人と人をつなぎ、関係性を育て、立場や専門性の異なる人たちを巻き込みながら、新しいプロジェクトを動かしていく――。
コミュニティマネージャー(以下、コミュマネ)が担う役割は多岐にわたる一方で、コミュマネは何をする人なのか外からは見えにくいという側面があります。
9月8日、東京・大手町の3×3Lab Futureで開催された第6回丸の内コミュマネ大学では、東京都市大学都市生活学部教授の坂倉杏介氏をゲストに迎え、「コミュマネの仕事は、なぜわかりにくいのか?」をテーマに、その仕事の特殊性や必要とされるスキル、そしてコミュニティマネジメントが生み出す価値について考えました。
左:講座の冒頭で挨拶するエコッツェリア協会の神田(右)と3×3Lab Futureネットワークコーディネーターの田邊(左)右:食事でつながる場を提供するサービス「shokujii」から注文したお弁当の「いただきます」から講座はスタート
「コミュマネは数年前と比べれば数も増え、活躍する場も増えている一方で、皆が『コミュマネって○○な役割だよね』という共通理解を持つには至っていない。
それはなぜか今日考えてみたい」冒頭、坂倉氏はこう問題提起をしました。
「コミュニティマネジメント」の専門家で、いわゆる「社会関係資本」を研究する坂倉氏。災害時の助け合いや企業の経済活動など、さまざまな場面で人と人とのつながりの重要性が広く認識される一方で、良好な人間関係をどのようにつくり、育てていくのかについては、まだ十分に解明されていないと指摘します。
コミュニティマネジメントについて語る坂倉氏
「つながることが目的ではなく、新しいつながり方や関係の捉え直しによって、これまでに無かったものをどのようにつくっていくのかを研究している」(坂倉氏)
こうした研究を踏まえて坂倉氏は、「仕事の特殊性」「コミュニティの複雑さ」「成果の見えにくさ」という3つの観点から、コミュマネの仕事がわかりにくい理由を解説します。
まず坂倉氏が挙げたのは、「仕事の特殊性」です。坂倉氏は過去の研究を引用しながら、第一線で活動するコミュマネへのインタビュー調査を実施。コミュマネが仕事上大切にしていることを「人との関わり方」「コミュニティの育て方」「プロジェクトの進め方」「自分自身の整え方」という4つの領域に整理したことを紹介しました。
このように整理してみると、コミュマネの仕事は、コーディネーターやファシリテーターといった既存の職種だけでは捉えきれないことが見えてきます。
「他の仕事とは違う特殊な職種でもあるし、人とのつながりの中から新しい価値を生み出していくワークスタイルともいえる。そのため『仕事』としては共感されにくく、大変さやKPIなども見えにくい点が、コミュマネの仕事のわかりにくさにつながっているのかもしれない」(坂倉氏)
2つ目の理由は、そもそもコミュニティそのものが複雑な存在であることです。坂倉氏は、コミュニティが生き生きと活動するために必要な要素を、「火」「水」「風」「土」という4つの元素になぞらえて説明しました。
「火」はメンバーのやる気や動機、「水」は思いや情報を循環させるコミュニケーション、「風」は外部からもたらされる新しい人や刺激、そして「土」は長い時間をかけて育まれる、そのコミュニティならではの文化や風土です。
「コミュニティが生き生きとしている状態は、一つの要素だけで作られているわけではない。根本的に違う要素が組み合わされ、響き合い、循環しながら動いていくからこそ活性化していくのではないか」(坂倉氏)
「火」をつけるのが得意な人もいれば、「風」を吹き込むのが得意な人もいます。
コミュマネ自身にもそれぞれの持ち味がある一方で、重要なのは4つの要素のバランスを見ながら、少しずつ関係性を育んでいくこと。コミュニティは、何か一つの施策を打てば成果が出るような単純なものではなく、さまざまな要素が影響し合う「生態系」のような存在だと坂倉氏は説明します。

そして3つ目が「成果の見えにくさ」です。坂倉氏はその例として、徳島県神山町でまちづくりを担う「神山つなぐ公社」を対象とした研究を紹介しました。
住宅建設や教育プロジェクトなど、個々の事業の成果は目に見えます。一方で、公社というプラットフォームが地域にもたらす価値は、それだけでは捉えきれません。
例えば、地域に眠る「こんなことをやってみたい」という思いを見つけ、必要な人を紹介し、実現へと押し上げていく。将来、新たな活動が生まれるよう人と人をつないだり、地域で起きていることを丁寧に伝えたりすることもあります。
こうした活動は個々のプロジェクトの成果としては表れにくいものの、次の活動を生み出す「土壌」を育てています。
坂倉氏は、こうした共創プラットフォームの働きを、「いまある思いを実現する」「将来のために仕込む」「将来のビジョンから必要なものを組み立てる」という3つの次元から整理します。
目に見える「実」をつくるだけでなく、次の実が育つ土壌を耕し続けること。コミュマネの仕事にも通じるこうした見えにくい営みこそが、その価値を説明し、評価することの難しさにつながっているということでした。
次の活動が生まれる「土壌」を育てることもコミュマネの役割
