県の魅力だと思います」

青野氏:「愛媛と言えばミカン、瀬戸内海、道後温泉というイメージかと思いますが、実は多種多様な産業を有しています。さまざまな特産品がありますが、素材がいいので加工せず市場に流して、それで終わり。これまであまり宣伝をすることもなく、地域内でモノ・コトを消費してきました。しかしこれからの時代、それでは情報発信不足ということで、愛媛県の職員が営業マンとなり全国、全世界に特産品を売り歩くようになってきました。例えば愛媛は果物大国で、全国1位の出荷量を誇るキウイフルーツをはじめ、ぶどうや桃、リンゴなど、かんきつ以外にもたくさんの果物が育ちます。それをスイーツと結びつけ、都心から有名パティシエを呼んで愛媛スイーツプロジェクトを行うなど、発信の仕方を工夫してきました。今後も積極的に情報発信していきたいです」

続いて、愛媛が誇る食材の魅力を伝えに、地元食材を携えて会場へとやってきた方々からの、食材の紹介が始まりました。

「私は愛媛で猟師を営むとともに、果樹園も持っています。ここに並んでいる柑橘類は、愛媛の特産品の代表格。瑞々しいみやうち伊予柑、甘みがあって酸味が少ないぽんかんなど、それぞれの特徴を楽しんで下さい」
「地鶏はぜひ食べていただきたい。この媛っこ地鶏は、愛媛県で掛け合わせた品種で、鶏舎で放し飼いにしています。えさも貝など海の幸を配合し、他の地鶏とは一味違ったうまみがあります」
「今日は、日本で一番長い半島である佐多岬半島から、釜揚げシラスを持ってきました。宇和海の自然の恵みであるシラスを、水揚げ後30分で販売までもっていき、全国にとどけています」

このように、何人もの方々が愛媛から駆けつけて、それぞれ地元の食材を愛情をこめてプレゼンテーションしました。
続いて、その熱い思いに応えるように参加者から感想や質問が盛んに飛び交いました。

参加者:「愛媛ほど、食材がたくさんあって魅力的なところは少ないと思います。日本酒の蔵元の数が40近くあるそうですが、愛媛県の日本酒の魅力は?」
津田氏:「隣県と比べると分かりやすいと思うのですが、高知のお酒が辛口できれがよく、男らしいのに対し、愛媛のお酒は米のうまみが感じられ、やわらかく女性的というのが全体としての特徴です」

参加者:「愛媛は、食文化も甘めの味付けが多いという印象ですが、実際の食文化はどのようなものでしょう、郷土料理などはありますか」
青野氏:「愛媛県の食文化としては、素材を大事にして大きく手を加えることはしない、というのがあります。そのせいか、郷土料理は少なめです。ご質問の通り、味付けとしては甘めで、日本酒も、おしょうゆも甘い。松山市には、甘みのある味のラーメン屋さんまであります。これは、淡泊な味の魚をおいしく食べるために生まれた傾向だと思います。近年は技術が発達し、例えば果物作りにおいて、光センサーを導入し、より糖度の高いものを生み出す試みなども行われています。こうした成果が従来の甘い食文化と結びついて、名産品が生まれればいいと考えています」

「ライブキッチン」で愛媛の食・酒とその担い手と直接交流

そしていよいよ、参加者お待ちかねの「ライブキッチン」です。
媛っ子地鶏、釜揚げシラス、じゃこ天......。地元から持ち寄られた「愛媛自慢の食」が調理され、会場にはすでにいい香りが漂っています。そのメニューの一部を、ここで紹介しましょう。

「手作りじゃこ天の卵とじ」
南予地方の海岸部で作られる特産品。今回は、双海で水揚げされた新鮮な字魚を、地元の漁協の女性部が手作りしたじゃこ天が届きました。

「愛媛の地酒と弓削塩の媛っこ地鶏焼き」
ブランド地鶏「媛っこ地鶏」は、シャモなど4種の鶏を掛け合わせ、長所を凝縮した品種で、歯ごたえと強いうまみが特徴。それを愛媛の地酒と弓削塩を振りかけて焼き上げました。

「釜揚げシラスご飯」
宇和海で水揚げされたばかりの新鮮なシラスを釜揚げにしたものを、わかめと一緒にご飯に混ぜ込んで、海の香り豊かに仕上げました。

「柑橘類食べ比べ」
酸味が少なく甘いポンカン、爽やかな香りとジューシーさが特徴の宮内いよかん、コクがありまろやかな甘みの温州みかんなど、8種の柑橘類を食べ比べ。

料理の他に、24の酒蔵の地酒もふるまわれ、参加者たちの心はさらにほぐれた様子。それぞれが愛媛談義に花を咲かせ、大いに盛り上がった後、会は終了しました。


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