イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】逆参勤交代、政策化から本格始動へ 前編

丸の内プラチナ大学逆参勤交代コース DAY2 2019年7月10日(水)開催

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昨年度から丸の内プラチナ大学でスタートした「逆参勤交代コース」。「逆参勤交代」とは、地方での期間限定型リモートワークを通じて、働き方改革と地方創生の同時実現を目指す構想です。今年は、北海道上士幌町(大自然リフレッシュ型)、埼玉県秩父市(東京から80分の近郊型)、長崎県壱岐市(パワースポット離島型)の3つの市町村をケースに、地域の課題や魅力に触れながら、逆参勤交代の可能性を探っていきます。

7月10日(水)に開催された逆参勤交代コースDAY2では、本講座の講師を務める松田智生氏(三菱総合研究所プラチナ社会センター 主席研究員・丸の内プラチナ大学副学長)が、「逆参勤交代構想」の提唱者としてその全貌を解説し、上士幌町、秩父市、壱岐市の各首長がそれぞれの市町村について紹介を行いました。

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マス・ボリュームの創出が新たな関係人口を生む

マス・ボリュームの創出が新たな関係人口を生む

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最初に松田氏が登壇し、逆参勤交代構想について説明しました。逆参勤交代構想とは、「都市部社員の地方での期間限定のリモートワーク」のこと。現状、地方に移住も転職もできないけれど、パソコンとスマートフォンがあれば、「週に数日は本業、週に数日は地域のために働く」ことは可能になります。人口減少社会では、パイの奪い合いをするのではなく、"人材共有"が重要であり、観光以上移住未満の「関係人口」をいかに増やしていくかということが、地域活性化のカギになります。

江戸時代の参勤交代では、諸大名が決められた期日までに国元から江戸に到着しなければならず、大変なことも多くありましたが、江戸には藩邸が整備され、全国には街道や宿場町が整備されるなど、交通インフラや文化・経済が大きく発展し、地方から新たな人の流れが生まれました。松田氏が提唱する逆参勤交代は、大都市圏の会社員が期間限定で地方に定住・勤務するという、いわば参勤交代を逆の発想で捉えた構想です。

「今、地方ではベンチャー企業やIT企業、あるいは一部の意識の高い人たちが活躍されていますが、もし、逆参勤交代が本格的に始動すれば、東京から地方に新たな人の流れが生まれ、地方にオフィスや住宅、ITなどのインフラが整備され、さらには、空き家や廃校などが再活用されます。"マス・ボリューム=大企業"を創出することによって、新たな関係人口が地方の担い手となり、多面的な経済効果が期待できます」と松田氏。

現在、首都圏と近畿圏の大企業で働く従業員は、約1000万人。仮にもし、その1割にあたる100万人が、年間1ヶ月の逆参勤交代を行った場合、約1千億円の消費が生まれます。もし、宮崎県に2千人が逆参勤交代した場合、逆参勤交代者による消費は年間約38億円、さらには、年間約60億円の経済波及効果が期待できます。

「働き方改革」と「地方創生」を同時実現する、明るい逆参勤交代

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逆参勤交代は、働き方改革と地方創生を同時実現する大きな可能性を秘めた取り組みです。「江戸時代の辛い参勤交代ではなく、明るい逆参勤交代は三方一両得。本人(社員)、公共(自治体)、産業(企業)のいずれにとっても、メリットをもたらす」と松田氏は話します。

社員にとってのメリットは、ワークライフバランスやセカンドキャリアの実現、心身のリフレッシュ、モチベーションアップなどが挙げられます。自治体や地域にとっては、関係人口の増加をはじめ、逆参勤交代社員の活用によって、特産品の販路開拓や情報技術、廃業問題、事業継承などの課題解決を促進することができます。旅館やホテル、電車、飛行機などの稼働率の向上も期待できます。また、企業にとっては、働き方改革、人材育成、ビジネス強化、健康経営といったメリットがあります。逆参勤交代の活用は、SDGsに取り組むことでもあるので、企業価値を高めることにもつながります。

