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【レポート】「食の産地」から脱炭素の拠点へ。再エネを軸に都市と地域を結ぶ共創の可能性

【ひなたMBA×丸の内プラチナ大学】第1回 地域がつくる共創ビジネス・エネルギー×都市 2026年10月1日(木)開催

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2026年10月1日、宮崎市のコミュニティスペース「若草HUTTE & co-ba MIYAZAKI」を舞台に、「ひなたMBA」と丸の内プラチナ大学による特別連携講座が開講しました。会場には、脱炭素や再生可能エネルギーの導入に関心を持つ県内の経営者、新規事業担当者、自治体関係者など多彩な参加者が集結。参加者たちが熱気を帯びた雰囲気の中で交流する、特別な時間となりました。

東京・3×3Lab Futureを拠点にビジネスパーソンのキャリアと学びの可能性を広げる丸の内プラチナ大学と、宮崎県が産業を担う人材を育てる実践型プログラム「ひなたMBA」。都市と地方の知見を掛け合わせ、プレイヤーが一体となって新たな価値創造を目指すこの連携は、共創のプロセスを生み出す試みとして大きな注目を集めています。

全3回シリーズの初回となる今回のテーマは「次世代エネルギー」。

「エネルギーを軸とした地域・企業の付加価値最大化と収益化」と題し、全国の地域脱炭素を牽引する実践者、エコッツェリア協会研究調査室長であり次世代エネルギーアナリストの三上己紀が登壇しました。参加者たちは、三上のエネルギー関連業務での実務経験から導き出された、生きた知見と実践的な戦略に真剣に耳を傾けました。

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官民を横断してきた知見が示す「エネルギーの2つの時間軸」

官民を横断してきた知見が示す「エネルギーの2つの時間軸」

platinum261001_1.jpg エコッツェリア協会研究調査室長/次世代エネルギーアナリスト/大丸有ゼロカーボンスクールプロデューサー/立命館大学上席客員研究員の三上 己紀

第1回の講師として登壇した三上はエネルギーの総合研究機関でのマネジメント経験を経て、経済産業省・資源エネルギー庁において再生可能エネルギーの制度運用や政策立案に深く携わってきた経歴を持ちます。現在はエコッツェリア協会研究調査室長および次世代エネルギーアナリストとして、自治体や民間企業と強固に連携し、地域に根ざしたクリーンエネルギーを活用した脱炭素モデルの構築と事業化の実践支援を全国各地で行っています。

講座の冒頭、三上は最新のエネルギー技術革新のダイナミズムを伝えるため、商船三井が推進する「ウィンドハンタープロジェクト」を例に挙げました。これは、洋上の強力な風力を利用して、帆船が無人で自動航行しながら自立的に海水から水素を精製・貯蔵し供給するという内容です。帆船ですから、その船は「風」で航行します。もちろん風力の弱いエリアでは自身がつくりだす水素を燃料として推進力を得るという、まさに自然エネルギーの究極的な活用を目指すゼロエミッション船を利用した未来に向けたインフラ計画です。グローバルスケールで進行するこうした技術革新の現在地を提示した上で、三上は地域の現場でエネルギービジネスを成立させるために不可欠な「2つの時間軸」という概念の解説へと入りました。

三上は、エネルギービジネスには全く性質の異なる2つの時間軸があると指摘します。

一つ目は「短期的時間軸(30分同時同量の世界)」です。電気という財は、需要と供給を秒単位・分単位で常に一致させなければならず、バランスが崩れれば大規模な停電(ブラックアウト)を引き起こします。そのため、30分単位での緻密な需給調整や、天候によって乱高下する市場価格の変動リスクをどうコントロールするかが問われる、極めてリアルタイムでシビアなマネジメントの世界です。

二つ目は「長期的時間軸(40〜50年単位のインフラ運用)」です。太陽光やバイオマスなどの発電設備、あるいは送配電網といったエネルギーインフラは、一度建設すれば数十年間にわたって稼働させ、保守点検を行いながら長期的に投資を回収していく必要があります。

「昨今、エネルギー事業への参入が相次ぎましたが、単なる電力の自由化ブームや目先の価格競争だけで事業は絶対に成り立ちません。分刻みの需給調整を乗りこなす短期的な視点と、半世紀先までを見据えたインフラ投資という長期的な視点。この異なる2つの時間を正しく理解し、どのような環境変化が起きても赤字を出さない堅実な事業構造を設計すること。それこそが、地域エネルギービジネスを成功へ導く唯一の方法なのです」と、三上は静かながらも力強い口調で語りました。

