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【レポート】神々の島で、好きな人と、好きなことを〜壱岐×逆参勤交代 後編

丸の内プラチナ大学逆参勤交代コース 長崎県壱岐市フィールドワーク 2019年9月27日(金)〜29日(日)開催

8,9,11

逆参勤交代コース初の離島へのフィールドワークとなった今回は、新たな発見に満ちた行程です。そして、迎える最終日。課題解決プランのまとめに取り掛かります。
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自分×壱岐、一歩踏み込んだプランが続々

自分×壱岐、一歩踏み込んだプランが続々

<3日目>
こころ医療福祉専門学校→壱岐の島ホール(課題解決プランのまとめ、提案)→玄海酒造→あまごころ壱場→郷ノ浦港→博多港にて解散

3日目は「こころ医療福祉専門学校」の視察からスタート。2017年に開校した島内初の専門学校です。この学校が開校したのは、壱岐が抱える幾つもの課題を解決するためであると、同校の中野勝校長は説明してくれました。

「壱岐が抱える課題は人口減少だけではありません。島内の経済は第一次産業が中心なので雇用の場が限られており、個人的な考えではありますが、他の市町村と比べて個人所得も低いと感じています。さらに、現在の高齢化率は35.5%ほどですが、2044年頃には45.7%にも達すると見られています。そこで本校を通して介護福祉に関わる人材を育成し充実した介護を受けられる環境を整えると共に、人口減少への歯止めを掛け、一方で交流人口の増加を果たしていくことが、この学校の存在価値だと考えています」(中野校長)

image_event_190929.002.jpegこころ医療福祉専門学校の中野勝校長(写真左)。廃校となった中学校を改修して使用。海外からの留学生たちは校内で寝泊まりをしています(写真右)

同校の生徒は壱岐出身者だけではなく、海外からの留学生も多くいるそうです。彼らを受け入れることは、関係人口の増加だけではなく、壱岐の人々がインバウンドを意識するきっかけにもなると、市役所の斉藤氏は話します。

「壱岐はインバウンドの受け入れが少ないため、外国人の方に慣れていない島民の方も多くいました。でも最近ではこの学校の留学生たちが島内でアルバイトをして地元の方々と触れ合う機会が増えているので、島民もインバウンドを意識するようになってきていると感じています」(斉藤氏)

また、こころ医療福祉専門学校のもう1つのポイントは、廃校を利用している点です。実は壱岐は、将来的にCCRC(Continuing Care Retirement Community。継続的な介護が付随する高齢者向け共同体)の推進を目指しており、そのためにはこうした既存の空き施設の活用が鍵になるのです。松田氏も「この学校の卒業生がそのまま壱岐に残り、そのまま島内のCCRC施設に就職するという好循環を生み出すことが理想」と話しました。

image_event_190929.004.jpeg学校概要の説明を受けた後、中野校長の案内で校内を視察しました。かつて中学校だった頃に使われていた設備も多く残っており、写真右はかつての家庭科室。現在は学生たちの共同キッチンとして使われています

こころ医療福祉専門学校の視察を終えると、壱岐の島ホールへと移動し、課題解決プランのまとめに取り掛かりました。課題解決プランのポイントは、(1)What(何をするのか)、(2)Why(なぜするのか)、(3)Who(私は何を担うのか)、(4)Whom(誰を対象にするのか)、(5)How(どのように実現するのか)、という5点です。松田氏が特に強調したのが(3)です。それは、2日目に会った壱岐しごとサポートセンターIki-Bizの森氏が話したように、「壱岐はこうしたらいい」ではなく、「壱岐で自分はこういうことをしたい」と、他人事ではなく自分目線で提案をしなくては、地元の人々に響きにくいからです。実際、昨年と今年で実に5度、トライアル逆参勤交代に参加している高橋孝治さん(高橋孝治公認会計士事務所)は、次のように話しました。