多様なモデルがあることも、逆参勤交代の特徴です。新規事業の開拓を目指す「ローカルイノベーション型」、健康経営を重視する「リフレッシュ型」、若手や役員研修など、人材育成の一環としての「武者修行型」、あるいは、ワークライフバランスを目的とした「育児・介護型」、これまで培ってきたスキルや人脈を活かして地方で働く「セカンドキャリア型」まで、目的や年代、期間などによってさまざまに選ぶことが可能です。

どのモデルを選ぶにしても、大事なのは「自分主語で考えること」だと松田氏。「"あなたのまちはこうしなさい"という"あなた主語"ではなく、私はこのまちのために何が貢献できるか、自分の能力や会社のサービスをどのように活かせるかという視点で考えること。それが、自分と地方の双方にとって良い結果をもたらします」

そして、いよいよ政策化へ

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2年前、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「地方創生×全世代活躍まちづくり検討会」の委員に就任した松田氏は、かねてから逆参勤交代の政策化を提言し続けてきました。
その努力が実を結んだのは、2019年6月11日に首相官邸で開かれたまち・ひと・しごと創生会議。「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」の1ページに、「企業と地方公共団体を効果的にマッチングさせるプラットフォームの構築等具体的な仕組みを検討する」という一文が新たに盛り込まれ、逆参勤交代構想が政策に反映されるに至ったのです。

「参勤交代では、各藩の藩主が期日までに参勤できなければ、お家取り潰しとなったように、逆参勤交代を政策として行うためには、上場企業のSDGsの責務として課すなど、マス・ボリュームを動かすためには、程よい強制力や制度設計が必要です」

次に松田氏が紹介したのは、昨年度の逆参勤交代コースで開催した地方フィールドワーク「トライアル逆参勤交代」。岩手県八幡平市(リフレッシュ型)、茨城県笠間市(ローカルイノベーション)、熊本県南阿蘇村(被災地の復興)の3市町村に、それぞれ3泊4日滞在し、社会実装への第一歩を踏み出しました。参加者の8割が、「今後も地域課題解決に取り組んでいきたい」と述べ、「異業種でローカルイノベーションを考えるきっかけになった」「セカンドキャリアを考えるきっかけになった」など、今後につながる好感触を得る機会となりました。

今年は、7月の北海道上士幌町を皮切りに、9月には埼玉県秩父市、長崎県壱岐市で、2泊3日のトライアル逆参勤交代が行われます。現地のキーパーソンとの討議や視察を通じて、地域の課題や挑戦に対する理解を深め、最終日は町長・市長に向けて、参加者がプレゼンテーションを行う予定です。

「100の言葉よりも1つの行動と言われるように、一歩踏み出す勇気を持つことが大切です。私からの報告が、これからの逆参勤交代の突破口となれば、これほど嬉しいことはありません」と松田氏は最後に述べ、プレゼンテーションを結びました。

ふるさと納税20億円。人口増加に転じた奇跡のまち

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続いて登壇したのは、北海道上士幌町の竹中貢町長。上士幌町は、NHKの連続テレビ小説「なつぞら」の舞台にもなった十勝地方北部の自然豊かなまちです。東京ドーム358個分に相当する日本一広い公共牧場「ナイタイ高原牧場」(総面積1700ha)には、2000頭以上の乳牛が放牧され、頂上付近のレストハウスからは十勝平野に広がる美しい風景を一望できます。

「上士幌町における地方創生の目標は、人口減少の歯止め、地域経済の活性化、東京一極集中の是正です」と竹中町長。それらを実現するべく、近年さまざまな取り組みが行われてきました。そして今、その努力が実を結び、人口5000人ほどのまちにして、20億円を超える道内一の「ふるさと納税」を集め、人口増加に転じた「奇跡のまち」として大きな注目を集めています。

