イベント地域プロジェクト・レポート

【レポート】「地方紙」発で考える、新しいビジネスの可能性

広島Night! 2018年3月2日(金)開催

3月2日、広島の地域メディアの資源を活かして、新規事業を考えるイベント「広島Night!」が開催されました。
これは、広島県と日本政策投資銀行(DBJ)が主催する、持続可能なビジネスの創造を目指すプログラム「広島iHub」の一環で、中国新聞社の協力のもと、「メディア機能」と「新聞社が持つ多様な経営資源」の本質とその活用を考察し、地域を超えた企業や専門家との共創によって解くべき課題と新たなビジネスを考えていくものです。

この日までに、地場企業の新規事業担当や研究者など参加者25人が、4回にわたり、広島で中国新聞社の視察、記者や幹部社員とのディスカッション、ワークショップをしてきましたが、今回は地域外の視点からビジネスの可能性を探るフェーズとして、東京・丸の内の企業や専門家、3☓3Lab Future会員とともにアイデアを深めるワークショップを実施。
この日のために広島から上京したプログラム参加者の熱い想いと、アイデアが行き交う白熱したイベントとなりました。

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新聞社が取り組む、新聞の枠を越えた魅力発信とは

新聞社が取り組む、新聞の枠を越えた魅力発信とは

イベントは、主催者である広島県商工労働局・イノベーション推進チームの串岡勝明氏の挨拶からスタート。
初めにイントロダクションとして、本プログラムのテーマとなる「地域メディア」の立場で協力している中国新聞社より、メディア戦略室の山本洋子氏と東京支社営業部の杉崎憲三氏の2人が登壇し、中国新聞の取り組みや課題について説明がありました。

まず、15年以上記者として働いてきた中、突然新規事業の部署に配属されたと話す山本氏。まったく経験のないことにどのように取り組めばよいか戸惑いが多かったそうですが、記者をしていたときとは違った視点に立つことで、これまで気づくことができなかった新聞社の課題が見えてきたと話します。
「中国新聞社は、これまで地域を基盤に高い信頼や幅広い情報網を築いてきましたが、メディアが多様化している現代において、それだけで良いのだろうかという気持ちが芽生えてきました。実際にこれまでのワークショップでも、参加者から『全国紙と比べれば身近だが、生活者からするとちょっと遠い存在』といった意見もあり、もっと身近な存在として『地域になくてはならない』と思ってもらえるメディアの在り方を、より深める必要があると感じます。今回のプログラムでは、参加者のみなさんのアイデアや声を通じて、新聞社だけでなく、地域全体のメリットとなるビジネスプランを探りたいと思っています」

続いて、東京支社営業部の杉崎氏より、中国新聞社の事業紹介です。2017年に創業125周年を迎えた中国新聞社。従来の新聞広告、新聞販売以外での収益につながる取り組みへの挑戦が続いています。
「新聞や地域の資源を活用して東京でさまざまな取り組みを行っています。例えば、全国的に認知度の高いカープのコンテンツを活用したグッズ展開があります。Tシャツやタオルなどはすでに多くありますが、仕事中や家庭でも身に着けることができるものはないかと考え、前掛けに着目。優勝を記念して地域の業者も交えて製作し、1週間で1000着完売しました。初めは需要があるだろうか不安でしたが、野球とかけ離れた意外性や、お土産に買いたくなるようパッケージを工夫することで高い関心が得られたと思います」

その他にも、広島の魅力を首都圏で発信するイベント「まるごとHIROSHIMA博」を16年からスタート。2回目となる2017年11月は、2日間で2万5000人の来場者を集めるなど、新聞という枠を越えた取り組みを広げていると話しました。

「あったら良さそう」ではなく、「必ずほしい」ものを考える

中国新聞社のお二人のプレゼンテーションの後は、日本経済研究所・技術事業化支援センター長の島裕氏よるこれまでの本プログラム全体について紹介がありました。

「日本政策投資銀行は、2013年に開設した大手町イノベーション・ハブを中心に、社会課題を解決するビジネスコンセプトをオープンに議論する場の提供を行っており、『iHub』と称したイベントを東京だけでなく、広島をはじめ日本全国で開催しています。このプログラムのコンセプトは、地域に新しいビジネスや仕事を創出するための『ビジネスの部活動』。部活動のような気持ちで肩肘張らずに、さまざまな人と議論を交わしながら、アイデアをプロジェクトとして実現していくことを目指しています。今回も、中国新聞社が抱える課題について、よりオープンな議論が期待できると思っています」

続けてこの後のワークショップに向けた課題整理として、中国新聞社の資源や機能を踏まえたアイデアを生み出すためには、シーズ(企業が持つ技術や機能などの資源)から考えるアプローチだけでなく、ニーズ(世の中が求めているもの)から考えるアプローチの双方が重要だと話します。

「中国新聞社には新聞という機能の他に、販売網や広告、文化教室事業などすでにさまざまな機能・リソースがあります。こうした既存のシーズの価値を伸ばしていくことは大事ですが、いまは価値として存在していないが、今後伸ばしていくと良いことを探ることも必要になります。そうした新たな価値を考える上で鍵となるのが、ニーズを探索すること。ビジネスに結びつく価値というものは、『あったら良さそうだが、なくても困らない』といった程度のものでなく、『必ずほしい』と思えるレベルのものでなければなりません。また、これまでの議論でも、中国新聞社が現在取り組んでいることと、外から求められていることにギャップがあるのではないかという意見もあり、新規事業を考える上でも、できること、やりたいこと、求められていることが一致するように検討していくことが重要となってくるでしょう」

そしていよいよワークショップへ。ファシリテートするのは、合同会社志事創業社・代表の臼井清氏です。
まずはこれまでの共有として各チームの中間報告があった後、広島からのプログラム参加者のグループに東京の参加者が加わり、地域外からの知見やアイデアをワールドカフェ方式で話し合いました。

東京の参加者からは「そのサービスにお金を出したいと思えるか?」「ターゲットのペルソナは明確か」など鋭い指摘がありつつも、さまざまなアドバイスが行き交い、約2時間に渡る熱い議論となりました。
ワークショップ後には、「中国新聞社の取材力を活かし、学生を対象とした情報収集、発信力を高める人材育成プログラムの実施」「地域課題を吸い上げ、新聞にフィードバックしていくための記者によるSNS主体にしたコミュニティづくり」といった具体的なアイデアが披露され、次回の最終発表に向けてさらにブラッシュアップをしていきます。 東京の参加者からは「新聞の新しい可能性を感じた」「アイデアのレベルが高く、今後どういった形に展開していくのか期待している」といった感想があり、ワークショップは大いに盛り上がって幕となりました。

その後は、広島の食や地酒を囲んでワイガヤ交流会。講演者を含む参加者同士で語り合いました。
交流会には、広島の魅力を伝えようと地域活性に取り組む関係者も多く駆けつけました。ザ・ブルーハーツの名曲を替え歌にした広島県呉市のプロモーション動画や東広島市西条の酒蔵を舞台にした映画「恋のしずく」(今秋公開予定)などさまざまな取り組みの紹介が行われ、広島の魅力と人の活気に溢れた会となりました。


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