「今年は3地域、昨年は2地域のトライアル逆参勤交代に参加しましたが、昨年は初めてだったこともあり、どうしても"自分"を主語にできていなかったように感じます。本当に何かを始めるのであれば、やはり主語を見直した上で、地元と共働する意識を持つことが大切なのだろうと思っています」(高橋さん)

image_event_190929.003.jpegプレゼン会場となった壱岐の島ホール(写真左)。プランを練る参加者たち

それぞれがアイディアをまとめ上げたところで、いよいよビジネスプランの発表がスタートしました。この日は10名の参加者に加え、事務局の3名も含めた総計13のプランを発表しました。一方で、聴講側は白川市長を始め、市役所職員や地元メディアの人など30名以上が参加。壱岐の今と未来を見つめる熱気が渦巻く中での開催となりました。今回提案されたプランのタイトルは以下の通りです。

(1)滞在型企業研修の島プロジェクト
(2)いき小麦プロジェクト
(3)育休男子支援プログラム
(4)神主さん・お坊さん観光ガイド 地域コーディネーター化プロジェクト
(5)「探して」「集めて」「つながって」+「伝えて」プロジェクト
(6)壱岐でゆるーく生きてみたいプロジェクト〜夜の関係人口を2倍に増やして壱岐を知る〜
(7)一次産業イキイキPJ
(8)イキ壱岐セカンドホームプロジェクト
(9)イキイキ(壱岐活き)・つなげる・プロジェクト〜ワーケーションで関係人口拡大〜
(10)神の島千社デジタル化→千社巡礼
(11)壱岐国4つの電動自転車関所プロジェクト
(12)ニッポンみらい創りサミット
(13)イルカと壱岐マンマが子育ての負の連鎖を"好い"連鎖に

松田氏が事前に力説したように、いずれも「受講生が持つスキル・知見・ノウハウ」を「壱岐の資産」あるいは「壱岐の課題」とうまく組み合わせることで、向上・改善させることを目指したアイディアと言えるものでした。例えば西口周さん(NTTデータ経営研究所)が提案した(5)「探して」「集めて」「つながって」+「伝えて」プロジェクトは、西口さんが本業で培ったスキルを活かすものです。

「私は普段コンサルタントとして働いており、"人と人をつなげられる"ことが強みです。この3日間で壱岐には素晴らしい資産があると感じた一方、島内の人自身がそれらの魅力を把握しきれていない、それ故に外部にうまく発信できていないことが課題だと思いました。そこで今ある資産や頑張っている人たちをつなぎ合わせ、壱岐の魅力を最大化する組織をつくり出すというアイディアを考えました」(西口さん)

また、光行さんの(10)神の島・千社デジタル化→千社巡礼は、光行さんが勤めるデンソーが開発した技術を用いるプランです。

「今では一般化した"QRコード"は、実はデンソーが開発した技術です。壱岐には1000以上もの神社があると聞いていますので、各地にQRコードを配置して、スマートフォンを掲げるとデジタル御朱印がもらえるという施策を展開します。そうすると、新たなツアーが開発できますし、観光客の滞在日数や島民とのふれあいも増えますし、荒れ地の減少にもつながり、関係人口の増加に寄与できるのではないかと思っています」(光行さん)

image_event_190929.005.jpeg受講生の発表の様子。写真左が西口さん、写真右が光行さん

すべてのプランを聞いた後、白川市長は次のようにコメントをしました。

「実現性の高いプランもあったので、市役所内でも共有し、今後の参考にさせてもらいたいと思いました。今回受講生の皆様の話を伺って改めて感じたのは、"壱岐市民が壱岐を知る"、そして"自信を持つ"ことの重要性です。今後壱岐に人を呼び込むためにも、私たち自身が壱岐の魅力をしっかりと伝えられるようになっていきたいと思います」(白川市長)

さらに、受講生たちも最後にコメントを求められ、改めて壱岐への思いを口にしました。何人かのコメントを紹介します。

「実は福岡出身なのですが、壱岐に来たのは初めてでした。非常に良いところだと感じ、これまで知らなかったことを後悔しているくらいです」(神田康弘さん/第一生命情報システム)
「壱岐に来たのは初めてですが、家族が長崎県出身なこともあり、壱岐には興味を持っていました。これからもSNSなどを通して壱岐の良さを発信していきたいのですが、そのためにも、"壱岐と言えばこれ"というようなお土産などをつくってくれると嬉しいと思います」(岡本洋子さん/イトーキ)
「昼間に巡った場所、会った人、どこも印象的でしたが、中でも思い出に残っているのは、受講生や移住者、壱岐出身の方々の本音を聞けた夜の懇親会です。移住と言うとハードルは高いですが、リラックスした雰囲気の中で本音を話し合える場があるとハードルは下がる気がするので、そういった場作りが進むといい影響が出ると感じています」(藤岡千夏さん/未来スタイル)