人口は、1955年の1万3608人をピークに急減しましたが、地方創生の始まった2015年から2018年の間に、自然増が計116人、社会増が計226人となっており、東京からの転入者は、20~40代を中心とした計80名に上りました。

「近年は、高齢化率の上昇に歯止めがかかる一方、出生率も少しずつ上がってきています。5年前、町内の中学校の卒業生は40人ほどでしたが、今年の成人式では、70名ほどが成人を迎えました。嬉しいことに、若いまちになりつつあります」と竹中町長は話します。

人口減少や高齢化など地域社会を取り巻く環境が変化する中、官民協働でまちづくりに取り組む必要から2010年に設立された「NPO法人上士幌コンシェルジュ」。2018年2月、まちの移住定住の窓口として、上士幌町の人口増に貢献したことなどが評価され、総務省から、2018年度「ふるさとづくり大賞」を団体表彰されました。

ふるさと納税を活用した多彩な取り組み

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ふるさと納税の寄付金は、日本で初めて保育料を完全無料化した「上士幌町認定こども園ほろん」をはじめ、健康ポイント事業、定住促進賃貸住宅建設助成事業などに活用されています。認定こども園では、2016年4月からの10年間、保育料だけでなく、給食費も無料化しています。幼児期から異文化交流に親しみ、ネイティブの英語を身につけられるように、外国人教師に常駐してもらうなど、教育の質を高めることにも力を注いでいます。

タニタの健康プログラムを活用した健康ポイント事業は、町民の健康増進を目的に2018年度から導入したプログラムです。希望する町民には活動量計を無料で貸し出し、自らの健康維持に役立てることを促しています。歩数や体組成などを記録することで、「健康ポイント」というポイントが貯まる仕組みになっていて、年度末に貯まったポイント数を町内で使える商品券と交換するサービスを行っています。定期健康診断やがん検診などの受診、「かみしほろ塾」と呼ばれる生涯学習の機会を提供する場やシルバー学級への参加も、ポイントが加算されます。

定住促進賃貸住宅建設助成事業は、戸建てやアパートなど建設する住宅の種類や床面積に応じて最大で300万円の助成金が受けられる制度です。2008年に始まり、10年間で381戸の住宅が建設され、総額4億9278万円を助成しています。2015年からは、50万円を上限とする「老朽施設解体撤去促進事業」をスタートし、安心安全と美しい住環境の維持向上にも努めています。

ふるさと納税への感謝祭を行ったのは、国内でも上士幌町が先駆け。2018年には、4回目となる「上士幌フェア」が、東京・芝の東京プリンスホテルで開催され、約1600人の寄付者で賑わいました。ふるさと納税の返礼品として人気の高い「十勝ハーブ牛」やアイスなど、上士幌町ならではの食材の試食コーナーだけでなく、移住相談やまちのPRも兼ねて行われました。総務相時代にふるさと納税の創設を提唱した菅義偉官房長官も視察に訪れ、上士幌町にエールを送ったのだそうです。

加速する地方創生

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2017年5月には「ふるさと納税・生涯活躍いきがい基金」が創設されました。一般寄付の半分を基金に積立て、医療・介護などの地域包括ケアなど、生涯活躍のまちと健康寿命の延伸を目指す事業に活用されています。

関係人口の創出につながる取り組みとしては、「お試し暮らし」に力を入れています。2017年度北海道お試しランキングでは、132人が移住体験に参加し、釧路市に次ぐ2位にランクインしました。「その結果として、移住者も増加する状況にある」と竹中町長。

テレワークとサテライトオフィスへの取り組みも活発です。現在、2020年に開設予定の「上士幌シェアオフィス構想」が進められているほか、米国シェアオフィス運営大手「WeWork(ウィーワーク)」と道内自治体では初めて契約することが決まっています。東京都内のシェアオフィスに拠点を持つことで、多種多様な企業・団体とのネットワークを構築し、町内への企業の誘致活動も行っていく予定です。