「損失」を「新ビジネスの資源」へ転換する発想の跳躍

話は、宮崎県が直面しているエネルギーの現状へと広がりました。全国有数の日照時間と温暖な気候に恵まれた宮崎県では、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいます。

しかし現在、九州エリア全体では深刻な課題が浮上しています。電力をあまり使わない春や秋の昼間において、太陽光による発電量が需要を大きく上回ってしまうため、大規模な停電を防ぐ目的で強制的に発電をストップさせる出力制御が頻発しているのです。その規模は九州全体で年間約10億kWhにものぼり、これはおよそ22万世帯分の年間消費電力に相当する膨大なエネルギーです。

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多くの関係者がこれを「クリーンな電気が無駄に捨てられている」「事業者の売上損失である」とネガティブに捉える中、三上の視点は全く異なりました。三上はこれを単なる電力の捨て止まりとして悲観するのではなく、「新たな事業を生み出すための極めて豊富な未利用資源」として再定義することを提案したのです。

「昼間に使い切れないほどのクリーンな電気が、タダ同然で余っている。これをただ系統制御して終わりにするのではなく、発想を転換するのです。この安価で豊富な余剰電力を活用して、電気自動車への充電を昼間にシフトさせる、大型蓄電池に溜め込んで夜間に放電する、あるいは水を電気分解してグリーン水素を製造し他産業の熱源として活用する。視点を変えれば、宮崎には年間10億kWhという途方もなく巨大なエネルギービジネスの種と成長の機会が、手つかずのまま眠っているということです」

この逆転の発想に対し、会場の参加者たちは深く感じ入った様子で、一斉に手元のノートやタブレットにメモを走らせていました。

宮崎の潜在力を引き出す4つの次世代エネルギーモデル

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宮崎が誇る豊かな一次産業の基盤や、既存の地域インフラをエネルギーという新たな切り口で再構築し、持続可能な収益源へと昇華させるための具体的施策として、三上から4つの重要ポイントが提示されました。

1.スギ素材生産量35年連続日本一が誇る「林業×バイオマス」の再評価
宮崎県が誇る圧倒的な森林資源は、単なる建築資材の供給源にとどまりません。三上は「江戸時代から幾世代もの先人たちが脈々と受け継ぎ、森を育ててきた林業という持続可能なビジネスモデルを、ネガティブに捉える必要は全くない」と強調します。「製材過程で大量に発生する端材や、山林に放置されて土砂災害の要因にもなり得る未利用間伐材を、高品質な木質バイオマスとしてエネルギー燃料化する、そして最も価値の高い「宝の杉」とも言います。
地域の熱源や電力として活用しつつ、それを「脱炭素社会に貢献する究極のサステナブル素材」としてストーリー化して可視化することで、国内市場のみならず、環境価値を重視するグローバル企業に向けた高付加価値なビジネスが展開できると説きました。

2.熱エネルギー(排熱・冷熱)の直接活用と合成メタンによる進化
エネルギー利用において、変換ロスがなく最も効率的と言えるのが「熱を熱としてそのまま使うこと」です。宮崎は施設園芸(ハウス栽培)が盛んであり、食品加工などの製造業も集積しています。ボイラーで化石燃料を燃やすのではなく、バイオマスボイラーへの転換や工場排熱の相互融通など、電気だけに依存しない「熱の最適コントロール(冷熱・温熱ネットワーク)」を構築することが、事業者の直接的なコスト競争力強化に直結します。
さらに、回収したCO2と再生可能エネルギー由来の水素から「合成メタン(e-methane)」を生成する技術を活用すれば、既存の都市ガス配管や燃焼機器といったインフラ資産を一切無駄にすることなく、段階的かつスムーズな脱炭素化が実現できるという未来図が示されました。

3.畜産バイオマス(鶏糞等)と地域の未利用資源が生む完全循環モデル
日本有数の畜産王国である宮崎県にとって、鶏糞や牛豚糞などの家畜排せつ物の処理は、悪臭や水質問題など長年にわたる地域課題でした。しかし、この莫大な畜産バイオマス資源をメタン発酵させてバイオガス発電の燃料とし、残った消化液を高品質な有機肥料として農地に還元すれば、地域内で完結する美しい循環型エネルギーモデルが完成します。
これは環境負荷の大幅な低減を実現するだけでなく、これまで地域外へ流出していた化石燃料や化学肥料の購入費を地域内部に留め置き、強固な地域経済の自律循環を生み出す最大の武器となります。