2泊3日はとても短い期間ですが、それでも通常の研修や旅行とは違った形で地域に関わり濃厚な日々を過ごせた分、それぞれが壱岐に対して強い思い入れを抱いたようでした。そして最後に、松田氏は次のように話してこの会を締めくくりました。

「昨年に比べ、自分自身、あるいは属する企業の持つスキルやノウハウと地域の資産・課題を組み合わせた具体的なプランが多く、逆参勤交代としての進歩を感じました。大事なのはこれを一過性のイベントにするのではなく、"続ける、深める、広める"ことなので、今後も私自身のライフワークとして継続していきたいと思っています」(松田氏)

「続ける、深める、広める」ために、具体的なプランとしては次のようなことを検討しているとも話します。

「まず壱岐については、丸の内プラチナ大学壱岐分校をつくり、定期的に関係性を持っていきたいと思っています。例えば地域の子どもたちに対してキャリア教育をしていくと、未来人材育成にもつながるはずです。さらに、壱岐を舞台に"世界離島サミット"を開催してはどうかという考えもあります。壱岐は自治体SDGsモデル事業に選ばれた先進的な地域ですが、それを東京など国内の大都市に発信していくよりも、世界に発信していく方が効果的です。海外の有力紙や影響力のある人が壱岐を語るようになる仕掛けです。そこで、世界中の離島の要人が一堂に介するような"世界離島サミット"のような国際会議が開催出来れば、壱岐に注目が集まり、発展にもつながるでしょう」(同氏)

松田氏はさらに、「逆参勤交代」そのものの今後についても言及します。

「昨年、今年と地方の人口が少ない地域を訪れましたが、来年は県庁所在地などがある中核都市での逆参勤交代を検討しています。さらに、これまで訪れた地域の首長を集めて"逆参勤交代首長サミット"も実施したいですし、将来的には、地域活性化の国際会議の開催も考えています。私自身が本気になって継続していくことで、この取り組みは広がっていくと思いますから」(同氏)

image_event_190929.006.jpeg講評を述べる白川市長(写真左)。総括する松田氏(写真右)

プレゼンテーションを終えて緊張から解放された一同は、最後のお楽しみへと向かいます。壱岐が発祥であるむぎ焼酎の造り酒屋・玄海酒造と、壱岐最大級のお土産屋・あまごころ壱場を訪れ、壱岐の伝統の味や島内外の人に愛される一品を手に取っていきました。

image_event_190929.007.jpeg「むぎ焼酎 壱岐」など、数々の人気焼酎を作り出している「玄海酒造」の前で(写真左上)。むぎ焼酎壱岐の製造風景。写真中央は自動製麹機から麹を移し、繁殖させている様子・あまごころ壱場(写真右下)

こうしてすべての行程を終え、受講生の間にはやり切った達成感と、壱岐という素晴らしい土地を知ることができた満足感が漂っていました。

前年の逆参勤交代と比べて、松田氏が話したように「一歩踏み込んだプラン」が数多く披露されたことが印象的でした。さらに、多くの人がこの地に対して強い思い入れを抱いたようで、実際に家族と訪れたいと話す人、この地での事業開始の可能性を探る人もおり、年々逆参勤交代の実現可能性が高くなってきていることも感じさせました。また、今回の逆参勤交代を通じて多くの受講生が意識したのは、たちまちの篠﨑氏が発した「好きな人と、好きなことをやる」という言葉だったのでしょう。このワードは、これから逆参勤交代に参加する人にとっては重要なものとなるかもしれません。

image_event_190929.008.jpeg3日間に渡って壱岐島内を案内してくれた観光バスをバックに最後の記念撮影

この取り組みはこれからも続いていきます。来年はどのような人が、どの地域に趣き、逆参勤交代という取り組みにどんな進化をもたらすのか、今から楽しみでなりません。皆様も逆参勤交代のこれからの動きに、どうぞ注目してください。

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