2018年5月には、「karch(カーチ)」というDMO(観光地経営組織)が設立されました。
ナイタイ高原牧場レストハウス「ナイタイテラス」や2020年にオープンする「道の駅」の運営を担うほか、再生エネルギーの地産地消を目指した畜産バイオガス発電事業も推進しています。

さらに、今年8月には、起業家支援スペース「hareta(ハレタ)」がオープン。まちの空き店舗を利活用して生まれた新しい空間は、横浜市の「公益財団法人 起業家支援財団」元理事長・アルプス技研の松井利夫会長の3000万円の寄付によって創設されました。

人生100年時代。スマート社会の実現を目指して

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超高速通信5Gの到来、ならびに人生100年時代を見据えて、上士幌町ではさらなる戦略的アイデアの実現に向けた取り組みが進められています。地方創生を加速させるための最たる課題は、2大インフラの整備。地方のすみずみまで行き届いた公共交通ネットワークの整備と、5Gを基盤とするインフラの整備や畜産振興の実証実験などが始動しています。

その端緒として2018年4月に開設されたのが、地域交流の場としての機能をあわせ持つ
「上士幌町交通ターミナル」。まちの主要施設や商店街に隣接した交通拠点としての役割を担っています。また、上士幌町は、ICTなどを活用した先進的な交通サービスの実用化に向けた国のモデル事業「スマ―トモビリティ」の支援対象の地域に採択され、今年度には、ナンバープレートを取得して公道を走る自動運転バスの実証実験を予定しています。

「かつては、このまちにとって厄介者だった産業廃棄物やコンクリートアーチ橋が、今では、大切な観光資源になっている。また、"ない"ことも、武器。上士幌町にはスギがないことから、スギ花粉のリトリートツアーも開催しています。今後、これまで以上に新しいチャレンジをしていきたい」と竹中町長は話し、プレゼンテーションを結びました。

都心に近い自然豊かなまち、秩父

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次に、埼玉県秩父市の久喜邦康市長の代理として、秩父市 市長室長の宮前房男氏が登壇しました。秩父市は、池袋から新型特急「ラビュー」で約80分というアクセスの良さに恵まれた、自然豊かなまちです。羊山公園の「芝桜の丘」に咲く40万株以上の花のじゅうたん、岩清水が凍りつくり上げられる氷の芸術「三十槌の氷柱」、秩父ミューズパークから望める「雲海」など、季節ごとに多彩な景色が楽しめます。

年間、560万人の観光客が訪れる秩父市には、ユニークな催しや歴史的スポットなど、見どころが満載です。その最たるものが、年間300を超える祭り。中でも注目は、日本三大曳山祭りのひとつである「秩父夜祭」、"龍勢"という手づくりの農民ロケットを打ち上げ、技術を競い合う「龍勢祭」です。秩父神社や三峯神社など、多くの寺社仏閣や34ヶ所の観音霊場もあり、それらを巡る「秩父札所巡り」で訪れる人も多くいます。

約89,250ヘクタールの雄大なエリアに広がる「ジオパーク秩父」は、日本最初の流通貨幣「和同開珎」がつくられた和銅遺跡など、秩父市ならではの魅力が詰まった大地の公園。今年6月には、埼玉県ほか近隣の3県にまたがる「甲武信」エリアがユネスコエコパークに登録され、国内のみならず、外国人旅行者の増加も期待されています。

『秩父版CCRC』の誕生

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秩父市の喫緊の課題は、「移住者、関係人口の増加」です。人口は1990年の7万5845人から減少の傾向にあり、2040年には 4万4719人まで落ち込むことが予想されています。生産年齢人口が、66.8%から48.6%に減少する一方、老年人口は、14.9%から41.2%へ上昇すると見られていることなどから、日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」として指定され、CCRC構想を検討するきっかけとなりました。