4.地域インフラとしてのガソリンスタンド(SS)とガス事業者の再定義
過疎化が進む中山間地域において、地元のガソリンスタンドやLPガス事業者の撤退は、地域の存続に関わる死活問題です。三上は、彼らを単なる「化石燃料の販売業者」ではなく、「災害時の防災拠点であり、地域ライフラインの維持に不可欠な重要インフラそのもの」であると再定義しました。
給油設備に加えて、太陽光パネルや蓄電池、EVの急速充電器を併設し、さらには日用品の配送や高齢者の見守りサービスなどを統合する。電気やガスの垣根を超えた「次世代の総合地域エネルギー・生活サービス拠点」へと進化させることで、地域の暮らしの安心を守り抜きながら、持続可能な事業運営が可能になるという具体的なロードマップが提示されました。

ワークショップで深まる実践知

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講演に続いて行われたワークショップでは、「宮崎の『捨てているもの・未利用資源』をどう価値に変えるか?」という極めて実践的なテーマのもと、グループディスカッションが展開されました。会場では、参加者がそれぞれの課題や、地域での日々の気づきを持ち寄り、業種の垣根を超えた活発な意見交換が行われました。

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ワークショップの発表では、現場ならではのリアルな意見が飛び交いました。

ある地域の一次産業事業者は、「宮崎は農業も林業も非常に盛んですが、未利用のまま捨てられている副産物や廃棄物がまだまだ山のようにあります。これらをエネルギー化したり再利用したりしたいという気持ちは強いのですが、初期投資の重さや、最終的な収益化までのハードルを前に足踏みしてしまいます。この壁をどう越えればよいでしょうか?」と問いかけました。

これに対し三上は、事業構造そのものの転換が必要だと指摘します。

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「ポイントは、『宮崎の外側で付加価値がついてしまっている現在の構造』を変えることです。例えば食材や木材も、ただそのまま出荷するだけでは単なる価格競争になります。しかし、これを『再生可能エネルギー100%の環境に配慮した地域で生産された価値あるもの』としてストーリー化し、都市部やグローバル企業へダイレクトに届けるのです。
現在、都市部の大手企業はサプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減(Scope3)や、確かな環境投資先を必死で求めています。都市が渇望する『環境価値へのニーズ』と、地域が持つ『豊かな資源』を直接結びつけるスキームを作ることこそが、収益化の壁を突破する最大の鍵になります」

platinum261001_9.jpgファシリテーターを務めたエコッツェリア協会の田口真司

この視点に対し、ファシリテーターを務めたエコッツェリア協会コミュニティ研究所⻑の田口真司が、他地域の優れた循環事例を引いて補足しました。

「一見すると捨てられるだけの廃棄物が、見方を変えれば別の産業の強力な武器になります。例えば香川県の小豆島では、処分に困っていたオリーブの搾りかすを牛の飼料として活用することで、『オリーブ牛』という全国的な高級ブランド肉を生み出しました。エネルギーの領域も、これと全く同じ文脈で捉え直すことができそうです」

このやり取りに、参加者たちは大きく頷きながら手元のワークシートに新たなアイデアを書き込み、異なる業種同士のコラボレーションの可能性に目を輝かせていました。一方的に知識を受け取るのではなく、自らの現場に引き寄せて考える時間が、会場の熱量をさらに一段引き上げていました。

地域産業の誇りを次世代へ

「単にエネルギーの形を変えること自体が目的ではありません。自分たちの地域産業に誇り(プライド)を持ち、その持続可能な未来を次の世代へしっかりと残していくこと。それこそが、エネルギーを通した地域づくりの本質なのです」

三上のこの力強く、そして温かい言葉によって、第1回の講義は締めくくられました。宮崎が古くから培ってきた食の産地としての揺るぎない強みに、次世代エネルギーの産地という新たな軸が加わる。それによって、都市と地域がこれまでの依存関係を脱却し、互いの価値をリスペクトし合う対等なパートナーシップで結ばれる未来像が、描き出された密度の濃い2時間となりました。

都市の知見と地域の可能性が交差し、共創による新しいビジネスの波は、ここ宮崎から確実に動き始めています。今後の展開にぜひご期待ください。

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宮崎県主催ひなたMBA公式ウェブサイトはこちら https://www.hinatamba.jp/

(取材・執筆:東郷あすか)

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