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【レポート】共創がもたらす新たな価値創造 〜リビングラボが描く未来の地域経営~

【ひなたMBA×丸の内プラチナ大学】第2回 地域と未来をつなぐリビングラボ 〜共創で実現する社会実装〜2025年10月22日(水)開催

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2025年10月22日、宮崎市の一般社団法人 宮崎オープンシティ推進協議会(MOC)を会場に、「ひなたMBA」と「丸の内プラチナ大学」の特別連携講座が開催されました。第2回となる今回は「地域と未来をつなぐリビングラボ〜共創で実現する社会実装〜」をテーマに実施。
講師には、リビングラボや都市計画、空間マネジメントの専門家であり、国内外で共創プロジェクトを多数手がける三重大学大学院工学研究科建築学専攻准教授/東京大学先端科学技術研究センター准教授の近藤早映氏を迎えました。
会場には行政や企業、教育関係者など多様な立場の参加者が集結。「共創」を軸に、地域課題に取り組む人々が意見を交わし、会場は熱気に包まれました。まちづくりにおける協働の課題に真正面から向き合い、共創の本質と実践のヒントを探る濃密な時間となりました。

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共創とは、同じ方向を向きながら「違い」を生かすこと

共創とは、同じ方向を向きながら「違い」を生かすこと

hinatamba02_image_01.jpg 三重大学大学院工学研究科建築学専攻准教授/東京大学先端科学技術研究センター准教授 近藤早映氏

近藤氏は、都市計画や建築を専門としながら、人と人との関係性や地域社会の仕組みをデザインする研究に取り組んでいます。もともと建築事務所での実務経験を経て、「物理的な構造だけでは、まちの課題は解決できない」と感じたことが転機になりました。建物の形ではなく、そこに関わる人々の行動や関係性といった"見えない構造"こそが、まちを動かす要素であると気づいたのです。その気づきから、「人と社会をつなぐ仕組み」をテーマに研究を続け、現在は、住民・行政・企業など多様な主体が協働する「リビングラボ」という共創の場を通じて、地域課題の解決と新しい社会実装のあり方を模索しています。
講義の前半では、「共創(Co-Creation)」という言葉の本質に焦点が当てられました。近藤氏によれば、共創とは単なる協力や共同作業ではなく、「多様な人々がそれぞれの知識や創造性を持ち寄り、互いに刺激し合いながら新しい価値を生み出す行動」です。つまり、同じ方向を向きつつも、意見や価値観の違いを排除せず、それをむしろエネルギーとして活かすことが重要なのです。
近藤氏は「全員が足並みをそろえる必要はありません。むしろ、"違い"があるからこそ新しい発想が生まれるのです」と語りました。その言葉には、共創の根幹となる思想が凝縮されています。共創の出発点は、「一人で、あるいは同じ分野の人たちだけで考えても飛躍(ジャンプ)は起きない」という認識にあります。イノベーションは、異なる知と知が交わる"掛け算"によって生まれるもの。だからこそ、分野や立場を越えて関わり合うことが不可欠だと近藤氏は強調しました。

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同氏が定義する共創とは、「個人の知識や創造性を基盤とし、イノベーションを生み出すという共通の目的のもとに、多様な人が集まり、独立しつつも互いの知識領域を刺激し合いながら目的を達成しようとする、創造的な行動」です。この考え方は、協力のように足並みをそろえることを目的とするのではなく、互いの違いを尊重し、刺激し合うことで新しい価値を創り出していくという姿勢を示しています。
「私はこうしている」「こういう課題がある」といった対話を通じて、自らの知識領域を広げていくこと。そうした積み重ねこそが、共創の第一歩だと近藤氏は語ります。全員が完璧に合わせる必要はない。むしろ、"違い"が混ざり合う場こそが創造の源になるのです。
会場では、参加者が熱心にメモを取りながら耳を傾け、深くうなずく姿が印象的でした。

hinatamba02_image_03.jpg キャプション:講義の中に散りばめられたヒントをノートに刻む受講生

共創は特別な手法ではなく、日常の中で生まれる対話と関係性から始まる。その気づきが、講座全体を通して静かに広がっていきました。

世界に広がるリビングラボの潮流と日本の挑戦

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リビングラボは、ヨーロッパを起点に発展した概念です。現在は研究機関や自治体が参加する国際ネットワーク「ENoLL(European Network of Living Labs)」を中心に、世界各地で多様な実践が広がっています。
たとえばスウェーデンでは、固定の拠点を持たず、対話を通じて関係性を育む"関係性重視型"のリビングラボが展開されています。フィンランドでは、大学キャンパス内の実験住宅で企業と住民が協働し、新しい暮らし方を検証。オランダでは、市民が自作したセンサーで水質を測り、行政とデータを共有する。そんな市民主導の環境政策が動いています。
「リビングラボとは、場所ではなく"プロセス"です」と近藤氏は語ります。
特定の施設やプロジェクトに限定されるものではなく、人々が実験的に行動し、失敗から学び続ける文化そのもの。試行錯誤を重ねる姿勢こそが、社会をより良い方向へと動かしていく原動力なのです。