平成28年12月に策定した「秩父版CCRC」の第一の特徴としては、「総合的な移住政策」であることが挙げられます。移住者を呼び込むとともに、既存の居住者もメリットを享受できるよう、医療・介護、就業支援など、生涯活躍のまちづくりに必要な基本機能を充実させていくことを目指しています。加えて、若者を含む多世代を対象とした「総合事業」と、アクティブシニアを対象とした「モデル事業」の2本柱で進めていることも、特徴のひとつです。

移住者のための充実のサポート体制

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平成29年4月に開設した「移住相談センター」では、移住に関する情報を一元化し、移住を検討する人たちのサポートをワンストップで行っています。「秩父市お試し居住」は、市内のモデルハウスを活用した移住支援です。3LDKの物件は、大人2~4人までの利用が可能で、期間は3~7日間。事前の面談が必要ですが、無料で提供しており、希望者に秩父の暮らしを体験してもらうことを目的としています。

「2017年7月から今年までに、61組165名の方がお試し居住を体験してくれました。そのうち、6組10名が秩父市に移住しています」と宮前氏。秩父地域の物件登録・紹介を行う『ちちぶ空き家バンク」のほか、市有住宅の整備も進められています。従来の市営住宅に比べ入居要件を緩和したことから、2地域居住も可能になっており、2018年5月に募集した20戸に対し、現在12戸が入居中とのことです。

移住者の助成金制度には、「空き家リフォーム等工事費助成金」「軽自動車購入費助成金」に加えて、今年度から45歳以下の移住者を対象とした「若者移住者(I JUターン)就職奨励金」も実施されています。市内企業に就職しながら、賃貸住宅に居住し、2年以上住む意思のある人に対し、20万円の奨励金を支給するというものです。

今年10月末に竣工予定のモデル事業「花の木プロジェクト」は、アクティブシニアを対象に、市営住宅の未使用部分敷地を活用したサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)です。隣接する交流センターは、秩父市が整備しているもので、サ高住のフロント機能を兼ねた地域開放型の交流スペースとなる予定です。

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観光客が年々増加の傾向にある一方、商店街や中心市街地に空き店舗や空き家が増えていることも事実です。「特に、秩父神社近くの番場通り、秩父織物関連の建物が並ぶ買継商通り、みやのかわ商店街の3ヶ所については、空き店舗などを利活用してにぎわいを創出したいと考えています」と宮前氏。

近年、中心市街地からすぐ近くにある約10ヘクタールの土地を活用した企業誘致の活動も進められています。進出企業には、「秩父市工場等誘致条例奨励金」という県内でもトップクラスの優遇支援が提供されます。現在、鍵製造会社の進出が決まっているほか、宿泊施設や映画館の誘致に向けて活動中とのことでした。

宮前氏は最後に、ワールドウィスキーアワードで世界一に輝いたイチローズモルトを蒸溜する「株式会社ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所」について紹介しました。「今回のトライアル逆参勤交代で、参加者の方に見学いただくスポットのひとつです。今日、イチローズモルトを2本お持ちしました。交流会でぜひご賞味ください」と述べ、締めくくりました。

神々が宿る神秘の島、壱岐

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最後に登壇したのは、長崎県壱岐市の白川博一市長。昨年から壱岐市の政策顧問を務める松田氏を通して逆参勤交代コースを知り、「すかさず手を挙げた」という白川市長は、冒頭、こう話しました。「壱岐市の課題は、やはり人口減少と高齢化。それらを解決していくうえで、外の方々からの視点が非常に重要であると大きな期待を抱いています。当然、答えはひとつではないけれど、多くのご提案をお願いしたいと思っています」

東京からわずか3時間ほどで行けるアクセスの良さに恵まれた壱岐市は、「古事記」のイザナギ・イザナミによる国生み神話にも登場する、玄界灘に浮かぶ島です。大小1000以上の神社が存在していますが、中でも、"日本のモン・サン=ミッシェル"として知られる小島神社は、干潮時にだけ参道が現れ、満潮時は島に変わるという神秘スポットとして、近年注目を集めています。白砂が美しい約30ヶ所のビーチ、長崎県内で確認されている古墳の約7割にあたる270基の古墳など、豊かな自然と歴史にあふれたこの島は、麦焼酎発祥の地であり、食材の宝庫でもあります。ブランド牛の「壱岐牛」から海の幸、山の幸まで、自給自足できることも特徴のひとつです。