講義の後半は、参加者がグループに分かれてディスカッションを行いました。議論で繰り返し挙がったのが、「コミュマネをどのように説明し、どのように評価するのか」という悩みです。
「担う役割が多様なコミュニティマネージャーを1つの名称で括っていいのか」「上司や社内に成果を理解してもらうには共通言語が必要ではないか」といった意見が寄せられました。
また、成果を定量的に示しにくいという悩みに対して、「コミュニティが課題解決にどの程度寄与したのかという視点で評価できるのではないか」といった意見も。
坂倉氏の講義で示された「わかりにくさ」は、多くの参加者がそれぞれの現場で直面している課題でもあることが浮かび上がりました。
コミュマネの役割や成果について意見を交わす参加者
続くクロストークでは、坂倉氏と共同研究を行った渡邉知氏(株式会社ファイアープレイスCEO)がモデレーターを務め、エコッツェリア協会の神田主税、3×3Lab Futureネットワークコーディネーターの田邊智哉子も加わりました。
最初に渡邉氏が参加者へ投げかけたのが、「コミュマネを職種、ビジネススキル、仕組み、役割のどれとして捉えているか」という問いです。
挙手による回答は分散し、「役割」がやや多いという結果に。田邊氏も「コミュマネについて話していても、実はそれぞれが違うものをイメージしていることが多い」と話します。では、なぜこれほど捉え方が異なる「コミュマネ」が、今改めて求められているのでしょうか。
坂倉氏は、その背景に社会環境の変化があると指摘します。人材や経済、地球環境など、私たちが利用できる資源には限りがあります。
これまでのように領域を分け、専門性を高め、それぞれが競争するだけではなく、今ある資源を融通し、異なるものを組み合わせながら価値を生み出すことが求められるようになっています。
「昔は切り分けて、とがらせて、専門特化することが次の社会をつくると思われていた。でも今は、いろいろなものを混ぜて、その中から何かを見つけていく方に社会全体が可能性を感じている。そうすると、つないでいく人、混ぜていく人が必要になる」(坂倉氏)
(左から)クロストークに登壇した田邊、神田、坂倉氏、渡邉氏
その具体例として紹介されたのが、坂倉氏も関わる原宿の商業施設「東急プラザ原宿 ハラカド」での取り組みです。ここでは来場者ではなく、施設に入るテナント同士の共創を生み出すコミュニティマネージャーが活動しています。
従来の商業施設では、建物がオープンした時点を「完成」と捉え、その後のマネジメントは状態を維持する役割と考えられがちでした。
しかしここでは、テナント同士をつなぎ、そこから新しい企画や活動を生み出すことで、オープン後も施設の価値そのものを育て続けています。
「ハラカドはつながりが施設のクリエイティビティを生んだり、文化になっていったりする。そう考えると、施設の価値をつくっているのはコミュマネではないかと思う」(坂倉氏)
神田からは、同様の事例として地域内の企業同士がつながるきっかけとなっている「大手町・丸の内・有楽町 仲通り綱引き大会」が紹介されました。
さらに「今はピックルボールを軸にしたつながりをつくりたいと思っている。今後このようなつながりをつくり続ければ日本はもっと良くなっていくはず」と語りました。
大丸有エリアでの「つながりづくり」を紹介する神田
クロストークを通じて議論は、コミュマネという一つの職種をどう定義するかという問いから、人や組織の間にあるものを「つなぎ、巡らせる」役割へと広がっていきました。
「仕事も生活も人生も、リニアに終わるものではない。ぐるぐる回っていくからこそ、だんだん育ったり、蓄積したり、ときにブレークスルーが起きたりする」(坂倉氏)
目に見える成果だけではなく、次の活動へとつながる関係性を育て、その循環を絶やさないこと。坂倉氏は、そんな「ぐるぐる回す」役割を担う人が増えることへの期待を語りました。
クロストークの後には質疑応答が行われ、坂倉氏が解説した4元素に関する質問などが寄せられました。 また、「子どもが通う小学校の新設サッカーチームの父母会のコミュマネに求められる役割は」といった具体的な質問も。参加者はそれぞれの立場から、コミュマネが果たす役割や意義について考えを深めていました。
コミュマネの仕事は、人を集めたり、つないだりするだけではありません。一人ひとりの思いや考えに耳を傾け、異なる人や組織をつなぎ、そこから新たな価値が生まれる土壌を育てていきます。
だからこそ、その成果は目に見えにくく、仕事の輪郭も捉えにくいのかもしれません。
一方で、立場や専門性を越えた共創が求められる今、その力は特定の職種だけのものではなくなりつつあります。自分の仕事にも「コミュマネ的な役割」がないか。そんなことを考える機会となった今回の講座でした。

丸の内コミュマネ大学では、交流や共創を生むコミュニティのあり方や、コミュニティマネージャーこと"コミュマネ"に着目し、社会をアップデートする素地を考えます。業種や地域の枠を越えてコミュマネ同士がつながり、そのつながりのハブになることを目指しています。
丸の内コミュマネ大学 community frontline#05 2026年6月5日(金)開催
2026年11月12日(木)18:30ー20:30
丸の内サマーカレッジ2026 2026年8月12日(水)〜14日(金)開催