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日本でも2010年代後半からリビングラボの活動が広がり、企業の製品テスト中心だった時期を経て、現在は地域課題を共に考える住民参加型の活動へと進化しています。
たとえば福島県南相馬市では、再生可能エネルギーをテーマに多様な企業が連携。異業種間で新たなビジネスネットワークが自然発生し、地域外にもつながりが生まれました。こうした活動を通じて、参加者の中に"組織市民行動(OCB)"と呼ばれる、自発的に社会のために行動する力が育まれているといいます。

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また、滋賀県長浜市の「黒壁スクエア」を中心とした再生プロジェクトも紹介されました。かつて賑わいを失った商店街を、市民や若手経営者が「暮らしの再構築」という視点から再生しました。町家のリノベーションやオープンガーデンの設置など、まち全体を"実験の場"とする取り組みは、観光活性化にとどまらず、地域の経済や文化の新しい循環を生み出しました。共創が生んだ成果の象徴といえる事例です。
一方、横浜市では「行政主導ではなく、市民が主体となる地域づくり」を掲げ、リビングラボを戦略的に推進しています。

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その中で得られた教訓は、「テーマ設定の段階から市民を巻き込むこと」。行政が用意した場に市民を招くのではなく、共にテーマを設計することで、参加者が"主体者"として関われるようになります。これは企業や組織運営にも応用できる考え方です。
近藤氏は最後に、「失敗を恐れず、テストを楽しむ文化が必要です」と呼びかけました。試行錯誤を"損失"ではなく"学び"と捉えるマインドセットの転換こそが、共創を持続可能なものにする鍵であるとまとめました。

感想共有と質疑応答から見えた共創のリアル

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講義の後半は、参加者同士の感想共有と質疑応答の時間となりました。現場で直面している課題が次々と挙げられ、会場は一気に実践的な雰囲気に包まれました。

hinatamba02_image_09.jpg 対話を通じて、多様な視点が交わり新たな共創が生まれた

自治体関係者からは、「協議会に企業が参加しても意見が分かれ、役所内でも反発がある。どう巻き込めばいいのか」という質問が出されました。これに対し近藤氏は、福島の事例を紹介しる形で「まず商工会議所に働きかけ、彼らを中心に人を集めてもらいました。ただし投げっぱなしはNG。集めてもらったら必ず出向いて説明し、理解を得てから進めることで、8〜9割の賛同を得られました」と回答しました。

hinatamba02_image_10.jpg 質疑応答では、エコッツェリア協会の田口真司(左)がファシリテーターを務めた

また、「どうすれば人を集められるか」という質問に対しては、「何よりも本人が楽しんでいることが大切です。つまらなそうにしていると人は来ません。楽しそうな雰囲気が一番の集客力になります」と笑顔で語りました。義務感ではなく、楽しむ姿勢こそ人を動かす原動力になるという言葉に、多くの参加者が頷きました。
ファシリテーターを務めたエコッツェリア協会の田口からも補足。「一斉配信のチラシよりも、『あなたに一言だけ』と個別に声をかける方が圧倒的に効果的です。30人集めるには100社に声をかけるつもりで。関係性を丁寧に築くことが最も大切です」と、リアルな実践知を共有しました。

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さらに、「行政職員も気軽に来られる、個人対個人で関係を築ける場が必要です。MOCのような拠点がその役割を果たすでしょう」と語り、会場の共感を集めました。
続いて、「ヨーロッパでは市民主導、日本では企業主導が多い。この違いを変えられるか」という質問も投げかけられました。近藤氏は「すべてを真似する必要はありません。良い部分を取り入れ、少しずつ変えていけばいい。日本の良さを活かしながら試すことが大切です」と述べ、柔軟に学びながら日本らしい共創の形を見出す姿勢を勧めました。
質疑応答の最後に、近藤氏は力強いメッセージを送りました。

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「まちづくりに真剣に取り組む皆さんは、様々なフラストレーションを抱えていらっしゃるかと思います。そのフラストレーションこそがエネルギーです。反発や対立からこそ創造性は生まれます。違いを恐れず、動いてみてください。私自身、何度も失敗していますが、それでも動き続けています」。完璧を求めるのではなく、試行錯誤しながら進む姿勢こそ、地域を変える原動力になると語りかけました。

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約2時間にわたるセミナーを通じて、参加者たちは共創の意義と可能性を体感しました。リビングラボは単なる場所ではなく、試し、失敗し、学び合う「プロセス」そのものです。異なる専門性を持つ人々がつながり、小さな一歩を積み重ねていくことで、やがて地域全体の力へと変わっていきます。
講座の後には、「一緒に何かできないか」と語り合う受講生たちの姿も。そこには、共創の芽が確かに芽吹いていました。この日生まれたつながりが、宮崎の新しいリビングラボの種となり、次なる挑戦へと育っていくことでしょう。
課題の多い時代だからこそ、完璧な答えを探すより、挑戦し、失敗し、学び続けることが大切です。その積み重ねこそが、未来を切り拓く原動力になる。リビングラボを通して、未完成を恐れず、挑戦を楽しむ精神が育まれた一日でした。
本講座は全3回シリーズの第2回。最終回となる次回は「マーケティング」をテーマに、地域や組織で共創を広げるための実践的アプローチを学びます。宮崎から生まれる新しい学びと実践のプロセスが、未来を照らす力となることが期待されます。

(取材・執筆:東郷あすか)


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