SGDsに向けた取り組みの始動

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最大の課題は、人口減少。1955年の51,765人から約48%減少し、2015年には27,199人まで落ち込みました。2030年には、21,869人まで減少すると推計されています。「現状、自然減が200人、社会減が200人。壱岐市には大学がないので、高校を卒業したら島を出てしまう若者が多い。帰って来ようとしても、大学卒の学歴を活かせる仕事場がないことから、高齢化が進み、労働人口が減少している状況。その一方では移住者が増加の傾向にあり、2018年には91名が移住しています」と白川市長は話します。

2018年6月、「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」のひとつに選定された壱岐市。現在、経済、社会、環境の3分野において、さまざまな取り組みが進められています。そのひとつが、IoTやAIによるデータ収集・分析を活用した農業の6次産業化です。

「現在、アスパラガスの収穫量3割増を目指して、実験的に進めています。どのような水分状態や肥料、温度がいいのか、データを取りながら分析をしています。ここで得たデータを島全体の農業に活かすことができれば、労力の削減にもつながります。廃棄されていたアスパラガスの根元部分の活用、ECマーケットの確立、自動運転による輸送などについても検討中です」

壱岐で働く人を増やしていくために

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環境については、風力やメガソーラーなどの再生可能エネルギーを使った水素発電に取り組み、低炭素社会の実現を目指しています。「発電量は4~5割と決して多くはありませんが、安定的な再生エネルギーです。壱岐市は九州本土と系統連系していないので、100%自然エネルギーの可能性を秘めていることから、積極的に取り組んでいきたい」と白川市長は話します。

2017年度の「ふるさとテレワーク推進事業」の採択事業として開設したテレワークセンター「Free will Studio(フリーウィルスタジオ)」は、壱岐市と富士ゼロックス長崎の協働によって生まれました。コワーキングスペース、サテライトオフィス、カンファレンススペースなどがあり、市民や島外企業の壱岐拠点開設に伴うスタートアップ、リゾート型テレワークの拠点として利用されています。また、短期滞在者向けに、Wi-Fiを完備した木造平屋のシェアハウスも運営しています。

白川氏は、島内にある7つの空き物件をフリーレント付きで提供する「起業者支援」についても触れました。「国境離島新法の雇用機会拡充事業の補助金では、創業する人には最大450万円、事業拡大する人には最大1200万円の補助があります。島に暮らすとなると、医療面が気になるところだと思います。壱岐市には、17名の医師が常勤する企業団病院と11の個人診療所があり、介護施設も特別養護老人ホームと介護老人保健施設が2つずつあり、充実しています」と話し、壱岐しごとサポートセンター Iki-Bizのセンター長 森俊介氏を最後に紹介しました。

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全国391名からIki-Bizのセンター長に選ばれた森氏は、島内で働く人や事業主のコンサルティングを無料で行っています。農業、漁業、飲食業など、あらゆる業種の人が相談にやって来ます。「売り上げが伸び悩んでいる」「事業の後継者がいない」「もっと高く島外に売りたいが、どうすればいいのか」など、人の数だけ相談の内容もさまざまです。

2年前に壱岐市に移住した森氏は、こう話します。「壱岐市でいきなり仕事をしようと言われても、分からないことだらけかもしれません。でも、私のところに来ていただければ、移住者と居住者の両方の視点で伝えられるので、もし、この島で何か仕事ができそうだと思う方は、ぜひご相談ください。私たちとしては、壱岐に来てもらい、できることならば、仕事をしてもらいたいと思っています」

レポート後編では、同日の後半に行われたパネルディスカッションの様子をお届けします。


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